アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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「うにゃ~ん!」
 おやライム。どうしました?
「いや~今回久々にボクの出番がある回だからさ~。もうテンション上がっちゃって!」
 ……あ、ああそう、でしたねぇ。
「うにゃ?」
 いえ、なんでも。その……。
「なに?」
 いいことあると、いいですねぇ……。
「なにその反応!? ねえまさか、まさかそんな……嘘だよにゃ!?」
 …………
「嘘だと言ってよバ〇ニィ~!!」


第三期第十八話「近くて、遠い、その手」

アルカナ~切り札の騎士~

第三期第十八話「近くて、遠い、その手」

 

 

 

 

「さあ、一気に勝たせて貰うよ!」

 一発逆転の『オネスト』を封じられた上、あいつらの『コンバット・シザーズ・ビートル』は健在……確かに、かなりマズイ状況だ。

「僕はトラップカード『チェーン・マテリアル』を発動!」

「なにっ!?」

 『チェーン・マテリアル』!? しかも、翔のデッキはビークロイド。とくれば……。

「僕は魔法カード『ビークロイド・コネクション・ゾーン』を発動するッス!」

 やっぱりソイツを持っていたか!

「これはビークロイド専用の融合魔法。この効果で融合召喚されたビークロイドは、効果によっては破壊されなくなる上、効果も無効にならなくなるッス!」

「ええっ!? 確か、『チェーン・マテリアル』の効果って……」

「除外ゾーン以外のあらゆるところから、融合を行うことが出来る代わりに、そのターン攻撃することができず、そのターンのエンドフェイズ時に破壊される効果だ」

 つまり、『チェーン・マテリアル』の効果であらゆる場所から融合出来る上、デメリットを最小限に抑えることが出来る。

「僕は墓地の『トラックロイド』『エクスプレスロイド』とデッキの『ドリルロイド』『ステルスロイド』をゲームから除外して『スーパービークロイド―ステルス・ユニオン』を融合召喚!」

「四体融合!?」

 『スーパービークロイド―ステルス・ユニオン』ATK3600

「くっ……これで、攻撃力3600のモンスターが二体並んだか……!」

 攻撃力だけなら、まだいい。攻撃時に攻撃力が半分になるデメリット効果のお陰で、貫通効果もそこまで怖くはない。だが、もう一つの効果は厄介だ。

 そして『コンバット・シザーズ・ビートル』の効果も、ライフが心許ない今、相当に脅威だ。1000ポイントのダメージは安くない。

「このターン、僕はバトルを行えない。でも、効果は使えるよ!『スーパービークロイド―ステルス・ユニオン』の効果発動!『切り札の騎士団長―エース』を装備カードとして装備!」

『ぬわっ!?』

 ステルス・ユニオンに吸収されたエースは、ステルス・ユニオンの胸部から顔がポコン、と……。

「……カッコ悪」

『な、なんだと貴様ー!』

 いやだって。

「僕はこれでターンエンド!」

「ふぅ、俺のターン、ドロー! 俺は魔法カード『強欲な壺』を発動。デッキからカードを二枚ドローする」

 ふぅ、さてどうしたものか。このままなら……いや、なんとかなるか? さっき伏せたカードがアレだから……よし。問題なさそうだ。あと残る問題は……。

「俺は『放浪の勇者フリード』を攻撃表示で召喚。効果を発動する」

 『放浪の勇者フリード』ATK1700

「フリード!? 確か効果は……」

「俺は墓地の光属性モンスター、『シャインエンジェル』と『サイレント・ソードマンLV3』をゲームから除外し、『コンバット・シザーズ・ビートル』を破壊する!」

「ちぃっ!」

 まあステルス・ユニオンは破壊できないから、選択肢はなかったわけだが。

「俺は『サイレント・ソードマンLV5』を攻撃表示に変更、バトルだ!」

 『サイレント・ソードマンLV5』ATK2300

「えっ!?」

「馬鹿な!? 『コンバット・シザーズ・ビートル』を倒したとはいえ、まだ攻撃力3600のステルス・ユニオンがいるんだぞ。まさか、奴も『オネスト』を引きいれたとでも言うのか!?」

