アルカナ~切り札の騎士~
第四期第三話「水底の儀水鏡」
「私の先攻! ドロー!」
今や異形の怪物と化してしまったエリアルを救うため、私は気合を入れてカードをドローした。
「うん。私は手札から『アトランティスの戦士』を墓地に送ってデッキから『伝説の都アトランティス』を手札に加え、発動!」
「ほウ……アトランティスか」
私たちの周囲は、殆ど変わっていない。もしかしたらアトランティスは、この海底神殿の過去の姿なのかも。
「アトランティスの効果で、私の手札とフィールド上のモンスターのレベルは一つ下がります! 手札から『ギガ・ガガギゴ』を攻撃表示で召喚! カードを一枚セットしてターンエンド!」
『ギガ・ガガギゴ』ATK2450→2650
「我のターン、ドロー!」
エリアルの使うデッキがどんなデッキなのか、私には見当もつかない。でも、エリアの妹みたいな子なら、多分同じ水属性……。
「我は手札から『リチュア・アビス』を攻撃表示で召喚! 効果発動!『リチュア・アビス』は召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから守備力1000以下のリチュアを手札に加えることができる! 手札に加えるのは『シャドウ・リチュア』!」
『リチュア・アビス』ATK800→1000
「リチュア……?」
聞いたことのないカード名に、少し困惑する。
「手札に加えた『シャドウ・リチュア』の効果! 手札から墓地に捨てることにより、デッキからリチュアと名のついた儀式魔法一枚を手札に加える!」
エリアルの手に、禍々しい気配を放つカードが加わる。……あれは、良くない!
「我はカードを三枚セット。ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー!」
大丈夫。幸い、エリアルの『リチュア・アビス』の攻撃力はたったの800。アトランティスの影響下で1000まで上がってはいるけど、それでも私の『ギガ・ガガギゴ』に比べれば!
「バトルフェイズ!『ギガ・ガガギゴ』で『リチュア・アビス』を攻撃!」
「リバースカードオープン! 永続トラップ、『忘却の海底神殿』! このカードは、自分フィールド上の水属性モンスター一体を、自分のエンドフェイズまで除外することができる!『リチュア・アビス』をゲームから除外する!」
「なら、ダイレクトアタック!」
「リバースカード発動『|竜巻海流壁(トルネードウォール)』! 我への戦闘ダメージは無効だ!」
「くっ……」
『ギガ・ガガギゴ』の攻撃が、逆巻く竜巻に防がれる。
「なら、私はモンスターを一体守備表示でセット。ターンエンド」
「我のターン、ドロー! 我は『リチュア・チェイン』を攻撃表示で召喚。効果を使う!」
『リチュア・チェイン』ATK1800→2000
エリアルのフィールドに、鎖を手にしたトカゲのようなモンスターが召喚される。攻撃力はアトランティスの影響下で2000。まだ、問題ない。
「チェインの効果は、デッキの上から三枚をめくり、その中に儀式魔法か儀式モンスターが存在すれば、その内一枚を手札に加えることができる」
エリアルがめくったカードは『イビリチュア・マインドオーガス』『強欲なウツボ』『リチュア・マーカー』の三枚。
「くくく……我は『イビリチュア・マインドオーガス』を手札に加える。更に魔法カード『天使の施し』発動。デッキからカードを三枚ドローし、手札から『リチュア・マーカー』と『リチュア・ヴァニティ』を墓地に送る。リバースカードオープン!」
僅か二ターンで、エリアルの手札はどんどん整えられていく。
「『儀水鏡の瞑想術』! 手札の儀式魔法をオープンすることで、墓地のリチュアを二体、手札に戻す。我が戻すのは『シャドウ・リチュア』と『リチュア・ヴァニティ』!」
手札が六枚。例え儀式で三枚を消費するとしても十分な手札が揃っちゃった……。
「まだだ。我は魔法カード『強欲なウツボ』を発動。手札の『スノーマンイーター』『リチュア・ヴァニティ』をデッキに戻し、デッキからカードを三枚ドローする」
「凄い回転率……」
こんな序盤から、くるくると手札が入れ替わっていく。
「手札から永続魔法『昇華する魂』発動! そして、儀式魔法『リチュアの儀水鏡』!」
エリアルが持っていたのと同じ意匠の鏡が出現し、禍々しいオーラを放ち始める。
「な、なにが……」
