アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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 今回、視点が結構コロコロ入れ替わるのでお気をつけください。


第二期第十話「らしくない」

アルカナ~切り札の騎士~

第二期第十話「らしくない」

 

 

 

 

 互いにデッキをシャッフルし、自らのデュエルディスクにセットする。

 その頃になると、血が上ってきた頭も大分冷え、冷静に相手のことを観察する余裕も出てきた。

(あいつも、ネイキッドのこと見えてやがんな……)

 口には出さなかったが、さっきネイキッドの方をちらっと見ていたのに気付いた。

(ってことはオレのデッキは読まれてるか……)

 しかし、その後にデッキを交換していた様子はなかったからメタデッキ使いじゃない。或いは元々自分に対するメタデッキだった可能性もあるにはあるが、可能性としては低いだろう。

(結局、やってみねえことには何もわかんねえか)

 ある意味当然ではある。ネイキッドの姿をみられている時点で情報アドバンテージは握られているのが痛いが。

「俺の名前は御堂切。セツって呼んでくれ。お前は?」

「……戦野剣士だ。好きに呼べよ」

「剣士な。先攻後攻はどうする?」

「テメエはどっちがいい」

「希望としては、先攻だな」

「んじゃオレが先攻だ」

「ありゃ」

 苦笑された。それもそうだろう。気を取り直して互いにデュエルディスクを構える。

「「デュエル!!」」

 セツLP4000

 剣士LP4000

「行くぞ! オレのターン、ドロー!」

 手札を確認。悪くない。

「オレは手札からフィールド魔法を発動する! これが、己が武勇を信じて剣を取る合戦の舞台!『侍の戦場』!」

 フィールドが折れた剣や矢が突き刺さった合戦の場へと変化する。

「『侍の戦場』? 聞いたことないな」

「このフィールドである限り、互いの戦士族モンスターは戦闘以外では破壊されねぇ!」

「!」

「そして戦士族モンスターの攻撃力と守備力は500ポイントアップする。オレは魔法カード『増援』の効果でデッキから『切り込み隊長』を手札に加える!『切り込み隊長』を召喚! 効果により、もう一体の『切り込み隊長』を特殊召喚!」

 『切り込み隊長』ATK1200→1700×2

「切り込みロック……! しかも……」

 『侍の戦場』が存在する限り、戦闘以外での除去ができない。

「ターンエンドだ!」

引きは上々。後は相手の戦法を見極め、それに応じた策を取る!

 

 

 

 いきなりデュエルを挑まれた時は一体何事かと思ったが……。

「俺のターン、ドロー!」

 俺の知らないカード。知らないキャラクター。色んな意味でのイレギュラー。しかも効果は強烈。救いは……。

「俺も戦士主体のデッキってことくらいか」

 ミラーマッチ。それならとりあえず攻撃力上昇効果は怖くない。相手に応じて自分のモンスターも強化されるからダイレクトアタックでもなければ怖くはない。それよりも気になるのは……。

