アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『闇より出でし絶望』
さ「手札コストの代名詞だよね」
ル「……そんなはずじゃなかった」
さ「え? だってこれって、コストで墓地に捨てられたモンスターたちの心の闇から生まれた絶望だからこういう名前なんじゃないの?」
ル「……それは、新説」
さ「ルインだって、このカードなら一体で儀式召喚の生贄に出来るよ?」
ル「確かに」
さ「結論。このカードはコスト」
ル「……解せぬ」


第二期第十六話「進級試験~VSさだめ~」

アルカナ~切り札の騎士~

第二期第十六話「進級試験~VSさだめ~」

 

 

 

 

 ……結局あれから進級試験の当日まで、さだめは一度も俺に接触してこなかった。不思議には感じたものの、それだけ本気なのだろうと納得もした。

 ……まあ、当然のごとくその考えは甘かったんだが。

「フ、フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ……長かった……長かったよお兄ちゃぁん……♪」

 さだめの目は完全に血走っていた。心なしかフラついている気もする。

「さ、さだめ……どうした?」

「な、何か尋常じゃない状態になってますけど……」

 ちょっと近寄りがたい雰囲気だけなら以前を遥かに超えている。

「チャンスなの……これはチャンス。チャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンスチャンス!! 遥か昔から延々と夢見ていたお兄ちゃんと一緒の教室で一緒の授業。席を並べて机を寄せて肩触れ合ってのラブラブ授業!」

 それは妄想過多だ。というか若干ヤンデレ臭がする。ベクトルはプラス方向だからまだマシだが。

「二人一緒の修学旅行! 二人で一緒の自由行動! 二人一緒にホテルの部屋! 二人で迎えるアバンチュール! 二人で育む禁断の愛!」

「おーいそろそろいいかー。ぶっ飛んだ妄想が妙なオーラと共に垂れ流されてますよー」

 毒々しいオーラだ。禍々しかった以前のオーラとはまた違うヤバさを感じる。

「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ……このためにこの一週間自らお兄ちゃん断ちをしてハングリー精神を極限まで高めたの。今日は絶対負けない」

「お前は高めるまでもなくケダモノも真っ青なハングリー精神の持ち主だろうが」

「いつか見た漫画でやってました。チョコジャンキーが復讐のためにチョコ断ちして宿敵との勝負に挑む話……」

 ……それ、もしかして俺がコイツ倒したらハングリー精神のままに襲いかかってくるんじゃね?

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!! 最高にハイってやつだよ!!」

 ヤバい。素のテンションだと今のコイツに気圧される。かといってギャグのテンションでこの大事な一戦に挑むわけにも……。

「考えたな……さだめ!」

「いえ、セツの考え過ぎじゃ……」

 くっ……我が妹ながら恐ろしいヤツ! 俺が対策を組んでくることを予想していることくらいは予想していたが、まさかこんな絡め手で来るとは……!

「……既にギャグのテンションですよ。セツ」

「相手を動揺させてプレイングミスを誘う……セツ君が最初の試験でやってたことだね~流石さだめちゃん。セツ君と同じことをする……」

「え? なんですか? もしかして、また私が非常識なんですか?」

「セツ」

 俺が妹の戦術に歯噛みしていると、亮さんに話しかけられた。

「亮さん!」

「今日はよろしく頼む。……しかし、また随分と思い切ったな。俺と自分の妹、二人とデュエルとは」

「さだめは断ると何しでかすかわかったもんじゃなかったですし……亮さんとは個人的にデュエルしたかったんですよ。だから、二人ともです」

「……ああ。俺もお前とデュエルがしてみたかった。十代とはタイプが違うが、お前も大したデュエリストだ。卒業前に、二人とデュエルがしたかった」

「それは俺も同じです。そうじゃなきゃ、こんな不利過ぎる提案してませんよ」

「それもそうだな。では、今日はお互い全力を尽くそう」

「ええ。いいデュエルにしましょう」

 ではな、と亮さんは俺たちに背を向けて去って行った。

「……ふう。亮さんには感謝だな。妙なテンションを払拭できた」

「あ、やっぱりギャグのテンションだったんですね。よかった、私が普通で……」

「キシャシャシャシャシャー!!」

「きゃあ!? さだめさんが殆ど妖怪みたいに!」

 ……コイツ錯乱しててもプレイミスしないから厄介なんだよな。

「シニョ~ルシニョ~ラ……それデェ~ワこれより進級試験を始めるノ~ネ」

 クロノス教諭の言葉に、俺は気を引き締める。まずはさだめだ。

「ああ……お兄ちゃんと共に過ごす夢の学園生活への扉が今開かれた! ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ……ジュルッ!」