 そうじゃない。俺は『オネスト』を引きいれてはいない。だが……。

「無理矢理にでも引き入れる! リバースカードオープン!『光の招集』!」

 これは、さっきのターンに伏せておいたトラップカード。ユーキちゃんと、お互いに光属性を多用するからと念のため入れておいたのが役に立った。

「俺は一枚の手札を墓地に捨て、墓地から『オネスト』を手札に戻す!」

「おのれ、そういうことか!」

「更に墓地に捨てた『切り札の騎士―エース』の効果発動! カードを一枚ドローする!」

 これでいい。これで……。

「準備は整った。行け!『放浪の勇者フリード』で『スーパービークロイド―ステルス・ユニオン』を攻撃!」

「む、迎え討て! ステルス・ユニオン!」

「無駄だ。俺は手札から『オネスト』を捨てて効果発動! 攻撃力をアップする!」

 『放浪の勇者フリード』ATK1700→5300

「うわあああああっ!?」

「くっ!?」

 万丈目&翔LP4300→2600

「で、でもこの瞬間『機甲部隊の最前線』の効果発動! デッキから『スチームロイド』を守備表示で召喚するッス!」

 『スチームロイド』DEF1800

「続けて『サイレント・ソードマンLV5』で『スチームロイド』を攻撃!『沈黙の剣LV5』!」

「うわぁっ!」

 『機甲部隊の最前線』の効果は一ターンに一度。これ以上の増援はない。

「俺はカードを一枚セット。ターンエンドだ」

 とりあえず、これで役割は果たした。あとはユーキちゃんに託すとしよう。

「やってくれる……! オレのターン、ドロー!」

 万丈目の手札は今ドローした一枚のみ。一枚でこの状況を打破できるとも思えないが……。

「フ……どうやらまだ天はこの万丈目サンダーを見放してはいなかったようだ。装備魔法『次元破壊砲―|STU(スーパー・サンダー・ユニット)』! このカードの効果で、墓地に存在する『VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン』を、召喚条件を無視して特殊召喚し、このカードを装備する! このカードを装備した装備モンスターの効果は無効となり、守備表示モンスターを戦闘で破壊した場合、貫通ダメージを与える!」

 『VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン』ATK3000

「なにっ!?」

 何のリスクもなしにヴィトゥズィを復活させる装備魔法!?

「そんなのアリか……!?」

「行け、ヴィトゥズィ! フリードを蹴散らせ!『VWXYZ―アルティメット・キャノン』!」

「ぐあああああああっ!?」

「きゃああああああっ!?」

 セツ&ユーキLP1600→300

「ターンエンド! 流石にもうどうしようもあるまい!」

 確かに、効果が無効になっているとはいえ、攻撃力3000の壁は厚い。しかも貫通効果まで付加されてしまっては、守備で耐えることもままならない。

「う……わたしのターン」

 つまり、このユーキちゃんのドローに全てがかかっている。

「……ドロー!」

 どうだ!?

「……わたしは手札から『レベルアップ!』を発動。『サイレント・ソードマンLV5』をLV7にレベルアップ!」

 『サイレント・ソードマンLV7』ATK2800

「LV7が存在する限り、フィールド上の魔法カードの効果は無効になるよ~。わたしはこれでターンエンド」

「僕のターン、ドロー! 攻撃力を高めてギリギリ持ちこたえようとしたのかもしれないけど、その選択はミスだよ! 魔法カードの効果が無効になったことで、『次元破壊砲―STU』の効果も無効になる。だからヴィトゥズィのモンスター効果も使えるようになるッス!」

 更に言えば、自壊効果もなくなって完全蘇生ってことになる。もしかして、ユーキちゃん……!?

「ヴィトゥズィの効果発動!『サイレント・ソードマンLV7』を除外するッス!」

「ミスじゃ……ないよ」

 そうだ、ミスじゃない。ユーキちゃんは、ここに来てそんな単純な、自分のモンスター効果で自滅するようなデュエリストじゃない!

「えっ……!」

「セツくんが残してくれた、リバースカードが残ってる! カウンタートラップ発動!『天罰』!」

「よし!」

 俺は思わずガッツポーズをとる。手札がなかった俺には使えなかったカウンター。しっかり発動してくれた!

