アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第三期第二十一話「白熱!? アイドルデュエル!」

アルカナ~切り札の騎士~

第三期第二十一話「白熱!? アイドルデュエル!」

 

 

 

 

 十代失踪。

 またしても届けられたこの知らせに、アカデミアは揺れた。

 そして、追い打ちをかけるかのようにナポレオン教頭たちのレッド寮廃止作戦。さだめとユーキちゃんの一件で心を揺さぶられていた俺たちを悩ませるには、それは十分な威力を持っていたのだった。

「私がいない間に、そんなことになっていたんですね……」

 俺はアテナに、先日のエドとのデュエルや、十代がデュエル出来なくなってしまったことを伝えた。

「わかりました。そういうことなら、心配させてしまった分、私も協力します!」

 するとアテナは、勢い込んで明日香の方へ体を乗り出す。

「ということで明日香さん! 私も今日から、レッド寮に泊まり込みます! 相部屋、お願いしてもいいですか!?」

「え、ええ私は構わないけれど……何か、不純な動機も感じるわ……」

 そりゃ、ここんとこずっとアテナが俺にひっついているからだろう。周りから見れば引くくらいべったりだった。俺としては……まあ、悪い気はもちろんしないのだが、正直、さだめとユーキちゃんのこともあって、素直に喜んではいられない。アテナもなんとか俺を元気づけようとしているのはわかるのだが……。

「……しかし、俺たちも舐められたもんだな。十代がいないからって、レッド寮の攻略が簡単に出来るとでも思ってるのか?」

「あー……その件に関してだがな」

「どうした、剣士」

「今朝方、オレのとこにこんなもんが届いててな」

「えーと……これは、イエロー寮への格上げ通知?」

「……なるほど。実力のあるレッド生がいると都合が悪いからって、急遽格上げさせようってことか……」

 三沢の分析に、それは少し甘い考えなんじゃないかと思う。急にイエローに格上げされたからって、レッド寮への愛着がなくなるわけでもあるまいに……。

「「納得いかん(行きません)!!」」

「おおう!? どうしたアテナに万丈目!?」

 突然怒りも露わに咆哮した二人に、俺は瞠目した。

「実力あるレッド生というなら、何故この万丈目サンダー様にその知らせが届いていないのだ!?」

「万丈目さんはともかく、セツにだってその知らせが届いていてもいいはずです! というか、届いてなきゃおかしいじゃないですか!?」

「あー……」

 二人とも似たような理由か……というか、帰って来てからこっち、アテナの俺リスペクトがすごい。若干依存気味なのが気になるが……。

「いや、多分俺の場合は出席率その他が酷いことになっているからかと……」

「確かに、最近はまたさだめの看病とかで、セツ随分休んでいるからな」

 当然だ。悪いが、授業とさだめの看病だったら迷う余地もない。

「じゃあオレ様はどういうことだ!?」

「お前は……多分、おジャマトリオかと……」

 まあ、おジャマトリオ使いが下手に格上げされると、他の生徒から反感が出かねないってのはあるかもしれんな……。

『んまぁ~! オイラたちとアニキの絆を馬鹿にするのは許さないわよ~ん!』

『そうだそうだ~!!』

「ええい黙れ雑魚共!」

「とにかく、例え格上げがどうでも、オレもレッド寮廃止には反対だ。協力するぜ」

「よっし! これがオレらの、進化した結束ザウルス!」

「来るなら来なさい! クロノス臨時校長!」

 と、俺たちが結束を高め合ったところで、外からギターの音色が聞こえてきた。

「この音色は……」

 急いで外に出てみると、そこにはボートの上で、アロハシャツ姿でエレキギターを爪弾いている吹雪さんと、その後ろにちょこんと目を逸らし気味に俯いている凛の姿。

「兄さん!」

「凛!」

「誰ドン? あの、突き抜けたお人は」

「男の方は、年長さんだ」

 

 

 

 

 

