ル「今回は、これ」
『天使の施し』
さ「強力だね~チートだね~。今更さだめが何か解説する必要、ある?」
ル「……三枚ドローと墓地肥やし。手札枚数はプラマイゼロ」
さ「手札から捨てたカードを利用するもよし、単純に手札交換目的で使うもよし。まあほぼどんなデッキに入れても機能するパワーカードだね」
ル「使い方は無限大」
さ「だからこそ、元の世界じゃ禁止カードなんだけどね」
アルカナ~切り札の騎士~
第二期第二十話「深まる謎と歪み」
ルインLP4000
希望LP4000
「さて、先攻は譲ろう」
「……なら私のターン、ドロー」
真中希望と名乗った男とルインのデュエル。さだめは前ダーク化していた頃に、ルインがデュエルするところを何度か見ているし、その実力的にはかなりの物だった筈だから大丈夫だとは思うけど……。
「私は手札から『天空の使者 ゼラディアス』の効果を発動。デッキから『天空の聖域』を手札に加えて発動」
フィールドが雲の上に浮かぶ神殿のようになる。この聖域では天使族に戦闘ダメージを与えることができなくなる。
「モンスターを守備表示でセット。ターンエンド」
「ふむ。『ホーリー・ジェラル』辺りが濃厚かな?『天空の聖域』の影響下では良い効果を持つモンスターだ」
「!?」
真中希望はあっさりとルインの守備モンスターを見抜く。
「まさか、イカサマ?」
さだめの疑問に、真中希望は涼しい顔で否定する。
「そんなつもりはないけど、そう取られても仕方ないかな。僕のターン、ドロー」
あくまで冷静に真中希望はカードをドローする。
「モンスターをセット。カードを一枚セットしてターンエンドだ」
「私のターン。ドロー」
相手は特に動かず、守りの姿勢。守備モンスターが守備力2000の『ホーリー・ジェラル』だとわかっているからなのか、まったく攻撃をする様子も見せない。
「……なら、守りに入ったことを後悔させる。手札から儀式魔法『エンド・オブ・ザ・ワールド』を発動する」
「ほう……『ホーリー・ジェラル』と手札のモンスターをリリースして君自身を呼ぶか」
「っ……その通り」
真中希望の予想通り、ルインの手札から『英知の代行者 マーキュリー』とフィールドの『ホーリー・ジェラル』がリリースされる。そして儀式召喚されたのは『破滅の女神ルイン』。不気味なくらいにルインの手を言い当てている。
『破滅の女神ルイン』ATK2300
「私はリリースした『ホーリー・ジェラル』の効果でライフを1000ポイント回復する」
ルインLP4000→5000
ルインと謎の男のデュエル。希望と名乗った男、なんでルインの手札や守備モンスターを一発で言い当ててるの?
「あれ……なんだろ、こんなことどこかであったような……」
さだめは思い出そうとするけれど、頭に靄がかかったようになっていてどうしても思い出せない。
「ともかく、状況は一応ルインが有利だね……」
ルイン自身の効果は戦闘でモンスターを破壊した後、もう一度だけ続けて攻撃できるというもの。相手の守備モンスターが何かはわからないけど、あの伏せカードだけ注意していればほぼ確実に相手に大ダメージを与えられるはず。
「ルインが勝てば、もしかして色々教えてくれるのかな。結構色々知ってそうだったし」
ルインの過去に登場したという謎の人間。一体どんなデュエルをするんだろう……。
「更に私は装備魔法『ダグラの剣』を私に装備。手札から『創造の代行者 ヴィーナス』を攻撃表示で召喚。私自身で守備モンスターに攻撃。『滅光吸斬』」
『破滅の女神ルイン』ATK2300→2800
『創造の代行者 ヴィーナス』ATK1600
ルインの手に不思議な形の剣が握られ、その剣が守備モンスターを切り裂く。切り裂いたのは三つの目玉を持った悪魔。
「僕は『クリッター』の効果を発動しよう。デッキから『クリボー』を手札に加える」
「……私は相手モンスターを戦闘で破壊した場合、もう一度だけ続けて攻撃することができる。私自身でプレイヤーにダイレクトアタック」
