アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

68 / 129
第三期第二十三話「攫われたアイドル 後編」

アルカナ~切り札の騎士~

第三期第二十三話「攫われたアイドル 後編」

 

 

 

 

「戦野剣士……推して参る!」

 光丸と名乗った下種野郎を叩きのめすため、オレはデュエルディスクをその手に構えた。

「おおっと、ちょい待ちな」

「なんだと?」

「お前の相手は、俺一人じゃねえ」

 光丸がそう言った瞬間、光丸の隣に風が渦を巻く。

「この風丸も、その決闘に参加させていただこう」

 切れ長の目と、逆立てた長髪が印象的な風丸は、そう言って光丸に近づく。

「だが……その前に、その少女は離してやるといい」

「あぁ? なに馬鹿言ってんだ」

「娘を抱えて決闘に臨むつもりか? それとも、娘を盾に敗北を迫るか? 私は、貴様が決闘前にどんな卑劣を働こうが関知せぬ。だが、決闘に限ってはその卑劣さを抑えよ。見苦しいぞ」

「チッ。マジメなヤローだ」

 光丸の野郎は、ブツクサ言いつつ風丸の言葉通り凛をその場に下ろす。風丸はそれを確認した後、オレに顔を向けてきた。

「戦野剣士」

「……なんだよ」

「そのまま逃げられるわけには行かぬ故、少女を返すことは出来ぬ。しかし、正々堂々決闘に臨むのであれば、私の矜持に賭けて、決して傷つけぬと誓おう」

「……どういうつもりだ」

 下種の光丸とは全く違う態度に、訝しげな視線を向ける。

「勘違いはするな。私とて、所詮はこの光丸と同じ。人質を取り、徒党を組まねば決闘に臨めぬ下種に過ぎん。だが……」

 風丸はそこまで言うと目を伏せ、無言でデュエルディスクを構えた。

「……いや、よそう。どれだけ言葉を重ねようと、私が下種であることに変わりはない」

「とっとと始めようぜ。ルールは変則タッグ。俺たちのフィールドはそれぞれ独立している。テメエへのハンデはライフ8000。充分だろ?」

 口を挟んできた光丸に、オレは顔を顰める。

「……何でもいい。さっさとやるぞ」

「ははっ、勇ましいねぇ……んじゃあ行くぜ!」

「「デュエル!」」

 剣士LP8000

 光丸LP4000

 風丸LP4000

「先攻は俺、ドローだ! 俺はマジックカード『おろかな埋葬』を発動! デッキから『光帝クライス』を墓地に送るぜ!」

「光帝?」

 聞き覚えのないカード名に、訝しげに眉をひそめる。

「へへ。コイツが俺のエースモンスターだ。見せてやるぜ色男。俺はカードを一枚セット。そしてマジックカード『死者蘇生』!」

「なにっ!?」

「見せてやるぜ!『光帝クライス』を特殊召喚!」

 『光帝クライス』ATK2400

「クライスの効果発動! このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、フィールド上に存在するカードを二枚まで破壊する!」

「二枚……? だが、オレの場にカードは……」

「誰がテメエのカードを破壊するっつったよ!? 俺が破壊するのは……今俺がセットしたカードだ!」

「なにっ!?」

 自分で伏せたカードを破壊する? 破壊されることで発動するカードか!