「わたしは手札を一枚墓地に捨てて、ヴィトゥズィの効果を無効化! 破壊するよ~!」

「うわっ!? そんな……」

「ええい! 貴様はさっきから!」

「ぼ、僕の所為ッスか!?」

 いや、ユーキちゃんが一枚上手だったんだろう。しかし、それにしても……。

「考えたな。装備魔法が無効化されることを利用した心理誘導か」

 これまで悉く『オネスト』で撃退されたら、戦闘で倒すより効果で除外したくなるだろう。普通に戦闘したんじゃライフが削りきれないことや、無効化されていた効果が使えるようになっていたことも、効果を使用したくなる一つの誘導になっていただろう。

「カード効果の使い方が上手くなったな。ユーキちゃん」

「セツくんのおかげだよ~。いいカードを伏せていてくれてありがとう」

 ともかく、これでまた一つ、危険を脱した。しかも、もうこれで魔法カードは封じたも同然だ。

「うぅ……僕はモンスターを一体守備表示でセット。ターンエンドッス」

「俺のターン、ドロー!」

 あとは、俺が下手を打たなければいい。

「バトル!『サイレント・ソードマンLV7』で守備モンスターを攻撃!『沈黙の剣LV7』!」

 翔の守備モンスター、『ドリルロイド』が破壊される。

「『機甲部隊の最前線』は……」

「既に発動している魔法カードも、『サイレント・ソードマンLV7』の効果で無効だ」

 これで後続を呼ばれる心配もいらない。

「俺はカードを一枚セット。ターンエンドだ」

「くっ……オレのターン、ドロー!……ちっ、ターンエンドだ」

 万丈目も有効な手を打てずにターンを終了する。仕方ないな。基本的におジャマたちは魔法カード依存のモンスターだ。魔法が封殺されていては使える効果もないだろう。

「わたしのターン、ドロー! わたしは『サイレント・ソードマンLV7』でプレイヤーにダイレクトアタック!」

「うわあああああああああっ!?」

「くそおおおおおおおおおっ!!」

 万丈目&翔LP2600→0

 

 

 

「やったね、セツくん!」

「ああ。ユーキちゃんのおかげだよ」

 いやホントに。今回は完全にユーキちゃんの一人舞台だったと言ってもいい。

「そ、そんなことないよ~。『封印の黄金櫃』も『天罰』も、どっちもセツくんが伏せてくれたからだし……それに、セツくんだって攻撃力3600のモンスター二体も一ターンで倒してるんだし」

「俺は、ただモンスター効果を単純に使っただけだから。それよりも、ユーキちゃんの効果の使い方は上手かった。俺、あそこまでは教えてないぞ?」

 事実だ。『封印の黄金櫃』の情報アドも、一応ちらっと話はしたが、あんな使い方まではレクチャーしていない。そこら辺は、全部ユーキちゃんが自分で考えて使ったものだ。

「今回勝てたのは、ユーキちゃんのおかげだよ」

「そうね。今のデュエル、素晴らしかったわ」

「明日香さん?」

 突然声をかけてきた明日香に、戸惑うユーキちゃん。

「今のデュエルは貴女の独壇場よ。セツたちも十分以上に良い働きをしたと思うけど……貴女の活躍の前には、霞んでしまうでしょうね」

「そ、そんな……」

 明日香、ベタ褒めである。アカデミアクィーンと呼ばれていた(今はどうだか知らないが)明日香にここまで絶賛されて、ユーキちゃんは真っ赤だ。

「セツ、加藤さんの実力、底上げしたのは貴方の力?」

「まさか。俺はきっかけを教えただけだ。あそこまでのことは教えた覚えはない。あれは全部、ユーキちゃん自身が磨きあげたものだよ」

「そう……」

「すンばらしいデュエルだったノ~ネ! シニョ~ラユーキ、アナタの成績ぃ~に、加点しておくノ~ネ!」

「あ、ありがとうございます」

「先生、俺は?」

「シニョ~ルセツは、まず欠席を減らしてカ~ラものを言うノ~ネ!」

「たはは……」

 そりゃごもっともで。

「しか~シ、タッグデュエルに於けるカードトスやパートナーへの信頼~ニョ、見るべき点は、評価に入れておくノ~ネ」

「ありがとうございます」

「シニョ~ル万丈目とシニョ~ル翔も、よく頑張ったノ~ネ」

「フン」

「結局、負けちゃったッスけどね」

 しかしまあ、クロノス先生も丸くなったもんだ。しっかり生徒の頑張り評価している辺り、去年とはエライ違いだ。

「それでぇ~わ、今日の授業はここまでなノ~ネ。各自、復習をしっかりやっておくノ~ネ」

 クロノス先生の言葉と共に、ユーキちゃん大活躍のタッグデュエル授業は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