「アテナ、なんでまたあいつと一緒にこんなところまで?」

 そっちだ。最初は展開が急すぎて気にならなかったが、よくよく考えれば見たこともない男と一緒にアテナがレッド寮に現れたことが気にかかる。

「あ、剣士さんは編入生の方なんですけど……レッド寮に行きたがっていたのでご案内したんです」

「……お前のその物怖じしない性格とか人懐っこさは嫌いじゃないが、ちょっとは警戒することも覚えろ」

 まあ、そんなことを言っても聞くアテナじゃないか。

「大丈夫ですよ。剣士さんは精霊を連れていましたし、良い人です!」

「……はぁ」

 ……ったく。人の気も知らないで。って、それは俺が言えたセリフじゃないか。

「……まあいいや。丁度いいから今回俺が心配させた成果、見せてやるよ」

 心配かけたんだし、せめて最初にそれぐらい見せてやっても罰は当たらないだろう。さだめが当たりそうだが。

「……罰の方が数段マシだな。……俺は手札から『切り札の騎士―クィーン』を攻撃表示で召喚! 出番だ! 希冴姫!」

 『切り札の騎士―クィーン』ATK1500→2000

 少しテンションが下がりつつも、俺は希冴姫を召喚する。

『はいっ!』

「トランプ……ナイト?」

「『切り札の騎士―クィーン』は、そのカード名を『クィーンズ・ナイト』としても扱う」

 言ってしまえばリメイクカードと大差ない。が、これにより……。

「俺は手札から『アルカナソード ハート』を『切り札の騎士―クィーン』に装備する!」

 希冴姫の持つ剣が深紅の飾り剣へと変化した。しかし、儀式剣なのか刃引きをされていて、攻撃能力はなさそうに思える。事実、希冴姫の攻撃力は500ポイントダウンしている。

 『切り札の騎士―クィーン』ATK2000→1500

「俺はカードを一枚セット。ターンを終了する」

「アルカナソード……これが、セツの新しい力ですか?」

「ま、そんなところだ」

 

 

 

 オレは内心舌打ちしていた。ミラーマッチでは『侍の戦場』の真価が発揮できない。しかも、あちらもまた自分の知らないカードで展開してきた。

「オレは手札から『召喚僧サモンプリースト』を召喚! 効果により守備表示に変更される。手札から『テラ・フォーミング』を捨てて効果発動! デッキから『コマンド・ナイト』を攻撃表示で特殊召喚する!」

 『召喚僧サモンプリースト』DEF1600

 『コマンド・ナイト』ATK1200→1600→2100

 『切り込み隊長』ATK1700→2100

「高速召喚!? 速い!」

「更に、オレは魔法カード『命削りの宝札』を発動! デッキからカードを五枚ドローする! ただし、自分のターンで数えて五ターン後、オレは手札を全て捨てる必要がある」

 デメリットも大きいように見えるが、この五ターンというのは意外と遠い。少なくとも、オレのデッキなら勝敗はどうあれ後五ターンもあれば決着は付くだろう。

(五ターンは必要ない! 速攻で決める!)

 カードを五枚ドローし、手札を確認する。

「オレは手札から永続魔法『連合軍』を発動! フィールド上に存在する戦士、魔法使い族の数×200ポイント戦士族の攻撃力を上げる! バトル!『切り込み隊長』でテメエの『切り札の騎士―クィーン』を攻撃!」

 『切り込み隊長』ATK2100→2900

 『コマンド・ナイト』ATK2100→2900

 あの装備カードやリバースカードは気になるが『侍の戦場』でミラーフォースも怖くない。まずは斥候を放って探りを入れる!

『はああああっ!』

『ふっ!』

 『切り込み隊長』が斬りかかるのを冷静に見極めた『切り札の騎士―クィーン』はその双剣を儀礼剣で受け止めた。

「なに!?」

「『アルカナソード ハート』の効果発動! このカードを装備したモンスターは戦闘によっては破壊されず、超過分の戦闘ダメージを無効にし、その分だけ自分はライフを回復する!」

「くそっ!」

 セツLP4000→5400

「ただし、このカードを装備したモンスターは攻撃宣言を行うことができない」

 例えそうでも、フィールドに残存することに意味がある『切り札の騎士―クィーン』。その上今はオレの『侍の戦場』が発動されている。

「まずったか……ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 

 

 

 ん。よし。とりあえず凌いだ。今回は相手のカードに助けられたな。

「にしても『命削りの宝札』か……チートドローだな……」

 見たところ相手のデッキは下級戦士族の大量展開による速攻。五ターン後に手札を捨てるデメリット効果なんてあってなきがごとしだろう。

「……俺は手札から『同族の絆』の効果を発動する。ライフを1000ポイント支払い、デッキから『切り札の騎士―クィーン』と同じ戦士族のレベル4以下モンスターを二体まで特殊召喚する! 俺が特殊召喚するのは『切り札の騎士―テンス』と『切り札の騎士―キング』!」

