アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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 皆さま、あけましておめでとうございます。悠です。大変長らくお待たせいたしました。といっても、正直ストックと呼べるものは全くなく、不定期更新になってしまうとは思いますが。兎にも角にも一話出さないと、筆が進まない、ということで一話投稿いたします。


第五期第一話「ジェネックス開幕!」

アルカナ~切り札の騎士~

第五期第一話「ジェネックス開幕!」

 

 

 

 

 終焉に端を発する一連の戦いに決着を付け、無事人間界に戻った俺たちは、クロノス臨時校長に休学解除の手続きをしてもらうため、アカデミアの校長室を訪れていた。

「今はそれどころではないのでア~ル!」

「マズイノ~ネマズイノ~ネ! 鮫島校長が、帰ってきてしまったノ~ネ!」

「え? 鮫島校長が?」

「レッド寮廃止や、ホワイト寮問題が発覚したら、吾輩たちの首が……」

「……いや、そりゃ完全に自業自得だろ」

「黙るのでア~ル! そもそもお前たちレッドの落ちこぼれ共が、無駄に抵抗しなければ済んだ話なのでア~ル!」

「んな無茶苦茶な……」

「興味深いお話ですね」

「あ、鮫島校長先生~」

「「っ!?」」

 校長室に入ってきた鮫島校長の姿を見て、クロノス先生とナポレオン教頭が抱き合ってすくみ上がる。

「そんなに怯えるなら、最初からやらなきゃいいのに……」

「しかしまあ、その話は一先ず置いておくとしよう。まずは、セツ君たちの休学手続きの取り下げだね」

「あ、そのことなんですが……」

 俺は鮫島校長に、退学しようと思っている旨を伝えた。

「少々事情がありまして、親と絶縁状態で……学費の工面が難しそうなので、退学させてもらおうかと思っているんです」

 鮫島校長は、それを聞いて目を丸くした。

「そうなのですか? いやしかし、さだめ君は……」

「さだめは、今までどおり、通わせてやってください。学費については、俺が何とかしますので」

 幸い、蓄えはあるし、しばらく食っていくぐらいなら問題ない。イザとなったら、こういっちゃなんだが稼ぐ手段は幾らでもあるしな。

「実は、丸藤プロから推薦も受け取っておりまして、スポンサーの目星もついていますので、退学後は、各地の大会で実績と経験を積みつつ、プロテストを受けてみようかと……」

 亮さんからの推薦はもらっているが、かといって俺は無名。なんの実績も持っていないので、すぐにプロになることはできないだろう。スポンサーは希望がやってくれるらしいので、そちらは問題ないのだが。

「そうですか……ですがそれなら、もう少し待ってみるのはどうでしょう?」

「どういうことですか?」

「実は、君たち生徒にはこれから講堂に集まってもらって話す予定だったのですが、これからこの学園では、世界中の著名なデュエリストをプロ・アマ問わず、集めたジェネレーション・ネクスト……略してジェネックスの大会が行なわれることになったのです。実績を積む、ということならば、プロも参加するこのジェネックスに参加し、結果を残せれば、それは十分な実績になるでしょう」

「ジェネックスの大会……」

「更に、その大会に見事優勝すれば、私が、私の持つ権限の及ぶ範囲で願いを叶えましょう。それは、さだめ君の学費を全て私が工面するでも、すぐさまプロテストを受けられるよう手配することでもいい。どうかね?」

「それは……願ってもないことですが」

「他の皆も、もし願いがあるのならこぞって参加するといい。このジェネックスは、アカデミア高等部生全員に参加資格が与えられる。詳しいことは、後ほど大講堂で話すがね」

「……つーことは、あれか。ここにいる全員がライバルってこと、だよな?」

 剣士が、俺たちを見渡して言う。

「なるほど……ガチンコだね」

 ものすごく楽しげに、さだめ。

「セツ、私も遠慮はしませんからね!」

「……正直な話、アテナにだけは手を抜いて欲しいと思う俺がいるが……まあ、そうだな。本気でデュエルして、勝ち上がれるようじゃなきゃ、プロになっても芽は出ないよな」

 まあ、それでも尚アテナは敵に回したくないが。

「兎に角、詳しいことは大講堂で。セツ君に限らず、全ての生徒たちにとっても実りある大会になることを願うよ」

「それは、俺たちも同じです」

 結局、俺たちは俺も含めた全員の休学手続きを解除する手続きを行い、大講堂へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「おおーっ! セツじゃねーか!」

