アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第七話「月一試験! その後」

アルカナ~切り札の騎士~

第七話「月一試験! その後」

 

 

 

 

「これにて、今回の試験の全工程を終了します」

 十代が万丈目を下し、いつもの決め台詞が飛び出したところで、鮫島校長が試験終了の宣告をした。

 お、終わったか……なんか、試験とはまるで無関係のところで神経をすり減らした印象が強い。主にアテナとか精霊とか精霊とか精霊とか!

「いやしかし、誰もがとてもすばらしいデュエルを見せてくれました。特に、最後まで自分のデッキを信頼し、モンスターとの熱き友情を見せ、そして何より、最後の最後まで勝負を捨てることなく、終始デュエルを楽しみぬいた遊城十代君。君の熱いデュエル魂は、ここにいる誰もが認めることでしょう。よって、遊城君はラー・イエローに昇格です」

 会場を揺るがすような大歓声。オベリスク・ブルーの一部の生徒以外は皆一様に十代へ祝福の言葉を投げかけている。

「そして……同じく御堂切君」

「ほへ?」

 思わず間抜けな声をあげてしまった。

「格上であるオベリスク・ブルー、それも上級生に対しても、普段と変わらずまっすぐな目でのデュエル。観客のブーイングにも負けず、自らのデュエルを貫き通した意志。何よりも突出した筆記内容! どれをとっても、昇格に相応しい。よって君も、ラー・イエローへと昇格です!」

 先ほどよりは小さいながらも歓声が湧く。が、何故か男子の数割はブーイングなんぞしてやがる。……あれか!? やっぱり俺が『雷電娘々』を倒したからか! そこまで好きかお前ら!

「おお~! やったなセツ!」

「二人ともすごいや!」

「これで一歩オベリスク・ブルーに近づきましたね!」

「ん~……」

 自分も当事者であることを忘れて祝福してくれる十代や純粋に喜んでくれているアテナたちには悪いが、俺自身はあまり乗り気じゃない。

「なー十代、どうんすんべ?」

「ん? どうするって?」

「いやさ、俺あんまし昇格する気が起きねーんだが、十代の方はどうよ?」

 俺がニヤリと笑いかけると、十代もまた、意図を察してくれたらしく、ニヤリと笑った。

「へへっ! 気が合うな! 実はオレも、昇級断ろうかと思っててさ」

 そう言って笑い合う俺たちに、翔が慌ててツッコミを入れた。

「ちょ、二人とも何言ってんスか!?」

「いいじゃねーか。オレ、レッド寮好きなんだからさ。あそこがオレの部屋だぜ!」

「あ、アニキ……」

 なんだか感動したような翔が、今度は俺の方に顔を向けてくる。

「……昨日言ったじゃねーか。覚えてないのか?」

「え……」

 ポカンとしている翔に、俺は昨日も言ったセリフを繰り返してやる。

「メザシとエビフライは俺のジャスティス!」

「え、ええ~!?」

「せ、セツ……本気、ですか?」

 今度はアテナか。まあ、あんなメールよこしてきたし、期待してたのかもな。

「ああ。本気だ。正直、上に上がるメリットが思い付かない」

「え、えっと……ご飯とか、おいしくなりますよ!? ほら、メザシやエビフライでしたら頼めばそれだって……」

「ん~正直美味いもん食いたかったらブルー寮とかお邪魔して貰えばよくね?」

「も、もらえませんよ! こう言っては失礼ですけど、皆さん格下の寮に対して自分たちのご飯を……」

「けど、もう俺何度か女子寮のメシも食べてるぜ?」

 あっけらかんと言うと、全員何を言っているのかわからないといったようにポカンとしてしまった。

「え? ちょ、ちょっと待ってください! もしかしてセツ……女子寮に侵入とか、してました?」

 明日香から厳しい目線が向けられる。……いやいや。

「侵入て。俺は普通に真正面から入って堂々と食堂でメシ食って帰っただけだが」

「あ、ありえないわ」

「その時普通にアテナや明日香とも会話したぞ」

 はっとした表情で記憶を辿るアテナと明日香。

「そ、そういえば話してたような……」

「……普通に食事しながら会話してたわね……」

 言いながら信じられないとばかりにこちらを見つめてくる。

 ちなみに、その時の会話がこちら。

 

 

 

 アテナの時は……。

『ようアテナ。こんばんは』

『セツ! こんばんはです。今日はどうしたんですか?』

『レッドのメシも美味いんだが、たまには他の寮のメシも食ってみたくなってなー』

『そうでしたか。じゃあゆっくりしていってくださいね』

 

 

 

 んで明日香の時は……。

『あら御堂くん。今日は今から食事かしら』

『まあなー。おっ、そうだ天上院、このカードなんだけどさ、お前のデッキにどうだ? いや手に入れたのはいいんだけど、俺のデッキじゃ合わなくてなー』

『へぇ……良い効果じゃない。もらってもいいのかしら』

『ああ。どうせ持ってても腐らせるだけだからな』

『ありがとう。でも、まずは食事を済ませてからにしましょう。行儀が悪いわ』

『へーい』

 

 

 

「とまあこんな具合で」

「何故疑問に思わなかったのかしら……?」

「ごくごく当たり前にセツが女子寮にいました……」

「……お前は一体どんな魔法を使ったんだ?」

「いやー、昔からどこにでも自然に溶け込める特技があってなー」

 三沢とは違うぞ。ある意味では確かに『空気』なんだが、フェードアウトするんじゃなくて、溶け込んでいくわけだな。

「警備の人とかどう突破したんですか?」

「いや普通に」

 