「手札から、今しがた手札に加えた『クリボー』を墓地に捨てて効果発動。戦闘ダメージを一度だけゼロにする」
「……『創造の代行者ヴィーナス』でダイレクトアタック」
「リバースカード『クリボーを呼ぶ笛』発動。デッキから『ハネクリボー』を特殊召喚しよう」
『ハネクリボー』DEF200
「続行。『ハネクリボー』を攻撃」
ルインの剣が十代の相棒と同じ『ハネクリボー』を切り裂く。
「……ターンエンド」
ルインとしてはこのターンで決めるつもりだったのか、少々不満そうだ。攻撃力2800のルイン自身と1600のヴィーナスの攻撃が通っていれば、希望のライフはゼロだったはず。でも実際にはたった一枚のリバースカードと守備モンスターで全て凌がれ、相手ライフは1ポイントも減っていない。それに引き換えルイン自身はライフこそ回復したものの、手札はゼロ。相手の手札は未だ四枚。次のドローで五枚だ。結果的には大損といったところか。
「僕のターン。ドロー」
とはいえ、ボードアドバンテージは完全にルインの方が上。ルインの攻撃力は早々簡単には上回れないし、上回ったとしても『天空の聖域』がある限り戦闘ダメージは受けない。
「僕は魔法カード『天使の施し』を発動。三枚ドローして二枚捨てる。僕はこの時『暗黒界の刺客 カーキ』と『暗黒界の策士 グリン』を捨てることにより両者の効果を発動。『破滅の女神ルイン』と『天空の聖域』を破壊しよう」
「く、ぅ……!?」
自らの分身を破壊されて僅かに苦悶の声を上げるルイン。けど、こんなに簡単にボードアドバンテージまで……。
「手札も減ってないし……」
信じがたいプレイングセンスだ。
「更に『魔法石の採掘』を発動。手札から『スケルエンジェル』と『マシュマロン』を墓地に送って墓地の『天使の施し』を手札に戻す。そのまま発動」
真中希望はまた『天使の施し』でカードを引き、墓地に捨てる。今度は暗黒界じゃなかたみたいで、特に何らかの効果が発動されるわけじゃなかった。でも、墓地に送られたのは『紫光の宣告者』と『ワタポン』。どちらも光属性の天使族。まさか……。
「……さてルイン。すまないけど、僕はこれでも多忙の身でね。今も人を待たせているし、余り長々とやっては居られない。このターンでケリをつけよう」
「!?」
「僕は墓地に存在する『クリッター』『クリボー』『暗黒界の刺客 カーキ』『ハネクリボー』をゲームから除外し、光と闇を統べる神を呼ぶ。『天魔神 ノーレラス』」
『天魔神 ノーレラス』ATK2400
墓地から闇と光が放たれて混ざり合う。その混沌から現れたのは一柱の神。
「まだだ。僕は更に墓地の『スケルエンジェル』『マシュマロン』『ワタポン』『暗黒界の策士 グリン』をゲームから除外。ノーレラスの対。『天魔神 エンライズ』」
『天魔神 エンライズ』ATK2400
天魔が……もう一体。そして真中希望の手札は残り一枚。
「そして、僕はまだこのターン通常召喚を行っていない。手札から『死霊騎士デスカリバー・ナイト』を攻撃表示で召喚。バトル」
『死霊騎士デスカリバー・ナイト』ATK1900
ルインのフィールドに伏せカードはない。手札もゼロ。モンスターは攻撃力1600の『創造の代行者 ヴィーナス』ただ一体。
真中希望のフィールドは、攻撃力2400の天魔神二体と1900の死霊騎士。
「手札もないから、特に『オネスト』を警戒する必要もなさそうだね」
「うそ……一ターンでボードアドバンテージまで逆転して……ワン、キル?」
完璧だ。手札も使い切り、ライフを全く減らすことなくワンターンキル。正にパーフェクトデュエル。完全封殺。
「終わりにしよう。三体のモンスターで攻撃」
「く……ぁあ!?」
ルインLP4000→0
デュエルが終わった後、さだめは真中希望を問い詰める。
「どうしてルインの手が読めたの? どんなイカサマ?」
「さっきも言ったけど、僕はイカサマなんてしていないよ」
「信じらんないよ」
「そこは、信じてくれとしか言えないな」
問い詰めても話にならない。