 セツLP5400→4400

 俺のフィールドに、寡黙な重装備の騎士といつもの老騎士が現れる。

 『切り札の騎士―キング』ATK1600→2100

 『切り札の騎士―テンス』DEF2000→2500

「そして『切り札の騎士―キング』の効果を発動! 場に『切り札の騎士―クィーン』が表側表示で存在するときに、このカードが召喚・特殊召喚・反転召喚された場合、デッキから『切り札の騎士―ジャック』を特殊召喚する!」

 『切り札の騎士―ジャック』ATK1900→2400

 切り札の騎士として、最も成長を遂げたと言っても良いのがこのキングだ。希冴姫と同じくカード名を『キングス・ナイト』としても扱う効果と併せて、かなり扱いやすい効果になった。

「テメエも高速召喚だと!?」

 とはいえ、あの切り込みロックはまだ破れない。あれを破るにはあのフィールド魔法を破壊するしか手はないんだが……くそ、先攻一ターン目だったからパーミッション出来なかったのが痛いな。

「セツ……また、希冴姫さんたちを使うようになったんですね」

「……ああ。詳しくは後で話すが、結構、色々あってな」

 そう、色々だ。脳裏にエースとのやり取りが思い起こされる。

「俺はカードを一枚セットしてターンエンド!」

 今はこのデュエルに集中しよう。そう簡単に勝たせてくれる相手でもなさそうだしな。

 

 

 

「オレのターン、ドロー!」

 本当にミラーマッチになるとは思わなかった。相手も自分と同じく下級モンスターを大量に展開することでフィールドを制圧するタイプ。

 だが、その割には攻撃力アップに値するカードがない。恐らくは、自分のような純正ビートダウンではなく特殊なコントロールビートの戦士デッキ……。

 さてどうするか。先ほどの戦闘では伏せカードを使用してこなかったが、それは恐らく『アルカナソード ハート』の効果があったからだろう。だとすればあれらのカードが攻撃を防ぐ系統のカードである可能性は少なくない。『侍の戦場』がある以上、ミラーフォースなどの破壊カードであるとは考えにくい。だとすれば『和睦の使者』や『威嚇する咆哮』などフリーチェーンの防御カード。或いは『攻撃の無力化』といった選択肢もあり得る。一番まずいのは『突進』や『収縮』などで迎撃されることだ。

(つーと、あの二枚残った手札も……)

 『オネスト』。その可能性も高い。いずれにせよ、ロックの要である『切り込み隊長』で攻撃することは躊躇われる。

「だが、攻めないのはもっとヤベえな」

 あの切り札の騎士とやらが『クィーンズ・ナイト』たち絵札の三銃士として扱われるなら、三体残しておくことは即ち『アルカナ ナイトジョーカー』の融合に繋がる。さっきのターンに融合しなかったということは、まだ手札に『融合』がないのかもしれないが。

「手札から魔法カード『ハリケーン』を発動! 互いの魔法・罠を全て手札に戻す!」

 これで戦端を開く!

 そう考えての『ハリケーン』だが……。

「よしっ!」

「!?」

 ガッツポーズをしたセツに、悪手を打ったか!? と戦慄する。

「カウンター罠『マジック・ジャマー』! 手札を一枚捨てることで魔法カードの発動を無効にし、破壊する!」

 なんだ、と安心した。ガッツポーズまで取るものだからよほどのことかと思えばただディスアドバンテージを負っただけ。だが……。

「俺が手札からコストとして捨てたのは『ジャム・ウォリアー』! こいつはカウンタートラップのコストとして墓地に送られた場合、デッキからカードを二枚ドローすることができる!」

「なんだと!?」

 ディスアドバンテージを回避してきた!? しかもリバースカードはそのまま残っている。

「ちっ……ソイツも聞いた事ねえ奴だぜ」

 兎も角、これでまた『オネスト』の危険性が増した。あんなカウンター罠専用のモンスターを入れているということは、相手は恐らく迎撃を得意とする後出しタイプ……それならなおのこと『オネスト』が怖い。