「俺が破壊したのは『呪われた棺』! コイツはトラップカードだが、発動条件さえ満たせればセットしたそのターンでも発動することが出来る!」

「チッ……!」

 確か、『呪われた棺』の効果は……。

「テメエは自分のモンスターか、手札をランダムに選択して一枚捨てる。だが、テメエの場にモンスターはいねえ。よってテメエは必然的に手札を捨てる方を選択する!」

「仕方ない……」

 先攻一ターン目じゃ、アテナでもなきゃカウンターすることはできねえ。

「そして、クライスにはもう一つ効果がある! クライスの効果でカードを破壊されたプレイヤーは、その枚数分、デッキからカードをドローする!」

「そういうコンボかよ……」

 自らカードを破壊することで、ドローされるというデメリットをメリットに変換するのがアイツのデッキコンセプトか。

「さあ、手札を捨てな!」

「わかってる」

 いきなりアドバンテージに差が付いた。思ったより、面倒だな……。

「俺はモンスターを一体セットしてターンエンドだ!」

「オレのターン!」

 チラリと光丸の隣で沈黙を保つ風丸を見る。アイツ、一体……。

「なんだ? ビビってんのか? さっさとプレイしやがれ!」

「……まあいい。オレは墓地から『不死武士』を特殊召喚」

 『不死武士』DEF600

「なにぃ!? まさか、さっきの『呪われた棺』の効果で……」

「そういうこった。残念だったな。思惑が外れて」

「ちっ……」

 まあ、かなりラッキーだったな。五分の一で落ちてくれるとは。

「更に、オレは『マッシブ・ウォリアー』を守備表示で召喚。カードを一枚セットし、ターンエンドだ」

 『マッシブ・ウォリアー』DEF1200

 とはいえ、手札に上級モンスターはいない。仕方なく、オレは防御を固める。

「……私の手番だ」

 あくまでも静かに、風丸はカードをドローする。

「私は『有翼賢者ファルコス』を攻撃表示で召喚。戦闘を行う」

 『有翼賢者ファルコス』ATK1700

 ファルコスか……破壊した攻撃表示モンスターを、デッキトップに戻すモンスター。だが、オレのモンスターはどちらも守備表示。戦闘破壊はされても、デッキトップに戻されることはない。

「私は有翼賢者で『不死武士』を攻撃する」

「くっ!? だが『不死武士』は死なねえ! 次のオレのターンに、再び戻ってくる!」

「それはどうかな?」

「なにっ!?」

「私は手札より『D.D.クロウ』の効果を発動する。手札から墓地へと送ることで、お前の墓地の『不死武士』を取り除く」

「マジかよ……」

「更に、手札を三枚伏せ、手番を終えよう」

「ちっ……オレのターン、ドロー!」

 よし。コイツだ。

「オレは『マッシブ・ウォリアー』をリリースし、手札から『無敗将軍(ジェネラル)フリード』をアドバンス召喚する!」

 『無敗将軍フリード』ATK2300

「はん! たかだか攻撃力2300じゃ、俺のクライスには敵わねえな!」

「馬鹿が。戦士には、それぞれに相応しい得物ってもんがある! オレは手札から装備魔法『神剣―フェニックスブレード』をフリードに装備! 攻撃力は300ポイントアップだ!」

 『無敗将軍フリード』ATK2300→2600

「クライスの攻撃力を上回りやがった!?」

「バトル! フリードで『光帝クライス』を攻撃!」

「ちっ!」

 いけるか!?

「させん。私は伏せた罠を発動。『鳳翼の爆風』。手札を一枚捨てることで、無敗将軍を山札の一番上に戻す」

「デッキトップに!?」

 ちっ。ファルコスの段階でその予想はあったが……下手打ったぜ。

「へ、へへ。馬鹿はどっちだ。結局テメエのフィールドはガラ空きじゃねえか」

「……オレはカードを一枚セット。ターンエンドだ」

「俺のターン! ドローだ!」

 風丸に守られておいて調子に乗る光丸が、デッキからカードをドローする。

「俺はセットされたモンスターをリリースして二体目の『光帝クライス』を攻撃表示で召喚だ! 効果発動!」

 二体目だと? 今度は何を……。

「俺が破壊するのは風丸の伏せカード!」

「……私はその効果に対し、二枚の『八汰烏の骸』を発動する」

「そういうことか……!」

 やられた。コイツらのデッキは元々タッグ用。風丸が手札を消費して、カードを除去、メインでデュエルを進め、光丸はクライスの効果で手札を補充する。コイツは……骨が折れそうだ。

