アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『神獣王バルバロス』
さ「攻撃力3000の妥協召喚モンスターの筆頭格だね」
ル「妥協召喚した場合、攻撃力は1900」
さ「それだけでも結構強いんだけど、三体のモンスターをリリースして召喚したときは、相手フィールドのカードを一掃するリセット効果があるよ。正直、このカードの所為でギルフォード・ザ・ライトニングとかモイスチャー星人なんかが殆ど下位互換と化してるくらい。妥協召喚モンスターっていうと、まず比較対象にされるね」
ル「全体破壊は強力……好きじゃない」
さ「あー、そういやデミスもそうだったねぇ……」


第二期第二十一話「楽しいかい?」

アルカナ~切り札の騎士~

第二期第二十一話「楽しいかい?」

 

 

 

 

「さって、先攻後攻はどうする?」

「えと、どちらがいいですか?」

「私はどちらでも。そうね。じゃあ後攻ってことで」

「わかりました。じゃあ先攻、行かせてもらいますね。ドロー!」

 アテナLP4000

 光LP4000

 さて……あの光さんは一体どんなデッキなんだろうな。名前そのまま光属性でミラーマッチってのもあるかもしれないが……なんとなく、あの人の性格にはあっていない気もする。

「私は手札から永続魔法『神の居城―ヴァルハラ』を発動します! 手札の『The splendid VENUS』を攻撃表示で特殊召喚! 更にモンスターを一体セットしてターンエンドです!」

 『The splendid VENUS』ATK2800

 早速アテナはいつも通りヴァルハラで最上級天使、しかも今回は実質攻撃力3300クラスの『The splendid VENUS』だ。悪くない展開と言っていいだろう。

「へぇ。天使ビートかぁ……大人しい顔してパワーデッキなんだ。ちょっと意外ね」

「ただのビートダウンのつもりはありませんよ?」

 少し挑発的な調子でアテナが言う。確かに、他のハイビートとは一線を画す程の爆発力やギミックを搭載している。バーン要素もあるのでかなり凶悪なハイビートと言っていいだろう。

「ちょっとセツ。凶悪は酷いです」

「心の声を読むな。さだめかお前は」

「最近ちょっとだけさだめさんの言い分が理解できるようになってきました」

「あれが二人とかマジで勘弁してくださいアテナ様」

 流石にそれは体も心も持ちそうにない。

「楽しそうねぇあんたたち……」

 なんかちょっと呆れられてる。まあ確かに結構愉快な関係性ではあるかもしれない。

「ま、私の方も他の人のことを言ってられないけど。私のターンでいいかしら?」

「あ、はいすみません」

「んじゃ私のターン、ドロー!……ちょっと似たようなタイプのデッキで驚いたわ。アテナ」

「え?」

 やはり光属性のデッキか……?

「ああ違うわよ。私が似ているって思ったのはね……こういうこと! 私は手札から『神獣王バルバロス』を攻撃表示で召喚! バルバロスはレベル8だけど、攻撃力を1900に下げることによりリリースなしで召喚できるわ!」

「まさか……上級モンスター主体のハイビート……!?」

「デュエルは全速前進あるのみ! ってのが信条なの。個人的には、海馬瀬人さんとかのデュエル、結構好きよ?」

 あの『粉砕玉砕大喝采うわーはっはっはっはっはっ!』のデュエルか。

「というわけで、手札から魔法カード『アドバンスドロー』の効果を発動! フィールドに存在するレベル8以上のモンスター一体をリリースして効果発動! デッキからカードを二枚ドローするわ!」

「ドロー補助? 確かにバルバロスでは『The splendid VENUS』は倒せませんけど……」

 フィールドも結局空になる。どうするつもりだ?

「そして速攻魔法『デーモンとの駆け引き』発動! 自分フィールド上のレベル8以上のモンスターが墓地に送られたターンに発動可能! さあ、私のエースを見せてあげるわ!」

「『デーモンとの駆け引き』!? やば、その手があったか!」

 それなら『神獣王バルバロス』と『アドバンスドロー』を使えば実質手札消費一枚で特殊召喚できる!

「来なさい狂気の屍竜!『バーサーク・デッド・ドラゴン』!」

 『バーサーク・デッド・ドラゴン』ATK3500→3000

「こ、これは……」

 攻撃力3500! アテナの『The splendid VENUS』でも太刀打ちできない凶悪な全体攻撃モンスター!『The splendid VENUS』の効果で攻撃力は500ポイント下がっているが、それでも尚『The splendid VENUS』を上回る攻撃力!

