アルカナ~切り札の騎士~
第三期第二十六話「想いの在り処」
――光が、広がっていく。
視界一杯に、白い……光が。
「セツ!!」
アテナの声も、何処か遠くに聞こえる。
ああ……意識が、薄れ……。
ポッ……。
「え?」
「……なんだ?」
俺の胸元が、淡く輝いている。そこには確か、希冴姫から贈られたペンダントがあったはずで……。
「……希冴姫?」
『……はい。セツ様』
白い光の中で、唯一違う輝き……。ルージュの光。
『先ほどのデュエル……お役に立てず、申し訳ありませんでした』
「何、言ってるんだ。希冴姫には助けられている。今も、さっきも……今までもずっと」
思い出す。最初にこの世界に来てから、今までの戦いを。
その間、ずっと傍で共に戦ってきた。何度も何度も召喚し、何度も墓地に送ってしまった。エースとの確執の時、希冴姫の想いを聞いた。それでも、心のどこかにずっと引っかかっていた想い。
「お前は……幸せなのか? 俺たちは、エースの言うように、お前たちを道具のように使い回しているだけじゃないのか……?」
今でも思う。俺たちは、交わるべきだったのか。俺なんかと戦って……いや、使われていて、希冴姫は……。
『……幸せですわ』
「でも……」
『セツ様』
「希冴姫……?」
ルージュ色の光が、希冴姫の形をとって俺の前に来る。
『んっ……』
一瞬だけ感じた温もり。
『幸せだから……貴方が好きだから、だから……ここに、こうしていますのよ。おわかりですか?』
「……ぁ。っ希冴姫! 体が……」
希冴姫の身体がルージュ色の光輝となって広がっていく。その輝きが白い、俺を取り込もうとしていた光を押し返していく。
『そう……そうですの。触れてみて初めて分かりましたわ……これが、破滅の光……』
「破滅の光? 何言っているんだ希冴姫、おい希冴姫!」
『セツ様。わたくしは貴方をお守りします。騎士の名誉、そして、女としての想いに懸けて。全身全霊、魂の全てで!』
「バカな……我が支配が、我が光が押し戻される……!? これが、精霊の力……御堂切や遊城十代の持つ力か!」
『わたくしは……これから“破滅”より、何倍も恐ろしい“終焉”からセツ様を守り通さないといけませんの……この程度の力に、後れをとるわけにはいきませんのよ!』
完全に、ルージュの輝きが白の光を跳ね返した。
「ぬぅっ!?」
白い光が完全に消え、ルージュ色の光の中に、俺と希冴姫だけが残る。
『セツ様……ご無事ですか?』
「ああ。ありがとう。希冴姫のおかげだ……でも希冴姫」
『……なん、でしょう……?』
「なんで、お前……」
――そんなに、ボロボロなんだ?
