ル「今回は、これ」
『王立魔法図書館』
さ「あ~出た。害悪」
ル「そこまで言う?」
さ「言うね。めっちゃ言うね。数々のワンキル(エクゾ)のお供でありながら他の禁止・制限と違って今尚一切の制限を受けることなくのうのうと無制限で鎮座する悪魔の図書館だよこれ」
ル「ひどい言われよう」
さ「ドロー効果は一ターンに一度、とか付けときゃ良かったのにね」
アルカナ~切り札の騎士~
第三期第四話「バッドエンドは見飽きたよ」
コンコン。
「ルインー居るかー?」
希冴姫とルインに占拠されてしまった元・俺の部屋の扉をノックする。中からドガラガッシャンという凄まじい音と共に『ひゃああああーっ!?』とかいう希冴姫のものと思われる悲鳴が聞こえてきた。……まあルインがあんな悲鳴を上げるのは考えられないし、もし上げるのなら逆に見てみたい。
「……あー、希冴姫? 大丈夫か?」
『ご、御心配には及びませんわセツ様! しょ、少々取り乱しただけですので! で、ですがその、申し訳ありませんが少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?』
「ああ、別にいいよ。ゆっくり準備しな」
俺がそう希冴姫に声をかけ、数秒もしない内に『ちょ、お待ちなさいまだわたくしの用意が終わって……というか貴女もなんて格好で……』という希冴姫の焦った声が聞こえてきた。
「お待たせ」
「な」
思わず絶句する俺。
「あ、あああああああセツ様これはその……い、いえ何と言いますか……あぅあぅ」
俺が見たのは着替え途中でかなり着衣が乱れた状態であわあわしている希冴姫と、平然と下着姿で、堂々と俺を出迎えたルインの姿。
「……お兄ちゃ~ん。ちょぉぉぉっといい子にしててねぇ~……」
さだめは空恐ろしい笑顔で俺を牽制しつつ、固まっているルインを部屋の中に蹴り込んで扉を閉めた。
「……あー」
希冴姫たちの口論が聞こえてくる。
『なんという生き恥……セツ様にこのような……それもこれも貴女が……!』
『彼に肌を見られることに羞恥の感情はない。むしろ喜ばしい』
『それには全面的に同意するけどさだめ以外の女がやることには許容できない。っていうか他の人居たらどうするの』
『人の気配には気を配った。私も彼以外に肌を見せる気はない』
『そもそもお兄ちゃんを誘惑しようとするその性根が……』
『自分の武器を使わずに戦争には勝てない』
『くっ! この忌々しい巨乳族が! 万死に値するよ! 地獄に落ちて閻魔に舌じゃなくて乳抜かれて転生してくればいいのに……』
『きっと、前世でそうされたのが貴女』
『くきゃー!!』
『い・い・か・ら、早く服を着なさいな貴女は!』
……あー。って俺さっきからこればっかりだな。
まだしばらくドッタンバッタンと騒いでいたが、やがてそれも落ち着いたのか、再び扉が開かれた。
「……ま、予想はしていたが」
現れたのは目を回して突っ伏している希冴姫と下着姿の二人。一体何がどうなってそんなアホな状態になったのか、小一時間ほど問い詰めたい。
「どう!? お兄ちゃん」
「服着れアホ」
「冷ややか!?」
「妹の半裸に反応するとでも?」
「義妹!」
「実妹だ!」
「設定変更!」
「できるかっ!」
「私は?」
「服着れ。目の毒」
「顔が赤い!?」
「満足した」
「おのれ巨乳族!」
「これがブラの力」
「さだめもしてるし!」
「ベビードールレベルで何をほざく」
「くにゃーっ!」
「いいからとっとと服を着ろ馬鹿二人!」
結局この馬鹿二人が服を着るまでに、小一時間。俺と希冴姫の二人で説教するのに二時間近い時間をかけて、漸くデッキ調整に入れたのは、もう日も暮れかけた後の事であった。
「私のターン、ドローです!」
すまし顔で手札を確認するメイドさん――シャインさん――を見据え、私はドローしました。
「私は手札から『ヘカテリス』の効果を発動します! デッキから『神の居城―ヴァルハラ』を手札に加え、発動! 効果により手札から『光神機―轟龍』を攻撃表示で特殊召喚します!」
『光神機―轟龍』ATK2900
「更にモンスターを一体セット。ターンエンドです」
「では、わたくしのターン、ドローいたします」
あのメイドさん……どんなデッキを使うんでしょうか?
