アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第三話「偽ラブレター事件! アテナとのデュエル」

アルカナ~切り札の騎士~

第三話「偽ラブレター事件! アテナとのデュエル」

 

 

 

 

 試験の結果、俺は十代たちと同じオシリス・レッドに配属されることに。

 ……何故。華麗なワンキル決めたのに!……なんか筆記試験の結果が十代以下だったらしい。バカな!? 実際に受ければ三沢にだって負ける気しないのに!

「まあ、愚痴ってもしゃーなし、だな。むしろ三沢くらいしか知り合いのいないラー・イエローに入れられなくてよかった、としよう」

 うむ。ポジティブポジティブ。

「……にしても、翔のやつ遅いな」

「あーそういや、今日一日ずっとトリップしてたよな」

 この世の春一人占め! ってな具合に。つーと今日はあれか、十代が明日香フラグ立てる日か←ギャルゲー脳。

 ……しかし、原作じゃあ冤罪だったけど、もし本当に覗いててアテナも覗かれてたりしたら……うむ、そのときは明日香側に着こう。むしろ率先して吊るしあげてくれる。

 ピッピー、ピッピーと電子音。一つは十代のから。もう一つは俺のから。

「ん……アテナだな」

「お、おいセツ大変だ!」

 アテナのメールを開こうとしたときに十代が血相を変えてこっちに通信機を近づけてきた。

『マルフジショウハアズカッテイル。カエシテホシクバ、ジョシリョウマデコラレタシ』

「むぅ……つまり、翔が誘拐でもされたのか?」

「かもしれねえ……オレ、迎えに行ってくる!」

「ちょい待ち! 俺んトコにもほぼ同時にメールが来たんだし、こっちも見てみよう」

「……それはいつものラブコールだろ?」

「……一応聞け」

 十代の茶化をスルーし、アテナからのメールを開く。

『セツ、今平気ですか? その、ちょっと話があるので、できれば今から女子寮の方に来てくれませんか?』

「やっぱいつものラブ……」

「いつも女子寮に呼び出されてたまるか!……明らかに関係してるっての」

 まさか……まさか翔の奴……やっちまったか? やっちまったのか? だとしたら生かしちゃおけねえ。が、まだ信じておいてやろう……今のところはな。

 

 

 

 とりあえず、十代と二人でえっちらおっちらボートを漕いでブルー女子寮へ。

 そこには案の定、両手を縛られた翔を囲むようにして明日香とその取り巻きである枕田ジュンコと浜口ももえ、そしてアテナがいた。

「アニキ~セツ君~」

「翔! これは一体どういうことなんだよ!」

「それが、話せば長くなるようなならないような……」

「こいつが女子寮の風呂を覗いたのよ」

「なんだって?」

「だから覗いてないって!」

 原作通りならそうなんだろうが……。

「それが学校にバレたらきっと退学ですわ~」

「そんな~!」

「そこで、提案なんだけど……」

 明日香が俺たちを指さしてきた。人を指差しちゃいけないんだぞ。

「私たちとデュエルしなさい。貴方達が勝ったらこのことは水に流してあげるわ」

 揉め事はデュエルで解決。いいねー平和だねー。しかし……。

「私と十代、後御堂君は……アテナとね」

「は、はい! よろしくお願いしますセ……」

「ちょい待ち!」

「なに? 何か問題でも?」

 大アリだ。この返答如何で、俺はそっちの味方に着くからな。

「アテナ……お前も覗かれた、のか?」

「へ? あ、いえそれはその……」

「その返答次第では……俺はむしろ率先して翔を吊るし上げる側に回ることに……」

「ちょ!? 違うッス! 僕はやってないッスよ~!」

「本当か? 天地神明、お天道様に誓えるか? 己がデュエリスト魂に賭けて自分は清廉潔白だと主張できるか?」

「え? せ、セツ君?」

「あいわかった俺はそっちに「わ~! 誓うッス! 主張するッスよ~!」……いいだろう。お前を信じよう」

 始めからわかってました的な笑顔を見せてやる。

「お前、性格悪いぞー」

「いや、わりぃ。流石に告白までしてくれた娘の風呂覗かれてたら俺だって向こう側に着くことになるのは当然だろぃ」

 