「十代か!」

 その途中、久しぶりに十代と翔、それに剣山と出会った。

「お、自称一番くんじゃん。お久~」

「へっ、アンタがいない間に、一年の主席の座はオレがもらったドン」

「あっそ。んじゃ、すぐ取り返してあげるからね」

「やれるもんならやってみるドン! がるるるるっ!」

「だからそれ怖いってば」

 さだめも、何だかんだ一年で上手くやれているようである。

「そういや、セツたちは知ってるか? なんか鮫島校長が帰ってきて、話があるらしいんだけどさ」

「ああ……ま、一応な。さっき校長室であったから」

「マジ? なら教えてくれよ」

「いや、どうせ今から大講堂で説明があるんだ。態々先にネタバレすることもないだろう……にしても」

 俺は十代から視線を外し、周囲を見渡した。

「ん? どうしたんだ?」

「いや……少し留守にしてる間に、白いのが増えたなと思ってな」

「ああ……」

 オシリス・レッド、ラー・イエロー、オベリスク・ブルーの三色に加え、純白の制服を着た生徒たち。ナポレオン教頭が口を滑らせていた“ホワイト寮”問題。その実態だ。

「…………」

 俺は、希冴姫が死んだときに呟いた言葉と、希望からの情報により、それがなんなのかを知っている。破滅の光という、終焉の闇と対を為すような世界の危機が、今もこうしてアカデミアに迫っている。

「明日香や万丈目も相変わらずだしさ。な~んか変なんだよな。最近」

 しかし、俺はそれに手を出せない。何故なら、終焉の闇を打倒するのが、俺でなければならなかったように、破滅の光を打ち破るのは、正しき闇の力を持つデュエリスト……遊城十代でなければならないからだ。

「お前は……!?」

「ん?」

 カツカツと靴を鳴らして近寄ってきたのは、いつかのエド・フェニックスだ。険しい表情をしているが、敵意と言うほどのものは感じない。

「……今までどこへ行っていた」

「ま、ちょっとな」

 まさか異世界で世界の終焉を防いでましたと言うわけにもいかず、適当に誤魔化す。俺としては、既にコイツに隔意はないのだが、エドとしてはどうかね?

