アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『冥王竜ヴァンダルギオン』
さ「お兄ちゃんのアルカナに並ぶもう一枚の切り札カードだね」
ル「カウンター罠前提の特殊召喚条件を持っている」
さ「魔法なら1500バーン。罠なら万能除去。モンスター効果なら完全蘇生と、どの効果も優秀だよ。通常召喚もできるし、ステータスも基準はクリアしてるから、普通のドラゴンデッキなんかでも魔宮の賄賂や神の宣告、警告あたりに合わせて出せればラッキーくらいの感覚で入れられるよ」
ル「これで、手札だけじゃなく墓地からも特殊召喚出来れば最高だった」
さ「まあ、そう上手くは行かないよね」


第二期第十四話「冥界からのお客様」

アルカナ~切り札の騎士~

第二期第十四話「冥界からのお客様」

 

 

 

 

『きゃうっ!』

 …………。

「なあ、今なんか聞こえなかったか?」

「わんちゃんですか……?」

「なら食料だね」

 犬と聞いて真っ先に食料扱いするな。

「わんちゃん食べないでください!」

「知ってる? 韓国だと一般的な食材らしいよ?」

「ダメです!」

『こぁっ! きゃうぅん!』

「あ、また聞こえた」

「セツ……上です」

 お……?

『きゃう!』

 トサッ!

 頭に重みが加わった。

「わぁ! 可愛いです!」

「朱黒い……竜?」

「赤黒いって言うと、なんかエロいね」

「ちっちゃいね~」

 ユーキちゃんがさだめの台詞を丸っきり無視して俺の頭の上に手を伸ばす。

「あはっ! ツルツルしてる~あっ、舐めた!」

「なんだなんだ? これじゃ俺には見えないんだが……」

 手探りで頭の上の謎の物体Xを下ろして顔の前に持ってくる。

「……えーと、どちらさん?」

『かうっ!』

 それは確かにさだめの言ったようにところどころが朱色の黒い竜であった。しかし『黒竜の雛』とはちょっと違う。あれよりも多少ゴツイというか……。

「あ……もしかして」

 最近その竜と話した記憶が蘇る。

「ヴァンダルギオン?」

『かうーっ!』

 当たりー! とでも言うように万歳して啼くヴァンダルギオン(?)。

「っていうか、なんでこんなちっちゃく……」

『きゅ!』

 ごそごそと背中に背負っていた黒いバック――色が同じで気付かなかった――からやっぱり黒い手紙らしきものを取り出して俺に手渡す。

「……読めん」

『きゅ?』

 その手紙は精霊界、それも(恐らく)旧字体で書かれているのでさっぱりだ。

「……ルイン辺りなら読めるか?」

「でもどこにいるのか……」

『……ねえ、ここであたしを呼ぶべきなんじゃないの? だからあたし、不貞腐れるって理解してる?』

「……や、何か頭悪そうだったもんで」

「期待値がルインと比べると……」

『あんたら偉い女神さま何だと思ってるのよ!』

『オタニート』

 全員息はぴったりだった。

『……ですよねー』

 本人も自覚はあるようだ。

『まあとにかく見せてみなさいな』

「……まあ、ダメ元で」

『端っからダメ元とか言われるとやる気失せるんだけど……えーと何々』

「どうだ?」

『……うん、あれよね。あたし、心は十代だから』

「読めなかったんだな。うん、大方の予想通りだよ」

 時間の無駄だった。ルインを探そう。

 

 

 

「……達筆過ぎて読みにくい。でもざっとで良いなら読みとれた」

「流石ルイン」

「オタニートとは格が違うね」

『あんたら兄妹容赦してよ』

「で? 内容は?」

「要は、息子が生まれたので、しばらくキミに預けたいってこと」

「俺に?」

 っていうか息子……え、妻子持ち?