「逆順処理により、まずは『八汰烏の骸』二枚の効果で二枚引く。そして、光帝の効果により破壊され、更に二枚を引かせてもらう」

「手札が一気にゼロから四枚に……くそ」

 しかも、フィールドには攻撃力2400の光帝が二体。俺のフィールドにモンスターはいない。

「へっ。安心しな。クライスは召喚・特殊召喚されたターンに攻撃することは出来ねえ。まあ、当然……」

 光丸の場の、最初に召喚されたクライスが動き出す。

「こっちは動けるぜ?」

「くっ!?」

「バトルだ! クライスで、プレイヤーにダイレクトアタック!『フラッシュ・ブレイク』!」

「ぐあああっ!?」

 剣士LP8000→5600

「はははっ! モロだ! まともに受けやがった!」

 攻撃が通ったことで、光丸の馬鹿は散々はしゃいでいる。

「……今の内に、いい気になっておけ」

「なんだと?」

「すぐ、後悔する」

「言ってろ! 俺はこれでターンエンドだ!」

「その前に、オレはリバースカード『トゥルース・リインフォース』を発動。デッキから『デュアル・ソルジャー』を特殊召喚する」

 『デュアル・ソルジャー』ATK500

「ハッ! そんな雑魚モンスターで何が出来る!?」

「今にわかる。オレのターン、ドロー! オレは手札からマジックカード『天使の施し』を発動! デッキからカードを三枚ドローし、二枚捨てる!」

 よし。これでいい。

「オレは手札から装備魔法『スーペルヴィス』を発動!『デュアル・ソルジャー』に装備し、デュアル状態にする」

「ほう……」

「バトル!『デュアル・ソルジャー』で『有翼賢者ファルコス』を攻撃!」

「血迷ったか!? テメエから自爆してやがる!」

「トラップカード『デュアル・ブースター』! こいつは発動後装備カードとなり、フィールド上のデュアルモンスター一体に装備。攻撃力を700ポイントアップさせる!」

 『デュアル・ソルジャー』ATK500→1200

 『デュアル・ソルジャー』の背にブースターが装備され、その勢いが増す。しかし、それでもファルコスの攻撃力には及ばず、弾き返される。

 剣士LP5600→5100

「くっ……この瞬間『デュアル・ソルジャー』の効果発動! このモンスターは一ターンに一度戦闘では破壊されず、自分から攻撃した場合、デッキからレベル4以下のデュアルモンスターを一体特殊召喚する! オレは『エヴォルテクターシュバリエ』を攻撃表示で召喚する」

 『エヴォルテクターシュバリエ』ATTK1900

「なにっ!?」

「肉を切らせて骨を断つ……それが、お前の兵法か」

「兵法の一つ、ってだけだ。兵法なんてのは千変万化。その時々で臨機応変が基本だろう」

「フッ……確かにな」

「オレのバトルフェイズはまだ終了していない!『エヴォルテクターシュバリエ』で『有翼賢者ファルコス』を攻撃!」

「ぬぐっ……」

 風丸LP4000→3800

「更に、メインフェイズ2に移行!『エヴォルテクターシュバリエ』を|二重(デュアル)召喚! 効果発動!」

 シュバリエが、その身に激しい炎を纏う。

「シュバリエの効果! オレのフィールド上に存在する装備魔法一枚を墓地に送ることで、フィールド上に存在するカード一枚を破壊する! オレは『スーペルヴィス』を墓地に送り『光帝クライス』を破壊する!『壊刃炎覇斬』!」

「なにぃっ!? うおっ!?」

 『エヴォルテクターシュバリエ』のサーベルから奔った炎が、光帝を焼き尽くす。

「クソッ! だが、俺にはもう一体クライスが……」

「更に墓地に送られた『スーペルヴィス』の効果発動! 墓地から『フェニックス・ギア・フリード』を蘇生させる! 来い! ネイキッド!」

 『天使の施し』で捨てていた、ネイキッドを蘇生させる。

 『フェニックス・ギア・フリード』ATK2800

『今の我はフェニックスだが……まあよかろう。下種な漢に天罰を下すのは、我とて望むところであるし……何より、マスターが漢を見せたのだ。我も本気を出さねばなるまい』

「……余計な茶々は要らねえ。とっとと構えやがれ」

『うむ』

「まだだ! 手札から装備魔法『自律行動ユニット』を発動! ライフを1500ポイント支払い、テメエの墓地の『光帝クライス』をオレの場に蘇生! このカードを装備する!」

 剣士LP5100→3600

「テメエ……俺のクライスを!」

「お前のモンスターだ。効果は知ってるんだろ? オレは自分の『デュアル・ブースター』と『デュアル・ソルジャー』を破壊! カードを二枚ドローする!」

 まだだ。まだ、オレのコンボは終わらねえ!