「……君ほどのデュエルタクティクスがあれば、すぐにでもプロの世界に飛び込めるはずだ」

「うん?」

「何故、こんなところで燻っている?」

「何故って……そりゃ、俺には実績がないからな」

 エドが何を言いたいのか、イマイチよくわからないが、どうやらエドとしても、俺に対して然程の悪感情はないらしい。意外と言えば意外だ。

「ま、とりあえずこれから実績積んで、プロになろうとは思ってるよ。亮さんに推薦も貰ってるしな」

「……そうか。なら僕からも推薦を出しておく。早くプロに上がってこい」

「そりゃありがたいが……どういう風の吹き回しだ?」

 ぶっちゃけコイツには、いきなり因縁吹っかけてプライドをフルボッコにしてきたムカつく敵……ぐらいに思われてても仕方ないと思うんだが。

「別に……君のことは公式戦で叩き潰して見せる。僕と父さんのD-HEROが最強であると証明するためにも、君にはプロになってもらう……それと」

 エドは周囲を見渡して、誰か探しているようだった。

「……あの時の騎士に伝えておけ。僕は僕の目的を果たす。だが、絶望と運命にだけ身を任せるのはやめることにした、とな」

 あの時の騎士、とはエースのことだろう。

「……ああ。伝えておく」

「それだけだ」

 本当にそれだけ言ってエドは立ち去った。さだめが後ろで「なにあのツンデレ……」とか呟いているが、努めて無視しよう。

 そうこうしているうちに、俺たちは大講堂へ到着し、適当に席に着く。まもなく生徒全員が集まり、朝礼が始まった。

「久しぶりだね。諸君」

 鮫島校長の挨拶から始まったジェネレーション・ネクスト……略してジェネックスの大会は、概ね歓迎の意を持って迎えられた。主に十代のようなデュエル馬鹿に、だが。多くの一般生徒は、プロやセミプロも参加することに萎縮しているようだったし、大会の形式がバトルロイヤル形式だったため、早くも十代あたりは警戒目線で見られている。

「お兄ちゃんも人のこと言えないよ?」

「……お前もな」

 というか俺たち全員距離を取られている気がしないでもない。特にアテナ。一部レッド生はメダルを献上するくらいの覚悟が見て取れる辺り、アテナの人気は既にカルト教団まがいのところまで来ているらしいことがわかる。

「セツはどうするんですか?」

「うん? まあ適当にやるさ。挑まれたら断らないし、なければ自分から挑むことにする。幸い、その日最初の申し込みは断れないルールらしいし」

「つまり、オレら相手でもやるってことか?」

「当然だ。強いだろう相手から逃げて、プロでやってけるはずもないからな」

「なら、楽しみにさせてもらうぜ」

「ん? いきなりやったりはしないのか?」

「それじゃ面白くねえだろ? 逃げるつもりはないが、いきなりメインディッシュじゃ場が白ける」

「ま、それならそれでいいけどな。負けるなよ?」

「任せろ」

「じゃ、この大会中は各自別行動ってことで!」

 まとめるようにそういったさだめの言葉に頷き、俺たちは一旦解散する。大会自体は明日からだが、とりあえず今日一日はデッキ調整で潰れるだろう。俺としても、希望に勝利した時のデッキがベストだったとは思わない。いや、あの時はあれでベストだったかもしれないが、この大会に於いては少々調整を要するだろう。

「あ、そうだユーキちゃん」

「…………」

「ユーキちゃん?」

「え? あ、ど、どうしたのセツくん」

「いや、こっちこそどうしたの、なんだけど……」

「ううん。別に何でもないよ~。ちょっとぼーっとしてただけ~」

「そうか? ならいいんだけど……エンヴィーのこと、頼むな」

 エンヴィーは今、ユーキちゃんの中にいる。俺たちとの戦いと、希望を救うために力を使い果たしたエンヴィーは、あの戦いの後すぐに倒れてしまった。元々、実体を得てからそう経っていなかった上であれだけの修羅場を潜ったため、体が保たなかったのだ。

「あ、うん。任せて~」

 あわや消滅の危機だったエンヴィーを、俺の繋ぐ力で命と存在を繋ぎ留め(希望曰く、望めば大抵のことは現実に繋げられるらしい。チートか)、最も相性が良かったユーキちゃんと一時的に融合することで力の回復を図ったのだ。

「エンヴィーのこともそうだが……ユーキちゃん自身も、何かあったらすぐに言ってくれ。もう終焉じゃないとはいえ、何があるかわからないからな」

 そう。エンヴィーはもう終焉じゃなくなった。正確には、世界の新生により、エンヴィーに集まるバグやウィルスは片っ端から浄化されていく上、そもそも発生する量が減ったのだ。だから、エンヴィーが力を回復する、と言っても決してそれは危険じゃない、筈だが、何といっても前例があるわけでもないので、要観察と言ったところだ。

「うん。わかってる。心配してくれてありがとう」

 尚、さだめではなくユーキちゃんが最も相性が良かったのは、最終的に本体が定着する際の宿主だったことや、双方の信頼が最も強かったからだ。実体化してからずっとユーキちゃんと過ごしていたエンヴィーは元より、ユーキちゃんも、エンヴィーを再び内に入れることに、なんの躊躇いもなかった。