「どちらかと言うと後継者のようなもの。お腹を痛めて産んだわけじゃない」

「あー……? ヴァンダルギオンって雌?」

「……特に性の概念もないと思う。あれは神霊のようなもの。自然発生が基本」

「精霊にも色々いるんですね~」

「ともかく、色々な経験を積ませる意味も持って、信頼できるキミに我が子を託す……というようなことが書かれている。これも一緒に」

 ルインに渡されたのは一枚のカード。チビヴァンダルの絵と共に『冥幼竜ヴァーミリオン』の名前が。

「ヴァーミリオン……朱色か。確かにちょっと朱っぽいな」

 体に走るラインや瞳の色が朱色だ。仄かに輝いていて綺麗だ。

『きゅ?』

 つぶらな瞳を潤ませて首をかしげるヴァーミリオン。……うん。まあ……。

「可愛いです……」

 アテナがもう涎を垂らさんばかりに見つめている。

「えーそうかなー? もっとトゲトゲして抱きしめたら血塗れになるくらいの方が……」

「そんな拷問器具紛いのものを可愛いとは言いません!」

 さだめの感性的にはドストライクなんだろうよ。

「私もそっちがいい」

「ルインさんやさだめさんの意見は参考になりません」

「わたくしとしてもそちらの方が自衛に適していますし、強そうでいいのですが……」

「……もしかして、私が異端ですか?」

「そ、そんなことないよ~わたしもこっちのが可愛いと思うよー?」

『あたしは……』

「あ、シャルナはいいです」

『またグレるぞこのやろー!』

 積極的に外に出てくるようになったのはいいが、扱いの悪さはまるで変わってないシャルナだった。

「ん~でもこの子、どうやってお世話すればいいのかな~」

『きゅー?』

「可愛いですー……」

 アテナがすっかりメロメロになっていた。

「セツ、私も手伝いますから一緒にこの子を育てましょう!」

「うん、その物言いは引っかかる奴らがいるからやめような?」

 まるで俺たちの子供のように宣言するアテナに……というか何故か俺にさだめが(文字通り)噛みついていた。

「ガジガジ……あ、なんかおいしい」

「離れろ性的倒錯者!」

「で、結局どうするの」

「ああ……ルインはこいつらが何食べるかとか知らないか?」

「……私が何もかも知ってると思ったら大間違い」

「まあそうだよな」

「シャルナは当てになりませんし……」

『ねえ、だからそうサラッとあたしを戦力外通告するのやめてくれない?』

「じゃあ知ってますか?」

『いや、知らないけどさ……』

「ほら見ろ」

「大体シャルナって何か知ってることあるんですか?」

『そりゃああるわよ。なんたって偉い女神さまだし』

「例えば?」

『え? え、えっと……ネトゲのレアアイテムゲット場所とか能力なら一通り……』

『はぁ……』

『わー今完全にあたし役立たず認定されたわぁー』

 シャルナは放っておいて、とりあえず考えることに。

「お兄ちゃんがヴァンダルギオンに聞いてくればいいじゃん」

「いや……最終手段としてはそうするけど、冥界は流石にもうあんまり行きたくないんだよな……」

「そんなにすごいところなの?」

「うん、まあ……その話も追々するよ。そういえばしてなかったし」

 ヴァンダルギオンに力を貸してもらおうと冥界に行った記憶はまだ新しい。あの場所は生者が在るべき場所じゃない。

『う~ん……』

『きゅ~ぅ……?』

 考えに煮詰まった俺たちがヴァーミリオンを囲んで唸っていると……。

『セツ、ルイン殿』

「……ん? ネイキッド?」

 最近こちらでもちょくちょく見かけるネイキッドが声をかけてきた。近くに剣士の姿は見えないようだが……代わりに一人の精霊を引き連れていた。

『いや何、こちらの御仁がセツを探していたのでな。今の時間ならばここだろうと連れてきた次第だ』

「よう。久しぶりじゃねェかラブコメ野郎」

「って、ゴーズか!?」

 非常に心外(?)な言葉と共に現れた青年は間違いなく『冥府の使者ゴーズ』その人。かつて俺がヴァンダルギオンとの契約を望んだ時に会った口の悪い熱血漢。

「セツ……こんな人とも知りあっていたんですか?」

「お兄ちゃんちょっと見ない間に顔が広くなったねー」

 だが、そのおかげで手間が省けた。

