アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第三期第十一話「アカデミアの……」

アルカナ~切り札の騎士~

第三期第十一話「アカデミアの……」

 

 

 

 

 ルインの看護の甲斐もあってか、俺の風邪は見事に完治し、俺は普段通りの生活に戻っていた。

 それにしても、今回は風邪で一日休んだだけだってのに、クロノス先生の嫌味が多いこと多いこと。……まあ、タダでさえオシリス・レッドの人間で、去年も殆どお情けで進級させてもらっただけみたいな出席率だったから、気持ちはわからなくもないが。

「ただいまーっと……ん?」

 そのクロノス先生の説教も済まし、いつものように十代たちの部屋に戻ってくると、十代と翔といういつものメンバーの中に、一人見慣れないラー・イエローの制服を纏ったガタイの良い男がいた。

「おっ、帰ってきたな」

「おかえりッス。セツくん」

「おう、ただいま……で、そちらさんは?」

「アンタこそ、誰ドン? 人に名前を尋ねるときは、自分から名乗るものザウルス!」

 ド、ドン? ザウルス? え、なにその語尾。ギャグ?

 思わぬ言葉遣いに、一瞬ポカンとしてしまったが、気を取り直して俺も自己紹介することにした。言っていること自体はまともだったからな。

「悪い。俺は御堂切。諸事情あって、十代たちの部屋の居候をやっている。セツって呼んでくれればいい」

「オレはティラノ剣山。本日付で、十代のアニキの舎弟にして貰ったんだドン!」

「僕は認めてないけどね」

「丸藤先輩に認められる必要なんてないザウルス!」

 あ、あー……これは、アレだな。イレギュラーじゃなさそうだな。ここまで『あり得ない』個性の在り方は、うん。ない。

「それにしても、驚いたドン! まさか、『デュエルアカデミアのカリスマ』であるアニキに引き続き、あの……」

「お、なんだ? 俺にも通り名みたいなのがついてるのか?」

 そうだとしたら、なにやらこそばゆいものがあるな。まあ、ユーキちゃんの『沈黙の闇狩人』みたいに不本意な二つ名である場合も考えられるんだが……あ、さだめの『悪夢の創造者』は、正にその通り、これ以上なくピッタリだから除外。

「『デュエルアカデミアのラブコメ担当』までいるなんて……」

「よっし剣山クン……オモテ、出よか?」

「な、なんだドン!? 今、このオレの生存本能が警告を発したザウルス!」

「っていうか、なんで関西弁なんスか!?」

 なんちゅう二つ名だ! まったく……

「不本意、極まりない!」

「この上なく、ピッタリだと思うッス」

「オレも……同感」

「お前らまで何言ってんだ! 俺は……」

 ふと、今までの俺の日常を振り返ってみた。

 入学初日、告白される。

     ↓

 妹と彼女候補(アテナ)のイザコザで大変な騒動。

     ↓

 計五人の女性からの告白を未だ保留中。

     ↓

 その他諸々恋の鞘当て的騒動の数々。

 ……ゴメンナサイ否定できる気がしません。

「っていうか、我ながら酷い……特に三番目」

「オレとしては、あの入学式の騒動では度肝を抜かれたドン!」

「ああっ! 会う新入生皆に言われる! おのれあの馬鹿今度お仕置きを……あ、いや、アイツにどんなことをすればお仕置きになるのか想像もつかん。温いと悦びそうだし、やり過ぎると危険だし……ああもう!」

「な、なんだか良くわからないけど、すごく苦労してそうだドン……」

「うん、まあ……羨ましいのと等量くらいには遠慮したくもなるッスね……」

「オレは絶対ゴメンだぜ……」

 恋愛事に然程の興味を持っていない十代からすれば、ただ苦労してるだけだしな。

「で、それよりなんで剣山はそんな大荷物なんだ?」

「今日からここでお世話になるドン!」

「……ちょっと待て。流石にこれ以上は定員オーバーじゃないか?」

「そうそう。だから大人しくイエロー寮に戻りなよ。剣山君」

「嫌だドン! オレは、絶対にここで暮らすザウルス!」

「だから定員オーバーだって言ってるでしょ!?」

「ガウゥ~!!」

「うう~!!」

「あー……」

 ったく……仕方ないな。

「じゃあ、俺が部屋変わるよ。それで問題なしだ」

「え!?」

「お、おいセツ!」

「さ、流石にそれは気が引けるドン!」

「心配すんな。当てはある」

 幸い、最近になってこのレッド寮に知り合いは増えたんだ。剣士にでも頼みこもう。編入生は全員レッドからって制度に感謝だな。

 