「そして破壊され、墓地に送られた『デュアル・ブースター』の効果発動! オレのフィールド上に存在するデュアルモンスター一体を、再度召喚した状態にする!」

『おおおっ!』

 ネイキッドがシュバリエと同じく、身体に炎を纏う。

 これで、あいつ等のフィールドは殲滅し、俺のフィールドには攻撃力2000以上のモンスターが二体並んだ。

「ば、馬鹿な……一瞬で、あんな雑魚モンスターで、状況を一変させやがった……」

「……光丸」

「な、なんだよ」

「見るがいい。あれが、本物だ」

「ほ、本物……?」

「与えられた力ではなく、自らの才覚と努力によって手に入れた、本物の力を持つ決闘者だ。例え二対一でも、圧倒的不利な状況からでも、こうして逆転の一手を引き入れる」

「う、うるせえ! テメエだって俺と同じ癖に、訳知り顔で語ってんじゃねえよ!」

「……そうだな。そうであった。私も、所詮は同じか」

 光丸の焦ったような絶叫に、風丸が自嘲する。

「……オレはこれでターンエンドだ」

「私の手番か……」

「風丸」

「なんだ」

「お前は、飛べるだろ?」

「なに?」

「お前が、与えられた力で潰れて行くだけの愚者とは思えねえ」

「戦野剣士……」

 本来なら、凛を攫った敵に言う言葉じゃないのはわかる。だがコイツが、デュエリストの魂を持っている漢が、こんなくだらない形で潰れて行くのは見過ごせねえ。

「……そうだな。私にも、翼はある」

 風丸は、フッと笑い、カードをドローする。

「私は手札から魔法、『死者蘇生』を発動。有翼賢者を蘇生する」

 『有翼賢者ファルコス』ATK1700

 光丸のエースはレベル6の帝、クライスだった。とすれば、同じ力を貰ったと言う風丸のエースは……。

「お前が魔法カードを発動した瞬間、オレは『フェニックス・ギア・フリード』の効果を発動する! 墓地から『デュアル・ソルジャー』を守備表示で蘇生する!」

 『デュアル・ソルジャー』DEF300

「私は『有翼賢者ファルコス』を生贄に捧げ『風帝ライザー』を生贄召喚!」

 『風帝ライザー』ATK2400

「我が風帝は、生贄召喚に成功した時、場の札を一枚、山札の一番上に戻す」

 デッキトップに戻す効果だと!?

「私が選択するのは当然『フェニックス・ギア・フリード』だ」

「くっ!?」

『ぬおっ!? な、なんだこの竜巻は!?』

 風帝の巻き起こした竜巻に、ネイキッドが吹き飛ばされてしまう。

「ちっ! ネイキッドの効果は、モンスター効果には対応してねえ……」

「これで、お前の未来は閉じられた。次の引きで、状況を変えることは出来ん」

「くっ……」

「戦闘だ。我が風帝よ。『エヴォルテクターシュバリエ』を打ち倒せ!『破魔風陣』!」

「ぐああっ!?」

 剣士LP3600→3100

 纏っていた炎ごと、シュバリエが身体を切り裂かれていく。

「更に速攻魔法『スワローズ・ネスト』! 風帝を生贄に、山札より『神禽王アレクトール』を特殊召喚する!」

 『神禽王アレクトール』ATK2400

「なにっ!?」

「追撃する。守備表示の『デュアル・ソルジャー』を攻撃!」

「くっ!」

 これじゃ、次のターンネイキッドをアドバンス召喚することもできねえか!

