アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『ダスト・シュート』
さ「手札破壊&ピーピングカードだね。使える状況は限られるけど、手札を全て確認した上で一枚をデッキに戻すっていう最高レベルの手札破壊ができるよ」
ル「戦略を読まれるのは痛い」
さ「一ターン目で使われるのが一番効くんだよね。これ」


第三期第七話「圧倒」

アルカナ~切り札の騎士~

第三期第七話「圧倒」

 

 

 

 

「やっほーお兄ちゃん。遊びに来たよ~」

 放課後、俺が帰り支度をしていると、教室の扉が開いてさだめと凛が顔を出した。

「よう、お前たちも授業終わったのか?」

「退屈だったけどね」

「言うな」

 元の世界で大学生だった俺は元より、高三だったさだめも、高一レベルの授業やデュエルの超基礎的知識を問うアカデミアの授業はそりゃ退屈だろうが。

「あと、なんか突っかかってきた一年坊をデュエルで叩き潰してきたから。それはそこそこ楽しめたかな~」

「……トラウマ作ってないだろうな?」

「大丈夫でしょ。別にそれほどメタったわけじゃないし、極々普通の次元ダークでブッ潰しただけだから」

 それなら大丈夫だろうが……。

「まあ、退屈でも授業はちゃんと受けておけ。俺みたいに、出席日数で頭悩ますのも馬鹿らしいだろ?」

「自分で言うんだ……」

 当事者だからな。是非反面教師にでもなんでもしてくれ。

「……でもさだめって本当に頭良かったんだね」

 半ば呆れたような口調でそう言う凛。

「まあ、何と言っても新入生代表だからね!」

 思い出したくもないがな。

「コイツも、頭の出来は悪くないんだよ。残念な思考回路しているけど」

 主に下ネタ方面に。

「うぅ、納得できないよ~セツ君もさだめちゃんも、何時の間に勉強してるの?」

 どうもそれほど勉強が得意ではないらしいユーキちゃんが若干涙目で問いかけてくる。

「俺は時間の開いた時にやってるぞ。さだめは知らんが」

「別にやってないよ? テストとかはお兄ちゃんにヤマ聞いて一夜漬けすればどうとでもなるし」

「セツ君は兎も角、さだめちゃんの何それズルイ」

「ふっ、表面だけ聞けばそうかもしれないけど、お兄ちゃんの勉強方法聞いたらさだめの方が幾分か常識的に思えるはずだよ」

「なんだ。人を非常識人みたいに」

 少なくともさだめにだけは非常識人扱いされたくはないが。

「セツの勉強方法ってどんなだよ? 教科書読んだだけ、とかか?」

 からかい半分、といった様子で剣士が尋ねてくる。

「いくらなんでもそんなわけないだろ。何者だよ俺は」

「いや、お前ならあり得そうだ」

 一体どういう評価をされているんだか。

「それで、どんな勉強方法なの~?」

 それは、と俺が答える前にさだめが得意げに話し始めた。

「右手で古文、左手で数学の問題集を解きながら英語のリスニング」

「え……」

「要するに、色んな教科を同時進行で進めるんだよ。お兄ちゃんは。両手にシャーペン持って、ヘッドフォン付けて三十分。これがお兄ちゃんの勉強スタイル」

「いやホントに何者だよお前は!」

 失敬な。人を化物か何かのように。

「時間が取れないんだ。効率よく進めることを突き詰めたら、同時進行になるのは当然の流れだろう?」

「だろう? じゃねえよ! んなことできんのはテメエくらいだ!」

「というか、時間が取れないのってなんで?」

「無駄スキルに磨きをかけるのに時間がかかるからな」

 どれもこれも、一朝一夕には極められないのが無駄スキルでもあるんだ。

「後は睡眠学習。これがまた効率いいんだ」

 何しろ寝ているだけで頭良くなるという優れモノである。授業中には必須のスキルだ。

「いや……普通睡眠学習ってのはそういうもんじゃねえと思うが……」

「授業はちゃんと聞こうよ~」

