アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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番外編5「酒池肉林!? 王の宴」

アルカナ~切り札の騎士~

番外編5「酒池肉林!? 王の宴」

 

 

 

 

「懇親会?」

「うん。どうかな?」

 本日の授業も終わり、放課後。授業終了した次の瞬間には俺の隣に出現していたさだめが提案してきたのは、俺たちイレギュラーメンバー全員による懇親会だった。

「別に構わないが……」

 さだめにしては、物凄くまともな提案である。が、まともであるからこそ、疑わしい。

「今度は、なに企んでるんだ?」

「やだなぁ~さだめだって、偶には善意で行動することもあるよ」

「それは嘘だ」

「……断言された」

「私も、今のはあまりにもウソ臭かったと思いますけど……」

 アテナが苦笑しながら近づいてきた。少し遅れてユーキちゃんも。

「なに? 何の話?」

「あぁ、実はな……」

 俺は二人にざっと説明する。と言っても、そもそもまだ懇親会をやろうってくらいしか話してないんだが。

「へぇ~うん。いいんじゃないかな? 面白そう」

「私も、懇親会は良いと思います」

 どうやら、二人とも存外乗り気らしい。

「んじゃ後は……」

「凛の了解はもう取ってるよ」

「ってことは、後は剣士か……」

「剣士先輩は必須だよ? じゃないと凛が気後れしちゃうかもしれないし」

「んー……じゃあ剣士の説得はアテナに任せるか」

 一番確実だろう。後腐れあるかもしれないが。

「私……ですか?」

「ああ。任せる」

「わかりました。やってみます」

 これで剣士は確定、と……。

 ともかく、これでメンツは集まったな。

 相変わらずさだめ主催ってところが気にかかるが、まあどうしてもヤバいことになりそうならその前に止めればいいか。

 と、俺は相変わらず、甘い考えをしていたのだった……。

 

 

 

 

 

「ではではーさだめたちイレギュラーメンバーの集結をお祝い致しまして、ここに乾杯の音頭を取らせていただきまーっす!」

 ……怪しい。何が怪しいって、全部が怪しい。さだめが他人との接触に積極的に動くこととか、仕切ることとか、とにかく全部が怪しい。だが、どうも俺のコップに何かしらの仕掛けがしてあるわけではないようだし、隣に居たルインのコップも覗かせてもらったが、特に何かが混ざっているわけでもない。

「はいかんぱーい!」

『かんぱーい!!』

 だが、どうも怪しいと感じているのは俺だけらしい。突然開催されたからか、怪訝な顔をしている奴はいるが、それだけだ。

「あ、希冴姫さんポテチの袋開けてー」

「わかりましたわ」

 むう。やっぱり特におかしいところはない、か?

 いやだがしかし、油断してはいけない。何しろ今回のお菓子や飲み物はほとんどがさだめの持参だ。一体何が混ぜられているかわかったもんじゃない。とりあえずここは俺や剣士が作ったおつまみを……って、今更だが、料理できるのが男性陣ってのもなんだかな。

 とにかく、俺たちが作ったおつまみなら安全だろうし、それを食べながら様子見するか……。

 

 

 

 

 

 しかし、その考えもやっぱり甘かったらしい。気がつけば俺以外、殆どの奴が顔を赤らめて騒いでいる。確実に、酒が入っている。

「……さだめ。どうやった」

「ふっふっふ。さだめも日々進歩しているんだよお兄ちゃん」

 進歩じゃねえよ。

「お兄ちゃんの両脇をさだめと、協力者のルインで固め、他の人間のコップにアルコールを、気付かれない程度に混入。ポテチとかの内部には気化したアルコール。さだめが持ち込んだ料理にもアルコール。お兄ちゃんはどうせ警戒して食べないだろうけど、とりあえず他の連中酔わせてしまえば後は流れで」

 む、無駄に巧妙な……。というか、やっぱりルインは協力者か。道理でまったく酔っていないわけだ。

「……利害が一致した」

「……で、他の連中を酔わせて、今度は何を企んでいる」

「……見てればわかる」

「さぁ! 宴もたけなわ、王様ゲーム、行ってみよー!」

『おぉー!!』

 ! しまった!? これが狙いか!