「わたしのことより、セツくんは自分の心配をしてね~? まだ病み上がりなんだから」

「わかってるよ」

 俺自身、あの戦いであまりにもダメージを受け過ぎた。傷自体は、多少後が残る程度で、ルインたちによって完治しているが、内面まで徹ったダメージまでは完治したとは言い難い。ルイン曰く、しばらくは運動も控えたほうがいいらしいくらいにはボロボロだった。

「けどまあ、俺は知っての通り頑丈だからな。無理しなきゃ大丈夫だよ」

「……その無茶をしそうだから、心配してるんだよ~?」

「ははは……」

 否定出来なかった。いや、否定したいのは山々だが、これまでの実績から、どう足掻いても信用してもらえないだろう。

「ははは、じゃないよ~!」

「悪かったって。もしなんかあったら、その時は皆に頼る。約束だ」

「……うん。約束」

 軽く指切りを交わして、俺はユーキちゃんと別れて部屋(というかテントだが)に戻った。

 

 

 

 

 

「……しかし、改めて考えると、皆を相手にしなくちゃいけないってのはキツいな」

 心情的に、ということではない。今までのような生死を懸けた戦いではなく、純粋にデュエリストとしてのデュエルなのだから、特に引っかかるものはない。むしろ望むところだ。

「どいつもこいつも強いしな……」

 そう。問題は全員、今戦ったところで勝てると断言できない程に熟達したデュエリストであることだ。勿論、それはそれで望むところではあるのだが、プロへの進退も掛かってくる関係上、負けるわけにはいかない。

「みんなには悪いが……勝たせてもらうぞ」

 テントの中で一人決意する。

『当然だ。何のために我らがいると思っている』

『エースに同感ですわ。セツ様の勝利のため、存分にわたくしたちをお使いくださいな』

「ああ。頼りにしてるよ」

 二人の精霊の励ましの言葉に笑顔で頷く。そうだ。切り札の騎士に弱音は禁物。俺の望む未来のために、騎士たちの力を引き出してみせる。

「……で、どうしてルインはそっちで拗ねてるんだ?」

「……だって」

 殆ど表情が変わらないなりに、ぶすっとした感じのルインがテントの隅で体育座りをしている。

「今回、どう考えてもわたしの出番はない」

「あ~そういうことか」

 言われてみればその通りで、今回はルインの出番は殆どないかもしれない。誰かの使うデッキの精霊ということもなければ、当然アカデミアの生徒でもない。そもそも戸籍もない。大会への出場資格なんかも、やっぱりない。

「……まあ、いい。折角だから、私は貴方と一緒に回る」

「別にいいけど、それはそれで他のみんなが文句を言いそうだな……」

 特に、アテナとさだめ。

「っと、そういえば……そのみんなは今頃どうしてるかな」

 アカデミアで別れてから顔を見ていない仲間たちを想う。きっとそれぞれに、明日以降に備えているはずだ。

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 私はデッキ調整を一通り終わらせ、一息つきました。

『で、どうなんアテナ? セツとはちゃんと、本気で戦うの?』

「当たり前じゃないですか。ここで手を抜いたりしたら、それこそセツに嫌われちゃいます」

 セツがプロになるのを止めたい、というわけではありません。私もセツも、一人のデュエリストです。お互い正々堂々、全力でぶつかってこそ、セツをプロとして見送ることが出来る……そう思います。

『ふぅん……で、セツがプロになってもいいの?』

「それこそ、当たり前です」

 そりゃあ、セツがプロになって学園を辞めてしまうのは寂しいですけど、どのみちあと一年で卒業です。会えなくなるわけでもないですし、セツの能力を考えれば地球上、いえ、異世界まで含めて距離なんて関係なく会えます。

「そもそも、セツがプロになるのは、さだめさんメインとはいえ、私たちのためでもあるんですから、反対する理由がありません」

 セツのことですから、さだめさんの学費や生活費を稼ぐだけじゃ飽き足らず、私たちが卒業した後のこととか、そういうのも込み込みで資金稼ぎをしてくれるはずです。

「そうなったら、私たちとセツで住む家とかも買ったり、そ、その……け、結婚指輪とか……えへへ」

『あ~……つまりいつもの色ボケなのね……ホントにこの子、これでいいのかしらん……?』

 