「わたくしは『王立魔法図書館』を守備表示で召喚いたします」
『王立魔法図書館』DEF2000
「魔法図書館!? 魔力カウンターですか!?」
シャインさんのフィールドに……というよりフィールドが書架に埋め尽くされ、中にはどういう原理か宙に浮いている本棚もあります。
「魔法カード『テラ・フォーミング』。デッキから『魔法都市エンディミオン』を手札に。発動いたします」
更に、フィールド全体がどこか神秘を内包した異界の都市へと変貌します。
「魔法使用により、『王立魔法図書館』に魔力カウンターが二つ乗ります」
『王立魔法図書館』カウンター:0→2
「更に魔法カード『魔力掌握』を発動。『魔法都市エンディミオン』に魔力カウンターをひとつ乗せ、デッキから『魔力掌握』を手札に加えます」
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:0→1
「魔法使用により、エンディミオン、及び『王立魔法図書館』にカウンターが乗ります」
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:1→2
『王立魔法図書館』魔力カウンター:2→3
「『王立魔法図書館』のモンスター効果を発動いたします。カウンター三つと引き換えに、デッキからカードをドローします」
『王立魔法図書館』魔力カウンター:3→0
シャインさんは今しがた引いたカードを見つめ、目をその銀色の眼を細めました。
「……それでは、今しがたドローしました『二重召喚』を発動させていただきます。『連弾の魔術師』を召喚」
『連弾の魔術師』ATK1600
『王立魔法図書館』魔力カウンター:0→1
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:2→3
「っ!」
あのモンスターは、確か……。
「『連弾の魔術師』が表側表示で存在する場合、わたくしが通常魔法を使用する度にアテナ様に400ポイントのダメージを与えます」
「バーンモンスター……!」
しかも、今見ている限りでも、シャインさんの魔法使用率は相当に高い。これを繰り返されたら……!
「わたくしは『魔法都市エンディミオン』の効果を使用いたします。一ターンに一度、魔力カウンターを消費する効果の発動時、魔力カウンターを肩代わりすることができます。『王立魔法図書館』の効果を使用します。ドロー」
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:3→0
「わたくしは手札から魔法カード『トゥーンのもくじ』を発動いたします。デッキから『トゥーンのもくじ』を手札に加え、発動。『トゥーンのもくじ』を手札に加えます」
「同名カードサーチ!? それに、トゥーンって……!」
I&I社の会長だけが使うカードだったはずじゃあ……。
「ペガサス会長とは親しくさせてもらっていてね。ちょっとしたコネってやつさ」
シャインさんの後ろで私たちのデュエルを鑑賞している真中希望さんがそう言っておどけます。
「効果処理です。エンディミオン及び図書館にカウンターが二つ。二度の通常魔法使用により、『連弾の魔術師』の効果で800ポイントのダメージでございます」
「ぐ、うぅ……!」
アテナLP4000→3200
『王立魔法図書館』魔力カウンター:1→3
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:0→2
「『王立魔法図書館』の効果により、カードをドロー」
『王立魔法図書館』魔力カウンター:3→0
「通常魔法『無欲な壷』の効果を発動。墓地の『トゥーンのもくじ』二枚をデッキに戻し、シャッフルいたします」
「なっ……!?」
またしても通常魔法の使用により、私のライフが削られ、魔力カウンターが乗ります。
アテナLP3200→2800
『王立魔法図書館』魔力カウンター:0→1
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:2→3
「『トゥーンのもくじ』を発動。『連弾の魔術師』の効果発動。エンディミオンと図書館にカウンターを乗せ、サーチした『トゥーンのもくじ』を発動。『連弾の魔術師』の効果でダメージ。エンディミオンと図書館にカウンターを乗せます」
「きゃあぁっ!?」
アテナLP2800→2400→2000
『王立魔法図書館』魔力カウンター:1→3
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:3→5
「そんな……!」
一瞬で私のライフは半分まで落ちてしまいました。まさか、ここまで……!