 

 

「……よかったじゃない。結構普通に愛されてるわよあなた」

「はぅぅ……セツ……」

「くっ! なんか妬ましいわ!」

「御堂さんも中々のイケメンですしね~」

 ……向こうは向こうでなにやら騒がしいが、ともかく。

「じゃあデュエルは十代と天上院。俺とアテナか? いや、当事者がデュエルなしってのもおかしな話か。んじゃ、そっちは残りの二人からどっちか選出してくれ」

「そうね。確かにそれは妥当な提案だわ」

「じゃあ、3VS3で二本先取のチーム戦ってことでおk?」

「ええ。それで構わないわ」

「まあなんでもいいや! 待ってろ翔! お前の無実はオレたちで晴らしてやるからな!」

「うぅ~ありがとうアニキ~」

「しゃ~ねえ。まあアテナとのデュエルってのは面白そうだし、俺も頑張ってやらぁ」

 これも本音だ。あの『アテナバーン』チックなデッキにはかなり興味がある。明日香と十代は……多分原作通り『サンダー・ジャイアント』で勝つだろ。で、俺が勝てばそれでお仕舞い。けど、アテナの奴も強いしな。下手すりゃ翔までもつれ込む。……うん? もしかしてもつれ込んだ方がいいのか? だってそもそも当事者は翔なんだし……まあ、それで翔が退学になっても寝覚め悪いし、勝つに越したことはないだろ。

「「デュエル!!」」

 おっ、始まった始まった。とりあえず観戦観戦。

 

 

 

しっかし、改めてみるとなんという運ゲー。戦略云々よりも『引き』の強さが第一じゃね? そら十代強いわ。毎ターンディスティニードローみたいなやつだし。

 そうこう言う間にとっとと終盤。

「一気に決めるぜ!『サンダー・ジャイアント』の特殊効果発動!『サイバーブレイダー』を破壊! そして相手プレイヤーにダイレクトアタックだ!『ヴォルテック・サンダー』!!」

「あぁぁぁ!」

「明日香さん!」

「大丈夫でございますか?」

 おおー決まった決まった。さて、次は俺の番だな。

「うし。ナイス十代! これでプレッシャーなしに戦えるってもんだ」

「おう! 決めちまえ、セツ!」

「……いや、それはいいんだけどな。ここでもし俺が決めたら、翔は当事者のくせにデュエルしないというなんとも矛盾した結果になるんだが……」

「い、いいじゃないッスか! 細かいことは言いっこなしッスよ!」

「……貸し一だぞ」

 まあ、明日香の目的は翔がどうこうってより俺らの戦力調査だろうし、ぶっちゃけ翔がどうなろうと構わないんだろうな。

「よっし、そんじゃあアテナ! やろうぜ」

 しっかりとアテナを見据えて、デュエルディスクを展開する。

「……ひゃ~」

「ん? どした」

「あらあら、御堂さんっていざデュエルとなると顔つきが変わってイケメンレベルが増しますわね♪ 思わず見惚れてしまいますわ~」

 ……そんな嬉し恥ずかしな評価はやめてくれ。ある意味それって顔芸扱いされてる気分になるから。

「ん、んんっ! ほらアテナ。いつまでも惚けてないで、しゃきっとしなさい!」

「……っは!?」

 アテナ起動。

「す、すみません。……それでは一戦、お願いします!」

 !……ははっ。

「お前も、いつもとは顔つき違うぜ。プレッシャー感じるよ」

「光栄です。ボケっとしたままじゃ、カードに失礼ですからね」

 ……やべっ、こいつ改めて良い女かもしれん。

「んじゃ、俺も手加減なしだ。文句ねえよな」

「はい。正々堂々、全力で!」

「「デュエル!!」」

 セツLP4000

 アテナLP4000

「つーことで先攻もらうぜ! ドロー!」

 全力でってんならレディーファーストもなにもねえな!