「くそっ……! それでも攻撃しないわけにはいかねえ! バトル!」

 ここで情けなくビビってエンド宣告だけはしたくない。デュエリストとしても、一人の男としても。

 ちらりとアテナの方を見る。こちらを見てはいるが、その意識は最初からずっと相手の男……セツに向いたままだ。

「クソっ! バトルフェイズ!『コマンド・ナイト』で『切り札の騎士―キング』を攻撃!『ブレイズソード』!」

 『コマンド・ナイト』の剣が炎に包まれ、セツの場の老騎士に向かう。

「『切り札の騎士―テンス』のモンスター効果発動! 自分の切り札の騎士が攻撃対象に選択されたとき、その対象をテンスに映すことができる!」

『キング殿! 俺の後ろに!』

『すまぬ!』

「更に、テンスが表側表示で存在する限り、切り札の騎士は一ターンに一度、戦闘では破壊されない!」

 テンスが『コマンド・ナイト』の炎の剣に押されながらも、ギリギリで踏みとどまる。

「ちっ! なら『切り込み隊長』でもう一度テンスに攻撃だ!」

『ぐぅぅぅぅぅっ!』

「くっ……テンス!」

「更に、もう一体の『切り込み隊長』で『切り札の騎士―キング』を攻撃!」

「これ以上はやらせない! 速攻魔法発動!」

「!」

 『突進』や『収縮』の類だったか!?

「『瞬間融合』!」

「なにっ!?」

「俺のフィールドから絵札の三銃士を墓地に送り、融合デッキから『アルカナ ナイトジョーカー』を選択して融合召喚! 来いっ!『アルカナ ナイトジョーカー』!」

『アルカナ ナイトジョーカー』ATK3800→4300

「クソッ……!」

みすみすアルカナの召喚を許しちまった!

 攻撃力3800。現在存在する最強クラスの戦士族モンスター……。

「なにやってんだ……! オレは……!」

 やることなすことが全て裏目に出ている。まったくいつものプレイングができていない。

「ガラにもねえ……」

 集中力が乱れているのを自覚する。焦っていた。最初の迂闊な攻撃も、さっきの『ハリケーン』も、そのどちらもがいつもの自分なら絶対にしないようなミス。その結果がこれだ。情けない。

「……ターンエンドだ!」

 とにかく、今は凌ぐしかない。幸いアルカナはこのターンで破壊される。切り札を無駄に消費させたと思えばいい。

「俺のターン、ドロー!」

 相手は冷静だ。最初こそ自分と一緒にいたアテナを気にしていたようだが、今はしっかり気持ちを切り替えてデュエルに集中している。

「まずは魔法カード『死者蘇生』! アルカナを復活させる!」

 『アルカナ ナイトジョーカー』ATK3800→4300

「ちっ……!」

 やはり蘇生カードを持っていたか。躊躇いなくアルカナを『瞬間融合』したと思えば、そういうことか。

「俺はカードを二枚セット。ターンエンドだ!」

 集中、集中しろ! 雑念を払え、ネイキッドの将たる自分を取り戻せ!

「あぁっ!」

 パァンっ!

「!」

「……っふぅー」

 思い切り両頬を叩く。衝撃で目の前がチカチカしたが、おかげで目が覚めた。

「ここからが本番だぜ……セツ!」

「……おう、来い! 剣士!」

「オレは手札から『簡易融合』を発動! ライフを1000ポイント支払ってエクストラデッキから『魔導騎士ギルティア』を攻撃表示で特殊召喚! 更に手札の『鉄の騎士 ギア・フリード』と『融合』! 来いっ!『鋼鉄の魔導騎士―ギルティギア・フリード』!」

 剣士LP4000→3000

『鋼鉄の魔導騎士―ギルティギア・フリード』ATK2700→4600

「ギルティギア!?」

 ギルティギアの攻撃力は『連合軍』と『コマンド・ナイト』『侍の戦場』によって強化されて4600。

「アルカナを上回って来た……!?」

「行くぞ!『鋼鉄の魔導騎士―ギルティギア・フリード』で『アルカナ ナイトジョーカー』を攻撃!『魔導鋼破斬』!」

「カウンター罠『攻撃の無力化』! バトルフェイズを終了する!」

「ちっ! ならオレはカードを一枚セットしてターンエンドだ!」

 流れは悪くなくなってきた。だがまだ相手のペースだ。

「……俺のターン、ドロー!」

 カードを引いたセツの目の色が変わる。仕掛けてくる気か!