「じゃあ、今度はさだめとデュエルして。それで勝てば……」
「すまない。さっきも言ったけれど、これでも多忙なんだ。今日はここまでにしておこう」
「……なにも話すつもりはないの?」
「まさか。それじゃあ本格的に何をしに来たのかわからないじゃないか」
「え、それって……」
「こんなデュエルしなくても、必要なことは答えてくれた、ということ」
ルインの説明でようやく理解する。つまり……。
「……私の負けは無駄骨」
珍しく苦々しげにルインがそう答える。
「さて……まずは今日僕たちが現れた理由だけど、一つはルインへの挨拶だ」
「私……」
「君のことは気になっていたからね。元気なのは知っていたけど、直接顔を合わせるのも良いかと思ってね」
「もう一つは何なの? ルインへの挨拶とかは思い切りついでじゃん」
「ごもっとも。もう一つは君だ。御堂運命。君に忠告……というかアドバイスを少々」
アドバイス? というか今更だけどこの人さだめの名前とかも知ってるんだ。
「君のお兄さん。御堂切を起点として、異邦の存在が次々と現れてきている。それにより、この世界に歪みが広がっている」
「異邦の存在……イレギュラーのこと?」
「そう。例えばこの場にいる全員がそうだ。僕はまた別枠だけどね」
とするとさだめとルイン。お兄ちゃんもそうなら希冴姫さんやもしかしたらアテナとかもそうなのかも。
「世界はそれほど脆くはない。一つ二つの|異邦人(イレギュラー)なら世界の方で勝手に修正を施す。例えば、鍵の守護者が色々な要因が重なって元々あるべき形に修正されたりね」
「!?」
この人、セブンスターズの事件も知ってる。
「だが、世界の修正力。或いは強制力はそう何度も使っていれば逆に世界のバランスが崩れる。それほどに大きな力だからだ。そしてそのバランスを整えようとして世界は更に力を使う」
「完全に負の連鎖だね。それが?」
「わかるだろう? バランスを失った世界が行きつく先は、当然終焉だ。そうだね。君たちがこの後に遭遇する破滅よりもよほど危険な、世界自体の終焉さ」
この後……遭遇する。
「その終焉を引き寄せているのは……」
「……さだめだとでも?」
「いいや。お兄さんの方さ」
「お兄ちゃんが?」
何故? その疑問に反応したのはルインだった。
「……終焉の花嫁」
「それだ」
満足そうに真中希望はルインを指差した。
以前、ルインから聞いた。ルインとお兄ちゃんは終焉に好かれる。それが今回も当てはまったということ?
「だからこそ僕は、君にも会いに来たんだ。ルイン」
「私と彼が、終焉を呼んでいる?」
「そうなるね。そして、その時寄り代となるだろう存在が……」
「……さだめ?」
「その通り。終焉との相性が抜群で、終焉を引き寄せる者を兄に持つ君こそが、その寄り代だ。だからこその忠告さ」
また、さだめが迷惑かけるのか……。
「君たち兄妹の存在は、過去を捏造し未来を壊し|現実(いま)を変質させる。『世界』としては、そろそろ黙ってはいられない頃だろうね」
「そんな……」
過去を捏造する。つまり、ルインの過去なんかも……。
「そう。君たちが現れなければ存在し得なかった過去となる。君たちの存在が、様々な形で|異邦人(イレギュラー)を引き寄せて世界のバランスを狂わせる」
「さ、さだめたちは……」
どうすればいい? もしかしたら、さだめたちの存在がこの世界を壊してしまうかもしれない。流石にさだめも焦らざるを得ない。
「そこでアドバイスだ。異邦の力を集めて束ね、歪みを消してくれ。僕たちは世界が終焉に呑まれるのを良しとしない」
「集めて束ねる……?」
一致団結するってこと? そもそもどのあたりまでをイレギュラーと呼ぶのかわからない。
「……もし、それが成らなかった場合、僕は君たちをこの世界から抹消せざるを得なくなる。そうならないよう、頑張ってほしいものだね」
「なら、全部聞きたいことを教えてくれても良いじゃない」
そうすれば話は速いのに。