希冴姫の全身には、先ほどのアルカナのように罅が走り、希冴姫自身の輝きも徐々に弱まっている。姿自体も、時を経るごとにどんどん薄く、透けていく。
これじゃまるで……。
「消え……ちまうみたいじゃないか……」
俺の言葉に、希冴姫はただ微笑むばかり。
「っ……!」
俺は思わず希冴姫に手を伸ばし……その手は、むなしく空を切った。
「っなん……なんでだよ!? 何で……何でみんな、みんな……!」
『……言った筈ですわ。セツ様。全身全霊、魂の全てで、お守りします、と……』
「守る……? 守るって、こういうことじゃないだろ!? 俺は、こんなこと望んじゃいない! 希冴姫っ……!」
『希冴姫……わたくしの、名前。セツ様に、付けていただいた、今のわたくしにとって、何よりも愛しい、確かなモノ……』
「希冴姫……希冴姫!」
『セツ様……そのペンダント、ずっと身につけていただいて、とても嬉しいですわ』
希冴姫が、俺の胸元に目を向ける。そこには、例のペンダントが淡く光を放っていた。
『出来ればこれからも、それは肌身離さず身につけていてくださいまし。それが……わたくしの想いとなり、力となって、セツ様をお守りしますわ』
「お前が……」
希冴姫はもう、殆ど消えかけていた。罅も全身に回り、今にも砕けそうだ。
「お前が守れよ! 俺の傍に居て、お前が! そのための騎士なんだろ!? 魂の全てとか……そんなの、いいから……」
『……最早、叶わぬ願いです』
「なんで……」
なんで、こんなことを。
その時、フッ、と希冴姫の身体が風に揺らいだ。
「希冴姫!?」
『……セツ様。お別れの時間が、近いようです』
「希冴姫ッ!」
手を伸ばす。しかし、届かない。俺の手は、徐々に光の粒となっていく希冴姫の身体をすり抜けていくだけ。
「待てよ……待ってくれ……勝手だろ……! 全部、全部お前の自己満足じゃないか! 俺は、俺はこんなもの望んじゃいない! 希冴姫! 破滅の光だか何だか知らないが、お前に守って貰わなくたって、俺は囚われたりしない! 勝手だ……勝手だよ……!」
違う。そうじゃない。そんなことを言いたいんじゃない。俺は、俺は希冴姫に……。
「何も……何もしてない! お前の忠誠に、親愛に、何一つ応えてない! 守ってもらっただけで、俺は!」
『……既に、頂きました』
俺の慟哭に、少しだけ悲しそうな顔をしていた希冴姫が、静かに口を開く。
『名を。希望を、光を、喜びを、幸せを。たくさん、頂きましたわ』
「……足りない」
足りるわけがない。
「……なぁ」
『……はい』
「もう、会えないのか?」
『……いいえ』
「え?」
『またきっと、会えますわ。セツ様』
希冴姫の身体は、もう上半身しか残っていない。
『貴方が……願ってくださるのなら……きっと……また』
「きさっ……!?」
光が、散った。
「あ、あああ……あああああああああっ!」
どうして、どうして!? どうして皆、こんな……!
「俺から……離れていくんだ!」
愛してると言いながら。変わらぬ想いを捧げたまま。嫌われて離れて行くなら、まだ理解できる。俺は色んな女の子の気持ちに、満足に答えることも出来てないバカ野郎だ。愛想を尽かされて、離れて行くならまだわかる。だけど……!
「なんでだ……!」
痛みに。胸を刺す苦しみに。叫び出しそうなほどの悲しみに。
「クソおおおおおおおおおおおおおっ!」
破滅の光は、もうない。希冴姫が払ってくれた。しかし俺の心は、代わりとばかりに広がった黒い感情に押しつぶされそうになって……。
「囚われるな! セツ!」
「がっ! はっ……!」
一瞬目の前がスパークした。自分が殴られたことに気がついたのは、少し経ってからだ。
「ぐ……エース?」
何かに堪えるように表情を消したエースが、少し赤くなった拳をさすっていた。
「……希冴姫の覚悟を無にするつもりか。愚か者め」
「今、俺は……」
「呑まれかけていたな。まったく……いくら希冴姫が守ろうと、貴様自身が望めば精神防壁などあってないようなものだ。希冴姫の奴め……こうなることくらい予測しておけ。本当に、盲目でクレイジーな奴だ」
落ちていた一枚のカード――恐らく、希冴姫のもの――と傍に落ちていた何かの結晶を拾い上げるエース。
「……案ずるな。まだ、希望はある」
「え……?」
しばらく思案顔でカードと結晶を見つめていたエースが、突然そんなことを言う。
「希冴姫は確かに逝ったが、力も魂も残っている。これなら……」
「どういうことだ……?」
わけもわからず目を瞬かせる俺を、エースが助け起こす。