 ……やりたくねーなー今のコイツと。

「「デュエル!!」」

 セツLP4000

 さだめLP4000

「先攻はシニョ~ルセツなノ~ネ」

「よし! ドロー! 俺はモンスターを一体守備表示でセット! カードを二枚セットしてターンエンドだ!」

「さだめのターン、ドロー! さだめは手札から『トレード・イン』を発動。手札の『闇より出でし絶望』を墓地に送ってカードを二枚ドロー!」

 『闇より出でし絶望』か……『強烈なはたき落とし』対策か?

「魔法カード『闇の誘惑』発動!」

「それはさせない! カウンター罠『マジック・ジャマー』! 手札の『ジャム・ウォリアー』をコストに、そのカードを無効にする!」

「ちぇ……」

「俺は『ジャム・ウォリアー』の効果でデッキからカードを二枚ドロー!」

「なら、さだめは手札から『終末の騎士』を攻撃表示で召喚! 効果によりデッキから『人造人間―サイコ・ショッカー』を墓地に送るよ」

 『終末の騎士』ATK1400

「っ!」

 やはり……入っていたかサイコ・ショッカー! わかっていても冷汗が出る……カウンター罠主体のこのデッキであいつを出されればかなりキツくなる。

「お兄ちゃん……カウンターするカードを間違えたね。魔法カード『死者蘇生』!」

「げっ……」

「さだめが蘇生するのはもちろん『人造人間―サイコ・ショッカー』! パーミッションする?」

「……通す」

 ザワッ!

 会場がざわめく。それも当然だな。罠カードの発動を封じるサイコ・ショッカーはパーミッションデッキ最大の急所。

 『人造人間―サイコ・ショッカー』ATK2400

「……まさか一ターン目から出してくるとはな……」

 想定内ではあった。だが、例え想定してあったとしても一ターン目からそれを防げるとは限らない。

 ……くそ!『闇の誘惑』からの『ネクロフェイス』や『闇次元の解放』を意識し過ぎた! もっと単純なコンボで召喚された!

「さだめの得意技はセオリーブレイク……っていう“セオリー”をさだめが守るわけないよね。お兄ちゃん」

「……相変わらず、俺なんかメじゃないくらい天才肌だな」

 あいつは事あるごとに俺を天才肌扱いするが……あいつに比べれば俺なんかただの器用貧乏でしかない。

 俺はあいつにチェスで勝ったことがないし、将棋でも囲碁でも勝ったことはない。唯一勝機があるのがこう言った運の絡むカードゲームくらいだ。

「さだめの弱点は幸運ランクが低いというただ一点! だけど、この間ゴーズが来てくれた時からかなぁ……“引き”が強くなった気がするんだぁ……」

「補正……ってやつか」

 精霊との繋がりを得て幸運ランクに補正がかかった……と見るのがいいのか。ともかく、これは……マズイかもしれん。

「さだめのバトルフェイズ!『人造人間―サイコ・ショッカー』でセットされた守備モンスターを攻撃!『電脳エナジー・ショック』!」

 サイコ・ショッカーの目から発射されたレーザーが俺のセットモンスターを貫く……。

「かかったな!」

「!?」

「俺の守備モンスターは『異次元の女戦士』! 一緒に消えて貰うぞ! サイコ・ショッカー!」

 『異次元の女戦士』DEF1600

 女戦士の輝きが自らとサイコ・ショッカーを包み込む。輝きが収まった時、そこに残されていたのは『終末の騎士』一体のみ。

「……流石お兄ちゃん」

「サイコ・ショッカーは読んでたからな。できるだけモンスター効果で対処することができるようにしておいた」

 デッキ構成を光属性の戦士で固めてヴァンダルギオンの要素は少なめに。それが今回の俺のデッキ。

「じゃあさだめは『終末の騎士』でお兄ちゃんにダイレクトアタック!」

「速攻魔法『速攻召喚』! 俺はデッキから『切り札の騎士―クィーン』を攻撃表示で召喚する!」

『お任せくださいな。セツ様』

 『切り札の騎士―クィーン』ATK1500

 力強く剣と盾を構える希冴姫。ここからが真骨頂だ。

 この世界には現実よりもよっぽど扱いやすいカードが溢れている。この『速攻召喚』もその一つ。完全な『二重召喚』の上位互換。デッキからも通常召喚できる上、速攻魔法なので扱いやすさが段違いだ。