 大分理性が怪しそうなメンバーは大体が二つ返事で頷く。

「えぇーっと、とりあえず早くもダウンしている凛は除外して、残るのは……」

 俺、さだめ、希冴姫、エース、ルイン、アテナ、ユーキちゃん、剣士、ゴーズ、シャルナの10人か……。これだけいれば、クジに細工でもしない限り当たる確率は低い。問題はそのクジだが……。

「はいお兄ちゃん。クジ作って」

「俺が?」

「さだめが作ったクジなんて信用できないでしょ?」

 当たり前だ。同様に、ルインが作った奴も信用ならん。

 というわけで、俺作のクジをさだめが握り、全員に配る。

「さあ一回目、行ってみよー!」

『王様だーれだ!?』

「あ、私です!」

 一回目はアテナか……まあ、アンパイ……か? 少し疑問だ。

「じゃあ……三番の人が六番の人に肩もみですー」

 ほっ……やはり、アテナはまだアンパイっぽい。まあ六番は俺なんだが。肩もみされる方なら……。

「あ、三番さだめだね」

 いや危険だ! 実にデンジャーだ!

「ふっふっふ……王様の命令だからねー。覚悟してモミモミされるがいいよお兄ちゃん」

「お前が言うと、酷く卑猥に聞こえるな……」

「卑猥にやるからね」

「隠す気もなし!」

 肩もみごときでどう卑猥にやるつもりか知らないが。

「さあ……」

 それよりも、この今にも舌なめずりしそうなさだめを前に背中を見せなければならないと言うのが恐怖だ。

「くっ……」

 大丈夫。いくら酒が入っていても、これだけ大人数居ればそう簡単にヤバい展開にはならん。覚悟を決めて背を向ける。

「えい」

「っ!!?!? っぁ!」

 解説すれば、さだめが肩を一撫でしただけだ。が……。

「何だ今の……」

「ふっふっふ……お兄ちゃんの性感帯とツボを知り尽くしたさだめの前では、肩もみ=前戯! 覚悟!」

「ちょ、お前シャレになんね……ひぅあっ!?」

 くっ……カットカット! 詳しく描写なんかしてられるか! やめろさだめ!

「終わりです! さだめさん離れてください!」

「ち……」

「よし! ナイスアテナ!」

 嫉妬から来るものかは知らんが、とにかく助かった!

