アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第四話「月一試験! そして新たな精霊!」

アルカナ~切り札の騎士~

第四話「月一試験! そして新たな精霊!」

 

 

 

 

「メザシとエビフライは俺のジャスティス!」

「……いきなり何言ってんスか?」

「とゆーわけで、俺は明日の試験サボる。おやすみー」

 言うだけ言ってさっさと布団に潜り込む。

「ちょ!? 何考えてるんスか! 明日の試験でラー・イエローに昇級できるかが決まるんだよ!? それをサボるって……」

 えーだって。

「この寮意外と居心地良くてさー。メザシもエビフライもおいしいし、出ていく気が失せた」

 ちなみに、本心だ。いいよねメザシ。日本人の心だよ。

「メザシごときのために昇級のチャンスをふいにするとかありえないッスよ!」

「……お前は俺の大切なものを土足で踏み荒らした!」

「どんだけメザシ好きなんスか!」

 ネタだよネタ。好きなのは事実だが。

「でもほら、十代も寝てるし」

「アニキはサボるんじゃなくて試験自体気にしてないっぽいッスからね……」

「だしょだしょ? ぶっちゃけ俺ならペーパーテスト程度ならラクラク通過できるし、実技の方は別に上の寮上がらなくたってできるじゃん。てか、レッド寮で十代相手にデュエルする方が絶対有意義だし。よって結論。実はこの寮天国」

「……その無駄な自信が心底うらやましいッス」

 翔はずっと『死者蘇生』に向かって祈り続けている。……よし、『死者蘇生』を『降格処分』と入れ替えておこう。いや、むしろ『墓場からの呼び声』の方にするか。

 ピッピー、ピッピーと最近すっかりお馴染となった電子音。メールボックスを開く。

『アテナです。セツ、明日はとうとう月一試験ですね! 応援に行きますので、頑張ってください! セツがオベリスク・ブルーに来る日を待ってます』

「すまん翔。俺も明日、出ざるを得なくなった」

「……もうベタ惚れじゃないッスか。なんで告白オッケーしてないんスか?」

「別に惚れてるからってわけじゃねー。それを別にしたって可愛い女の子が応援してくれるってのに頑張らないのは男の子として恥ずべきことだ」

 いや、確かにこないだのデュエルでかなり心が揺れたのも事実なんだが。

『そもそも主様。わたくしたちの主として、不真面目な生活態度は看過できませんわ! 不純異性交遊などはもっての外です!』

『わしはいいと思うんじゃがのー。キャワイイオンナノコのために頑張る方が精神衛生に良いわい』

『私は……その、ノーコメントとさせていただきます』

「だぁ! お前ら三人場所取り過ぎ! この部屋せまいんだから、出るならせめて一人ずつ! 三人一遍に出てきたら人口密度が高すぎる!」

 いつものように唐突に現れては説教してくるクィーンたちをカードに戻す。いや、キングの爺さんは説教とかしないけど。むしろ煽ってくる。

「けど試験はめんどいなー。俺の嫌いな言葉ベスト100くらいには余裕で入るぜ」

「嫌いな言葉、そんなにあるんスか?」

 ノリだよノリ。いやまぁ、嫌いだが。

「ほれ翔、そこの問い7、間違ってるぞ」

「へっ!? あ! ホントだ」

「あと、そこの大問3、軒並み違う。つーかお前、各所にケアレスミスが目立つな。焦り過ぎ慌て過ぎ」

「うぅ……ホント、無駄に賢いのが悔しいッス」

 そらそうだ。せめて賢くなきゃオタクはただのニート予備軍だからな。これでも俺、勉強においては学年トップだった。

「しゃーねい。臨時の家庭教師してやるぜい。貸し二な」

「雪だるま式に借りが増えていくッス~」

「んじゃやめるか」

「あわわ、お願いします!」

 よっこいせと体を起して翔の勉強を見てやる。

「いいかー。お前そこまでバカじゃないんだから慌てず落ち着いて行けや~。ほれまたケアレスミス」

「あうう~」

 言ってるそばから。

「……ふむ。翔、やっぱ今日はもう休め」

「けど……」

「お前に必要なのは心の余裕だな。なにがあったか知らんけど、急がば回れ、急いては事を仕損じる、だぜ」

「うん……」

「だーいじょぶだぁって。落ち着いて~余裕持って~翔はできる子元気な子~」

 なんか小さい子相手にしてる気になってきた。だって翔、必死に背伸びしてる子供みたいだし。

「ありがとう……でも、せめてもうちょっとだけやってからにするッス」

「……ったく、しゃーねーのー。明日居眠りしても知らねーぜ?」

「大丈夫ッス。セツ君こそ、また入学試験の時みたいに回答欄ずらして書かないようにしなよ」

 むぅ、面倒なことを覚えてやがる。そもそも実質俺はその試験受けてねーし。

「ま、別に落ちても命(タマ)盗られるわけじゃあるまいに。気楽に行こうや」

 ポンポンと翔の頭を撫でてやる。って、マジで子供扱いだな俺。現実年齢なら兎も角、ここじゃ歳変わらんってのに。

 ……さぁて、俺もアテナに返信してから寝るとしますか。

 