 呆れたと言った様子のユーキちゃんにも言われてしまった。むぅ、一体何が悪かったのか。

「それはそれとして、凛もよくコイツに付き合ってここに来たな。大分迷惑かけたのに」

「いえ……」

 凛は横目でチラリと剣士の方を見た。やっぱり、こいつらって何かあるのかね。まあ、詮索はしない方が良いかもしれんが。

「……勢揃い」

「ルイン、お前も来たのか」

「迎えに来た」

 そんな必要もないんだが……。

 しかし、本当にこれで勢揃いだ。そうなると、どうしてもあいつの言葉が思い起こされる。

「イレギュラーを集め束ねて……こういうこと、なのか……?」

 俺が思案の海に沈もうとした、丁度その時。

「やあ、ちゃんと僕のアドバイス通りに行動してくれて嬉しいよ。セツ」

「っ!?」

 そいつは、平然と現れた。

「真中……希望……!」

「久しぶりだね。セツ。元気になったようで何よりだ」

「……アテナは何処だ」

「何故僕に聞く? 別に僕がアテナを連れ去ったわけでもないのに」

「だが……」

 アテナが消えた原因。それに深くかかわっているコイツなら……。

「まあ、確かにアテナの居場所くらいなら知ってはいるんだけどね」

「! 何処だ!」

「……ふぅ。アテナといい君といい、どうしても君たちは“答え”を知りたがる。RPGをやる時、必ず攻略本を見ながらやるタイプだね。現代人は誰しも……」

「そんなことはどうでもいい!」

 コイツの言葉遊びに付き合うつもりはない。

「あ……」

「凛? もしかして、この人のこと知ってるの?」

 希望を見て、びっくりした表情を見せる凛。

「私の所属している芸能事務所の、スポンサーです」

「なに?」

「職業柄、知り合いは多い方だよ。とはいえ、初めて会う子もいるけれど」

 希望は剣士に目を向ける。

「まあ、それはいいさ。それよりも、だ」

 真中希望は、俺に目を戻す。

「どうしても、聞きたいかい? “答え”を」

「当たり前だ」

「仕方ない。なら、アテナに言ったのと同じ提案をしようか」

「提案?」

「僕とデュエルして、勝てばいい。そうしたら、君たちの知りたいこと、一言一句漏らさずに、解決法その他諸々プラスα含めて話してあげよう。それが、この世界のルールであることだし、ね」

 真中希望は悠然とデュエルディスクを構える。……上等だ。

「イマイチお前の目的が判然としないが……アテナの居場所がわかるっていうんなら容赦しない。全力で勝つ」

「彼は強い。気をつけて」

 以前戦い、負けたというルインが忠告してくる。

「そう、アテナにも言ったけど……僕は強いよ? 君たちが考えているよりもずっとね」

 関係ない。ルインやさだめは、コイツが心を読む力を持っているかもしれないと言っていたが、俺だって、負けるわけにはいかない!

「「デュエル」」

 セツLP4000

 希望LP4000

「さて、たまには先攻を譲ってもらおうか。ドロー」

 ルインに聞いたコイツのデッキは光属性天使と闇属性悪魔のカオス。だが、それを鵜呑みにするつもりはない。

「僕はモンスターをセット。カードを二枚セットしてターンを終了しよう」

「俺のターン、ドロー!」

「リバースカードオープン」

「!」

「『ダスト・シュート』だ。手札を公開して貰おう」

「くっ……」

 俺の手札は『オネスト』『切り札の騎士―クィーン』『豊穣のアルテミス』『マジック・ジャマー』『アルカナソード クローバー』『切り札の騎士―テンス』の六枚。

「そうだね。『切り札の騎士―クィーン』には退場しておいて貰おうか」

『セツ様……申し訳ありません』

 希冴姫がすまなそうにデッキに戻って行く。

「ち……なら、俺は『豊穣のアルテミス』を攻撃表示で召喚! バトルフェイズ!」

 『豊穣のアルテミス』ATK1600

 アイツの守備モンスターが何かはわからない。だが、情報を得るためにリバースさせる!