「魔法カード『増援』発動! デッキから『クィーンズ・ナイト』を手札に加える!」

 『増援』は、デッキから星4以下の戦士族を手札に加える戦士族のサーチカードだ。『クィーンズ・ナイト』がなければ展開が始動しない俺のデッキには必須ともいえるカードである。

「! 来ましたね」

「手札から『切り込み隊長』を攻撃表示で召喚! 特殊効果発動!」

 『切り込み隊長』ATK1200

 『切り込み隊長』は召喚時に手札の四つ星以下のモンスターを特殊召喚できる上、自分以外の戦士族を攻撃対象から外してくれる戦士族のキーカード!

「『クィーンズ・ナイト』、来ますか!」

「ところがどっこい! 俺は『戦士ラーズ』を攻撃表示で特殊召喚! 効果発動!」

 『戦士ラーズ』ATK1600

 『戦士ラーズ』は戦士族のサーチャー。四つ星以下の戦士をデッキの一番上に持ってくることができる。これだけだとドロー一回分のディスアドバンテージだが……。

「『キングス・ナイト』を選択し、デッキの一番上に! さらに手札から、『強欲な壺』を発動! デッキからカードを二枚ドロー!」

「……速い!」

 これでキングとクィーンが手札に揃った。あとは……。

「永続魔法『連合軍』! さらにカードを一枚セット、ターンエンドだ!」

 『切り込み隊長』ATK1200→1600

 『戦士ラーズ』ATK1600→2000

「すっげー! めちゃくちゃ良い感じじゃねーかセツ!」

「……とんでもないデッキ回りの良さね。強運もあるんでしょうけど、一枚一枚が無駄なく作用してる」

 確かに、試験の時といい今といい大した鬼引き。……メインキャラ補正か?

「……さすがセツですね。私も、負けてはいられません! ドロー!」

 さあて……どう回してくる? こっちの場は現在攻撃力1600の『切り込み隊長』に攻撃力2000の『戦士ラーズ』。攻撃力の高い天使デッキならなんとかなりそうなレベルではあるが……。

「『ヘカテリス』の効果発動! そのままヴァルハラ発動です! 呼び出すのは『光神テテュス』!」

 『光神テテュス』ATK2400

 アテナのフィールドに、一体の天使が現れる。あいつは確か、ドロー補助の上級天使!

「さらに『ジェルエンデュオ』を攻撃表示で召喚! 私も手札から『強欲な壺』を発動です!」

 『ジェルエンデュオ』ATK1700

 アテナはデッキからカードを二枚ドローする。

「私は『勝利の導き手フレイヤ』をオープンし、『光神テテュス』の効果でカードをドロー!『アテナ』をオープンし、さらにドロー!」

 っ! 『アテナ』が手札に行きやがった。しかもまだドローは継続中。

「『ヘカテリス』をオープン、ドロー!『シャインエンジェル』オープン、ドロー!」

 うわ、いつまで続くんだよ。

「ドローは終了します。バトルフェイズ!」

 来るか!

「『ジェルエンデュオ』で『切り込み隊長』に攻撃!『セイント・アタック・デュオ』!」

「トラップ発動!」

「!?」

 悪いな。そう簡単にはいかねえぜ!

「永続罠『血の代償』! ライフを500ポイント支払って手札から『クィーンズ・ナイト』を攻撃表示で召喚! さらに500支払って『キングス・ナイト』も召喚! 効果で『ジャックス・ナイト』を特殊召喚!」