「私はこれで、終了する」

 与えられた力、風帝を“繋ぎ”として追撃か……やるじゃねえか。

「オレの、ターンだ」

 風丸。お前とは、もっとデュエルを続けたい気分だ。だから、そのために。

「ひっ!?」

「邪魔な奴は、とっとと消させて貰う! ドロー!」

「ふ、ふん。そんな勢い込んでドローしたところで、そのカードは……」

「そう。『フェニックス・ギア・フリード』だ。だがな……」

 オレは、もう一枚の手札をオープンする。

「な……」

「オレは手札から魔法カード『トレード・イン』を発動! レベル8の『フェニックス・ギア・フリード』を捨て、デッキからカードを二枚ドロー!」

「フ……時を封じ込めることも、出来んか……」

「て、テメエ風丸! テメエがしっかりしねえから……」

「他人の所為にしてんじゃねえよ。オレは手札から『鉄の騎士 ギア・フリード』を召喚! そして、魔法カード『拘束解除』!『鉄の騎士 ギア・フリード』の拘束を解除し、剣聖の真の姿を呼び醒ます! 来い!『剣聖―ネイキッド・ギア・フリード』!」

『おおおっ! 再び参上! そう簡単に、我を消せると思うな!』

 『剣聖―ネイキッド・ギア・フリード』ATK2600

「う、うわっ!?」

「更に、墓地の『マッシブ・ウォリアー』と『デュアル・ソルジャー』をゲームから除外し、手札に『神剣―フェニックスブレード』を手札に戻し、ネイキッドに装備する!」

 『剣聖―ネイキッド・ギア・フリード』ATK2600→2900

『神剣か……手に馴染むっ!』

 ネイキッドが神剣を一振りし、衝撃破が走る。

「剣聖が得物を手にしたその時! 相手モンスター一体を問答無用で破壊する! オレが破壊するのはテメエの『光帝クライス』!」

「ぐぅっ!」

「オレはカードを一枚セット。バトルだ!『光帝クライス』で光丸を攻撃!『フラッシュ・ブレイク』!」

「ぎゃああああああっ!?」

 光丸LP4000→1600

「終わりだ! ネイキッドでダイレクトアタック!『フェニックス・ギア・ソード』!」

『おおおおっ!』

「い、いやだ。いやだいやだいやだいやだいやだ!……死にたくない!!」

「……なに?」

 死にたくない。その言葉に、幽かな違和感を覚えたが、ネイキッドの攻撃は止まらない。その剣で、光丸が切り裂かれる。

「う、うわああああああああああああっ!?」

 光丸LP0

「あ、ああああああああっ!? ああああああああああああっ!」

 絶叫する光丸が、身体を強く抱きしめる。

「なっ!?」

 その身体が、溶け崩れる。

「ど、どうなってやがる!?」

「アア、アァァァァァァァ……ッ」

 溶けて行く。光丸の身体が、光の糸となって溶けて行く。

「ひ、光丸……」

「ァ……」

 溶けた。光丸の身体は、光の糸に分解され、消滅した。

「どう、いうことだ……どういう、ことだよ……風丸!」

 目の前で起こったことが信じられず、オレは思わず風丸に叫んでいた。

「……これが、力の代償なのだろう」

「な……」

「身に余る力が、その身を滅ぼしたのだ。いずれ、私も……」

「なん、だよ……なんだよ、それ……!?」

 死ぬ? デュエルで? こんな、あっさりと?

「ふざけんな! デュエルで……たかがデュエルで、人が死んでたまるかよ!」

「たかがデュエル……?」

「っ!」

 風丸の鋭い目に、オレは気圧された。

「たかが、デュエル。そんな考えの男に、これだけの決闘はできまいよ。そうでなくば……私たちは、光丸は、負けなかっただろう」

「……くっ!」

 そうだ。わかってる。わかっていたはずなんだ。セツや、アテナたちを見ていれば。その話を聞いていたオレなら、知っていた筈だ。デュエルに、命を賭けなければならないこともあると。だが……だが、オレは……。