「兄さん、どうしたの?」

「凛、お前まで一緒になってどうした?」

「そ、それは……その」

 剣士に問われて、どうも気まずそうに身じろぎする凛。対して、吹雪さんの方は堂々としたものだ。

「お前を迎えに来た。ブルーに帰ろう。明日香」

「ええ!?」

「その……私は、アテナ先輩を……」

「わ、私ですか!?」

「まさか、兄さん……!」

「そのまさかなノ~ネ!」

 声が聞こえた方に顔を向ける……と。

「ぶふっ!」

 思わず噴き出した。く、クロノス臨時のウェットスーツ……凄い光景だ……。

「シニョ~ラ明日香。それにシニョ~ラアテナ。貴女たちには、ブルーのアイドル養成クラスに来ていただきますニョ~ネ」

「アイドル養成クラス?」

 要するに、凛のような生徒を養成するためのクラスらしい。しかし、アテナも明日香もそれをきっぱりと断った。

「何故? 可愛いアイドルになることが、そんなに嫌なのかい?」

「どういうことッスか?」

「クロノス臨時校長は、私と兄さんに、ユニットを組ませようとしているのよ」

「その……事務所の方から、アテナさんと組んでみないかって提案が……」

「わ、私ですか!? いつの間にそんなことに……私のいない間に……」

 いや、それは俺たちも初耳だった。

「デュエルアカデミアから、爽やか兄妹デュオと、小悪魔&天使アイドルデュオの誕生なノ~ネ!」

「!!……良い~!」

「良くないわよ!」

「そ、そんなアイドルだなんて、私……」

「明日香もアテナくんも、アイドル界の金の卵だ。そうは思わないかい? 万丈目君。セツ君」

「し、師匠……」

「いや、俺は……」

「せ、セツ。私は、その……」

 アテナが不安そうにこちらを見上げている。

「……すみません吹雪さん。俺は反対です」

「セツ!」

「何故?」

「アテナは嫌がってますし、その……出来ればあんまり、アテナを衆目に晒したくもないので……」

 これ以上、俺の目の届かない所にアテナたちをやりたくない。さだめにしろユーキちゃんにしろ、俺は二人の悩みや苦しみに、ロクに気づいてやれなかった。アテナも、帰ってきたとは言え、俺への依存具合を見る限り、あまり良い精神状態とは思えない。

「もう誰も、俺のそばから離れて欲しくない」

『そうだそうだー!!』

「ん?」

 思い悩む俺の意識を覚醒させたのは、突如聞こえてきた大勢の男の声だった。振り向くと、そこには大勢のレッド寮男子の姿。

「アテナ様はレッド寮の女神だ!」

「太陽だ!」

「俺たちレッド専用アイドルなんだ!」

「折角、俺たちの太陽を取り戻したのに……」

「我らが女神を奪おうと言うのか!?」

「アテナ様を欲望でギトギトに濡れた畜生共の目に触れさせてたまるか!」

 ……正直、お前たちに言われたくはないだろうな。まだ見ぬ視聴者も。大体、誰がレッド専用アイドルだ。

「皆さん……」

 アテナが少し感動したように呟いているが、こいつらにそんな感動的な理由なんてないことを忘れるな。

「大体、折角アテナ様と一つ屋根の下になれるかもしれんのに、女子寮になんて戻してたまるかー!!」

『そうだそうだー!!』

「おいコラ待てや」

 思わず突っ込む。ほら見ろやっぱり邪な理由だった!