 

 

 

 

「よっし完成! 完璧!」

『オ~……やっと終わりかヨ』

『お疲れ様でした。さだめさん』

「ま、これはあくまでも基本形……あとは相手に合わせてメタる用のサイド作りかな」

『やっぱメタかヨ』

『……たまにはこう、正々堂々とデュエルするつもりは……』

「ない!」

『即答ですか!?』

「そんなんさだめらしくないしね。まあプロとかも出るらしいし? そういう人のデッキメタりまくって心折るのも楽しそうだし?」

『相変わらずだナ』

「そりゃあ、それがさだめだもん。あとは、そうだなぁ……アテナ用のデッキでも作っとこうかな」

『あ、じゃあアテナさんとデュエルするつもりなんですね?』

「まあね。アテナのことだし、空気も読まずにお兄ちゃん相手にワンキルとかしてプロへの道閉ざしたりしそうだし」

『別に、そうなったらそうなったでいいンじゃねェの? セツの奴だって、そうなったら素直に別の方法を探すだろうしヨ』

「そりゃあそうだけど、さだめとしては、お兄ちゃんの道を邪魔したくないんだよ。さだめのため、とはいえお兄ちゃんがやっと自分の道を歩けるようになるんだから」

 これまで、お兄ちゃんが色んなスキルを極めながらも、特定の部活に入ったりしなかったのは、結局さだめから離れることができなかったからだ。

「さだめは、お兄ちゃんを縛る鎖だった」

 だからこそ、さだめはお兄ちゃんがプロになるのを絶対に邪魔したくない。むしろ積極的に送り出して、さだめはもう大丈夫。お兄ちゃんが傍にいなくても、しっかりやっていけるよって、お兄ちゃんに伝えたい。

「だから、そのための障害は全部取り除く。さだめは、お兄ちゃんとはデュエルしない。お兄ちゃんは嫌がるかもしれないけど、それがさだめの選択」

『……ま、お前がそう言うなら、それでいいけどヨ』

『それも選択……ですね』

「そういうこと! だから、お兄ちゃん以外は全部ぶっ倒すくらいのつもりで行くよ!」

 

 

 

 

 

「……まあ、こんなもんだろ」

 オレは、自室でデッキを確認し、デュエルディスクにセットする。

『お? 終わったか。どうだ調子は』

「どうもこうもねえよ。まだなんも始まってねえだろ」

 人の部屋で勝手に筋トレしていた(正確には精霊界にいるのだが)ネイキッドにそう答える。

「だがまあ、前日に出来ることはやった。後はなるようになれだ」

『ふっふっふ……楽しみだな。セツたちは皆、いずれも劣らぬ強者たち。無論、プロやセミプロと言った他の強者も多く出場するだろう。この大会は、必ず剣士の糧になる』

「なる、じゃねえ。するんだよ」

 そうだ。デュエルだけじゃねえ。経験を糧にできるかどうかは、その経験を積む奴次第……。オレは必ず、経験を余すところなく糧にしてみせる。

「見てろよ……風丸」

 『風帝ライザー』のカードに誓う。オレは、強くなってみせる。いつかお前と、もう一度戦うときのために、な。

 

 

 

 

「よし、こんなものかな?」

『できたの?』

「うん。これが今、私が作れる最高のデッキ」

 部屋で寛いでいた(ように見える)エリアの問いかけに笑顔で答える。

「エリアルも、頑張ってもらうからね」

『は、はいっ! あ、あたしに出来ることなら喜んでっ!』

 精霊界でのラストデュエルで負った怪我もすっかり治ったエリアルがそう答える。エリアルも、あのデュエルの後から変わった。気が弱いのは変わらないけど、積極性というか、前向きになってきた気がする。