「ゴーズ、お前ならコイツの世話とかやり方知ってるんだろ?」

「あったりまえだろォが。そもそもコイツが先走ってお前のトコにスッ飛んでかなきゃオレが色々説明するはずだったンだよ」

 ちょっと訛りがちな日本語も懐かしい。というか、精霊たちの言語ってのはどうなってんのかね? 普通に日本語喋ってるように聞こえるけど。

「じゃあ、これからどうすればいいか教えてくれ」

「はいよ。つか、基本的にコイツのメンドウはオレが見ることになってンだ。世話とかもナ」

「え、そうなのか?」

「あのヴァンダルのオッサンが大事な後継者一人で人間界まで大冒険させるわきゃねーだろ。ちったァアタマ使え」

 相変わらず癇に障る言葉遣いだが、とりあえず問題は解決したわけだから良しとしておこう。

「じゃあしばらくお前もこっちにいるのか……この島、ドンドン精霊の移住が進んでないか?」

「テメエの所為もあンだろうが。寝ぼけたこと言ってンじゃねェぞ」

 うぐっ……言い返せない。

『あーいいわね。あたしもそっち行こうかしらん?』

「シャルナはダメです」

『だからなんであたしだけそんな扱いなのよ!』

「シャルナが来たらパソコン料金だけで破産しちゃいます」

『……なんでこー否定できない正論ばっかりあるのかしらね』

 それだけロクな生き方してないんだろ。

「大体テメエが精霊界からいなくなったらカイエンのアホがどンだけやつれると思ってンだ。そろそろマジメに仕事しろやゴミオタニート」

 もうボロクソに言われて自棄酒を呷り始めたシャルナはとりあえずまた放っておくことにする。

「まあこっちで生活するのはいいけど、住むところとかどうすんだ?」

「ンなもン、どこだっていい。どこだって冥界に比べりゃ天国だろ」

 ある意味冥界こそ天国な気がしなくもない。文字通りの意味で。

「まァ、タダでここに居付こうなンざ考えちゃいねェ……そこのチビスケ」

「……チビスケ? 何処?」

「ここにさだめ以上にチビはヴァーミリオンくらいだぞ」

「orz」

 落ち込むさだめの前にゴーズがピンっと弾いて渡したのは、自らの宿るカードだった。

「使え。報酬代わりだ」

「ふぇ?」

「テメエが一番マトモにオレを使えそうなンでな。兄キが兄キだし、丁度いいだろ」

 確かに、この中で悪魔族を扱うのはさだめくらいだ。ヴァンダルギオンと関係している割にはカウンタートラップと相性が悪くて俺も使えないし。

「さだめの……精霊?」

「はン。キチンと使いこなせや。腹立たしいが、兄キだったら使いこなすだろうよ」

「え~もっと可愛い精霊が良かった」

 うん。空気読もうなさだめ。さだめらしいっちゃらしいが。

「希望としては『万力魔神バイサー・デス』とか『バイサー・ショック』辺りが可愛いよねぇ……」

 誰に使うつもりだ。俺か!? 俺なのか!? そしてそいつらは可愛くない!

「まあ、でもとりあえず使ったげるね。さだめをしっかり守ること!」

「超上から目線! 何様!?」

 それでもそこそこ嬉しそうなのは長年の経験で読み取れる。意外とさだめの奴、自分に精霊がいないこと気にしてたしな。

「はン、やなこった。オレが手を貸すのはデュエルの時だけだ。後は勝手にやってろ」

 ゴーズもゴーズで全く素直じゃない。さだめのことを気に入ったからこそあいつは自分を預けたのだ。

『ぱうっ!』

「ひゃっ!? な、なに? さだめに何か用?」

『かうぅ~?』

 さだめの頭の上に飛び乗ったヴァーミリオンがさだめの顔を覗き込もうとして……。

『きゅ!?』

「うひゃ!?」

 そのまま滑り落ちた。思わず受け止めたさだめはひっくり返ったヴァーミリオンをじーっと見つめる。

「ほらほら、やっぱり可愛いですよね?」

「ん~……さだめにはよくわかんない。アテナにあげる」

「いや、俺かゴーズに渡せよ」

「つかこのチビ竜、あり得ねェくらい懐っこいな。冥界の主候補としての自覚あンのかコイツ」

 今もかうーっとか啼きながら一同の周りをピコピコ回っている。特に懐いているのは俺と……何故かさだめ。アテナの方が圧倒的にラブコールを出しているのだが、むしろちょっと嫌そう。さだめの頭に上ったり俺の背中に張り付いたりと忙しい。