「ふ、ふはは……我は『シャドウ・リチュア』を儀式の贄にする。『シャドウ・リチュア』は水属性の儀式モンスターの贄にする場合、一体で生贄を賄うことができる! 出でよ。我が写し身。『イビリチュア・マインドオーガス』!」
『イビリチュア・マインドオーガス』ATK2500→2700
現在のエリアルと同じ姿をした、異形の人魚がフィールドに召喚される。
「そして我の効果を発動する。儀式召喚に成功した時、お互いの墓地に存在するカードを合計五枚まで選択し、デッキに戻すことができる。我が戻すのは『リチュア・マーカー』『儀水鏡の瞑想術』『強欲なウツボ』『天使の施し』そして貴様の『アトランティスの戦士』の五枚!」
「再利用効果……!」
「『昇華する魂』の効果により、儀式に使用した『シャドウ・リチュア』を手札に戻す。バトルだ! その目障りな爬虫類を蹴散らしてくれる!『魔鏡黎明波』!」
「きゃああっ!」
凛LP4000→3950
マインドオーガスの下半身、もう一つの口のように開かれた魚の口から、極太のレーザーが放たれ、何とか持ちこたえようとした『ギガ・ガガギゴ』を消し飛ばす。
「まだだ!『リチュア・チェイン』で守備モンスターを攻撃!『魔鏡鎖』!」
トカゲのような『リチュア・チェイン』の手にした鎖が、私の守備モンスターを打ち抜こうとする。
「っ……リバースカードオープン!『海竜神の加護』! このターン、私のレベル3以下の水属性モンスターは戦闘では破壊されない! リバースモンスターは『水霊使いエリア』!」
『水霊使いエリア』DEF1500
『エリアル……必ず、解放してあげるわ』
「エリアのリバース効果発動! このカードが表側表示で存在する限り、相手の水属性モンスター一体のコントロールを得る。私が選択するのは、当然『イビリチュア・マインドオーガス』!」
「なんだと!?」
異形の人魚をこちらの支配下におくことが出来た。でもまだ安心はできない。
「……エンドフェイズに、『忘却の海底神殿』の効果によって除外されていた『リチュア・アビス』は我がフィールドに特殊召喚される。効果発動! デッキから『リチュア・ヴァニティ』を手札に加える。ターンエンド」
あっという間に手札が補充されて五枚。あれだけカードを使ったのに……。
「わ、私のターン、ドロー!」
『凛、呑まれないで。確かに大したタクティクスだけど、付け入る隙はあるわ』
「う、うん。すぅ……はぁ……よし!」
声をかけてくれたエリアに返事をして、深呼吸。そうだ、これはいつもの、負けても何も失わない、甘いデュエルじゃない……。
「負けたら、色んなものを失っちゃうんだ」
エリアの家族。新しい力。もしかしたら、私の命や世界の命運すら。
「……負けられない。そのために」
もう一度、深く深く、深呼吸をする。
「……うん! 行くよ、エリア!」
『了解!』
「私は『アビス・ソルジャー』を攻撃表示で召喚! 効果発動! 手札の『マーメイド・ナイト』を墓地に送って、『竜巻海流壁』を手札に戻すよ!」
『アビス・ソルジャー』ATK1800→2000
「ちっ……」
「バトル!『イビリチュア・マインドオーガス』で『リチュア・チェイン』をこうげ……っ!?」
ドクンッ……!
「かっ……はっ……!?」
『凛……? どうしたの、凛!?』
「ぅく……あ、『アビス・ソルジャー』で『リチュア・アビス』を攻撃……!」
「くく……『忘却の海底神殿』の効果発動。『リチュア・アビス』を除外する」
「ぐ……わ、私はメインフェイズ2にエリアと『イビリチュア・マインドオーガス』をリリースして、デッキから『憑依装着―エリア』を攻撃表示で特殊召喚……」
『憑依装着―エリア』ATK1850→2050
「ふん……我をリリースするとは……不快」
「カードを一枚セットしてターンエンド……」
『凛……』
エリアが心配そうにこちらを見つめてくる。私はそれに、大丈夫と手を振って答えた。
――今の……マインドオーガスで攻撃しようとしたら、いきなり息が出来なくなった……どういうこと? マインドオーガスに、そんな効果はないのに……。
「我のターン、ドロー。くくく……何故、我を扱えなかったか……不思議そうだな?」
「…………」
「当然だ。貴様ごときに我が操られるものか……リチュアとしての力を持たぬ者に、我は扱えぬ……」
「そんな……」
モンスター効果とか、そういう次元の問題じゃなかった。これは、ただのカードゲームなんかじゃない……!