「だが、そうはさせねえ! オレはリバースカード『王宮のお触れ』を発動! トラップを封じ込める!」

「! そっちこそ、やらせない! カウンター罠『魔宮の賄賂』! 無効化する!」

「クソッ! まだ、まだダメなのかよ!」

「そして、トラップを無効化したことで俺は手札からモンスター効果を発動する!」

「カウンターして効果発動……!? まさか!」

「来い!『冥王竜ヴァンダルギオン』! トラップをパーミッションした場合、カードを一枚破壊する! 俺が破壊するのは当然『侍の戦場』!」

 『冥王竜ヴァンダルギオン』ATK2800

「しまった……!」

 ロックが……崩れる!

 『切り込み隊長』ATK3100→2600×2

 『コマンド・ナイト』ATK3100→2600

 『鋼鉄の魔導騎士―ギルティギア・フリード』ATK4600→4100

 『アルカナ ナイトジョーカー』ATK4300→3800

「そして俺は手札から魔法カード『貪欲な壺』を発動! 墓地の『ジャム・ウォリアー』『切り札の騎士―テンス』『切り札の騎士―クィーン』『切り札の騎士―キング』『切り札の騎士―ジャック』の五体をデッキに戻し、デッキからカードを二枚ドローする!」

 しかも、ここに来て手札補充カード。引きも強い!

「これで最後だ……! 俺は手札から『ライトニング・ボルテックス』を発動! 手札一枚をコストに、剣士のモンスターを全て破壊する!」

「くっ!? だが『鋼鉄の魔導騎士―ギルティギア・フリード』は魔法・罠の効果によっては破壊されない……!」

『鋼鉄の魔導騎士―ギルティギア・フリード』ATK4100→2900

 それでも、焼け石に水だが。

「バトルフェイズ!『アルカナ ナイトジョーカー』で『鋼鉄の魔導騎士―ギルティギア・フリード』を攻撃!『ロイヤル・ストレート・スラッシュ』!」

「があっ……!」

 剣士LP2100

「トドメだ!『冥王竜ヴァンダルギオン』でプレイヤーにダイレクトアタック!『冥王葬々』!」

「ぐあああああああっ!?」

 剣士LP0

 

 

 

「大丈夫か?」

「……ああ」

 憮然とした表情で座り込んでいる剣士に手を貸す。

「お前、大分テンパってたろ?」

「……未完成のデッキ使ってた奴に言われたかねえよ」

「……バレてたのか」

 苦笑する。こいつは思った以上に頭が良い。観察力もある。

「未完成、ですか?」

「ああ、そのことも……」

「あーっ! なんかもう終わっちゃってる!」

「さだめ?」

 アテナに事情を説明しようとしたところでさだめが十代たちを引き連れて駆け寄ってきた。

「うおっホントにいたぜ!? すげえな妹さん……」

「さだめのお兄ちゃんレーダーは例え地球の裏側にいても感度良好!」

「でもさっきまではわかんなかったッスよね?」

「……異世界だとさすがにジャミングが酷くて……」

「……発信器か?」

「ううん。気配」

「お前は何者だ……」

「あと声。脳内に響いてきた」

「テレパシー……!?」

「……で、何しにきたんだお前ら」

 今更さだめの異常性については突っ込むまい。……そういえば今までさだめに盗聴器や発信器を取り付けられたことはなかったな。なるほど。自らがその代わりとなる優秀なレーダーそのものだったら、確かにそんなものいらないな。……納得しちゃいけない気もするが。