「そもそも、あのクレイジーが消えた理由を、貴様は勘違いしているだろう」
「消えた理由……?」
破滅の光による干渉から救うためじゃ……。
「違う。正確には、あの干渉があろうが無かろうが、奴の死は決していた」
「どういうことですか?」
「……お姫様は、貴方のペンダントに、力を移譲していた」
アテナの疑問に答えたのは、いつの間にか現れていたルイン。異変を察知して駆けつけてくれたらしい。
「その通りだ。知っているかもしれんが、我ら精霊は、カードから離れるとその力を徐々に失い、やがて消滅する。今の希冴姫のようにな」
「希冴姫……」
「暗くなるな。兎も角、奴は随分前から、貴様のそのペンダントに自らの力をほぼ全て封じていた。最近体調が思わしくなかったのはそのためだ」
「あ……」
希冴姫が体調を崩していたのは、そういうことだったのか……。
「そしてそのペンダントの加護は、お姫様の死と共に、彼女の魂を吸収して完成する予定だった」
ルインの補足に、俺はペンダントをマジマジと見る。
「もっとも、本当にそのペンダントに魂を吸収されれば奴を蘇らせることはできなくなるところだったがな」
「じゃあ……」
「ああ。今そのペンダントの加護は完成していない。だからこそ少しばかり終焉の干渉を許してしまったが……まあ、結果的に無事だったから良しとしろ」
そしてエースは、俺に先ほどの結晶を見せた。
「そこでこれだ」
「え?」
「以前、世界の抑止力……真中希望が希冴姫に何か渡していただろう?」
「あ、ああ……」
アテナが戻ってきて、ユーキちゃんがいなくなった時だ。確かに、希望は希冴姫に何かを手渡していた。
「アイツが渡したのは一種のドーピングアイテムのようなものでな。力をほぼ失い、デュエルに力を貸すのが困難になっていた希冴姫の力を一時的に復活させるものだった」
「そんなものを……」
アテナが感心しているが、俺はそれどころではない。
「今、ドーピングと言ったか?」
「そうだ」
「じゃあまさか……」
「当然、副作用がある。復活するのは一デュエル限り。そして、終わった後には力を全て使い果たす」
「な……!?」
じゃあ、希冴姫が消えたのはそれで……。
「慌てるな。ただ使い果たすだけではない。この結晶は、死んだ精霊の魂を封じるものだ」
「……世界は、その機能だけお姫様に伝えなかった。彼女の蘇生には、魂が必要」
「ほっといてもその内あのクレイジーは死んだだろうから、そのくらいなら、という奴だろう。次善策だがな」
「蘇生……じゃあ、希冴姫は」
「で、でも肝心の蘇生はどうやってするんですか? そんなこと……」
アテナがそう懸念を口にすると、何故かエースとルインは呆れたようにアテナを見た。
「え? え? なんですか?」
「……大分、人間生活が長かったらしいな」
「……毒されてる」
二人して溜息を吐く。
「えっと……?」
未だハテナ顔のアテナ。だが、俺はピンと来た。
「アテナ。確かお前の精霊としての名前って……」
「え? あ、はい。『反魂のスピリチュア』です……ってああっ!?」
顔にでかでかと『すっかり忘れてました!』と書かれている。
「……そう。まさに、適役がいる」
「……まったく。良くできていると言うかなんというか……これも、真中希望の筋書きか?」
それはわからないが、とにかく。
「希冴姫は、助かるんだな?」
「そこの間抜けがポカしなければな」
「ま、間抜けじゃありませんよ! ちょっとド忘れしていただけです! そ、それに、今は人間で、あんまり力もありませんし……確実ではないですよ」
少し申し訳なさげにそうつぶやくアテナ。
『だいじょぶよん。おねーさんも補助するし、いざとなれば冥王竜もカイエンちゃんたちもいるからさっ!』
「シャルナ……」
「ま、そういうわけだ。そう悲観するな。儀式は我らの神殿で行う。あの場所が最も霊的な意味でも、希冴姫の魂が最も定着しやすいという意味でも優れている」
「あとは、キミ次第」
皆が俺を見つめてくる。答えは、当然決まっていた。
「……行こう。精霊界へ。どっち道、希望もそうした方がいいって言っていたし、他の皆も連れて行こう」
「それでいい」
エースがニヤリと笑みを見せた。
「あ、でもさだめさんはどうしましょう? まだ意識が戻っていないみたいですけど……」
「……少なくとも、今は小康状態。私が離れても、時間で全快する」
「……さだめは……」
俺が、今回は置いて行こう、と言いかけたその時。
「ちょぉぉっと待ったぁぁっ!!」
レッド寮、さだめを寝かせておいた部屋の扉が吹き飛んで、そこから見なれた小さな影が飛び出してきた!