「戦い、なんだ……!」
私の知っている、デュエルモンスターズの常識がいつまでも通用する世界じゃない。気を抜けば、呑まれる……!
「我は墓地に存在する『リチュアの儀水鏡』の効果を使う。このカードをデッキに戻すことで、墓地に存在するリチュアと名のつく儀式モンスターを手札に戻す。舞い戻るがいい。我が写し身よ!」
除去したマインドオーガスが手札に戻っていく。しかも、あの儀式魔法までデッキに戻った。それに手札には……。
「我は手札の『シャドウ・リチュア』を墓地に捨て、デッキから『リチュアの儀水鏡』を手札に加える!」
「また……儀式召喚の準備が整った!?」
マインドオーガスの手札は八枚。手札消費の激しいハズの儀式召喚で、八枚!
「くく……リチュアにとって、デッキも墓地もない……皆等しく、手札も同然!」
「くっ……!」
確かに……これじゃ、キリがない!
「手札から『リチュア・ヴァニティ』の効果発動! 手札から捨てることで、このターン、リチュアと名のついた儀式を邪魔すること叶わず、儀式召喚時に効果を受けることもない!」
「そんなっ!?」
私が伏せたのは『奈落の落とし穴』……儀式召喚に合わせて、チェーンする予定だったカード。
「更に魔法カード『サルベージ』! 墓地の『シャドウ・リチュア』と『リチュア・ヴァニティ』を手札に戻す」
リチュアには、アドバンテージを稼ぐカードが多過ぎる! また二対一交換……。
「さあ、もう一度行くぞ! 儀式魔法『リチュアの儀水鏡』! 手札の『シャドウ・リチュア』を生贄に、『イビリチュア・マインドオーガス』を儀式召喚!」
『イビリチュア・マインドオーガス』ATK2500→2700
そしてこれでまた……!
「墓地に存在する『サルベージ』と、貴様の墓地の『水霊使いエリア』『ギガ・ガガギゴ』『マーメイド・ナイト』の四枚をデッキに戻す。更に『昇華する魂』の効果により、墓地の『シャドウ・リチュア』を手札に戻す」
これでも、手札は六枚……!
「バトルフェイズ!『リチュア・チェイン』で『アビス・ソルジャー』を攻撃!『魔鏡鎖』!」
「っ迎え撃って!」
『アビス・ソルジャー』の銛と『リチュア・チェイン』の鎖が交錯し、クロスカウンター気味に両者に突き刺さる。相討ち。
「『イビリチュア・マインドオーガス』で、『憑依装着―エリア』を攻撃!『魔鏡黎明波』!」
『ぐ……ああっ!』
口蓋から放たれたレーザーが、エリアを守っていた『ガガギゴ』諸共エリアを吹き飛ばす。
「エリア! きゃあっ!?」
凛LP3950→3500
「くく……我はカードを二枚セットする。エンドフェイズに除外された『リチュア・アビス』を特殊召喚し、デッキから『シャドウ・リチュア』を手札に加え、ターンエンドだ」
『くっ……エリアル……!』
傷ついたエリアが、変わり果てた姿のエリアルを見上げる。
「……『強くなったでしょう? おねぇちゃん』」
『!?』
突然、マインドオーガスの口調が変化する。
「……『いつもいつも、おねぇちゃんより下手だった。いつも、おねぇちゃんに守られてばっかりだった。でも、今は違う』」
『エリアル……!』
「……『あたし、強くなったよ。おねぇちゃんに勝てるくらい、ツヨク、ツヨク、ツヨクツヨクツヨクツヨクツヨクツヨクツヨクツヨクツヨクツツツツッ!』」
徐々に抑揚がなくなり、最後には壊れたテープのように繰り返すエリアル。
『エリアル……貴女は……貴女を、追い詰めたのは……』
劣等感。コンプレックス。出来た姉と出来そこないの自分。そんな、ごくありふれたとも思える想いが、エリアルの心の中に澱のように溜まっていったんだと思う。
――私にも経験がある。アイドルに成り立ての頃、演技も歌も、デュエルすらも未熟だった頃。先輩アイドルの足を引っ張ったり、番組の進行を遅らせたり、どうしようもない大根役者だった。誰でも始めはそんなものだと言う周りの言葉も、お情け以外の何物にも聞こえなくて……。