セツLP4000→3500→3000

 『クィーンズ・ナイト』ATK1500→2500

 『キングス・ナイト』ATK1600→2600

 『ジャックス・ナイト』ATK2900

 『切り込み隊長』ATK1600→2200

 『戦士ラーズ』ATK2000→2600

 俺の場にトランプの三騎士が一気に並ぶ。流石に壮観だ。

「っ! 攻撃は巻き戻されます。私はカードを一枚セットしてターンを終了します」

 アテナは手札から溢れた『ヘカテリス』と『シャインエンジェル』を墓地に捨てる。

「すごい! すごいッス! いきなりモンスターが五体並んだッス!」

「けど、これで手札はあと一枚。ライフも消費したし、テテュスのおかげで手札が大量にあるアテナと、どっちが有利とは言えないわ」

 そうなんだよな~。手札が揃ってるのはいいんだけど、その分一気に使っちまうからな。もしアテナが伏せたのがミラーフォースとかだったら一発で覆されて終わっちまう。

「よっし、俺のターン、ドロー!」

 引いたカードは……『クィーンズ・ナイト』。

「……どうすっかなー?」

 全軍で攻撃すれば勝てる。テテュスは2400だし、テテュスを倒せれば『ジェルエンデュオ』は自壊してくれる。だが……。

「怖ぇ~な~あのリバースカード」

 あれが『聖なるバリア・ミラーフォース』や『閃光のバリア・シャイニングフォース』だと十中八九負け。『次元幽閉』や『万能地雷グレイモヤ』、『炸裂装甲(リアクティブアーマー)』で『ジャックス・ナイト』が除去されるのもやばい。LP的に『魔法の筒』も警戒対象だし……不確定要素が多すぎる。二枚ある手札もあんまし意味ないしここは……。

「……俺はターンエンドだ」

「え!? マジかよ!」

「なんで攻撃しないんスか!?」

「……賢明な判断ね」

「どういうことだよ明日香」

「あの一見絶対的に有利な状況は、実は罠カード一枚で簡単にひっくり返ってしまうのよ。ただでさえテテュスで豊富な手札があるアテナに、迂闊な攻撃はできないと判断したんでしょうね」

「天上院、その説明ずばり図星だよ」

 むしろ、ある意味では追いつめられているのは俺の方だ。遊戯さん曰く、『手札の数だけ可能性がある』だったか。それは逆に取れば、手札のない今の俺には可能性がない。そして手札の豊富なアテナには大量の可能性があるってこった。

「アテナは間違いなく最高クラスのデュエリストだ。イノシシみたく突進するだけで勝てるとは思えねえよ」

 とはいえ、正直『アテナ』が出せる状況下であんまりもたもたしてはいられねえ。間違いなく次のターンアテナは『アテナ』を出してくる。その上、もし『ライトニングボルテックス』なんか食らったら一発で負け確定だ。ああクソ! なまじ知識があるから色々考えちまう。

「私のターン、ドロー!『コーリング・ノヴァ』オープン、追加でドロー!」

 ぬう。やっぱりテテュスはキツイ。あそこまで好き勝手ドローされるとなると早急に排除しなくちゃな。

「……う。私は『ジェルエンデュオ』を二体分の生贄としてリリースし、手札から『アテナ』を攻撃表示で召喚します」

『アテナ』ATK2600

 ……なんだ今の『う』は。もしかして、特に除去系カードがないのか? 確かにテテュスの効果の関係上、引けるのは殆どモンスターだが……。

「『アテナ』の効果を発動します! テテュスをリリースしてテテュスを蘇生! 効果で600ポイントのダメージです!」

「うあ!」

 セツLP3000→2400

「テテュスで『切り込み隊長』を攻撃! 『ホーリー・サルヴェイション』!」

「くそっ!」

 セツLP2400→2200

「『アテナ』で『クィーンズ・ナイト』を攻撃! 『ジャッジメント・レイ』!」

「うぅ!」

 セツLP2200→1900

 やば、そろそろキツイ……!

「ターンを終了します!」

 アテナは手札から溢れた『勝利の導き手フレイヤ』を墓地に捨てる。

「うわわわ……セツ君大丈夫かなぁ」

「どっちもすげえよ! まだ序盤のはずなのに終盤みたいな闘いしてやがる!」

「……ほんと、そういえばまだお互い二ターンしか経過してないのよね。どっちもすさまじい速攻デッキね」

 我ながら同感。つーかやばい。マジでやばい。どうにかしないと……。

「っく! 俺のターン、ドロー!」

 こいつは……。よし!

「なんとかしてやる! 魔法カード『悪魔への貢物』!」

 正直ギリギリだが、望みを繋いでやるさ!