「俺は『豊穣のアルテミス』で守備モンスターに攻撃する!」

「残念。僕の守備モンスターは『ペンギン・ナイトメア』だ。守備力は1800。残念ながら、『豊穣のアルテミス』では突破できない」

 『ペンギン・ナイトメア』DEF1800

「ぐ……」

 セツLP4000→3800

 アルテミスの攻撃は、燕尾服を纏ったヘンなペンギンにブロックされてしまう。しかもアイツは……!

「『ペンギン・ナイトメア』がリバースした際、バウンス効果が発動する。『豊穣のアルテミス』にはもうしばらく休んでいて貰おうか」

「くそ……俺はカードを二枚セットしてターンエンドだ」

 俺が伏せたカードは、アイツにはバレバレだろうが、伏せないのもおかしい。

「僕のターン、ドロー。僕は『闇の指名者』を発動する。宣言するカードは『オネスト』だ」

「なに……?」

 俺のデッキには確かにもう一枚『オネスト』が入っている。だが、なぜ態々……。

「……俺はデッキから『オネスト』を手札に加える」

「おや、カウンターはしないのかい?」

「アドバンテージを稼がせてくれるカードに態々カウンターして手札を減らすような馬鹿はしない」

 アルテミスも戻されてしまったので、『マジック・ジャマー』を使えばディスアドバンテージにしかならないしな。

「そうかそうか……甘いな」

「!?」

「僕は手札から『疫病狼』を攻撃表示で召喚。効果で攻撃力を倍の2000ポイントにアップ。バトルフェイズだ」

 『疫病狼』ATK1000→2000

 不味い。俺のフィールドにモンスターはいない……!

「『疫病狼』でプレイヤーにダイレクトアタック」

「ぐあっ……!」

 セツLP3800→1800

「メインフェイズ2にリバースカードオープン『魔のデッキ破壊ウイルス』」

「なにっ……!?」

「知っていると思うけど、このカードは攻撃力2000以上の闇属性モンスター一体をリリースして、君のフィールド上、手札に存在する攻撃力1500以下のモンスターを全て破壊し、墓地に送る。僕は攻撃力2000の『疫病狼』をリリース」

「くっ……!?」

 俺の手札には二体の『オネスト』と『切り札の騎士―テンス』。辛うじて『豊穣のアルテミス』は引っかからないが……。

「僕はカードを一枚セット。ターンエンドだ」

「っ……俺のターン! ドロー!」

「ドローしたカードを確認させてもらおう」

「……『ジャム・ウォリアー』だ」

「では、『魔のデッキ破壊ウイルス』の効果で破壊だ」

「……俺は」

「ストップ。リバースカード発動だ。『マインド・クラッシュ』」

「な……」

「宣言するのは、当然『豊穣のアルテミス』。捨てて貰おうか」

 これで……。

「君の手札はゼロ。リバースカードは二枚とも判明しているしね」

「…………」

 何も……出来ない……?

「た、ターン、エンド」

「僕のターン、ドロー。残念だ、セツ。君は……思った以上に、弱いな」

「っ!!」

「僕は『ペンギン・ナイトメア』をリリースし、『野望のゴーファー』をアドバンス召喚。バトルフェイズにダイレクトアタックだ」

 『野望のゴーファー』ATK2400

「ぐああああああっ!?」

 セツLP0

「……そんな」

 ここまであっさり……?

 何も……何もできないままに……?