「さあ行くわよ! バトルフェイズ!『バーサーク・デッド・ドラゴン』で、アテナの場の『The splendid VENUS』を攻撃!『バーサーク・デッド・ブレイズ』!」

「きゃああ!?」

 アテナLP4000→3800

 『バーサーク・デッド・ドラゴン』ATK3000→3500

「まだよ!『バーサーク・デッド・ドラゴン』はフィールドに存在する全てのモンスターに一回ずつ攻撃が可能! アテナの裏守備モンスターを攻撃!『バーサーク・デッド・ブレイズ』!」

「っ私の守備モンスターは『ジェルエンデュオ』! 戦闘によっては破壊されません!」

 よし! 次に繋いだ!『バーサーク・デッド・ドラゴン』は最初こそ凶悪極まりないが、徐々に攻撃力がダウンしていく。これで後次のターンだけ凌げれば……。

「面倒くさいモンスター。私そういう戦闘で破壊できないモンスターとか嫌いなのよね。まあいいわ。私はカードを二枚セットしてターンエンド。エンドフェイズ時に『バーサーク・デッド・ドラゴン』は攻撃力を500ポイントダウンする。狂気の暴走は長くは続かないってところかしらね」

 『バーサーク・デッド・ドラゴン』ATK3500→3000

「わ、私のターン。ドロー!」

 アテナの奴、動揺してるな。元々あんなハイビートを扱っている以上、ああもあっさり攻撃力を上回られたことが少ないんだろう。慣れない状況かもしれないな。元々アテナや光さんみたいなハイビートタイプは先手を取られると痛い。こんな状況だと特にどうすればいいのかわからないのかもしれない。

「私はモンスターを一体守備表示でセット。ターンを終了します……」

「しゃらくさい! 守りの姿勢はもっと好かないの! リバーストラップ発動!『最終突撃命令』! その裏守備はともかく『ジェルエンデュオ』には攻撃表示になってもらうわ!」

「そんなっ!?」

 『ジェルエンデュオ』ATK1700

 まずい……こいつは……。

「私のターン、ドロー!……アテナ。あんたのデッキの真の力、見てみたかったけど、残念ながらこれで終わりみたいね」

「え……」

「一応『オネスト』対策だけはしておくわ。トラップカード『あまのじゃくの呪い』!」

 げっ……。

「このカードの発動ターンのみ、攻撃力守備力のアップダウンは反転するわ! よって攻撃力が500ポイントダウンしている『バーサーク・デッド・ドラゴン』の攻撃力は500ポイントアップして4000! そして『オネスト』は発動したところで無意味よ!」

 『バーサーク・デッド・ドラゴン』ATK3000→4000

 このタイミングで『オネスト』を使えば『バーサーク・デッド・ドラゴン』の攻撃力4000ポイントダウンする効果に変わる。

「あ……」

「蹴散らしなさい!『バーサーク・デッド・ドラゴン』で『ジェルエンデュオ』を攻撃!『バーサーク・デッド・ブレイズ』!」

「きゃああああっ!」

 アテナLP3800→1500

 アテナの『ジェルエンデュオ』は、ダメージを受けたので自壊してしまう。

「そしてその裏守備モンスターにも攻撃!『バーサーク・デッド・ブレイズ』!」

「ま、『マシュマロン』の効果で1000ポイントのダメージです」

 光LP4000→3000

「ダメージステップ時に『最終突撃命令』の効果!『マシュマロン』の表示形式は攻撃表示として処理! 終わりよ!」

「きゃあああああああっ!?」

 アテナLP1500→0

 正に……『粉砕玉砕大喝采』的なデュエルスタイル……。『最終突撃命令』と『バーサーク・デッド・ドラゴン』の攻撃はライフ4000じゃとても堪え切れるもんじゃない。その上『あまのじゃくの呪い』で『バーサーク・デッド・ドラゴン』のデメリットすらメリット扱い。そして『オネスト』も効かない完全なパワーデッキ。

「まあ相性が悪かったのもあるわよ。アテナのデッキ、殆ど罠カードとか入ってないでしょ。私のデッキなんて『魔法の筒』一発で大打撃受けちゃうしさ。その癖『最終突撃命令』とか使うとなるとお触れとか使うわけにもいかないし」

 確かに、真正面からぶつかり合うタイプのデッキに対しては滅法強いが絡め手を使われるとあっさり瓦解しそうなデッキではある。『バーサーク・デッド・ドラゴン』の攻撃力もアルカナよりは下だし、もしかして俺がやったら結構あっさり勝利してしまいそうな感じもする。