「『王立魔法図書館』の効果でカードをドロー」
『王立魔法図書館』魔力カウンター:3→0
淡々と、あくまで淡々と無表情でカードをプレイするシャインさんに、私は言い知れぬ恐怖を覚えます。しかも、ここまで長くプレイしていて尚、シャインさんの手札は五枚。たった一枚しか減っていないのです。
「手札から魔法カード『天使の施し』を発動。デッキからカードを三枚ドローし、手札から二枚を墓地へ。『連弾の魔術師』の効果発動。二枚のカードに魔力カウンターが乗ります」
「く……」
アテナLP2000→1600
『王立魔法図書館』魔力カウンター:0→1
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:5→6
「更に、たった今墓地へ送った『神聖魔導王エンディミオン』の効果を発動。『魔法都市エンディミオン』に乗った6つの魔力カウンターを取り除くことで、このカードは特殊召喚出来ます」
『神聖魔導王エンディミオン』ATK2700
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:6→0
「『神聖魔導王エンディミオン』がこの効果により特殊召喚に成功した場合、墓地の魔法カードを一枚手札に戻すことが出来ます。わたくしは『天使の施し』を選択し、手札に。使用いたします。『連弾の魔術師』のバーン効果発動。二枚のカードに魔力カウンターを乗せます」
「ま、また……っ!」
アテナLP1600→1200
『王立魔法図書館』魔力カウンター:1→2
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:0→1
「最後の『トゥーンのもくじ』を使い、デッキから『トゥーン・ヂェミナイエルフ』を手札に加えます。『連弾の魔術師』のバーン効果。二枚のカードに魔力カウンター」
「も、もう……ライフが!」
アテナLP1200→800
『王立魔法図書館』魔力カウンター:2→3
『魔法都市エンディミオン』魔力カウンター:1→2
一ターンでここまで削られるなんて……!
「『王立魔法図書館』の効果でドロー」
『王立魔法図書館』魔力カウンター:3→0
「て、手札七枚……? あれだけ、あれだけやって?」
「カードを三枚セット。ターンを終了しましょう」
戦慄する私が見えていないかのように、シャインさんは感情の読めない眼でエンド宣言をしました。
「わ、私のターン、ドローです!」
「スタンバイフェイズに罠カード『
「って、手札から『紫光の宣告者』の効果発動です!『堕天使スペルビア』と共に墓地に送って、その効果を無効にします!」
「はい」
あ、危なかったです……今のダメージが通っていれば、ダメージは800。私のライフは尽きていました。ですがこれで、折角稼いだ手札アドバンテージもシャインさんは使い果たしました。
「……甘いですね」
「え……」
「わたくしが何の策もなく、ただ無為に手札を消費したとでも?」
そう言ってシャインさんがオープンしたカード。それは……。
「罠カード『マジカル・エクスプロージョン』……わたくしの魔力は尽きること無くこんこんと湧き出でる泉。魔力の奔流、魔導の爆熱に焼かれ、焦土にその身を晒しなさい」
シャインさんの墓地の魔法カードは……。
「『天使の施し』及び『全弾発射』の効果により墓地へ送った魔法カードも含め13枚。合計2600ポイントのダメージになります。お疲れ様でした」
「まさか、また……また、そのカードで……っきゃあああああああああ!?」
アテナLP800→0
「くっ……」
デュエルが終わり、シャインさんが希望さんの後ろに控え直します。私は、無力感と虚脱感で思わず膝を着きました。
「やぁ、どうだった? 僕のシャインの力は」
「……なぜ、貴方自ら相手をしなかったんですか」
「わかってるんじゃないかな? 君自身が、誰よりもさ」
「…………」
わかっていました。それは、ただの実力不足。相手をするまでもないと侮られ、覆すこともできず、今こうして膝を屈している事実。それこそが、希望さんが自ら相手にしなかった理由。
「弱いな。君は」
「っ……!」
「実に弱い。君は、そんなに弱かったのか? セツのところにいた時の君は、もっと強かったよ」
「わ、わたしは……」
「覚悟は認める。だけど、それが裏目に出ることだってある」
「私は、セツのそばを離れるべきではなかった、と?」
「さあ? そう思うなら、それが君の望みなんだろう?」
「っ……」
私の、望み……。
「楽しかったんだろう? 幸せだったんだろう? なら、戻ればいいじゃないか」