「こいつはフィールドの特殊召喚されたモンスターを墓地に送って発動する! アテナの場の『光神テテュス』を墓地に送り、手札から『クィーンズ・ナイト』を攻撃表示で特殊召喚!」

 『クィーンズ・ナイト』ATK1500→2300

「テテュス!?」

 『悪魔への貢物』は条件こそ通常モンスター限定だが、ある意味ノーコストの『ディメンション・マジック』だ。ほんとならアテナに使いたかったが、アテナは普通にアドバンス召喚されているので使えない。

「さらにカードを一枚セット、ターンエンドだ!」

 これで手札は尽きた。次にアテナが何らかの除去カードを引いたら俺の負け。そうでないなら俺の次のターンに望みを繋げる!

「終わらせます! 私のターン、ドロー!」

 どうだ!?

「……私は『コーリング・ノヴァ』を攻撃表示で召喚します。『アテナ』の効果起動!」

 セツLP1900→1300

「『コーリング・ノヴァ』を墓地に送ってテテュスを復活! 『アテナ』の効果!」

 セツLP1300→700

「せ、セツ君……」

「……終わったわね」

「バトルフェイズ! テテュスで『クィーンズ・ナイト』を攻撃! 『ホーリー・サルヴェイション』!」

 セツLP700→600

「トラップ発動!」

 まだだ、まだ終わっちゃいねえ!

「『正統なる血統』! 墓地から『クィーンズ・ナイト』を蘇生!」

 『クィーンズ・ナイト』ATK1500→2300

「っ! 『アテナ』で『クィーンズ・ナイト』を攻撃!」

 すまん、クィーン。何度も何度も墓地送りにしちまう。

 セツLP600→300

「う……ターンエンドです」

「俺のターン……」

 どうする……正直、俺の勝てる目は薄い。アテナがいる以上、間違いなくこれがラストターンだし、手札はゼロ。フィールドには『ジャックス・ナイト』、『戦士ラーズ』、『キングス・ナイト』の三体。一番攻撃力の高い『ジャックス・ナイト』でも2500。『アテナ』には一歩届かない。モンスターを引ければ……だが、あの伏せカードは……。

 そこでふと、ジャックス・ナイトがこちらを見つめていることに気付く。コクリ、と頷かれる。

「……そうだな。普段バーンデッキとかばっか使ってるから、どうしてもビビっちまっていけねえ。けど……」

 攻撃しなけりゃ次のターンで『アテナ』にやられる。あの伏せカードは確かに怖いが……。

「アテナ……」

「……なんですか?」

「やっぱ、お前強いな。正直、ここまでとは思ってなかった」

「ありがとうございます。セツも強かったです。私の速攻にここまで着いてきたのはセツが初めてです。でも……」

「でも?」

「今回は、私の勝ちです」

「はは……」

 確かに、こりゃ絶望的な状況だ。けど……けどなアテナ。

「トランプの騎士に、後退の二文字はねえ!」

「!」

「俺のラストドロー!」

 っ! モンスター……じゃない! けど!

「すまん! またお前に頼る! 魔法カード『戦士の生還』! 墓地から呼び戻すのは『クィーンズ・ナイト』!」

 手札に呼び戻した『クィーンズ・ナイト』を、再び攻撃表示で召喚する。

 『クィーンズ・ナイト』ATK1500→2300

「っ! また……蘇生カード!?」

 蘇生はアテナ……お前だけのもんじゃねえ!

「悪かったな皆。俺はお前たちの『王』なのに……罠と決まったわけでもないリバースカードにビビっちまってよ! なあ十代! お前なら、さっきどうしたよ!?」

 俺が攻撃宣言するかどうかで勝敗が決定する……そんな状況下であいつが……。

「! 当然、攻撃だぜ!」

「だよなぁ! 前門の虎、後門の狼。それなら俺は前門に行く! 倒れるときは前のめり! 好きな言葉は全速前進! バトルフェイズ!」

 攻撃しないはずないよなぁ!

 頼もしい騎士たちが、その四つの剣を煌めかせる。

「『ジャックス・ナイト』!『アテナ』を攻撃! 『ブレイク・ソード』!」

「っあぁ!?」

 『ジャックス・ナイト』が『アテナ』を切り裂く。リバースカードは……発動しない!