「エリアも、お願いね」

『改めて言うことじゃないでしょう』

 こちらを一瞥もせずに答えるエリアだけど、別に冷たいわけじゃない。こういう反応にも慣れちゃったけど、エリアは素直じゃないだけだから、気にしない。

『けど、勝てるの?』

「う~ん……出来る限りのことはするつもりだけど」

 正直、客観的に見て私の実力は仲間内では最も低い、と言わざるを得ない。特に、セツ先輩やアテナ、さだめの三人に関しては、勝てるビジョンが全く浮かばない。いや、さだめには勝ったことあるけど、あれ殆ど自滅だったから……。

「逆に言えば、悩まずに全力が出せるってことでもあるから、そんなに悪くないけどね」

 この大会には、セツ先輩の進退も関わってる。アテナやさだめは、その分先輩に対して全力を出すことが出来るかわからないけど、私は違う。十中八九勝てないからこそ、全力で戦える。

「出来れば……剣士さんにリベンジしたい、かな?」

『え?』

『あら、いいの? 想い人倒しちゃって』

「いいの。剣士さん、そんなことで私を嫌ったりしないし……強くなったなって、言ってくれるかもしれないし」

 そう。その一言が欲しい。セツ先輩や、アテナたちを見ていて、特に思った。守られているだけの女の子でいたくない。逆に守れるくらいに、強くなりたい。

「だから、剣士さんにリベンジして、強くなったなって言わせてみせる。そのために、この大会は頑張る」

『そう。じゃあそうしなさい。私たちも、出来る限りサポートするわ』

『が、頑張ります!』

「うん。頑張ろう!」

 

 

 

 

『ねえユーキ。まだ寝ないの?』

「あはは、うん。もうちょっとね~」

 自分の内側から響く、ちょっとだけ心配そうな声音に笑顔で答える。

『でもすっごいね! デュエルって、こんなに大変な準備しなくちゃいけないんだ』

 目を丸くして眺めている様子が手に取るようにわかる、そんなエンヴィーの声に、わたしは苦笑する。

「実際は、こんなにいっぱい使わないけどね~」

 ブルー女子寮のわたしの部屋。その床一面にずらりと並べられたカードに、パソコンの画面に表示された大量のカード情報。加えてわたしの知っている限りのセツくんたちだけが持つ特殊なカードの情報が記されたノート。

 当然のことながら、全てのカードをこの大会で使うようなことはないし、そもそもわたしの持っていないカードもパソコンに出している。ならば何故、こんなに沢山のカードが並べてあるのかと言えば……。

「この大会に参加するプロや、セツくんたち。歴戦のデュエリストたちが持つコンボやタクティクス。それを少しでも多く頭に入れておかないといけないから」

 わたしには、才能がない。正確には、人並みにしか、ない。そして、人並みの才能では、セツくんやさだめちゃん。アテナちゃんのような才能に溢れたデュエリストには勝てない。なら、そんな人たちに勝つには?……全てを利用するしかない。情報、心理、視線、果ては服装や指先のちょっとした動きまで……全てを。もちろん、それだって簡単じゃない。

「だから、考えるんだ」

 思考して考察して思案して……絶えず頭を働かせ続けて初めて、天才の領域に片手を伸ばせる。

「わたしは……」

 想う。

「わたしは……」

 強く、なりたい。

「わたしは……」

 勝ちたい。

 

 

 

 

 

 

 

 










 さて、前書きの方でも言いましたが、ストックはありません。いや、こんだけ時間空けてストックないとかどういうことだよおい、というのは尤もなのですが、正直メインストーリー完結ということで燃え尽きてました。プロットだけはあるので、なんとか書いていきたいですが、冬の間は本気で時間がありません。月一で出せたら御の字レベル。そのため結局またお待たせしてしまうとは思いますが、ここからは後日談扱いなので、気長に待っていただけると助かります。

 と、その辺はおいておいて、第五期です。メインとなるキャラは、この一話でも大体想像つくかと思いますが、そうです。あの娘です。しばらく出番ないけど。あ、それとセツが地味にチート能力もってますが、気にしないでください。本筋が終わった今、特に活躍する場面もないので。
 第二話くらいは割とすぐ出せると思いますので、またお会いしましょう。
 それでは、悠でした!
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