「よ、予想外の反対意見があったが、とにかく、俺たちは断固反対の姿勢だ」

「……結局、僕たちの意見は平行線だね。まるで夜汽車のレールだ。決して交わることはない」

「結局、私たちはデュエルでしか結論を出せないのよ」

「えと……私としても、出来ればアイドル養成クラス、認めて欲しいんです。そうすれば、お仕事で休んでも公欠にできるので……」

「すみません凛さん。私、レッド寮から離れるつもりはないんです」

 凛の意見は割とまとも、というか凛からすれば結構大事な理由だったが、最終的に、明日香VS吹雪さん。アテナVS凛のデュエルで決着をつけることと相成った。

 

 

 

 

 

 

 翌日、デュエル場にて双方の意見をかけたデュエルが行われた。

 先ほど行われた明日香と吹雪さんのデュエルは、無事明日香の勝利で終わった。次はアテナと凛の番だ。

「行きます。アテナ先輩。私のターン、ドロー!」

 アテナLP4000

 凛LP4000

 正直、さだめの傍から離れるのには抵抗があったが、ルインが看ていてくれると言っていたので、俺はアテナの応援だ。なんでも、『私なら、もし何かあっても応急処置ができるから、キミは彼女の方に付いていて』だと。ホント、こういう時に限って気配り上手だよ。ルインは。

「私は『デーモン・ソルジャー』を攻撃表示で召喚!」

 『デーモン・ソルジャー』ATK1900

「悪魔族!?」

 凛のメインデッキが水属性だと言うことは、アテナにも言ってある。だから、態々悪魔族を選択した凛に驚いたのだろう。

「……一応、ここには“小悪魔リン”として立っていますので。こちらを使わせていただきます。それに……」

 凛はちらりとソリッドビジョンに映し出された『デーモン・ソルジャー』を見る。

「悪魔族の使い方については、さだめに何度も教えてもらいました。私はもう、悪魔族だからって嫌ったりはしませんよ」

 実際、凛と悪魔族デッキ自体の相性は悪くなかった。ただ、凛が悪魔族デッキに抵抗感と言うか、拒絶していたからプレイングが甘かったり効果を理解していなかったりしただけで、そこさえ克服すれば、凛にとって悪魔族は十分武器になる(さだめ談)。

「私はカードを一枚セットして、ターンエンドです」

「私のターン、ドロー!」

 一方、アテナのデュエルを見るのは久しぶりだ。天使族デッキなのは変わっていないにしても、今どんな構成をしているのか、さっぱり聞いていない。

「私は魔法カード『打ち出の小槌』を発動します! 手札のカードを三枚と、このカードを戻してカードを四枚ドロー!」

 手札交換……いきなりしてきたってことは、初手にいつものカードがなかったのか……。

「む……私はモンスターを一体守備表示でセット。ターンエンドです」

 

 

 

 

「珍しいな」

「ああ、アテナの初手に、ヴァルハラがなかったのは初めて見たかもしれん」

 剣士がポツリ、と呟いた言葉に俺も反応した。ん? そういえば……。

「なあ剣士、お前って今どっちを応援してるんだ?」

「は?」

 俺の質問に、遠くで凛がピクっと反応するのが見えた。流石、恋する乙女は地獄耳。

「そりゃ、アテナに決まってるだろ」

 ピクっ!

「あー……」

 だと言うのにこの馬鹿は……。

「レッド寮潰されるわけにはいかねえしよ。アテナの方を応援すんのは当然だろ?」

「あーソウダネ。当然ダネ」

 至極尤もだが、色々と空気読めてない発言であることには変わりない。現に、遠目に見える凛は、明らかに戦意が増していた。

 

 

 

 

「私のターン! ドロー!!」

「な、なんかすごく気合入ってますね……」

 しばらくドローもしないで沈黙していたかと思うと、突然凛さんが吠えるようにカードをドローしました。な、なんというか、鬼気迫るというか……。

「私は『デーモン・ソルジャー』をリリースして、『軍神ガープ』を攻撃表示でアドバンス召喚します! 効果発動!」

 『軍神ガープ』ATK2200

「っ!」

 しまった! ガープは……。

 私のセットモンスター、『マシュマロン』が攻撃表示に変更される。

 『マシュマロン』ATK300

「『軍神ガープ』が表側表示で存在する限り、フィールド上のモンスターは全て表側攻撃表示となり、表示形式は変更できません。更に、手札の『クリッター』をオープンすることで、ガープの攻撃力を300ポイントアップ! バトル!『軍神ガープ』で『マシュマロン』を攻撃します!」