 アテナLP3900

「『ジャックス・ナイト』に続け!『戦士ラーズ』の攻撃!『レギュラー・ソード』!」

 『戦士ラーズ』の剣がテテュスに突き刺さる。同時にテテュスの放った光弾がラーズを吹き飛ばす。

「犠牲を無駄にするなよ! キングとクィーンで、プレイヤーにダイレクトアタック!」

「そんな……ホントに、あの状況から……あぁぁぁぁぁっ!?」

 アテナLP0

「っしゃあ!」

 思わず思いっきりガッツポーズ!

「やったぜセツ!」

「めちゃくちゃすごかったッス!」

「おう! 半端なくギリギリだったけどな!」

 ああもうほんとにめっちゃその場凌ぎで後は十代バリの鬼引きでどうにかしたようなもんだ。危なかったぁぁぁ……。

「……負け、ちゃいました」

 アテナはどこかポカンとした様子で座り込んでいた。目をパチクリさせて、ちょっと可愛い。

「アテナ」

「あ……セツ……」

「ぶっちゃけ、最後ら辺はラッキードローだったよ。結局イノシシ戦法だったしな」

「……いえ、そもそも二ターン目、セツが攻撃していたらその時点で私の負けだったんです。私の、完敗ですよ」

「う……そいつは言わんでくれ……ビビった自分が情けなくなる」

 そう、あの俺のフィールドにモンスターが五体だったときに攻撃してれば多分、何の問題もなく勝負がついてた。結局あのリバースカードはブラフだったわけだし。

「いえ、あの場合躊躇するのが普通です。それを狙って伏せたんですから」

「そういやあのリバースカードはなんだったんだ?」

「『奇跡の降臨』です。ただ、手札に『神聖なる魂』が来なかったので、結局使わずじまいでしたけど」

「うげ。そいつは助かったな……」

「とりあえず……」

 十代が明日香の方を向く。

「これでオレたちの勝ちだぜ! 翔は返してもらうぞ!」

「……ええ、そうね。それが約束だもの」

「ア、アニキ~セツ君もありがとう~」

「明日香さん、いいんですか?」

「いいもなにも、そういう話だったんだもの。約束は守るわ」

「まあ明日香さんがそうおっしゃるのなら、わたくしにも否やはありませんわ~」

 よし、なんとか丸く収まりそうだな。

「それじゃ、もう門限も過ぎてることだし、見つからないよう帰るとしようか!」

「おう! じゃーな明日香! お前らもめちゃめちゃ強かったぜ!」

「……ええ。けど、今回は私たちの負け。次は負けないわ」

「楽しみにしてるぜ!」

 あ、そうだ。

「アテナ」

「はい、なんですか?」

「お前とのデュエル、楽しかったよ。好感度に+だ」

「へ……?」

「じゃあお休み!」

 なんか言われる前に速攻帰還! 全速力でオールを漕ぐ! 十代と翔がめっちゃニヤニヤしてるけど! そ、それくらいは必要経費だ(どっかの空気男っぽく)!

 そうして、偽ラブレター事件は俺が夜通しからかわれる形で幕を閉じた。……ちくせう。

 

 

 

 おまけ

「はぁうぅ~」

「ちょ、アテナ、しっかりしなさいよ!」

「……最後のセリフ、むしろアテナの好感度に+補正かかったわね……」

「わたくしの好感度にも+ですわ~。やっぱり良い殿方はああじゃありませんと~」

 

 

 

 




 一応突っ込まれる前に。いくつかこのデュエルにはミスというか、あれ? というところがありますが、展開の都合上と、セツにしろアテナにしろ入学したばかりでプレイングをミスすることもあるよ~というごく一般的な理由(言い訳)ですので出来れば気にしないでください。具体的には、2ターン目のテテュスで切り込み隊長倒せたし、そうしてればアテナ勝ってたじゃん、とか。
 それでは、レーネ……言い難いから悠で統一しますね。元々登録するときにユーザネーム一文字じゃだめだから戻しただけなので。
 改めて、それでは、悠でした!
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