「そんな……覚悟が……」

「……私に同情するな。私は、身から出た錆に殺される。光丸も同じこと。お前が気に病むことはない」

「そうじゃねえだろ!? なんで、なんでそんな、力を……」

 そんな、身を滅ぼす力を、手に入れようとしたんだ……。

「……力も、意志も弱かった私が、変わるためには……背水の陣をしかなければならなかった。それだけだ」

「なに……?」

「私は、力を得て初めて、変わることが出来た。力を得て初めて、真正面から戦う意志を得た。それまでの私は、光丸と大差ない、矮小な男でしかなかった」

 風丸は、握り拳から血を滴らせながら、そう言った。

「力を持たねば、変わることも出来なかった。力がなければ、正々堂々と戦うことも出来なかったのだ! 私は……!」

「風丸……」

「……さあ、決闘を続けるぞ。私の手番だ」

「風丸!」

 しかし、風丸はオレの言葉に耳を貸さず、デッキからカードをドローする。

「私は、手札から魔法、『死者転生』を発動する。手札を一枚捨て、墓地の『風帝ライザー』を手札に戻す」

 最後は……やっぱりソイツなのか……!

 オレは、伏せてあるカードを思う。

(コイツを使えば、オレは勝てる。だが、そうしたら風丸が……)

「……戦野剣士。これを見ろ」

「なっ!?」

 風丸が、凛の首筋に刀を向けていた。

「本気でやれ。もし、私に同情などして、態と敗北を選んでみろ。この少女を、殺す」

「お前……!」

 なんで、そこまでして……。

 間違いない。あいつは、オレの伏せカードがどんなものか、想像が付いている。それなのに……。

「……良い夢を、見させてもらった」

「風丸ぅぅぅ!」

「私は『神禽王アレクトール』を生贄に、『風帝ライザー』を生贄召喚! 効果により、剣聖を山札に!」

「クソッ! カウンタートラップ『畳返し』! 召喚時に発動するモンスター効果を無効にし、破壊する!」

 風帝の放った竜巻が、風帝自身を巻き込み、吹き飛ばす。天高く飛ばされた風帝は、その身を大地に叩きつけ、消滅する。

「これが……私の終焉か」

「終焉……!? まさか、お前らに力を与えたのは……」

「……やれ。お前の手番だ」

「クソッ……オレの、ターン。ドロー! オレは……」

「……やれ。娘がどうなってもいいのか」

「っ! オレはっ! ネイキッドとクライスで、風丸をダイレクトアタック! 行けえええっ!」

「……それで、いい」

 風丸は、凛の身体を優しく横たえ、静かな笑みを浮かべ、風に溶ける。

「……翼だ。私は……風、と……翼、に……」

「風丸ぅぅぅっ!」

 風丸LP3800→0

 風丸は、風に溶け、消えて行く。

「やり過ぎ、だろ……! こんなの……」

 先日、オレたちと決別し、姿を消した同級生を脳裏に思い浮かべる。

「これも……お前の望みなのかよ……加藤……!」

 終焉と共に、消えた同級生。セツに懸想していた、という以外、然程の特徴も、オレとの接点もなかったが、皆と同じで、オレを受け入れてくれた一人。

「畜生! こんな、こんなデュエル……」

『マスター……』

 痛ましげな目を向けてくるネイキッドにも気付かず、オレはただ、項垂れた。かつてデュエルキング武藤遊戯とその親友、城之内克也が死闘を演じたという埠頭で、ただ、項垂れたのだった。

 

 

 

 

 







 今回の剣士のデッキは戦士族デュアルです。個人的に結構お気に入り。デュアル・ソルジャーからの流れは中々上手に出来たかなと自画自賛。弱小モンスター一体から上級を大量展開して場の流れをひっくり返すのが主人公っぽいです。剣士主人公じゃないけど、使ってるデッキは割と正統派主人公なので。
 デュアルは結構好きです。なにげにイラストも良質なものが揃っている印象です。あと、使ってみるとわかるんですけど、地味にソリティアです。スーペルヴィスや炎妖蝶ウィルプス、ギガプラント辺りを絡めていくと、いつまで経っても自分のターンが終わりません。というか、デュアルはスーペルヴィスの存在が大きいですね。デュアルなのに通常召喚が制限されるアームズ・ホールを使ってしまうほどに。
 それでは、悠でした!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。