「ずっと、僕のターンだったね」

「…………」

 圧倒的だ。コイツが人の心を読めるとか、読めないとか。そういう問題じゃない。

「心なんて読めなかったとしても、全く関係のない戦略……」

「そうだね。正直、僕の力を考えれば、別にピーピングカードなんて使う必要もなかったわけだけど。それじゃあ君たちも納得できないだろう?」

 確かに……コイツがもし、ピーピングも何もなしでハンデスを使ってきたのなら、卑怯だ、とでもなんとでも言えた。だが……。

「僕は、この力の性質上、どう足掻いても正々堂々とはいかない。だから、本来なら君とデュエルして徹底的に叩きつぶすような役回りは向いてなかったんだけどね」

 愕然とする俺を前に、真中希望は淡々と言葉を紡ぐ。

「隔絶しているから。君たちとは。だが、それでもセツには敗北を見て貰いたかった。本来なら、その役目は他の……そう。君たちにやって貰いたかったが……」

 そう言って、真中希望は俺たちのデュエルを呆然と見学していたメンバーを見渡す。

「結局、セツがまともに敗北したのはネイキッドだけ。ここまで負けなしを続けていたら、セツが弱くなってしまいそうでね。過干渉はしたくなかったが……」

「思った通りにことが運ばなくてイラついたのか?」

 むしろ自身がイラついているような剣士の言葉に、真中希望は苦笑気味に肩をすくめた。

「さだめたち、貴方のコマでもなんでもないんだもん。思い通りにいかないのは当然だよ」

「ゲームマスター気取りなら帰って」

 さだめとルインの容赦ない口撃にも、真中希望は特に気にした様子も見せない。

「……嫌われたものだね。そこまで悪いことをしたかな?」

「貴方が来てから、みんなおかしくなっちゃったんだよ? アテナちゃんがいなくなったのも、セツくんが元気をなくしたのも。……好きになんてなれないよ~」

「……そうだね。もっともだ」

 寂しそうな笑顔で頷く。

「言い訳はしない。確かに、アテナが行方不明になったのは僕の一言が原因だ」

 『人生は、楽しいかい?』だったか。

「一体、あの言葉に何の意味があったんだ」

「セツ。君はもう、僕に質問する権利を失った。僕は敗者の言葉に耳を傾けない」

「っ!」

 そうだ……俺は、負けたんだ。何もできず、あっさりと。圧倒的な実力差で。

「……じゃあ、オレが質問する。それなら構わねえだろ」

「剣士……」

「じゃ、さだめも。お兄ちゃんやルインの仇もとってやりたいし」

 他の皆も一斉にディスクを構える。

「みんな……」

「事の次第は、さだめから聞きましたから。正直、許せません」

「……本当に、嫌われたものだね」

 ――なら、とことんまで嫌われ役に徹そうか。

 他の皆には聞こえない。近くに居た俺にもギリギリ聞こえるかどうかといった声量でそうつぶやいた希望は、その背の高さを使ってその場に居る全員を見下す。

「いいだろう。一人一人、なんてそんな悠長なことをしている時間はない。……全員纏めてかかってくるといい」

「なっ……!?」

 この場に居る全員……!? 希望の言うところの敗者である俺とルイン、デュエルをしない希冴姫を除けばその人数は四人。それを纏めて……!?

「ば、馬鹿にしてんのか!」

「そうだ。馬鹿にしている」

「……」

 はっきりと、断言した。馬鹿にしていると。冷たい目で、彼らを見下しながら。

「無様に大声を張り上げ、気合でドローが変わると本気で信じている。滑稽過ぎて最早笑いも起きないね。優雅さの欠片もない」

 クックッと心底から馬鹿にしたような笑い声を上げる。

「セツを負かしてくれるかと期待していたのに、情けない。もうちょっとくらい優秀だと思っていたんだが」

「テメエ……」

 全員の殺気染みた視線を浴びても、真中希望の余裕は崩れない。涼やかに、ただ視線を受け流すだけだ。

「そうだね。どうせだからハンディキャップもつけようか」

 それどころか、更に怒りを煽るような言葉を続ける。

「君たちは一人につきライフ4000。合計で16000だね。それで僕は……」

 真中希望は、あくまでも不敵な笑みを浮かべたまま……、

「1、あればいい」

 とんでもない条件を平然と繰り出した。

 

 

 

 

 




 はい、というわけで次回は超ハンデキャップマッチです。四対一。しかも一撃貰えば即終了のライフで希望はどのようなデュエルをするのか、こうご期待!……って散々ハードルを上げてしまうと後で泣くのは作者なので、あんまり期待しないでください。泣きます。
 それでは、悠でした!
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