 

 

 そう思って、とりあえず剣士の部屋に来てみたのだが……。

「すまん、定員オーバーだ」

「ぬぐっ……」

 剣士のところも、何やら三人くらい纏めて押し込められていてとてもじゃないが俺が入るスペースはないようだった。

「なぁセツ、やっぱオレたちの部屋に戻ろうぜ?」

「そうッスよ。剣山君をイエローに戻らせればいいんスから」

「オレとしちゃあ、アニキの部屋にいたいとは思うザウルス。けど、御堂先輩を追いだしてってのは気が引けるドン」

「あー、いいっていいって。お前こそ、ヘンな遠慮すんなよ」

 いやまあ、確かに道理で考えれば剣山をイエローに戻すのが当然なんだろうが。

「まあ確かに……他に交流あるレッド男子は特にいないのも事実なんだよな……」

 そもそも、下手に相部屋にでもなろうものなら寝首を掻かれる心配をしなくちゃならない。主に、アテナの件とかアテナの件とかアテナの件とか。

「何言ってんだよ。いるじゃんか。まだ二人しか入ってなくて、セツを喜んで受け入れてくれそうな部屋がさ!」

「……あるッスね~。まあちょっと別の意味で問題ありそうッスけど」

「元々お前の部屋だったんだろ?」

 十代が明るく提案してくれたその部屋は、確かに受け入れてくれそうではある。あるのだが……。

「お前ら……敢えて考えないようにしてきた可能性をここで穿り返すのか……?」

 なんというか……あそこはダメだ。色々と、ダメだ。確かに寝首を掻かれる心配はする必要ないが、それ以外に、ある意味もっと大事な心配をしなくちゃいけなくなる。

「私たちは大歓迎」

「っっ!?!?」

 突如首に回された腕と、聞き覚えのある声に思わず体が硬直する。

「……そこまで驚かなくても」

 慌てて振り向くと、ちょっぴり傷ついた表情のルインがそこにいた。どうでもいいが、さだめといいルインといい、普段攻めッ気の強い奴は打たれ弱い傾向にある気がするな……アテナなんかは結構打たれ強かった気がするんだが……。