「あっ! そうだよ、お兄ちゃんアテナには帰ってきてすぐに会ったのにさだめの所には来ないってどういうこと!?」

「……帰ってきて丁度アテナがいたんだよ。あいつを連れてな」

 そこでさだめは初めて気付いたというように剣士に顔を向ける。

「誰? アテナの愛人?」

「ち、違います!」

「っば……何言ってやがるこのチビ!」

「チビ……」

 さだめが沈む。相変わらず体型の話題では打たれ弱い奴だ。というか、友達やら兄妹やらが出てくる前に真っ先に愛人をセレクトするさだめの脳内に末期を感じる。

「おっ! もしかして編入生か!? なんだよセツ、いないと思ったら早速横取りしやがって~」

「いや、それもかなり成り行きで……」

「って、おおっ!? お前も精霊連れてるんだな! オレ、遊城十代! こいつは相棒のハネクリボーだ!」

『クリクリ~』

『はっはっはっ、中々愛いヤツではないか。気に入ったぞ!』

 俺はハネクリボーに笑顔で接しているネイキッドに声をかける。

「ネイキッド。さっきぶり、でいいのか?」

『うむ。無事、テンスの協力は得られたようで何よりだ』

「ああ。エースの方は、無理っぽいけどな」

『何。エース殿とて、時が経てば理解もしてくれるであろう。何せ、お前さんは我が認めた男なのだから』

「なんだ? ネイキッドと知り合いだったのか?」

「まあな。ついさっきまで精霊界で話してもいたから」

 ネイキッドから、お前のことも聞いていたと話す。剣士も、それを聞いて俺がネイキッドの話していた人間だと気が付いたらしい。

「知らねえ間に、デュエルするっつー伝言は果たしていたわけだな」

「そうなるな。俺は途中で気付いたけど」

 最初こそ気付かなかったが、剣士の後ろでネイキッドが見ていたことには気が付いた。

「……つーかよ」

「ん? なんだ?」

「こいつら……全然オレ見てもビビんねえんだな」

 そんな剣士の感心したような呆れたような呟きに、みんなも苦笑するばかりだ。

「はん! この万丈目サンダー様が貴様ごときにビビるだと? 冗談も程々にしておけ!」

「眼つきは悪いッスけど……今更ッス」

「さだめはお兄ちゃん以外どうでもいいし」

 さだめは答えなくてもよろしい。

「まっ! オレたちは妹さんとかので慣れてるからな! それよりオレともデュエルしよーぜ!」

「……そのチビが一体なにやったってんだ?」

 それは……。

「聞くも涙語るも涙、と言うか……」

「聞くも失禁語るも失禁」

『それだ』

 あまりに的確な答えに思わず全員でルインを指差してしまう。

「いや何があった!? そんでなんでそのチビは照れ笑いしてんだ!?」

「いやーあの頃はさだめも若かったねぇ……」

 チビ呼ばわりされている奴が年寄りぶるな。

「はぁ……何だよ。悩んでたのが馬鹿みてぇじゃねえか」

「そうですよ! 剣士さん良い人なんですから胸を張ってください!」

「お、おう……」

 ん? なんかちょっと頬を染めてる……?

「! ほぉーそっかそっかこれは……」

「チャンス」

 何やらさだめとルインが顔を寄せてこそこそとしゃべっている。

「……おいセツ」

 何を話しているのかと聞こうとした俺に、剣士が話しかけてきたのでそちらに対応する。

「ん? どうした?」

「またデュエルすんぞ。今度はお互い万全の態勢でな」

「……ああ。もちろんだ。今日のはノーカンで……」

「ざけんな。負けは負けだ。言い訳させるんじゃねえよ」

「……そうだな。んじゃ、そういうことで」

「オレもオレも! なあ剣士、オレともデュエルしよーぜ!」

「ったり前だ。お前らだけじゃねえ。誰とだってデュエルしてやらあ」

「よっしゃ! んじゃ早速……」

「今日は勘弁しろって」

「えー!?」

「これでもやること溜まってんだよ! 荷物の片づけだのアカデミアへの謝罪だのめんどくせえイベント盛り沢山だ」

「あ、じゃあお手伝いしますね」

「あ……お、おう」

 そんな感じで話が流れていき、さだめたちの密談に注意を向けなかったのが、後日の騒動に繋がるきっかけになることに、俺はついに気が付かなかったのだった。

 

 

 