「二回戦! 王様だーれだ!」

「……むぁ? オレか……」

「ち! つまらん王様にあたったよ……」

「よし! 剣士なら問題ない!」

 俺とさだめのテンションは好対照だ。

「んー……なら、八番と二番と三番。イッキな」

「一気飲みか……まあ、王様ゲームの序盤としては間違っちゃいないが……」

 問題は、人間は皆未成年だってことだが。

 幸い俺は一番だが……。

「わたくし、ですか」

「む……イッキとはなんだ?」

「……お酒を一気飲み」

 どうやら当たったのは希冴姫、エース、ルインの三人らしい。最早隠す気もないのか堂々とビールが缶で積まれている。というか、こいつ等途中から皆がぶ飲みだったし。

「仕方ありませんわね……切り札の騎士団クィーンズ・ナイト希冴姫! イッキ、行かせていただきますわ!」

「大概ノリのいい奴だな……」

「……良くわからんが、名乗ればいいのだな? 切り札の騎士団団長エース、イッキ、行くぞ!」

「……無所属。女神ルイン。イッキする」

 あ、ルインて無所属なのか。そりゃそうか。

 兎も角、三人とも躊躇うことなくコップ一杯一気に飲み干した。

「ぷはっ!」

「むぅ……なんだ、少しふわっとするな」

「……良いお手前で」

 まだ問題なさそうだな。

「んじゃ三回戦、行ってみよー!」

『王様だーれだ!?』

「? これ、ですの?」

「あ、そうそうそれだよー王様マーク」

 どうやら、次の王様は希冴姫。加減を知ってるか怪しいが……。

「では……二番の方、四番の椅子になりなさいな」

「早くもすごいのが来た!」

 思わず突っ込んでしまった。流石お姫様。

「……椅子って、どういうことだコラ」

「そのままの意味ですわ。四つん這いになって、その上に座るんですの」

「ぐっ……」

 二番だったらしい剣士が、屈辱的な表情で四つん這いになる。

「……で? 四番って誰だよ?」

「ふぁ? あ、私ですねー」

「っ! あ、アテナ、なのか……?」

「みたいですー。では失礼しますねー。よいしょ」

「ぅ……」

 アテナが剣士の上に登ってちょこんと座る。

「……? 剣士さん、顔真っ赤ですけど、そんなに私重たいですかー?」

「い、いや……なんでもねえ」

「……さて。思わぬご褒美イベントが発生したところで、次行ってみよー!」

 剣士が片手で自分とアテナの体重を支えながら必死にクジを引く。……思ったより辛そうだな。あの罰。

『王様だーれだ!?』

「……私」

 次の王様はルインか。

「六番三番五番……イッキ」

「う。ついに当たっちゃったか……」

「……お、おい待て……この状態でどうやって飲めと……」

「……できれば、お酒はもう少し落ち着いて飲みたいものですわ」

 当たったのはさだめ、剣士、希冴姫。……剣士、悲惨だな。

「じゃあ追加。七番、三番に呑ませてあげて」

「む。わかった任せろ」

 エースが七番だったらしい。コップにビールを注いで剣士の傍まで行く。

「よし。デュエルアカデミア一年主席、御堂さだめ。イッキ行くよ!」

「ぬぐ……二年オシリス・レッド所属戦野剣士……イッキ、行かされる……」

「切り札の騎士団所属クィーンズ・ナイト希冴姫。行きますわ」

「同じく団長エース。剣士に呑ませる」

『んぐ……ごっごっご……ぷはっ!』

「うぶぶっ!? ちょ、待てエーぶっ!? く、くそ……屈辱的だ……」

 無理な体勢で無理矢理飲まされた剣士とはちょっと辛そうだ。

「さあ! 盛り上がってきたところで五回戦! レッツゴー!」

『王様だーれだ!?』

「っしゃあああ! さだめの天下来る!」

「しまった!? 恐れていた事態が!?」

「さだめ以外! 全員イッキ!」

「無差別かよ!」

「うぐっ……これで三杯目……流石に、キツイですわ」

「だ、だから……オレはいつまでこの体勢で呑めば……」

 ……仕方ない。

 全員コップを持ち、それぞれが名乗りを上げる。

『ごっごっご……ごぷっ!』

「うぐ……目の前がくらくらしてきた……」

「ま、待ちやがれテメエ……ごばぶっ!?」

 例によって手が使えない剣士はさだめが無理矢理呑ませた。

「……潰しにかかってきた。危険」

「ふふふーまだまだぁ! 六回戦!」

『王様だーれだ!?』

「……私」

「ちぃっ!?」

 さだめが舌打ちする。今度の暴君はルイン。

「七番……のみ。イッキ」

「おや……?」

「意外に軽い……」

「俺かよ……まあちょいキツイがなンとか……」

 と、ゴーズがコップを手に取ろうとしたところで、ルインがニヤリと口角を釣り上げた。

「一升瓶で」

「なにィ!?」

「確実に一人を狙い撃ち……ルイン。恐ろしい子!」

「グ……流石に一升瓶は……」※危険ですので真似しないように。

 普段なら兎も角、ゴーズはシャルナと一緒に、この懇親会が始まった当初から勝手に呑んでいた。その上で一升瓶は相当無茶だろう。

「……四番」

「はい?」

 四番だったらしいアテナが首をかしげる。

「手伝ってやって」

「わかりましたー」

「ってちょっと待て流石に無茶……ごぶっ!?」

「呑んでくださいねーおうさまのめーれーですから」

 アテナも少し前後不覚気味だな……。

「……がふっ!」

 ……ひとり、死んだか。

「はいはーい。潰れた子は邪魔だから大人しく出てってくださいなー」

 さだめがゴーズをテントの外に放り出した。酷過ぎる。

「んじゃ、一本減らして次行ってみよう!」

『王様だーれだ!?』

「む。我だな」

「ではエースさん。御命令をどうぞ!」

「四番、八番、一番。呑め」

 実に端的。今回は希冴姫とルイン、そしてシャルナだ。希冴姫はこれで四度目……流石にそろそろ顔色が怪しい。

「うぐ……さ、流石にこれ以上は……」

 希冴姫がいい加減限界が近そうだ。……死ねば楽になるのに。

「はい畳みかけるように八回戦!」

『王様だーれだ!?』

「……また私」

 しまった。ルインか! また誰かが一人犠牲に……。

「八番、その場で五回ジャンプ」

「うわ……」

 酒の入っている状態でそれはキツイ。一体誰が……。

「あ、私ですね」

 ……アテナ?