 

 

 翌朝。原作通り、トメさんを手伝っていた十代が遅刻ギリギリに会場へ入ってきて、万丈目との一悶着。試験開始。五分で全部埋めてやった。楽勝。

「お疲れ様ですセツ。どうでしたか?」

「おーお疲れアテナ。ぶっちゃけ楽勝」

「わぁ! ホントですか? 回答欄ずれたりしてないですよね?」

「流石に連続でそれはねーって。つか、十代ってば開始一分で居眠りとか。翔も船漕いでたし」

 原作では翔もたしか十代と一緒に居眠りしてたはずだから、前日に寝るよう勧めといた甲斐は一応あった、ってことかね。

「三沢ー? お前は十代たちとカード買いにいかねーの?」

「セツか。いや、俺は今の自分のデッキを信頼しているからな。特に新しいカードを買うつもりはない」

「んだなー。つーか試験直前に新しいカード買って入れても計算狂うだけだしな」

「まったくだ。デッキの構築は緻密な計算式の上に成り立つ。その場しのぎでどうにかするものじゃない」

 全面的に同意。が、ぶっちゃけこの世界じゃー、大事なのって計算よりリアルラックだし。十代が計画立ててデッキ構築してるとは思えん。あの鬼引きがなきゃ回らねーよあんなバランス悪いデッキ。

「アテナの方は?」

「えと、私も大丈夫です。この間のデュエルでちょっと気になったとことか修正したので、今日の試験で試してみようかなぁって」

「な~る。まさにテストデュエルってわけだ」

「はい! ちなみにこんな感じなんですけど……」

 アテナにデッキを渡される。……んー。

「やけにモンスターの多いデッキだな」

 三沢に同意。

「あー、もしかして、テテュスがいるからか?」

「はい。それと、『アテナ』の効果も効率よく使うために……」

 ん? 今『アテナ』のカードが光った気が……おわっ。

『……んぇ? ふあ、あぁぁぁ。よく寝たわー』

 ……精霊こうりーん。つか、なんか軽いんですけど。『アテナ』がなんかめっちゃ軽い感じなんですけど。

『ん~? あー、キミよね。あたしを目覚めさせてくれたの』

「目覚めさせたって……あんた、アテナのカードだろ」

『そうよ。私はアテナ』

「……ベタな。んや~そうでなくて。そっちの子、アテナってんだけど、お前さんのマスターはソッチ」

『ああ、そういうこと。みたいね。結びつきを感じるわ。けど、まだ見えてはいないみたいね』

「そうなん?」

『ええ。だから今の貴方は、はたから見てとてもイタイ子』

 ……それはよ言ってくれい。確かになんかアテナ(人間)と三沢の視線が痛い。

「えっと、セツ?」

「……あーいや、気にしないでくれ。ちょっと幽霊さんとO☆HA☆NA☆SHI☆してただけだから」

『幽霊とはお言葉。これでも天使よ? 偉い天使さまよ?』

「黙っとれ」

「セツ、昨日ちゃんとゆっくり寝ました? 疲れてません?」

「……憑かれてはいるかもな」

 上手いこと言った。座布団プリーズ!

「ほ、保健室……とか」

「いらんいらんいらん! 俺平気! 俺正常! 全然だいじょびだから!」

 っく! おいそこの幽霊モドキ!

『せめて精霊って言ってねい』

「どうでもよろしい。後で話聞かせれ。今は黙れ」

『注文の多い……』

「料理店でもなんでもいいからとにかく黙れ。俺の社会的LPがそろそろゼロだ」

『もうゼロっぽいわねえ……』

 見ると、すでに三沢は自分の席に戻ってデッキをいじっていた。とりあえず、こっちを向く気はなさそうだ。ちくせう。そんなだからやがて空気君としてフェードアウトしていくんだい。