 『軍神ガープ』ATK2200→2500

「きゃあっ!?」

 アテナLP4000→1800

「っ……『マシュマロン』は、戦闘では破壊されません」

「はい。それでは、私はターンエンドします」

「っ私のターン! ドロー!」

 正直、余りよろしくない展開です。初手にヴァルハラや『ヘカテリス』も来なかったですし、『マシュマロン』がサンドバック状態では……。

「私は『マシュマロン』をリリースして『光神テテュス』を攻撃表示でアドバンス召喚! バトルします!『光神テテュス』で『軍神ガープ』を攻撃!『ホーリー・サルヴェイション』!」

 『光神テテュス』ATK2400

「トラップカード『プライドの咆哮』! ライフを200支払って、ガープの攻撃力をアップします!」

 凛LP4000→3800

 『軍神ガープ』ATK2200→2700

「テテュス!? きゃあっ」

 テテュスがガープによって迎撃され、また私のライフが削られる。

 アテナLP4000→1500

「どうです!?」

 力強く宣言する凛さん。その目に宿る力に、想いに、私はハッとしました。

「……やっぱり私、調子に乗っていたみたいです」

 私は、以前ユーキさんと初めてデュエルした時のことを思い出しました。

「……?」

 そう、確かあの時、私は今の凛さんと同じ瞳を……恋する乙女の目をしていた筈でした。

「以前私、アカデミアで殆ど負けなしで、調子に乗っていたんです」

 それを、シャインさんや光お姉さんに鼻っ柱を折られて……。そして今また、少し頭が冷えました。

「!? 城が……」

 私の力の源、それが何なのか、やっと思い出しました!

「……テテュスが迎撃されたのは、予想の範囲内でした」

 私にとって困ったのが、攻撃表示のまま放置された『マシュマロン』。

「でも、場にモンスターがいなくなったおかげで、このカードが使えます」

 今回は、少しだけ出番が遅れましたが……たった今、引くことができました。

「私はメインフェイズ2に『神の居城―ヴァルハラ』を発動しました! 効果によって、一ターンに一度、天使族モンスターを特殊召喚します! 来て! シャルナ!」

 『アテナ』ATK2600

 私の力の源、それは間違いなく、セツへの気持ち! セツを想うだけで、いくらでも湧いてくるこの闘志!

『はいはーい。お姉さんにお任せよん♪』

「私はカードを一枚セット。ターンエンドです!」

 負けられません! このデュエルに勝って、レッド寮に……セツの傍に!

「私のターン、ドロー! 私は手札の『クリッター』と『クリボー』をオープンして、ガープの攻撃力を600ポイント上昇させます!」

 『軍神ガープ』ATK2200→2800

 ガープの攻撃力が『アテナ』……シャルナを上回った。

「更に『クリッター』を攻撃表示で召喚。バトルです!『軍神ガープ』で『アテナ』に攻撃!」

 『クリッター』ATK1000

「トラップカード、『和睦の使者』! このターン、私のモンスターは戦闘によっては破壊されず、ダメージも受けません!」

「くっ……カードを一枚セット。ターンエンドです」

「私のターン、ドロー! 私は手札から速攻魔法『光神化』を発動! 手札の天使族モンスター一体の攻守を半減させて特殊召喚します! 私は『ジェルエンデュオ』を特殊召喚! 更に速攻魔法『地獄の暴走召喚』! 攻撃力の半減した『ジェルエンデュオ』が特殊召喚されたことで、私はデッキから二体の同名モンスターを特殊召喚します!」

 『ジェルエンデュオ』ATK1700→850

 『地獄の暴走召喚』は、相手のモンスターも増やしてしまいます。でも、私の予想が正しければ……。

「う……私のデッキに同名モンスターはいません」

 やっぱり。『クリッター』は制限カード。デッキには一枚しか入っていない。ガープの方はわからなかったけど、三枚積みにするようなカードとも思えなかったから、出てきても一体だと思っていました。