「……ちょっと、待て……今テメエ、“その場で”っつったか……?」

 ……今、アテナは剣士の上に座っている。

「飛べ。“その場で”」

「悪魔かテメエは!?」

「破滅の女神」

 そのネタ何回使うつもりだルイン。

「てめ、いくらアテナが軽いっつっても酒入ってる状態で上で飛んだり跳ねたりされたらぜった「じゃあ跳びますねー」ちょ、ちょっと待てアテ「えいっ!」ごはぁ!? す、少しタンマ「よいしょっ!」げはっ!? ま、待って「もういっちょー!」ぶらぁあぁっ!?「ふぁいとっ!」うぼぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 剣士、奮闘むなしく四回目でダウン。

「最後です!」

「っ……っ」

 追い打ち。酷過ぎる。オーバーキル過ぎる。死体蹴り、いくない。

「……予想外の展開。でも、ナイス私」

「ふん。弱者は出ていくが良い」

 エースが剣士を投げ捨てる。どれだけ悪魔なんだお前ら。

「ふふ……徐々に惨劇の様相を呈してきました。九回戦!」

 もうやめたい。

『王様だーれだ!?』

「あ、私ですー」

 ついさっき椅子(剣士)をオーバーキルしたアテナが王様。どうなる事やら。

「三番の人逆立ち十分ですー」

「……え? ちょ、ちょ~っとお待ちなさいアテナ。いくらおねーさんお酒飲み慣れてるって言っても逆立ちって……」

「逆立ちですー」

 ……嗚呼無情。酒が入った状態で逆立ちとか、無茶ぶり過ぎる。

「……何だかんだで、アテナが一番潰している事実にさだめは恐怖するよ」

「……同感だ」

 結局シャルナは、十分はおろかそもそも逆立ちすることもできずに気を失った。

「出てけ」

 ルインが蹴りだした。もう、なんでもいいよ。

『王様だーれだ!?』

「わたくしですわ。わたくし以外、呑みなさいな」

「くっ!? 希冴姫さんもなりふり構わず全体攻撃……」

 既に四回イッキさせられている希冴姫も、そろそろ限界が近いのだろう。

「まあ、やらなきゃやられるの典型だからな……」

 ともかく、なんとか全員無事に呑み終える。しかし、そろそろアテナは危うい。もうかなり眠そうにしている。

『王様だーれだ!?』

「私ですー」

「来たか撃墜王……」

「セツ、酷いですー」

 えげつないことしかしてないアテナに言われたくない。

「一番二番、頭突き合戦。どちらかが倒れるまで」

「アテナぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 流石撃墜王……考えている次元が俺たちとは違う。潰す、じゃなくて殺す気だコイツ。

「で、誰なの?」

 俺は、手元の割りばしを見る。

「……俺だ」

「我だな」

 一瞬、俺とエースの視線が交錯する。

「……なるほど。やはりお前とは、こういう形で決着をつけることになるのだな……」

「俺たちらしい幕引きじゃないか……エース」

 こうなりゃトコトンやるまでだ。ぶっちゃけ一発目で気絶して逃げるのもアリかと思っていたが、相手がエースならそういうわけにもいかん。

「いざ尋常に……」

「しょうっ!?」

 あ?