『凛?』
「どうしようエリア。私、この子のこと他人に思えない」
似てるんだ。この子は。私と。
「エリアルも、私も、エリアみたいになりたかったんだ」
新人の頃、緊張のあまり笑顔を浮かべることも出来なかった私が考えたのは、クールなエリアの立ち振る舞いを真似ることだった。
その考えは上手くハマり、エリアの模倣をした水原凛というキャラクターは大ヒットし、私は一躍アイドルとして躍進できた。……まあ、そのクールなキャラを通すため、エリアのデッキが使えなくなったのは誤算だったけど。
「……でも、どれだけ人気が出ても、エリアの模倣でしかない。“私自身”を見ている人は何処にもいない」
私の被った、エリアの仮面を見ているだけ。自分で選んだことだけど、それは徐々に、私の心を浸食していった。
「悔しかったし、妬ましかった。自分で選んでおいて、自分勝手だとわかっていても」
だから、私にはわかる。優れた姉の影に隠れて、ダメな自分をずっと蔑んで。そんな時に“呼ばれた”んだ。魔鏡に。終焉に。
それは、とっても魅力的で、蠱惑的だったと思う。
「……でも、やっぱりそれじゃあ駄目だよね」
比べられるってことは、辛いこと。優秀な|姉(エリア)が居て、誇らしい気持ちの影にある、嫉妬と自己嫌悪の闇。とってもわかる。かつては私が抱いた想いだから。……だけど。
「例え、どんなに辛くても、いつだって私たちは『負けるもんか!』って思いながら頑張らなきゃいけない。どんなに惨めでも、どんなに這いつくばっても、『負けるもんか!』って立ち上がらなきゃいけないんだ」
『凛……』
「だから、ちょっとだけお灸を据えてあげよう、エリア。どんなに酷い時でも、楽な方に逃げようとする、弱い心に鞭打って、これから歩いて行くために」
そしてその瞬間、私の前に一枚のカードが現れた。
「これは……」
タロットカード。大アルカナの17番、「星」のカード。
「これが、壁を乗り越えるっていうこと、なの?」
過去の自分と向き合い、コンプレックスを乗り越え……その先に現れる光。
「なンだ……なンだ!? その光は!?」
「エリアル……!」
「星」は希望を表し、願いが叶う力を与えるカード。負けない。その意思が、私に力を与えてくれる。
相手はリチュア。儀式召喚でありながら、爆発的なアドバンテージを得ることができる、とても強い相手。負けたら死ぬかもしれない、絶望的な状況。でも、そんな絶望の中でも、私は決して希望を失わない!
「だから……『負けるもんか!』私のターン、ドロー!」
今の手札で出来ることを考える。手札は二枚。これじゃあ足りない!
「手札から魔法カード『強欲な壺』! デッキからカードを二枚ドロー!」
これで三枚!
「まずは、永続魔法『ウォーターハザード』を発動! 手札からレベル4以下のモンスター一体を特殊召喚するよ。『コダロス』を攻撃表示で特殊召喚!」
『コダロス』ATK1400→1600
私のフィールドに、小型のダイダロスとも言うべき海竜が召喚される。
「更に『巨大戦艦クリスタル・コア』を攻撃表示で召喚。効果により、カウンターを三つ乗せる!」
『巨大戦艦クリスタル・コア』ATK2100→2300
フィールドに水晶で出来たような戦艦が召喚される。
「『コダロス』の効果発動! 私のアトランティスを墓地に送ることで、フィールド上のカード二枚を墓地に送るよ! 私が選択するのは『昇華する魂』と『忘却の海底神殿』!」
「ぐぬっ……!」
「更に『巨大戦艦クリスタル・コア』の効果発動! 一ターンに一度、相手攻撃表示モンスター一体の表示形式を守備表示に変更する! 私が選択するのは『イビリチュア・マインドオーガス』!」
『イビリチュア・マインドオーガス』DEF2000