「い、いや、あんまりタイミング良く現れたもんだからつい……」

 ちょっとだけ、捕食者に目をつけられた獲物の心境だったことは黙っておこう。

「……そう」

「で、なんでいきなり現れたんだ? こいつらに何か用でもあったのか?」

「噂されたから、影が差した」

「諺に忠実!」

「本当のところは、キミが部屋を探してることを聞いたから、攫いに……じゃなくて、勧誘しに来た」

「うん、ベタな言い間違い本当にありがとうございました。そして断らざるを得ない」

 その、本音を隠す気もないらしい正直さは、時として美徳にも悪徳にもなると言うことを学んで欲しいところだ。

「据え膳を食わないのは、恥」

「むしろ、俺自身が据え膳な気がするのですが」

 俺、思わず敬語。

「否定はしない」

 ルイン、大真面目に肯定。

 結論。

「謹んで、お断りさせていただきたく……」

「拒否することを、拒否する」

「拒否することを拒否することを、拒否する」

「……私は乗らない」

「そうか。なら、俺は拒否するぞ」

「問答無用という言葉がある」

「ゑ?」

「実力行使、という言葉も、ある」

「ありますね」

「私は、言葉の意味に忠実」

「割とさっきから、そんな感じですねルインさん」

 現に、今後ろ手に縛られそうになっているのを必死で抵抗しているところだ。文面からは伝わり難かろうが。今、必死の攻防戦が、行われております。

「……じゃあ、選択肢」

「……ほほう。一応聞いておこうか」

「私たちの部屋と、妹のh「さあ、お前たちの部屋に荷物を運ぶぞ。手伝ってくれ」……計画通り(ニヤリ)」

「待て待て待て! お前、今賢明な判断をしたように見えて、物凄く危険な、言うなればアメリカと不平等条約を結んだ日本みたいな感じだぞ!」

「そ、そうッスよ! 妹さんの部屋は女子寮ッス! 選ぶ選ばない以前に、そっちで暮らせるハズが……」

「さだめなら、やりかねん」

「「「た、確かに……」」」

 一言で納得するこの説得力。さだめの名が持つネームバリューは凄まじいな。

「……妹さんが許しても、他の人間が許さないんじゃないか?」

「俺の無駄スキルに、『場の空気に溶け込んでしまう程度の能力』というものが、あってだな」

 本来ならありえない、非常識非日常でも、このスキルの前では常識日常に早変わり。

「……初めて、あのスキルが無駄なところで発揮されたな……」

 だからこその、無駄スキルであることを御理解いただきたい所存。

「そもそも、男子だ女子だと言う時点で発生する問題なら、ルインと希冴姫の時点で発生していて然りだろうが」

 俺の言葉に、三人はハッとして顔を見合わせた。

「ま、まったく不思議に思ってなかったぜ……」

「素直に、受け入れていたっス……」

「これが、セツの無駄スキルの本領……」

 ……まあこれも、普通じゃないさだめや俺を、少しでも馴染ませるために培われたスキルなんだが……。

「とにかく、さだめの部屋で生活とか、十分後には奴がシンデレラを卒業している事請けあいだろうな」

「わかりにくい表現だが、わかった」

 こっちも少しでも規制から逃れるので必死なんだ。悪いな。

「……大丈夫。私は抜け駆けをしない。前にも言った」

 ……まあ、確かにそこら辺も安心要素の一つなんだよな。何だかんだで、ルインと希冴姫なら安心なんだ。

「……むしろ、アテナとかだったりした方が危険そうで……」

 いや、何も言うまい。

「あ、ちなみに加藤さんの部屋とかだったらどうだったんスか?」

 少しからかい気味に、そんなことを言いだした翔。俺は如何にも呆れた、という表情で返してやる。

「……あのな? ユーキちゃんは女の子なんだぞ? 女の子の部屋に男が同居とか、やっちゃダメだろう。常識的に」

「お前、今までの一連の会話を思い出してからしゃべれ」

「何かおかしいか?」

「セツ君、真顔なんスけど……」

「誰か、翻訳頼む」

「多分、今のセツのセリフには“普通の”っていう修飾語が抜けていたんじゃねえのか? ほら、女の子の前に」

「「なるほど」」

「そういや、希冴姫は? アイツもいいって言っているのか?」

「心配ない。あのお姫様が、キミを拒絶する筈がない」

「それは……まあ、そうかもしれんが」

 それでも、一応は聞いてみるのが筋ってことで、荷物を運び入れる前にルイン達の部屋に行くことにした。

「ええ、もちろん大歓迎ですわ! それに、元々この部屋はセツ様のものですもの。もし問題があったら、どちらかと言えばわたくしたちが立ち退かねばならないでしょう」

「いや、そんなことないって。もうここは、お前たちの部屋だよ」

 案の定、と言っていいのか、希冴姫はあっさり許可してくれた。むしろ結果的に部屋を追い出す形にしてしまったことを謝る形で。

「……ところで、希冴姫。やっぱり体、良くないのか?」

 ふと、気になったことを尋ねてみる。希冴姫は、もう放課後の時間だと言うのに寝間着姿で、ベッドに横たわっていた。昨日ルインから、体調を崩したと聞いてはいたが……。

「なんか……今の希冴姫は……」

 すごく、弱々しい感じがする。ただの体調不良と言うには、ちょっと……。

「だ、大丈夫ですわ。少し……慣れない人間界に体が驚いただけですわ。御心配してくださって、ありがとうございます」

「そっか……もし、何日かしてもまだ体調が良くないときは言ってくれ。それまでは、俺が看病するよ」

「本当に……お気遣い、感謝しますわ」

 覇気がない。いつもの希冴姫から感じる、溌剌とした、凛とした雰囲気が感じられない。

「ルイン、荷物運び、手伝ってくれ。今日から、とりあえずここで寝起きするよ」

「……わかった」

 希冴姫の看病もできるし、ここで過ごすことは間違ってないだろう。ルインだって、こんな状態の希冴姫を無視してどうこう、なんてする奴じゃない。

 むしろ、ルインがこの部屋に俺を誘ったのは、そう言う理由もあったのかもしれない。

 その日は引っ越しと、希冴姫の看病で一日が過ぎて行った。

 

 

 

 

 

「え? カイザーの次の対戦相手が決まった?」

「そうッス!」

 数日後、めでたくラー・イエローに昇格することが出来た翔が持ってきたのは、そんな知らせだった。

 相手はエド・フェニックス。以前、十代と売れ残っていた8パックのみで組んだ即席デッキでデュエルして、十代を敗北寸前まで追い詰めた相手らしい。

 ……というか、その時のデュエル内容を聞かせてもらったが、売れ残り8パックで十代を追い詰めたことよりも、売れ残り8パックでよりにもよって『大天使ゼラート』を召喚できるデッキを組めた事実こそが脅威だと思う。元の世界でアレを、あのカードを手に入れるためにどれだけ苦労したと……。