 どこか呆然とした様子で座り込んでいるアテナに手を貸して立ち上がらせる。

「私……そう言えば負けちゃったのってすごく久しぶりかもしれません」

「そういえば……最後に負けたのっていつだ? テストデュエルは除いて」

「いえ……それを入れたとしても最後に負けたのは闇モードのさだめさんにワンキルされた時以来かと……」

 マジか……そんなのもう数ヶ月は前のことじゃないか。そんな前から無敗だったのか……恐れ入った。

「まー基本的にデュエルも色んなものと同じで負けて成長するものよ。私も散々アイツに……まあそれはともかく、アテナもこれでしっかり負けられたんだし、良かったんじゃない?」

「……そうかもしれません。このままだと私、慢心して嫌な子になっちゃうかもしれませんでした。光お姉さん。ありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして」

 負けて成長……か。そう言えば、俺も最後に負けたのはいつだったかな。テストデュエルとかでは散々負けてる気もするけど、ソリッドビジョンを通したデュエルだと俺はネイキッドにしか負けてない。そして、そのデュエルのおかげで俺は強くなれた。

「俺も……負けるべきなのかもしれないな」

 もちろん、手加減して、ということじゃない。それじゃ何の意味もない。本気でデュエルして、完膚なきまでに負ける。そんな経験が必要なのかもしれない。

「それじゃあ私はこれで部屋に戻るわね。楽しかったわ。それと、邪魔して悪かったわね」

「いえそんな……私の方こそ、色々とありがとうございました」

 アテナがぺこりとお辞儀をして、光さんを部屋から送り出す。と……。

 コンコンッ。

「あら?」

「誰でしょう……旅館の人でしょうか」

「もしかして、騒ぎ過ぎたか?」

 心当たりは大いにある。何しろアテナと光さんのデュエルで光さんが散々大声で宣言とかをしている。……光さんが。

「う……そんな目で見ないでよ。悪かったってば」

「はい。どなたですか?」

 とりあえずアテナが応対するために声をかける。すぐに返事が返ってきた。

『すまない、入らせて貰っても構わないかな?』

「! この声……」

「お知り合いですか?」

「ええまあ。私は居るわよ」

 光さんが声をかけると、扉の向こうから安堵した気配が伝わってくる。

『ああ良かった。呆れて帰ってしまったんじゃないかと、心配していたんだ』

 ガチャリ。

「ごめんね。光。急に用事が入ってしまった」

「ないわね。あんたのことだから、どうせ端からそれが目的でこの旅館に来たんでしょ? ったく……人をダシにするのも大概にしなさいね。“希望”」

 扉を開けて入ってきたのは超絶美形の欧州系の顔立ちをした長身の男。

「君たちも。いきなり上がり込んでしまってすまない。光が迷惑をかけてないかい?」

「わ。い、いえ光お姉さんにはとてもよくして頂いて……」

 一々行動が絵になる男だった。男の俺でも周囲にキラキラエフェクトがかかっているような錯覚を覚える。ここまでだと嫌みにもならん。ただ呆れるだけだ。

「それでも、恋人同士の旅行を結果的にこうして邪魔していることに違いはないだろうに」

「……よく言うわよ。何も話してくれなかったけど。そういうことでしょ? あんたの目的の、そのためのピースとして私を配置したのよね」

「付き合いが長いだけのことはあるね。お見通しか」

「……ったく。そんなことしてると、いつか愛想尽きちゃうわよ」

「それは困るな。これでも君のことは本気で愛しているつもりなんだけど」

「……ばか」

「な、なんだか話はよくわかりませんが、いいなぁ……」

「なにが?」

「あんな風に、ストレートに愛を伝えてくれるのは、女の子にとっては憧れみたいなものなんです。セツも見習ってくださいね」

 無理だな。あんな気障ったらしいセリフ、所謂『ただし、イケメンに限る』みたいなもんだし。あの欧州系のいかにも王子様チックな外見で言われればそりゃあときめくこともあるだろうが、平凡な日本人の顔立ちであんなこと言ってみろ。恥掻くだけだ。

「……こないだのだってそこそこストレートだったつもりなんだけどな」

「何か言いましたか?」

「なんでもない」

 希望と呼ばれた男は顔を赤くする光さんの額にチュッと軽いキスを落としてからこちらに向き直った。

「まあともかく、君たちには何かお詫びをしなくちゃいけないね」

「い、良いです別に! 私たち、もっとランクの低いお部屋だったのを光さんがこうしてグレードアップしてくれましたし……」

「おや、そんなことをしていたのか。まあそれでも、僕の方は何のお詫びもしていないからね。台無しにしてしまうお詫びだ。どうか受け取って欲しい」

 ん……? 台無しに“してしまう”? してしまった、ではなく?