「そして『アテナ』の特殊効果起動! 天使族モンスターが召喚、特殊召喚される度、相手プレイヤーに600ポイントのダメージを与えます! 私は二回、天使族モンスターを特殊召喚しました。よって1200ダメージ!」

『天罰てきめーん!』

「きゃあっ!?」

 凛LP3800→2600

「永続魔法『生還の宝札』発動! 更に、攻撃力の半減した『ジェルエンデュオ』を『アテナ』の効果でリリースし、墓地の『光神テテュス』を攻撃表示で特殊召喚!『アテナ』の効果で600ダメージ!」

『てりゃ!』

「うくっ……」

 凛LP2600→2000

「そして、『生還の宝札』の効果を発動! デッキからカードを一枚ドロー!『光神テテュス』の効果で、ドローした『紫光の宣告者』をオープン! ドロー!『緑光の宣告者』ドロー!『オネスト』ドロー!『ムドラ』ドロー!『虚無の統括者』ドロー!『シャインエンジェル』ドロー!……!」

 ちらり、と今ドローしたカードを見る。

 ――まだです。このカードは……“私自身”は、味方とのデュエルで使うようなカードじゃありません!

「私は『ジェルエンデュオ』を二体分のリリースとして、手札から『虚無の統括者』を攻撃表示でアドバンス召喚!『アテナ』の効果でダメージ!」

 『虚無の統括者』ATK2500

『それそれまだまだ行くわよん!』

「っ……!」

 凛LP2000→1400

「バトルです!『アテナ』で『軍神ガープ』を攻撃!『ディヴァイン・クロス』!」

『ちょーち痛いわよ?』

「更に手札から『オネスト』の効果を発動します!」

「っく、手札から『クリボー』を捨ててダメージを無効化します!」

「それでも、『軍神ガープ』は破壊されます!」

「続いて『虚無の統括者』で『クリッター』を攻撃!『トリニティー・ヴァニッシュ』!」

「トラップカード『ガード・ブロック』! ダメージを無効化してカードを……」

「させません! 手札から『シャインエンジェル』と『紫光の宣告者』を捨てて、トラップの発動と効果を無効にします!」

「そんな……」

「すみません凛さん……私も、そうそう簡単には負けられないんです!」

 少しでも、セツの傍にいるために。レッド寮で過ごす時間を、日々を……、

「無くしたくないんです!」

 『虚無の統括者』の放った極光が、『クリッター』をその名の通り|消滅(ヴァニッシュ)させます。その光の奔流は、『クリッター』を消滅させるだけでは飽き足らず、凛さんを包み込んで行く。

「きゃああああっ!?」

 凛LP1400→0

 

 

 

 

 

「……はぁ、負けました」

「ごめんなさい。大丈夫ですか?」

「はい。何ともありません。でも……」

「でも?」

「……悔しかったな」

「え?」

「デュエルに負けたこともそうですけど……アテナ先輩は、もう好きな人と想いが通じちゃってるんですもん。それが、悔しい。私なんて、まだまだですもん」

「あ、あはは……かなり、紆余曲折ありましたけど……」

 想いは通じた……ってことでいいんですかね? まだ、ちょっと怪しい気もします。というか、何より私自身が今まで逃げちゃってましたしね。さだめさんのこともありますし、まだ正式に、ってわけにはいきません。