『ご、ご歓談中失礼しますっ!』

 また新たな精霊の声。一同が振り向いた先には少しゴーズと似た雰囲気の白い服を纏った女性の姿。

『げっ……』

「カイエン?」

『あっ、せ、セツ様。御無沙汰しておりますカイエンです! え、ええと今回はゴーズ様がマスターを定められたということで私もご挨拶に伺いました! そ、その少々仕事が立て込んでおりまして直接そちらに出向かぬ無礼をお許しください!』

 あわあわとかなり焦りまくりながら挨拶をするカイエン。仕事って……。

『ああ!? やっぱりサボってましたかアテナ……じゃなくってシャルナ様! そろそろお仕事してください! もう書類やら嘆願書やら散々溜まって私だけじゃ対処しきれなく……。というか以前から溜まってたやつも十分の一も終わってなくって……』

 そろそろと隠れつつ移動していたシャルナが見つかってカイエンに捕獲されていた。もうなんか殆ど逃げる漫画家と追う編集みたいな関係になっている。

『私が人間界に向かえないのも元はと言えばシャルナ様がお仕事を終わらせてくれないからで……』

『あ、あー……全部認可! とか』

 やめれ。

『いいわけないじゃないですかぁ! それでこないだ危うく『終焉の精霊』転生させかけたの忘れたんですか!?』

「うおおおい! なんか裏で大変なことしてくれてましたよこのオタニート!」

 俺たちの必死の戦いが丸ごと無駄になるところだったらしい。

『ギリギリで私が気付いた……というか誰でも見ればわかったはずですけど兎に角もう少しで大惨事だったんですよ!? お願いですからマジメにやってくださいよぉ!』

 もうカイエンは涙目だ。そしてありがとう! 君のおかげで俺たちの戦いは無駄にならずに済んだ!

「私の説得で心を入れ替えたかと思ったら……」

『甘いわね。引き籠りの仕事ギライがそう簡単に直るはずないでしょう』

「胸張って言うな」

 確かにそうだけども!

『と、とりあえずこの方は連れていきます! セツ様! また今度ゆっくりお話きかせてくださいね! それでは!』

『た、助けてマスター! あたしこのままじゃまた出番の少ないニートに……』

「それはきっとカンヅメという名のニートですからいいんじゃないでしょうか? というかお仕事はキチンとしてください」

『そんなぁ~!? 折角出番を増やそうと頑張ってたのに!』

 非情にもアテナに見捨てられたシャルナは精霊界の方へと帰還していった。

「ところでセツ?」

「ん? どうしたアテナ」

「なんだかカイエンさんの様子がちょぉぉっと気になったんですけど……」

 その『ちょぉぉっと』は世間一般で言うところの物凄く、とかめちゃくちゃ、とかと同義語なのだろうな。

「いや……カイエンの場合はゴーズとヴァンダルギオンに認められた人間ってことで色々話を聞きたがっているだけでそこにお前らの思っているようなものは存在しない……筈だ」

 少なくとも俺はそう認識している。

「ま、このラブコメ野郎だからわからなくもねェが……アイツァ昔ッから働き通しで、ある意味世間知らずでな。人間界なンて異界の話を興味持って聞いてただけだろ」

 珍しくゴーズもフォローしてくれる。

「そうですか……流石にこれ以上増えてもらうとプチッと逝っちゃっても構いませんよね? という意味を込めての確認だったんですが……何事もないんだったらいいんです」

 ……最近アテナが怖い。ある意味さだめより。

「カイエンのアホや駄女神は良いとして……これから少し世話になるぜ」

『きゃうぅ~ん!』

 そんなこんなで、俺たちに新しい仲間が増えた午後なのだった。

 

 

 

 

 




 というわけで、当小説のマスコットキャラヴァーミリオン登場です。それとゴーズですね。彼の登場で、遂にさだめにも精霊のカードがやってきました。ホント、精霊比高いなぁ……。ヴァーミリオンの効果についてはまたデュエルで出てきたときにでも。
 それでは、悠でした!
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