異形の人魚が身を縮め、防御態勢をとる。
「バトルフェイズ! まずは『コダロス』で『リチュア・アビス』を攻撃!『海流波』!」
「ぐあ……!」
エリアルLP4000→3400
「続いてクリスタル・コアでマインドオーガスを攻撃!『アーム・レーザー』!」
クリスタル・コアから放たれたレーザーがマインドオーガスを撃ち抜く。
「ぐ……おのれ、またもや……」
「クリスタル・コアは、戦闘終了後、自らのカウンターを取り除く。カードを一枚セットして、ターンエンド」
これで手札は使いきった。ボード・アドバンテージは確保できたけど、ハンド・アドバンテージの差が大き過ぎる……。
「我のターン、ドロー!」
六枚ものハンド・アドバンテージは、多少のボード・アドバンテージなんてひっくり返してしまう。それは、デュエルモンスターズの常識。
「墓地の『リチュアの儀水鏡』の効果発動! デッキに戻すことで我自身を手札に戻す」
「くっ……」
キリがない。これじゃあ、ジリ貧。どうにかするなら除外するしかないんだけど……。
「除外関係のカードなんて入ってないしなぁ……」
さだめのデッキなら、多分結構あっさり勝てる。でも、真正面から勝とうとすると厳しいものがある。
「更に『シャドウ・リチュア』を手札から墓地に捨て、デッキから『リチュアの儀水鏡』
を手札に加え、リバースカード『儀水鏡の瞑想術』を発動! 手札の『リチュアの儀水鏡』をオープンして、墓地の『シャドウ・リチュア』と『リチュア・チェイン』を手札に戻す!」
『負けるもんか!』って思うけど、でも、いくらなんでもこれは……。
「……どうしたら、どうしたらいいの……?」
どれだけ倒しても、すぐに立て直される。
「まずは掃除だ。速攻魔法『サイクロン』右側のリバースカードを破壊する!」
「くっ……!」
最初の方に伏せていた『奈落の落とし穴』は結局効果を発揮しないまま破壊されてしまう。
「我は『リチュア・チェイン』を召喚!」
『リチュア・チェイン』ATK1800
「効果によりデッキトップから三枚をめくる。『サルベージ』『儀式の檻』『イビリチュア・ソウルオーガ』……は」
エリアルの顔が、ニヤリと歪む。
「我は『イビリチュア・ソウルオーガ』を手札に加える」
「新しい……イビリチュア?」
「そうだ。我が切り札、その目に焼き付け屈するがいい。まずは『リチュア・ヴァニティ』を捨てて効果発動。そして『リチュアの儀水鏡』発動!『シャドウ・リチュア』をリリースし、『イビリチュア・ソウルオーガ』を攻撃表示で儀式召喚!」
『イビリチュア・ソウルオーガ』ATK2800
『ゴオオオオオオッ!!』
呼び出されたのは、一見してドラゴンのような海竜。マインドオーガスと同じく、禍々しい気を放っている。
「『イビリチュア・ソウルオーガ』の効果発動! 手札の『リチュア・エリアル』を墓地に捨て、効果発動!」
『エリアル!』
エリアルは、自分自身を捨てて効果を使ってきた。
「フィールド上の表側表示のカードをデッキに戻す! 選択するのは『巨大戦艦クリスタル・コア』!」
「そんなっ……!」
戦闘破壊耐性を持つクリスタル・コアが戻されてしまう。
「バトルフェイズ!『リチュア・チェイン』で『コダロス』を攻撃!『魔鏡鎖』!」
「くっ……!」
凛LP3500→3100
「更に『イビリチュア・ソウルオーガ』でプレイヤーにダイレクトアタック!『魔鏡狂爪』!」
「きゃああああああっ!?」
凛LP3100→300
「ターンエンド。さあ、ラストターンだ」
「ぐ……私のターン……」
『凛』
「エリア……」
『私を、信じなさい』
「え……?」
『……私は、あの子にとってカッコイイおねぇちゃんだったから』
――妹に、格好悪いところは見せたくない。
「……うん! ドロー!」
! これなら、まだ!