「とうっ!」
「うおっ!?」
そこから一足飛びに俺に飛びついてくる。なんとか受け止めた。
「さだめっ!?」
「さだめさん!? もう起きて大丈夫なんですか離れてください!」
「うあたたっ!? ちょ、アテナ痛い痛い! 心配しながら引き剥がさないで! いいじゃん久しぶりのお兄ちゃん分なんだから補給させてくれたって!」
「私の補給が終わってないんです!」
「あれから何日経ったと思ってるのさ! もういいでしょ!」
「ダメです! 足りてません!」
「気持ちはわかる!」
「わかりあってないでさっさと退け!」
俺の上で言い合う二人をなんとか退かし、改めてさだめに向きあう。
「さだめ。お前本当に大丈夫なのか? 今の今まで寝ていたんだろう?」
さだめは病人服のままだし、暴れたために少し肌蹴た服の下に見える包帯もそのままだ。
「ん? ああ平気平気。全然オッケー」
心配する俺たちを余所に、さだめは至って元気そう。怪我人とは到底思えない。……先ほどの動きも含めて。
「……いや、そもそもさっきの動き、明らかに怪我人じゃないだろどう考えても」
死にかけて意識不明だったのがいきなりドア吹っ飛ばして二階からダイブ。一足飛びで俺にもダイブ。……健康な人間でも出来そうにない。
「怪我人? 誰が?」
「いや、お前が」
きょとん、と何を言っているのかわからない、とばかりに首をかしげるさだめを全員で指差す。
「そんなもの、速攻完治だよ完治」
シュルシュルと包帯を解いて行くさだめ。その下からは、傷跡一つない綺麗な肌色。……待て、傷跡一つ?
「……あれだけ深くグサっと逝っといて、なんでそんな綺麗に傷跡なくなってるんですか」
「お兄ちゃんの血を輸血して貰ったから。それも大量に」
「理不尽! だけどすごく納得です!」
「いやいやいや! 納得するな! 理不尽だろ!」
「怪我なんて輸血して貰って直ぐ治ったよ? 今まで寝てたのは、幼虫が成虫になる時にさなぎになるのと同じこと」
「貴様……本当に人間か?」
エースが引いている。俺も同感だ。
「さだめの細胞が、お兄ちゃんの血液によって進化したの。今なら百メートル10秒で走れそう!」
運動音痴のさだめにしては大きく出た、とかそういう問題じゃない。
「あの……錯覚かもしれませんがいえ錯覚の筈なんですけど!……さだめさん、背と胸、少し大きくなってませんか?」
「進化したからね!」
「絶対有り得んだろうが! 貴様はアレか、吸血鬼か!?」
例え吸血鬼でも、血を貰っただけで体まで変質はしないと思う。いや、知らんが。
「お兄ちゃんのDNAが、さだめを死の淵から蘇らせるだけじゃ飽き足らず、遥か高みまで昇華させてくれたの! 今のさだめはそう! 言うなれば新生ニューさだめMrk-2セカンドツヴァイドスデュオ!」
「どれだけ二を被せれば気が済むんだお前は」
「というわけで、さだめも一緒に行くからね。当然」
……こうなったら、何言っても聞かないだろう。
「わかった。でも、一応病院で検査してからだぞ」
「ぃよし!」
「ほ、ホントに元気ですね……」
まったくだ。お陰で、陰鬱な気分も吹き飛んだよ。
「……まったく何なんだ貴様ら兄妹は……」
疲れたように溜息を吐くエース。すまん。俺もそう思う。
その瞬間。
「っ!? エース!」
「後ろ!」
「っな!?」
突然、エースの後ろに終焉の精霊が現れる。俺たちの声に反応し、咄嗟に身を捻ったエースだったが、かわし切れず、終焉の精霊の腕がかすめる。
「ぐっ!?」
「エース!」
「わ、我は心配ない、それより結晶が!」
「な……」
ケケケケッと馬鹿にしたような笑い声を上げる終焉の精霊が、その手に希冴姫の魂が入った結晶を摘まんでいる。初めからあの奇襲はあれを狙って……!?