「……それに、なんかどうも剣士先輩……ぶつぶつ」

「あの……?」

「アテナ先輩!」

「は、はい!?」

「負けませんからね!」

「へ? え、えっと……何が……」

「アテナ先輩は、もうガチな想い人いるんだし、いくらなんでも大丈夫だとは思うんだけど……」

 わ、私にはさっぱり何のことやら……。でも……。

「え、えっと凛さん」

「ぶつぶつ……は、はい?」

「その、敬語なんですけど、やめにしませんか?」

「え?」

「もうお友達ですし、それに……」

 くすり、と笑みが漏れる。確か、さだめさんにも同じようなこと言ったんですよね。

「私の方が歳下なんですから、敬語で話されるのは、ちょっと違和感があるんです」

 まあ、精神年齢というか、転生前まで含めれば歳上どころじゃありませんけどね私。

「…………え? 歳下?」

「……ええ。そうですよ?」

 ……なんでしょう。この辺のやり取りも、さだめさんとした気がします。

「え? なに? ギャグ?」

 ……ぷっつーん。

「ぎゃ、ギャグとはなんですか!? 私はそこまで老けて見えますか!?」

「ひゃあっ!? い、いえ! じゃなくてううん! そ、そういうことじゃなくて、なんて言うかその、お、大人びた容姿というか雰囲気と言うかその……」

「精神年齢はともかく、肉体年齢はまだ十三歳なんです! ピッチピチですよ! 凛さんなんかよりもずっとずっと若いんですからね!」

「そ、その言い方だとむしろ私の方が老けてるみたいじゃない! や、やめてよ私だってまだ十五歳なんだから!」

「ああもう! 何でみなさん私を同年代扱いするんですか私は一番歳下なのにぃ!」

「そう見えないんだからしょうがないじゃない! むしろ羨ましいよ何そのおっぱい!」

「は、発育が良くて悪いですか!?」

「さだめや私からすれば敵だよ敵!」

「目の敵にするならルインさんにしてください! 大体、さだめさんからすれば凛さんクラスだって十二分に敵です!」

「ルインさんはもう成長しないけど、アテナはこれからいくらでも成長する年齢じゃない! それが胸囲……じゃなくて脅威なの!」

 ……どうしてこう、必ず言い争いになるんでしょうか。もしかして私、友達作るの下手なんでしょうか……うぅ。

 

 

 

 

 

「……まーた言い争ってるな」

「いいのか? 止めなくて」

「いいっていいって。どうせ、しばらくすれば仲良く笑顔だよ。さだめ相手でもそうだったんだ。凛くらい余裕余裕」

「……ま、オレ相手でも躊躇いなく友達になるような奴だしな」

「なんだ? もしかしてアテナに未練でもあるか? 渡さないぞ」

「うっせえな。ねぇよそんなもん。盗るかアホ」

 冗談交じりにそんな会話をする。少し顔を赤くしている辺り、やっぱりちょっとは惚れてたっぽいな。コイツ。

「ま、お前は凛についていな。あの子も、剣士を頼りにしてるっぽいし」

「……なんでだかな。別に特別何かしたわけじゃねえんだが」

「それ言ったら、俺だってアテナに何かしたわけじゃない。気付いたら今みたいになってたんだ。そういうもんだよ。恋愛なんて」

 とかなんとか。偉そうに言っているが、俺だってそんなもん全然わかっちゃいない。どうなったら恋なのか、どうなったら愛なのか。好きって言葉の違いすらまともにわかってない。挙句その所為で、大切な絆を一つ失った。だからこそ、これだけは言える。

「ちゃんと見てやれよ。あの娘が思いつめてからじゃ、遅いんだから」

 俺は、失敗した。さだめとユーキちゃんの苦悩に、気付いてやれなかった。だから、剣士と凛には、同じ失敗をして欲しくない。

「……ああ。頭にゃ入れとくさ」

「……それでいい」

 さて、まずはアテナの引っ越し準備をしなくちゃな。

「手伝えよ」

「わぁってるよ」

 俺たちは案の定、いつの間にか口論から笑い声に変わった少女たちに向けて足を動かすのだった。

 

 

 

 

 




 この話は改定前とそれほど大きく変わってませんが、随所にセツの後悔の描写を追加しました。改定前は正直、あんなことがあった直後にしてはケロッとし過ぎだったので。こっちの方が自然かな、と。
 次回は原作でもあった修学旅行編です。第三期もクライマックスが近づき、原作に関わる話もあと僅か。第四期は一切原作に関わりません。まあ、今までもほぼ関わってないんですけども。
 それでは、悠でした!
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