「くっ……お兄ちゃん……やっぱりお兄ちゃんはいい引きしてるよ」

「俺がさだめに勝ってる所なんか打たれ強さとラックぐらいだからな」

「そんなことないんだけどなぁ……さだめはこれでターンエンドだよ」

「俺のターン! ドロー! 俺は『切り札の騎士―キング』を攻撃表示で召喚! 効果でデッキから『切り札の騎士―ジャック』を攻撃表示で特殊召喚!」

 『切り札の騎士―キング』ATK1600

 『切り札の騎士―ジャック』ATK1900

 いつもの三銃士による連携。そして……。

「バトルだ!『切り札の騎士―クィーン』で『終末の騎士』を攻撃!『エレガント・ハーツ』!」

『行きますわ妹様! はぁぁっ!』

 希冴姫の素早い連続攻撃が闇に堕ちた騎士を切り刻む。

「くぅ……」

 さだめLP4000→3900

「俺は……」

 俺はジャックとキングに攻撃をさせようとしてふと思いとどまった。

 さっきのさだめのセリフを思い出す。

『この間ゴーズが来てくれた時からかなぁ……“引き”が強くなった気がするんだぁ……』

 『冥府の使者ゴーズ』

 この間からさだめの精霊としてさだめの守護に就いている粗暴な男。

 その効果の発動条件を、今のさだめは見事に満たしている。

「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ……悩んでる悩んでる♪」

 ……こういう駆け引きでさだめに勝てる気がしない。

「……けど、ここで躊躇ったら負けるような気もするな」

 大体、例えゴーズが出てきても手札で対処可能。

「バトル再開!『切り札の騎士―キング』でさだめにダイレクトアタック!『貴光斬』!」

『少々気が引けるが……すまぬの』

「くぁ……」

 さだめLP2300

 攻撃は通った。しかし……さだめの目が教えてくれる。やはり……来るか!

「手札から『冥府の使者ゴーズ』の効果を発動!『冥府の使者ゴーズ』を攻撃表示で特殊召喚! 今回は戦闘ダメージだから更に『冥府の使者カイエン』のトークンを守備表示で特殊召喚!」

『やれやれ、ようやく出番かよ』

『精いっぱい頑張らせていただきます!』

 『冥府の使者ゴーズ』ATK2700

 『冥府の使者カイエントークン』DEF1600

 カイエントークンの攻守はダイレクトアタックしたキングの攻撃力、即ち1600。

「バトル続行!『切り札の騎士―ジャック』でカイエントークンを攻撃!『瞬光剣』!」

『張り切っていたところ申し訳ありませんが、早々に散って頂きます!』

 ジャックの剣で為す術なく切り裂かれるカイエン。

『わ、私なんのために出てきたんですかー!?』

『……壁扱いに決まってンだろォがダァホ』

『ひあああーーーっ!?』

 ……なんか妙に萌えた。仕事忙しい中御苦労さまカイエン。

 カイエンは守備表示だったのでさだめのライフに変動はない。そしてさだめのフィールドには攻撃力2700の『冥府の使者ゴーズ』

『よォ、ラブコメ野郎。またラブコメ的事件に巻き込まれてやがンなァ』

「……うっせ。否定できないタイミングでその呼び方すんな」

『否定できるタイミングなンつーもンがテメエにあるかよ』

 くそう。コイツにはなんか言い返せない。

「ま、まあ今はいい。とにかく俺はメインフェイズ2に手札から魔法カード『融合』を発動!」

「『融合』……?」

「俺の場にいる三体の切り札の騎士は、それぞれ『クィーンズ・ナイト』『キングス・ナイト』『ジャックス・ナイト』としても扱う! よってこの三体を融合し、エクストラデッキから『アルカナ ナイトジョーカー』を攻撃表示で融合召喚!」

 『アルカナ ナイトジョーカー』ATK3800

「っ……出たね。お兄ちゃんの最強騎士」

「俺はカードを一枚セット。ターンエンドだ」

「さだめのターン、ドロー! ……お兄ちゃん。さだめに『アルカナ ナイトジョーカー』は効かないよ」

「何?」

「さだめは手札から魔法カード『おろかな埋葬』を発動。デッキから『ネクロフェイス』を墓地に送るよ」

 『ネクロフェイス』……面倒なカードを。

「そして、さだめの墓地には『闇より出でし絶望』『終末の騎士』『ネクロフェイス』の三体闇属性モンスターがいる……さだめは手札から『ダーク・アームド・ドラゴン』を特殊召喚!」

 『ダーク・アームド・ドラゴン』ATK2800

「っ!」

 来たか大物!