「セツ……」

 ノウッ! アテナがなんか憐れんだ目でこちらを見ている! マズイ! こうなりゃ自棄だ。無理を承知でアテナ(人間)にもアテナ(精霊)が見えるようにしてやる。

「アテナ、よく聞いてくれ」

 がっしと肩を両手で掴んで目を合わせる。

「は、はいっ」

「……ちょっとこの辺りに注目して見てくれ」

 アテナ(精霊)の居る辺りを指差す。『人を指差しちゃいけないでしょー』だかなんだかほざいているのは無視。

「なにか……見えないか?」

「え、えっと……」

 ……っく! あまり使いたくなかった手だが、背に腹は代えられん。

「見るんだ! 愛の力で!」

「あ、愛!? がんばります!!」

『なんやねんそれ』

 なんか俗っぽいツッコミが聞こえた気がするけど努めて無視。

「むむむ……っは!?」

『うそっ!? 成功!?』

「あ、『アテナ』がいます!」

 俺もまさか本当に成功するとは思わなかった。

「マジか……ひゅう、こいつはびっくりだぜ」

 愛、恐るべしと言ったところか。

「せ、セツ。なんでソリッドビジョン通してないのに『アテナ』が? 一体どういう……」

「まあ経緯はともかく、見えるようになったなら話は早い。そいつはカードの精霊っつーやつでな。ときどき出る」

『出るって……どこまでも幽霊扱いしてくれるわね』

 やかまし。てめえの所為で俺の人としての尊厳が最低ラインまで貶められたんでい。

「もしかして、セツも持ってるんですか?」

「んぁ? まあなー。クィーン」

『……はい』

 呼びかけてみると、心なしかムスッとした様子のクィーンが現れた。

『……なにかご用でしょうか』

 ありゃりゃ、とってもご機嫌ナナメ。

「わ、『クィーンズ・ナイト』ですか? なるほど……ってなんか私睨まれてます!?」

 そりゃもうすごい形相だ。このっ……小娘が……! ってな具合である。……失敗したな。ジャック辺りにしとけばよかった。

「というわけでジャックー」

『……主様。できれば収拾つかなくなったら私を呼ぶのは勘弁していただけませんか?』

「うん。それ無理」

 使いやすいセリフだ。そして使われたらイラッとくるセリフだ眉毛さん。

『はぁ……ほら、クィーン。主様が迷惑していますよ』

『……わたくしとて、好きで不機嫌になっているわけでは……』

『それはわかっています。貴女も女であることも。ですがそれでも、貴女は騎士なのですから。主君を困らせることはなりません』

『……はい。申し訳ありません主様』

 よし。丸く収まった。ジャックの不幸は能力があることだな。

「まあ、こんなやつらだ。あと、一応『キングス・ナイト』もいる」

 めっさ好々爺チックだが。

「精霊って……結構一杯いるんですね」

「どうだろね。俺が知ってる限りじゃ、十代のハネクリボーくらいだけど」

「見たいです! ハネクリボーは是非とも見たいです!」

 わお。すごい食い付き。まあハネクリボー可愛いしな。

「あと、もうわかってるかもしれんけど、普通の人にゃ見えんから、人前では話さないほうがいいな。……さっきの俺みたいになるから」

 さっきの俺を思い出したのか、アテナ(人間)は目を逸らして乾いた笑いを浮かべる。ってか、いい加減このアテナ(人間)ってもの面倒だな。

「なあ、こいつに名前つけてやろうぜ」

「名前……ですか? アテナじゃ……」

「紛らわしい。アテナって呼ぶだけじゃどっちに呼びかけてんだかわかりゃしない」

『それもそうねえ……まあ、人間界での俗称くらい付けてもらってもバチは当てないわよ』

 当たらない、じゃなく当てない、なんだな。流石天使。

「んー。セツ、なにか良い名前あります?」

「んにゃ。お前の精霊なんだし、お前がつけんのが妥当じゃね?」

 そも、俺にネーミングセンスを求めんな。めちゃ厨二な名前つけんぞ。

「じゃあ……シャルナ」

『それでよし。決定よ』

 即断即決!?

「ま、良い響きではあるな。どうやって考えたんだ?」

 俺がそう尋ねると、アテナはちょっと恥ずかしそうに頬を染めてはにかんだ。

「えと、フィーリングで……」

『……狙ってこの名前ならびっくりだけど、偶然でってのも逆に驚きね』

「なんか言ったかシャルナ」

『何でもないわ。それよりセツ、そろそろ試験とやらが始まるんじゃないのん?』

 うお、確かに。そろそろ始まる時間じゃん。

 シャルナの登場ですっかり忘れていたが、実技試験がこれから始まる。

「よし、まあ気を取り直して行ってみますか!」

「セツ、がんばりましょう!」

 アテナの声援を受け、俺はさらにやる気をみなぎらせて実技試験に臨むのだった。

 

 

 

 

 




 アテナの精神コマンドは幸運・直感・突撃・鉄壁・愛。エースボーナスで愛の消費SPが減ります。なんのこっちゃ。
 それでは、悠でした!
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