 

 

『こんちゃーっす』

『おう、こんにちは』

『毎日立ち仕事お疲れ様です』

『ははは、なに、これが仕事だからな』

『今後もお勤めがんばってくださいね~』

『ああ。お前も、勉強頑張れよ』

 

 

 

「てな具合で」

「……警備の意味がないじゃない。人員異動を提案しようかしら」

 無意味だぜ。そも、お前らだって違和感なく受け入れてんだから。

「もしかして、イエロー寮にも来てたのか?」

 もち。あそこはやはりカレーが美味かった。ブルーほど高級じゃないにしろ、庶民の贅沢位の質があってよかったな。

「しかし、あの時はただ単に誰とも会わなかっただけだ」

 イエローの人間は総じて影が薄くて困る。

「じゃあ、ブルーにも?」

「ああ。女子寮のも高級で美味かったが、やっぱ女子寮だと量が物足りなくてな」

「……他の寮はともかく、ブルーに知り合いなんかいないだろお前」

 顔見知りくらいなら、万丈目とかクロノス先生が。

「……あの二人が見逃すとか、今まで以上にあり得ません」

 アテナがすごく疑わしげだが、これもまた事実。

「実際、クロノス先生や万丈目にも会ったぞ」

「どう切り抜けたんだ?」

 なんか十代はもう適応してわくわくと俺の話を聞く態勢だ。こいつにもその内できそうだな。

「そうだな。クロノス先生の時は……」

 

 

 

『パルメザンチ~ズ』

『とろけるチ~ズ』

 突破。

 

 

 

『……』

 いやほんとだって。

 

 

 

 万丈目の時は……

『ぱじゃまでお・ジャ・マ♪』

『マッスルマッスルおジャマッスル!』

 クリア。

 

 

 

『あり得ない!』

「ていうか今の誰だよ!? ぜってー、万丈目じゃなかったろ!」

 紛れもなくおジャ万丈目さんです本当にありが(ry

「事実だ」

 全員もはや驚きを通り越して呆れたような表情だ。

「実はブルーが一番簡単だった罠」

「……そこまで何でもありだと、もしかしてセツ君、女子寮のお風呂とかに入っても気付かれないんじゃ……」

 むっつりスケベ乙。

 翔の言葉を聞いて真っ赤な顔で記憶を辿ろうとしているアテナと明日香。

「それは無理だな。流石にそんなとこ入ろうとしたら下心が露出して気付かれる」

 無理だと聞いてほっと胸を撫で下ろす女子二人。

「まあネタばらしするとだな。俺は普段から自然体のプレッシャー知らずだから、どんなに堂々と女子寮歩いていても周りが自然に受け入れてくれる……らしい」

 前の世界の友人から聞いた話だが。

「けどまあ、流石に女子風呂なんか入ろうとすれば自然体ではいられんから、周りにも気付かれるってわけだ」

 この妙な特殊能力のおかげで、学園祭では他クラスへのスパイに必ず任命されていたことを思い出す。

「……どっちにしろうらやましい能力ッス」

 うらやましいと思っている時点でお前には出来ん。

「まーそんなわけで、俺にとって昇級するメリットはさほどないわけだ」

「セツ……」

「大体アテナ。お前こそ、なんで俺に昇級して欲しかったんだ?」

 別に俺が昇級しようとすまいと、アテナに対する態度は変わらなかったはず。俺がそのことについて聞くと、アテナは軽く頬を染めた。

「セツは……私の好きな人ですから。オシリス・レッドだってバカにされているのが嫌だったんです」

 …………。

「じゃあ、オレたちは帰るとするか!」

「そうね。アテナも、門限までには帰ってきなさい」

「新たな計算式が……ブツブツ」

「はぁ~……リア充乙ッス~」

「でえい! 帰るな貴様ら! こんな空気の中二人にするな!」

『不純異性交遊!』

『天罰てきめん!』

『やっちゃえー!』

「芸人かお前らは!? ジャーック任せた!」

 …………。

……あれ?

『ジャック殿でしたら、ストライキ中です』

「ジャーック!?」

 心強い味方が消えた。これから俺はどうすれば!?

『偶にはわしを呼んでみるという手も……』

「ない! 却下!」

 むしろ出るな爺!

だがまあ少なくともあのむず痒い雰囲気は払拭された。そのことだけはぐっじょぶ!

「と、とりあえずアテナ! 俺はむしろオシリス・レッドだからってバカにしてるエリートさんどもを軽く蹴散らして悦に入る方が性に合ってるから無問題! 全然お前が気にするこたぁーない! おk?」

「は、はい。すみませんセツ。あっ、それと、あんまり女子寮に出入りするのは良くないですよ。倫理的に」

「お、おう」

『まったくですわ。自重なさりませ主様』

『ぷぷっ、子供に倫理観説かれてるわ。なっさけな~い』

『子供っぽくてカワイイし、ボクはいいと思うけどな~』

 自重すんのはお前らだよこのお騒がし三人官女。

 結局最後は騒がしく試験を終える俺たちなのだった。……帰ってきてくれ、ジャック!

 

 

 

おまけ

『わし、扱いがぞんざいじゃね? 一応キングなのに……』

『キング……いえ、恐らく今はまだ、キングのターンに入っていないだけで……何故私はストライキに入って尚他人のフォローをしているのでしょう』

『それがお主の運命なんじゃな……』

『お気遣い、痛み入ります……』

 

 

 

 

 




 今更ですが、なんで月一試験程度に四話も使ってるんでしょうね。今から考えると、もっと縮められたと思います。反省。
 それでは、悠でした!
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