「さだめは墓地の『ネクロフェイス』をゲームから除外して『ダーク・アームド・ドラゴン』の効果を発動!『アルカナ ナイトジョーカー』を破壊!」

「『アルカナ ナイトジョーカー』の効果発動! 手札の『融合呪印生物―光』を捨てて効果を無効化する!」

「……それが、アルカナの弱点だよお兄ちゃん。まずは除外された『ネクロフェイス』の効果発動。お互いにデッキの上から五枚のカードをゲームから除外する!」

「くっ……」

 俺のデッキから除外されたのは『魔宮の賄賂』『聖なるバリア―ミラーフォース―』『異次元の女戦士』『神の宣告』『ジャム・ウォリアー』の五枚。

「マジかよ……」

 除外されたカードはどれも有用で除外されたのはかなりの痛手だ。

「さだめも五枚、除外するね」

 さだめの除外されたカードは『速攻の黒い忍者』『闇王プロメティス』『漆黒のトバリ』『ダーク・ホルス・ドラゴン』そして……『ネクロフェイス』

「ッッ!!」

「アハハッ! ラッキー! ラッキーだよさだめは! これはもうさだめに勝つように神様が操作してくれてるみたい!」

 俺のデッキトップから除外されたのは……『デストラクション・ジャマー』『融合』『アルカナソード クローバー』『アルカナソード ハート』『冥王竜ヴァンダルギオン』……。

「ヴァンダルギオン……!」

 マズイ……ヴァンダルギオンが落ちた……!

「さだめも除外除外~♪」

 ご機嫌なさだめが除外したのは『ダーク・グレファー』『ダーク・クリエイター』『ダーク・アサシン』『ジャイアントウイルス』『D・D・R』の五枚。

「あちゃー『D・D・R』が落ちちゃったかー。まあ誤差の範囲だよね」

 まったくだ。確かに除外されたサイコ・ショッカーを復活されずに済むのはラッキーだが、それよりもデッキをことごとく除外されたことの方が大きい。

「それじゃ、改めて『アルカナ ナイトジョーカー』を対象に『ダーク・アームド・ドラゴン』の効果を発動! 墓地の『闇より出でし絶望』をゲームから除外して『アルカナ ナイトジョーカー』を破壊するよ!」

「そうか……アルカナは……」

「そうだよ。『アルカナ ナイトジョーカー』の弱点は、自分を対象とする効果を『無効化』することはできても『破壊』することはできない。しかもその無効化できるのは一ターンに一度だけ。そして『ダーク・アームド・ドラゴン』は……」

「墓地に闇属性モンスターがいれば何度でも破壊効果を使える……!」

「そう! 消えちゃえアルカナ!」

「アルカナ……ッ!」

 『ダーク・アームド・ドラゴン』の放った暗黒の衝撃波がアルカナを為す術なく呑み込んで行く。

「アルカナ破れたり、だよ。お兄ちゃん!」

 

 

 

 

 

「うそ……セツのアルカナが……」

「っち……アイツ自身は気に入らねぇが、フェイバリットカードが倒されるのを見るのは胸糞悪ぃな」

 私たちはセツの『アルカナ ナイトジョーカー』が闇に呑まれて行くのを呆然と眺めていました。攻撃力3800を誇り、破壊耐性まで持っていたアルカナがこうして倒されるのを、私たちは初めて見ました。最初サイコ・ショッカーを迎え討ち、希冴姫さんたちを連続召喚したところまでは、見事にセツのシュミレーション通り。良い流れでした。

「ゴーズの辺りから流れが変わり始めたな」

 剣士さんの言う通り、さだめさんがゴーズを召喚した辺りから雲行きが怪しくなっていました。それでもセツが『アルカナ ナイトジョーカー』を召喚したことで、暗雲は晴れたと思ったら……。

「悪夢は、そこからでしたね」

「『ダーク・アームド・ドラゴン』……『ネクロフェイス』の連続発動……アルカナの除去……どれも完璧だ。隙がねえな」

「セツ君……」

 このままだと、セツは……。

「留年しちゃったらわたしの御褒美が~」

「……そう考えるとセツ留年でも良いかもしれません」

「おい」

 

 

 

 

 