「……それができれば早いけど、世界としては君たちのような存在を消したくてたまらないらしいね。僕の発言にもある程度の規制がかかっている。ほら、禁則事項ですってやつだよ」
……そう上手い話はないよね……。
「というわけで、僕たちはこれで」
言いたいことだけ言ってさっさと去ろうとする真中希望。
「あっとそうだ。ルイン。プレゼントだ。受け取るといい」
「……これは?」
ルインが手渡されたカードに目を向ける。さだめもつられて覗き込む。
「君に与える力だよ。是非使いこなして、さだめたちの力になってあげるといい」
「これは……」
数枚のカード。それはさだめにとっては見たことのあるカード群。そして、ルインのデッキには非常にシナジーするカードだった。
立ち去り際、真中希望は首だけこちらに向けて質問を投げかけてきた。
「ああそういえばさだめ。君たちは……」
「なに?」
「原作知識、どのくらい覚えてる?」
「っ!」
「じゃあね」
コツコツコツ……。薄暗い洋館に真中希望の革靴の音だけが響く。
そうだ……そうだよ。
「さだめ、原作がこの後どうなったか、全然思い出せない!」
さっきから頭に靄がかかったようになっていた正体がようやくわかった。こっちに来た時はあったはずの、原作知識が綺麗さっぱりなくなってるんだ。
横で原作知識ってなに? と尋ねてくるルインの声を半ば無視して、さだめは呆然とその場に立ち尽くした。
その頃、旅館で寛いでいるアテナとセツ。そしてすっかり意気投合した上月光の三人は……。
「へぇ、それじゃあアテナったら出会ったその場で告白しちゃったんだ?」
「は、はい……」
「いいわねいいわねそういうの! ドキューン! ときてズバキューン! となっちゃったわけね!?」
「いや、光さん飲み過ぎですよ。つかペース早いな……」
すっかり酒盛り状態と化していた。肴は主にアテナとセツの恋愛話である。
「大丈夫よ。私すっごいウワバミだから。底なしよ~♪」
「いや、そりゃこのペース見ればなんとなくわかりますけど」
既に一升瓶を二本空けている。もうすぐ三本目も空に……今なった。
「ぷはっ! ん~でもやっぱり私、お邪魔よね。折角こうしてアテナたち二人で旅行に来たのに私が居たらイチャつけないでしょ?」
「えと、でも光お姉さんのお話は楽しいですよ?」
確かに目論見とは違ったが、こうしてセツと楽しい時間を過ごすのも望んでいなかったわけじゃない。
「いやダメダメ。やっぱり若い二人の邪魔はできないわよ」
「光お姉さんだって十分若いんですが……」
「ん~どれくらいに見える?」
「えと、二十歳くらい……ですか?」
「ふふー。まあそんなところにしておいてよ。それじゃあアテナ。折角アテナはアカデミアの生徒なんだし、部屋に戻る前に一度デュエルしてみましょうよ」
「え? 私はいいですけど……」
「大丈夫。私だって結構強いんだから。油断してると足下救われるわよ?」
「ディスクは……」
「大丈夫よ。私二つ持ってるから」
アカデミアのデュエルディスクは流石に旅行先までは持って来れなかった。だが偶然にも光が二つ持ってきていた。なんでも、連れの人とやるために持ってきていたらしい。
「よーし! それじゃあ景気づけに一発派手にやりましょ! デュエル!」
「はい! よろしくお願いします! デュエル!」
こうして、さだめたちの方とは違い、和気あいあいとした雰囲気の中アテナ対光のデュエルが開始されるのだった。
と、いうわけでここらからアルカナのシリアス度合いが強化されていくわけでございます。とりあえず、第三期及び第四期はほぼシリアス一辺倒になります!……あれ? なったっけ? なるといいなぁ。ならないかも?
まあそれはさておき、今回の希望のデッキですが、クリボー天魔神でございます。いや、結構手を加えているのでそうとも言い切れませんが。前書きのさだめたちが紹介している天使の施しあっての構築ですし。強いですよね~天使の施し。強欲な壷が戻ってくることがあっても、天使の施しが戻ってくることはないでしょう。
それでは、悠でした!