「……セツくん」

「ん? どうした、ユーキちゃん」

「ありがとう、ね」

「……? なんの話だ?」

「わたしが強くなれたの、セツくんのおかげだから~」

 何かと思えば、そんなことか。

「それは、ユーキちゃんが頑張ったからだろう?」

「……違うよ」

「ユーキちゃん?」

「わたし、セツくんに会えたから、きっとこんなに頑張れた。セツくんを好きになったから、セツくんの役に立ちたいと思ったから、頑張って勉強したんだよ。だから、わたしが強くなれたなら、それはセツくんのおかげ、なんだよ」

「ユーキちゃん……」

「セツくんが……こういう気持ちにさせてくれるから……だから……」

 

 

 ちゅ……。

 

 

「あ……」

 

 

 それは、余りにも一瞬で。

 

 

「……こんな時間が、いつまでも続けばいいのにね」

「あ、その……ユーキちゃん」

 

 

 すぐ傍に居たユーキちゃんが、何処か遠くに見えて。

 

 

「ホントに……ずっと……」

「ユーキ、ちゃん?」

 

 

 思わず俺は、手を伸ばしていた。

 

 

「……なんでもない。ごめんね。いきなり」

「あ、いや……」

 

 

 その手はしっかりとユーキちゃんに届き、手を握られた。

 

 

「みんなもしてるんでしょ? わたしだけ、なんて悔しいじゃない」

「あー……その、なんていうか……」

 

 

 けど、どこかその手は冷たくて。

 

 

「ふふ、セツくん顔真っ赤~」

「し、仕方ないだろ。っていうか、前から思ってたけど、何で、俺みたいな奴に……」

 

 

 近くに居る筈なのに、どこか遠く感じて。

 

 

「セツくんだから、だよ~。わたしも、さだめちゃんも、アテナちゃんも、ルインさんや希冴姫さんも、セツくんだから、何でもしてあげたくなるの」

「俺は……」

 

 

 俺は、思わずその身体を抱きしめていた。

 

 

「セツ……くん?」

「……わからない。何故だか、ユーキちゃんが、いなくなってしまうような気がして……」

「…………だいじょうぶ、だよ~」

「ユーキちゃん?」

「セツくんが望んでくれるなら、わたしは何時でも傍にいるよ。きっとそれは、他の皆も同じだけど……わたしも」

「……悪い」

 ユーキちゃんを抱きしめていた腕を解く。今になって、顔が熱くなってきた。

「ううん、いいよ~。だ、大歓迎、だから~」

 ユーキちゃんの頬も赤い。まったく、これじゃラブコメ担当、なんて言われても否定出来やしない。

「じゃ、じゃあユーキちゃん。俺は寮に戻るから……」

「……うん。じゃあ、またね。セツくん」

「ああ。また明日な」

 小さく手を振るユーキちゃんに手を振り返して、俺はその場を後にした。

 

 

「また……また、ね……セツくん」

 

 

 背後で、そう呟くユーキちゃんに気が付きもせず。

 

 

 

 

 

 




さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『次元破壊砲―STU』
さ「あ~あったねこんなカード。劇中のお兄ちゃんはすごく驚いてるけど、実際そんなすごい効果でもないんだよね……」
ル「召喚条件を無視する。けど蘇生制限までは無視できないお約束」
さ「何が何でも一度VWXYZは出さなきゃならないし、それまでこのカードはただの事故要因。いざ使っても折角の効果が無効になる上に装備したこのカードが破壊されちゃうとそれだけでやられちゃう脆弱性。その上で得られるのは貫通効果のみ。割に合わないよね~」
ル「VWXYZ各種下級モンスターや融合体にも使えれば、まだ……」
さ「だねぇ。こういう、ぱっと見強いんだけど実際使えないカードがアニメや原作には多いこと……」
ル「アニメ? 原作?」
さ「何でもない。こっちの話」

 召喚条件を無視する(蘇生制限は無視しない)。この罠に陥ったデュエリストのなんと多いことか……。破滅的なまでに出しにくいVWXYYZ専用の限定蘇生カードとか誰も使わんし……。
 あ、それと前書きのネタですが、本来このデュエル、ラストを飾るのはライムのお仕置きサンダーでした。が、改定前からテンスの効果を変更したことにより、エース蘇生するあたりの展開が変更され、万丈目たちのライフの都合上ライムの出番カットに相成りました。……以前、ライムの出番が増えることはないと言ったが、まさか減ることになろうとは。前と違って特別編もなしにドンドン話を進めてる所為で特別編でのアシスタントという役目すら削られて、ライムの出番は減る一方である。
 それでは、悠でした!
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