「これまで30戦負けなしのプロデュエリスト、ね……」

 エド・フェニックスについての情報は、それこそ山のようにあった。『プロデュエル界の貴公子』とかいう通り名も持つ、非常に将来有望な若手ということで、いくつもの雑誌で特集が組まれていた。

 ……なんだろう。この、胸に宿る苛立ちは。方や『貴公子』方や『ラブコメ担当』……うん。これは、怒ってもイインジャナイカナ?

「畜生……! こんな厨二極まりない二つ名を、羨ましく思う日が来ようとは……!」

「セツ君?」

「あ、いやなんでもない。なんでもないぞ翔。まさか、この俺が、厨二病に憧れなど。ハハハ……」

「なんだ? その乾いた笑い」

「ええい黙れ! とにかく、そのデュエルは何日後なんだ?」

「三日後ッス!」

「なるほど、じゃあその日を楽しみに待つとしよう」

「セツ君は、どっちが勝つと思う?」

「セツは一回カイザーに勝ってるんだよなー」

 ああ……あの時のデュエルは良かった。正直、今までデュエルしてきた中で一番大迫力のデュエルだったな。

「俺は、そのエド・フェニックスってヤツの実力を知らないから何とも言えないが……」

「フン。十代に負けた程度の奴が、カイザーに勝てるわけがない!」

「万丈目、決めつけにかかるな。実際、プロとしての経験はそのエド・フェニックスの方が長いんだろ? プロだからって、特別なルールがあるわけじゃないが……」

 本人にも言ったが、カイザーだってまだ発展途上。負ける可能性だってある。というか、エドが負けたデュエルって即席デッキだろうが。そんなデッキで、カイザーと引き分けた十代を追い詰めたんだから、その実力は相当高いと見るべきだ。

「そんなぁ……」

「……けどま、一度デュエルした俺としては、勝って欲しいってのが正直なところだな」

「そ、そうだよね!」

 不安そうな顔から一転、安心したような顔になった翔を、もうひと押し元気づけてやる。

「第一、ここで俺たちが論議したところで結果は変わらない。今は、信じて待てばいいさ。我がアカデミアの、誇るべきデュエリストをな」

「フン。お前も、中々いいことを言うじゃないか」

「お前に褒められる日が来るとは思わなかったよ。万丈目」

「さん、だ。オレがカイザーの勝利を疑っていないのは、正にそういう理由だよ」

「どーかな。プライド高そうだもんな。お前」

「なんだと!?」

「あはは、言えてる!」

 一頻り笑い、落ち着いた頃に三沢も自らの感想を述べた。

「エド・フェニックスは、今回のカイザーとのデュエルで今まで使って来なかったメインデッキを披露すると言っていた。そのメインデッキがどんなものなのかが気になるところだな」

「あ、三沢君。居たんだ」

「……居たんだ」

 三沢はかなり苦しそうな笑顔だった。

「甘いな三沢。居たことに違和感を持たれる空気感じゃあまだまだ甘い。俺のように、居る筈のないところに違和感なく入り込める空気感を目指すが良い」

「し、師匠! って、俺は別に空気の道を極めようとしてるわけでもなんでもない!」

 また笑う十代たちを横目に、俺はエド・フェニックスについて調べた限りで、好ましくないものを見つけていた。

「エド・フェニックスの好む言葉は、『運命』……か」

 エド・フェニックスは、デュエル中やデュエル後、その言葉を好んで使うらしい。それが、どうも俺には気に食わなかった。

 そして、その不満はついに爆発することになる。数日後、エドと十代のデュエルをきっかけにして。

 

 

 

 

 




さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『E・HEROエアーマン』
さ「あ~いたいた。こんな空気の読めない男」
ル「……?」
さ「召喚するだけでアドバンテージになるHEROの潤滑油。使い道は数知れず。空気男の癖して速攻で制限食らった下級HEROの代表格だね」
ル「攻撃力も高め」
さ「でも、なんで今回このカードなの?」
ル「……さぁ?」



 ちなみに、アテナにも異名はついてます。剣士や凛はまだ入ってきたばかりなので何もついてませんが、凛につけるとすれば普通に「アカデミアのアイドル」でしょうね。剣士は……狂犬(見た目的に)あたり?
 それでは、悠でした!
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