「返せぇ!」
「待ちなさい!」
「っ……!」
エースたちが一斉に攻撃するが、その一瞬前に終焉の精霊は煙のように消えてしまう。……希冴姫の魂と共に。
「そ、そんな……」
「くっ……我が、油断したから……」
「くっ……」
そんな……これじゃ、希冴姫が……。
「お兄ちゃん、今の大切なモノ?」
俺たちが絶望的な気持ちで膝を着く中、唯一平然としていたさだめがそう聞いてくる。
「さだめ……そうか、さだめは知らなかったか」
俺はさだめに、先ほどまでの話をしようとして……さだめがその手にぶら下げているものに目が向いた。
「さだめ……お前、それ……」
「ん? ああ、さっきの奴の腕。なんか大事なものっぽかったから、取り返しておいたよ。はい」
消滅する腕を放り捨てて、さだめは俺に希冴姫の結晶を渡す。
「い、いつの間に……」
「皆の攻撃が届くちょっと前に。サクッと」
「い、いえそれよりも、どうしてさだめさんが終焉の精霊に……」
そうだ。アイツに俺たち人間の物理攻撃は通用しなかった筈……アテナたちの攻撃より早く動いたのもあり得ないが、そっちはもっとあり得ない。
「だから、言ったでしょ? 今のさだめは、さだめであってさだめに非ず! お兄ちゃんのDNAによって進化したさだめにとっては、それくらい造作もないこと」
「……理不尽」
ルインに同意。
「まあ真面目な話。さだめ、嫌ってほどアレに取り憑かれてたからね……多分、もう魂とか、その辺が精霊寄りになっちゃってるんだと思う。なんとなく、それがわかるよ。一回臨死体験したから、それがきっかけかな」
「あ……」
そうか……殆ど生まれてこの方ずっとアレに憑かれていたから……。
「ま、でもさだめ的にはお兄ちゃんのDNAぱぅわ~の方が納得できるし、嬉しいけど」
「……はは」
「さだめさんらしいですけど……」
さだめはやっぱりさだめのままだな。変わらない。
「よし。とにかく、さだめのおかげで希冴姫の魂も無事だった訳だし、精霊界行きの件をみんなにも話して、早いとこ精霊界に行こう!」
「はい!」
「わかった」
「了解だ」
「さだめにも説明よろしくね。お兄ちゃん!」
しかしそれにしても……。
「また、学園休まなきゃな……今度こそ、留年するかも」
「……言わないでくださいセツ。私も、似たようなものです」
「さだめも」
ユーキちゃんもアレだし……はぁ。
「こうなりゃ、揃って留年してやるか……」
半ば以上に諦観の篭った溜息を洩らす。
「……いや、それとも」
「セツ?」
「……いや、精霊界に行く前に、やっておくことがあるのを思い出した」
「やっておくこと?」
「さだめ、お前が起きたのも、今考えれば丁度いい。少し……付き合って貰うぞ」
「何々? お出かけ? デート?」
「いや……帰省、だ」
「っ……」
さだめの表情が強張る。
「そろそろ……決着着けないと、な」
携帯電話を取り出して、ディスプレイに表示された名前を見る。
『御堂 |正(ただし)(父)』