「うわらばっ!?」

「あぅっ!?」

 一瞬目の前で火花が散った。どうやら、口上の途中でエースの奴がすっ転んだらしい。足下が大分おぼつかなくなっていたからなのだろうが……。

「「……っ!?」」

 目を開いて、二人して硬直する。顔が近い。というか……。

「な、何をやっていますのっ!?」

 希冴姫が俺たちを引き離した。その際になにやら「ちゅぽんッ」とかすごい音がしたが、気にしてはダメっぽい。

「い、いま……もしかして……」

 思わず唇に手を当てる。今、ここに……。

「あ、あ、あ、あ……わ、我は……今まさか……」

「くっ……!? まさかさだめたちが狙っていたラキスケ展開を……ノーマークだったよ……」

「唇が奪われた……おのれ」

「わ、わたくしを差し置いて……」

「きゅぅ……」

 エース、撃沈。予想とは全く違う結末だった。しまった。明日からエースにどう声をかければ……。

「じゃ、出てってくださーい」

 そしてこの惨劇を引き起こしたアテナは何事もなかったかのようにエースを外に放り出す。撃墜王……。

「……ちょっとテンション下がったけど、十一回戦、行くよ!」

 下がったまま終わりにして欲しかったが。

『王様だーれだ!?』

 くっ……また違う……こうなったら俺が王になってゲームを終わりにするしかないと思ったんだが……。

「また私ですー」

「アテナ率高くね!?」

 まずい。これはまた誰かが脱落する予感が……。

「二番の人ー」

 その宣言を聞いて、希冴姫が身を固くした。

「イッキしてからブレイクダンスですー」

「なんですのよそれはっ!?」

 流石撃墜王。あの手この手で致命的な命令を下してきやがる……。

「ああもう! とにかく呑めばいいのでしょう!? ぬぐぐ……」

 希冴姫、そう頭に血を上らせたら……って、どうせブレイクダンスするのか。……んな無茶な。

「くっ……!?」

 そもそもブレイクダンスなんぞ素面でも出来る気がしない。案の定希冴姫も苦戦しているらしく、まずその体勢が取れない。

「こうですっ!」

「ちょ!?」

 業を煮やしたのか、アテナが希冴姫の身体を強引にひっくり返して回す。回す。回す。まだ回す。

「も……もう、む……」

 最後まで言うことすらできず、希冴姫は轟沈した。

「ぽいちょ」

 そして放り出される希冴姫。

 今や俺たちの恐怖の対象はさだめやルイン等ではなく、アテナにのみ向かっていた。

『お、王様だーれだ!?』

 少しどもりながら引いたクジは……。

「三連続ですー」

『なぜにっ!?』

 まさかの三連続キング。

「えーっと……」

 アテナが何を宣言するのか、俺たちは体を震えさせながら待つ。

「三番の人ー」

 ……俺だ。

「王様を抱きしめてください。ゲーム終了までずっとです」

 ……なに?

 先ほどまでと比べて、やけに明瞭な声でそう宣言する。

「お、お兄ちゃんまさか……」

「あ、ああ。三番だ」

「狙いはこれ……!?」

 さだめとルインが戦慄する。

「セツー早く~」

「あ、ああ……」

 恥ずかしいことは間違いないが、非人道的な命令を喰らうよりは全然マシだった。

「んふふ~」

 ……まあ、その、イインジャナイカナ?

「くっ……次! 次逝くよ!」

『王様だーれだ!?』

「……よしっ!」

 ルインがガッツポーズ。ミラクルは、四度は続かないらしい。

「二番、王様にキス」

「直接的な手段に出た!?」

「さあ、さあ! さあ!!」

 ルインが迫ってくるが……。

「いや、俺二番じゃないぞ?」

「!?」

 酒がまわっているのか、そんな基本的なことも考慮していなかったらしいルインが硬直する。で、その二番は……。

「私ですー」

「!?」

 イッツァミラクル!

「じゃあしますよーはれっ?」

「ちょ……」

 ゴガンッ!!

 エースのようによろけたアテナが一瞬身を引いたルインの顎をおでこで強打した。

「い、いたいですー」

 とか言っているが、モロに急所に喰らったルインの方はそれどころでは済まなかったらしく、完全に目を回して伸びていた。

「ルインまで……撃墜された!?」

 当のアテナはぐずぐず涙目になりつつ俺の腕の中。微妙に幼児化している。

「くっ……どこまでも羨ましい……」

『王様だーれだ!?』

「……さだめだ!」

 ここに来て! というか、俺はまだ一度も王になっていないんだが!?

「三番! さだめと頭突きぃ!」

「なにっ!? なぜ……」

「わかりましたー」

 アテナだったらしい。なぜ、そんな自殺行為を……。

「死なばもろとも! ぜぇえええええええいっ!」

 頭勝ち割れるんじゃないかってくらいの勢いでさだめがアテナに吶喊する。結果……。

「「……ごぴゅっ!?」」

 ダブルノックアウト。二人とも目を回していた。というか、額割れてる。血が出てる。

「……ま、まあともかく、これで……」

 俺以外全員撃沈した筈。結果的にはこれで終わりだ。

 そう思って、俺の一番の割り箸とさだめの持つ王様割り箸を手に取る。アテナの分の割り箸を回収しようとして……割り箸を一本、横から掠め取られた。

「え?」

「ってことで、次の王様わたしだから~」

「え? は?」

 俺は混乱している。

「えーと、じゃあねぇ。一番の人が王様を抱きしめること~」

「……ユーキ……ちゃん?」

「え? そうだけど」

「あれ? そういえば……」

 途中で一度も、ユーキちゃん喋ってなかったような……。

「えと、ユーキちゃん……受けた罰ゲームって……」

「えっと、一気飲みを二回かな~」

 それって、さだめと希冴姫の無差別絨毯爆撃の時じゃ……つまり。

「ほぼ無傷?」

「そうだね~」

 ……失念していた! ユーキちゃんの二つ名……!

「最後に綺麗に潰し合ってくれて助かったよ~」

「サイレントッ……」

 ダークホース……!

「じゃあ、はい。セツ君。王様の命令だよ~」

 ……俺の夜は、まだ終わらない。その後何があったかは、俺の名誉のためにもトップシークレットとさせていただく。

 

 

 

 

 

 

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