「さあ! 仕上げだよお兄ちゃん! さだめは墓地の『終末の騎士』をゲームから除外してお兄ちゃんの伏せカードを破壊するよ!」

「チェーンする! 『和睦の使者』! このターンの戦闘ダメージを無効化する!」

「……粘るね。さだめはこれでターンエンド」

 ……状況は……最悪、か。

「けど、悪いな。この後に亮さんとのデュエルも控えてるんだ。ここで躓くわけにはいかないな。さだめ」

「……ここで、また奇跡的なドローにでも賭けてるの? そんなに上手くいくと思う?」

「いくさ。何故ってお前が散々デッキ圧縮してくれたからな」

「っ!」

 除外されたカードたちの中に俺の今望むカードは入っていなかった。なら、いける筈だ。

「俺のラストターン! ドロー!」

 俺は引いたカードをフィールドに呼び出す。今更確認は……しない!

「俺は『放浪の勇者 フリード』のモンスター効果を発動する!」

 『放浪の勇者 フリード』ATK1700

「…………ぁ」

「墓地に存在する『ジャム・ウォリアー』と『切り札の騎士―クィーン』をゲームから除外して、さだめの『ダーク・アームド・ドラゴン』を破壊する!」

「また……そんなバカヅキに……」

「俺はターンを終了する!」

「まだ……まだだよ。さだめのターン! ドロー!」

 引いたカードを確認したさだめの顔が歪んだ。

「さだめは……『終焉の精霊』を攻撃表示で召喚するよ」

 『終焉の精霊』ATK???

 『終焉の精霊』……あいつ……やっぱり入れてたのか……。

「ゲームから除外されている闇属性モンスターの数はお兄ちゃんのヴァンダルギオンも含めて13枚。攻撃力は3900。バトルフェイズ。『冥府の使者ゴーズ』で『放浪の勇者 フリード』を攻撃!」

『行くぜセツ!』

「俺は手札から『オネスト』の効果を発動!『冥府の使者ゴーズ』の攻撃力分『放浪の勇者 フリード』の攻撃力をアップする! 迎え討てフリード!」

 『放浪の勇者 フリード』ATK1700→4400

『ぬおっ!? チィッ! すまン、負けたゼ……』

 さだめLP2300→600

 これで『放浪の勇者 フリード』の攻撃力はこのターンのみ4400。攻撃力3900の『終焉の精霊』にも負けない!

「さだめはターンエンド……やっぱり、負けちゃったか」

 さだめはブラフを伏せる様子も見せず、どこか清々しい表情でターンを終了した。

「ああ。今回は、俺の勝ちだ。俺のターン、ドロー。俺は『放浪の勇者 フリード』の効果を発動。墓地の『切り札の騎士―キング』と『切り札の騎士―ジャック』をゲームから除外して『終焉の精霊』を破壊する」

 勇者の波動を受け、禍々しい悪魔が消滅する。

「……一応、さだめは『終焉の精霊』の効果を使うよ。このカードが破壊され、墓地に送られた時、ゲームから除外されている闇属性モンスターを全て墓地に戻す……ねえお兄ちゃん。やっぱり、さだめと一緒の教室は嫌?」

 不安そうなさだめの声。けど、そんなに不安になることはない。

「……そうじゃない。そうじゃないよさだめ。お前と一緒が嫌だったら、俺はとっくの昔に逃げ出してるか廃人にでもなってたさ。お前の隣は……まあ流石に心地良いとは言えないが……他の誰より、違和感はないかもな」

 ずっと一緒にいた妹。例えどんなに歪んでいても、永遠にそれは変わらない。

「けど、俺はやっぱり普通に進級したいんだ。それに、この後に控えてる亮さんとのデュエルも楽しみたい。そのためにも、ここで負けるわけにはいかなかったんだ」

「……うん。ごめんねお兄ちゃん。ありがとう……やって。お兄ちゃん」

「ああ。バトルフェイズ! 俺は『放浪の勇者 フリード』で、さだめにダイレクトアタック! これで……勝ちだ!」

「あああぁっ!」

 さだめLP600→0

「さだめ、またデュエル、しような。今度はもうちょっと普通にさ」

「……うん。その時は負けないよ」

「それは、俺もだ」

「そこまで! なノ~ネ! シニョ~ルセツの勝利なノ~ネ!」

 クロノス先生の勝利宣言を聞いて、俺は一先ず安堵の息を吐くのだった。

 

 

 

 

 




 珍しく、セツがアルカナやヴァンダルギオン以外でフィニッシュした回でもあります。ところで……『速攻召喚』って誰が使ったんでしたっけ? 原作カードだったはずなんですけど、これ書いたの随分前なのですっかり忘れました。
 それでは、悠でした!
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