 

 

「……これはチャンス」

 ルインの言葉に、しかしさだめは首を振る。

「甘いよルイン。確かに一見ライバルを減らして優位に立つチャンス。だけど昔の人は良いことを言ったよ。『ピンチの時こそ最大のチャンス』だって。それは裏を返せば『チャンスの時こそ最大のピンチ』とも取れる」

「なんと……」

「アテナと編入生をくっつける。その基本方針は悪くない。でも、そこに拘った挙句失敗するのはラブコメの鉄則。今まで特に気にしていなかったけど新しい男の影ができることにより相手を意識し始めて……なんて良くあること」

「……深い」

「だからむしろ、あちらは好きに泳がせる。そして無意識の内に邪魔をさせて……その間に自らの基盤を固めるのがベスト」

「……師匠」

「やめて。さだめなんて十五年以上もかけて未だに大金星を上げられない未熟者だよ」

「……では、この機会に」

「そう。ライバルを脱落させる要素は増えたけど、それを敢えて“利用しない”。邪魔ではなく攻めの姿勢を取る」

「あの計画……」

「そう。そのための準備も大方終わっているから、すぐにでも仕掛けるよ。……フフフ。大丈夫だよ、ルインにも十分、甘い蜜を吸わせてあげる」

「……今回は従う」

「そう、それでいいよ。そうすればきっとだれもが幸せになれるから……フフフ」

 ……水面下でそんな陰謀が始まっていることに、セツは終ぞ気が付かなかったのだった。

 

 

 

 

 




 今回登場したオリカを紹介します。
・『ジャム・ウォリアー』 星1 光属性 戦士族300/200
・効果
(1)このカードがカウンター罠のコストとして墓地に送られた場合、このカードのコントローラーはデッキからカードを二枚ドローする。

・『アルカナソード ハート』 装備魔法カード
・効果
 このカードは『切り札の騎士』と名のついたモンスターか『アルカナ ナイトジョーカー』にのみ装備することができる。このカードを装備したモンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせる。装備モンスターは戦闘によっては破壊されず、その際に発生する戦闘ダメージは無効になり、その分だけ自分はライフポイントを回復する。装備モンスターは攻撃宣言を行うことができない。


 地味にジャム・ウォリアーが気に入ってます。アニメではよくある、手札調整用のオリカですね。尚、『同族の絆』と『命削りの宝札』と『鋼鉄の魔導騎士―ギルティギア・フリード』は原作オリカ。ギルティギアは兎も角、『命削りの宝札』はチート過ぎると思うんだ……。そして『同族の絆』のOCG化はよ。今の環境だと危険すぎるけど。
 それでは、悠でした!

※追記。
 肝心の切り札の騎士の効果を載せてなかった(汗)
・『切り札の騎士―クィーン』 星4 光属性 戦士族1500/1600
・効果
(1)このカードのカード名はルール上『クィーンズ・ナイト』としても扱う。
(2)自分フィールド上に『キングス・ナイト』が表側表示で存在する場合に、このカードの召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した場合、デッキから『ジャックス・ナイト』一体を特殊召喚することができる。

・『切り札の騎士―キング』 星4 光属性 戦士族1600/1400
・効果
(1)このカードのカード名は『キングス・ナイト』としても扱う。
(2)フィールド上に『クィーンズ・ナイト』が存在する場合にこのカードの召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した場合、デッキから『ジャックス・ナイト』一体を特殊召喚することができる。

・『切り札の騎士―ジャック』 星5 光属性 戦士族 1900/1000
・効果
(1)このカードのカード名は『ジャックス・ナイト』としても扱う。
(2)このカードが墓地に存在し、自分フィールド上に『クィーンズ・ナイト』『キングス・ナイト』が存在する場合、このカードを墓地から特殊召喚することができる。

 簡単に言えば、クィーンとキングは原作効果みたいなものですね。ただし、一方通行でしかなかった効果が両方で使えるようになったのは大きいです。更に、ジャックにも限定的な蘇生効果がつきました。これで三銃士を揃えるのがより楽になったと思います。
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