「これ……海馬ランドのプレミアム招待券!? ど、どうしてこんなものを……」

「何ィ!?」

 彼の言葉のニュアンスにちょっとだけ違和感を覚えた俺だったが、さらっと手渡されたとんでもないものにそんな疑問はあっさりと吹き飛んだ。

「プレミアム招待券って確か……」

「そう。一日どころか年間完全フリーパス。飲み放題食べ放題で特典付き。あの気に入った相手には太っ腹な瀬人らしいね。とりあえず六人分あるから、全部渡しておくよ」

 いや、渡しておくよってあんたの方が百倍太っ腹だろう。何者だこの人。

「うん? ああそう言えば、まだ自己紹介していなかったね。僕は真中希望。これでも、真中グループという企業で会長を務めさせてもらっている。まあ、ただ生家だったから後を継いだだけなんだけどね」

「ま、ま、ま、真中って……」

「知っているのか?」

 俺はまったく知らないが、アテナがすっかり真っ白になっている以上、相当でかい会社のようだ。そんなところの会長をこんな若さで?

「知らないんですか!? あの海馬グループやI&I社にも技術提供や多額の投資をして、海外貿易を中心に世界でも有数の規模を誇る大企業ですよ! その会長さんだなんて……」

「何、僕は会長。ただ高い椅子にふんぞり返って座っているだけのお飾りさ」

 なんてこった。この男、人生の勝ち組を地で行ってやがる。で、この旅館もグループの子会社が経営してるのな。

「まあ、僕の素性なんてどうでもいいじゃないか。それに、こうしていつまでも邪魔をするのは僕も本意じゃない」

「あっすみません。私たちと同じで、光お姉さんたちも旅行の最中だったんですよね」

「別にいいわよ。どうも、これで帰ることになりそうだしね」

「え……?」

 今日泊まりに来たのに、もう……? 今から夜になって、恋人同士ならこれからが本番といったところだろうに。

「流石、光はよくわかっている」

「もしかして、お仕事……ですか?」

「……さて。そんなところかな。それじゃあ、良い夜を。それと……――――――――?」

「っ!?」

 真中希望は、スッとアテナの耳元に顔を寄せると、何事か呟いた。アテナはサッと顔を蒼白にしてへたり込んでしまった。

「お、おいアテナ!? どうした!? おいお前!」

 しかし、その時には既に真中希望と光さんは姿を消していた。廊下を覗いてみても、その姿はどこにも確認できない。

「一体何を……アテナ、どうしたんだよ?」

「…………な……んで…………」

 血の気の引いた顔でそれまで真中希望の居た場所を呆然と見詰めるアテナ。

 一体なんだって言うんだ。あんな短い言葉だけでアテナがここまで動揺するなんて。俺にも幽かに聞こえてきた。確か……。

『人生は、楽しいかい?』

 そう言っていたように思える。この言葉のどこに、アテナがここまで動揺する要素が隠されていたのか。俺にはさっぱりわからない。

「教えてくれ……アテナ」

 しかしアテナは何も言わず、ただ「なんで……どうして……」と呟くばかりだ。

「これじゃ……確かに」

 “台無し”……だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、あの娘と友達になったわ」

「そうか。それは良かった」

「いい娘だった。とってもね」

「ああ、知っているよ」

「……あの二人、どうなるの?」

「……さて。未来は常に流転する。正確なところはわからないよ」

「どうして、あの娘たちに?」

「……彼女が目覚めてくれないと何も始まらない。だから今回、彼女に手を出した」

「そんなに重要なことなの?」

「運命を寄り代として終焉が胎動し、其を切り開く剣が眠る扉を開く。彼女は鍵だ。まずは鍵を開ける必要がある」

「私、携帯番号とか交換したの」

「そうか」

「アテナ、かけて来てくれるかしら……」

「……未来は常に流転する。正確なところはわからない。……ただ」

「ただ?」

「きっとかけて来てくれるさ。ちゃんと自分を受け入れて、全てが丸く収まった頃にね」

「そう、願うわ」

「人の祈りは、きっと現実になる。強く祈れば、きっとね」

 希望たちは夜の闇に消えていく。その目に確かな光を携えて……。

 

 

 

 

 

 




 バーサーク・デッド・ドラゴン……懐かしいモンスターです。なんだかんだで、攻撃力3500の全体攻撃モンスターは強いですよね。そしてデーモンとの駆け引きが他の特殊召喚カードに比べて扱いやすいのも利点です。


 さて。次回は急転直下の第二期ラスト。既に原作とか欠片もなくなってますが、第三期は多少原作イベントも待ってますのでお楽しみに。
 それでは、悠でした!
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