あの、微温湯のように温かで、優しい世界に。
「君は負けたけれど、教えてあげよう。終焉の本体は君の愛する者のすぐそばに。今にも弾けて呑み込みそうなほどに大きく強く」
「っ!」
「欠片をいくら潰しても意味はない。いずれその生成速度に追いつかなくなって世界は終焉を迎える。セツもろとも」
癌細胞をチクチク潰しているようなものだ。そう言って希望さんは首を振る。
「じゃあ……どうすれば」
「随分と簡単な問いだ。答える価値すら感じない」
帰れと……セツたちの下へ……。
「だめ……ダメです。私は……」
「またセツの優しさに触れるのが怖い? 弱くなってしまいそう? もう一人では立てなくなる? きっと……」
「依存してしまいます……」
きっともう、離れられない。
「恋は人を弱くする。慣れ合うことで隙が生まれる。……なんだい? 君は僕に『恋は人を強くもするんだよ』だの『助け合い、協力することは何より尊い』とかそんなテンプレートでチープな説教をさせるつもりかい? まったく冗談じゃない。僕はただアテナ、君とセツたちの協力が要る。君たちが力を合わせなくちゃ終焉は打倒できない。世界を守るため、君には何としてもセツたちの下に戻って貰わなくてはならない。だからそのために、君がセツことを好きだというファクターが有利に働きそうだったから利用させて貰っているだけ」
その言葉に愕然とする。まさか……。
「私がっ! 私がセツのことが好きになったのはっ! まさか、まさか……」
「おっと、悲しい勘違いはすれ違いの元だ。君の感情を操作なんてするもんか。そんなことをするなら手っ取り早く君をセツたちの下に縛り付けておくような暗示をかけている。君の気持ちは君だけのものだ」
「あ……」
すごく、ほっとした自分がいました。セツへの気持ちは……。
「ウソじゃない。偽物の、人から強制された勘違いの愛なんかであそこまで人を愛することはできない」
「……」
「偽ることの天才であり常に自分すら偽り続けているセツが、偽りの愛に心動かされる筈もない。君の、君たちの愛は本物だ。何にも恥じることはない」
希望さんの言葉がスーっと心にしみてくる。セツへの気持ち、大好きな気持ち。全部本物だと、その言葉だけで泣きたくなるほどに嬉しい。
「でも」
「君は尚更自分を許さない。愛が本物だとわかったからこそ、疑心が消えて罪悪感が顔を出す」
そう……そうです。私は、セツを。
「それは、君がセツを“この世界に引き込んだ”張本人だから? それとも、さだめが“欠片にとり憑かれる”原因となったからか?」
やっぱり、知っていた。この人は、何もかも。
「そんなの……」
そんなの。
「両方に……決まっているじゃないですか……っ!」
私は今にも零れそうな涙を堪えて希望さんに向かって叫ぶ。今にも掠れて、消え入りそうな声だったけど。
「……血の滲むような慟哭だ。積もり積もった幸せが、取り戻した記憶と共に癌となって君の心を蝕んでいる。幸せな記憶を、心に突き刺さる棘として感じる不幸は、一体どれほどのものなのだろうね」
「帰って……ください」
もう、この人の言葉は聞きたくない。
「また逃げるのか? 現実から目を背けて? その行為が君を苦しめると知っていながら」
「帰って!!」
「……」
希望さんは背を向けた。
「……光が、君とまた友達になりたい、メールがしたいって、言ってたよ。僕も……次に会う時は、彼の傍らに佇む君を、見たいものだね。……もう、バッドエンドは見飽きたよ」
希望さんは最後に小さな声で何事か呟いて、立ち去って行きました。
「…………セツ」
逢いたい。逢えない。
「……最低、です」
貴方に不幸を押し付けて。貴方に好意を押し付けて。
「最後は裏切る。……本当に、最低」
夜の帳が落ちてくる。しばらくは、動きたくなかった。
今回のデュエルは非常に書くのが大変だったけど簡単だった(どっちだ)悠です。流れ自体は楽なんですけど、おんなじこと何度も何度も書かなきゃならなくてめっちゃめんどくさかったです。あ、ちなみに書き下ろし。改定前とは全く違う展開です。シャイン自体改定前の改定前にいた復刻キャラですしね。
今回のシャインのデッキは魔力カウンター(エンディミオン軸)と連弾バーンの合わせ技です。今回は使いませんでしたが、メガトン魔導キャノンなんかも入ってます。コンセプト、というかイメージはは東方の弾幕ゲー。個人的に気に入ってるデッキではあるんですが、書くのはめんどくさい。尚、最後にシャインが伏せた三枚の内、使われなかった一枚は『D2シールド』。アテナが図書館狙ってきたら返り討ちでした。万全。
それでは、悠でした!