「魔法カード『命削りの宝札』! デッキからカードを五枚ドロー!」
「ここにきて、手札増強だと……?」
「諦めない! エリアのためにも、エリアルのためにも、私がここで諦めるわけにはいかない! まずは『ウォーターハザード』の効果で手札から『逆巻くエリア』を特殊召喚!」
『逆巻くエリア』ATK800
水が逆巻き、いつもより大人びた容姿のエリアがそこにいた。厳しい表情でエリアルを睨みつける。
『……エリアルッ!』
「おねぇちゃん……随分貧相な攻撃力だね。今のあたしから見れば、おねぇちゃんなんかに拘っていたのが馬鹿らしいくらい。もっと……もっと早く、この力を見つけていレば……!」
『そうね。確かに私は大した精霊じゃない。貴女の言うとおりよ』
「エリア……」
『私に拘っていたのが馬鹿らしいのも確かよ。貴女なら、私なんかよりよっぽど良い精霊になれた』
「そうだ! だかラ、あたしは……!」
『でも貴女は間違っている』
「ナッ……」
『貴女は、私に憧れるべきじゃなかった』
「おねぇちゃん……?」
『私は、貴方に憧れてもらえるような精霊じゃなかった』
それは、エリアの懺悔だった。道を見失い、暴走する妹へ向けた、精一杯の懺悔。
『憧れて、嫉妬して、力を求めた。暴走してまで手に入れたその力に、何の意味もないことを教えてあげる。これは、私が姉として、貴女にしてあげられる最後の仕事よ!』
「私は手札から『水征竜―ストリーム』のモンスター効果! 手札の水属性モンスター一体と共に墓地に送ることで、デッキから『瀑征竜―タイダル』を特殊召喚! この効果で特殊召喚されたタイダルはこのターン攻撃できません」
『瀑征竜―タイダル』ATK2600
「更に水属性モンスターの効果のコストとして墓地に送られた『海皇の重装兵』の効果発動! 水属性モンスターの効果のコストとなった『海皇の重装兵』の効果発動! 相手フィールド上の、表側表示カード一枚を破壊する! 私が選択するのは、『イビリチュア・ソウルオーガ』!」
「ナッ……!?」
墓地に送られた『海皇の重装兵』が、その身体を張って『イビリチュア・ソウルオーガ』を押し潰す。
「そして『逆巻くエリア』のモンスター効果! フィールド上の、このカード以外の水属性モンスター一体をリリースすることで、手札から水属性モンスター一体を特殊召喚します! 私は『瀑征竜-タイダル』をリリース!」
『さあ、目にもの見せてあげるわ!』
「私は、手札から『ゴギガ・ガガギゴ』を特殊召喚!」
『ゴギガ・ガガギゴ』ATK2950
代わりに現れたのは、全身をサイボーグ化され、更に凶暴性を増した『ギガ・ガガギゴ』である『ゴギガ・ガガギゴ』だ。これで、エリアルのフィールドに残るのは攻撃力1800の『リチュア・チェイン』のみ。
「墓地の『瀑征竜-タイダル』の効果発動! 墓地の『水征竜-ストリーム』と『海皇の重装兵』をゲームから除外して特殊召喚! これで、このカードの攻撃制限はなくなりました! 決めるよ! エリア!」
『ええ!』
「『ゴギガ・ガガギゴ』で『リチュア・チェイン』を攻撃!」
「ぐ……速攻魔法『突進』!『リチュア・チェイン』の攻撃力を700ポイントアップさせる!」
『リチュア・チェイン』ATK1800→2500
「無駄だよ!」
『ゴギガ・ガガギゴ』の攻撃力は、『突進』で強化したとしても『リチュア・チェイン』を上回る!
エリアルLP3400→2950
「更に『瀑征竜-タイダル』でダイレクトアタック!」
「ああぁっ!」
エリアルLP2950→350
エリアルのライフは風前の灯だ。リバースカードも使い切った。後は……!
『さあ、お仕置きをしてあげるわ。エリアル』
「っ……また」
『エリアル……』
「また、あたしは負けるの……? これだけ、これだけ強くなっても……あたしは……」
「エリアル……」
今までの狂気的な表情が消え、そこに居たのは一人の少女の顔。
『エリアル……ごめんなさい』
「おねぇ……ちゃん……」
『気の利かない私が悪かったわ。あの頃の私は、貴女を守っていたつもりで、貴女を傷つけていたのね』
「……おねぇちゃん」
エリアルの顔に、もう狂気はない。
『凛』
「エリア……」
『解放してあげて。デュエルに勝てば、終焉の精霊は排除できる筈よ』
「うん……これで、トドメ!『逆巻くエリア』で、プレイヤーにダイレクトアタック!『リバイバルストリーム』!」
『エリアル……! 戻って来て!』
エリアの放った水流が、マインドオーガスと化したエリアルの下半身を吹き飛ばす。
「あ、ああああああああああっ!!」
エリアルLP350→0
「エリアル!」
デュエルが終わった後、エリアが下半身を失ったエリアルに走り寄る。
「お、ねぇちゃん……」
「エリアル!」
エリアルの命の灯は、正直危うい。何しろ、これまで体を操っていたも同然な終焉の精霊が消えた上、下半身を丸ごと失ったのだから。
「ど、どうしよう凛! わ、私、やり過ぎて……」
「エリア……」
こんなに取り乱すエリアは初めて見る。でも……。
「わ、私に言われても……ど、どうしよう……」
エリアルは、エリアに一言呼びかけてすぐ、気を失った。まだ息はあるけど、このままじゃ……。
「凛さん!」
「アテナ!? どうしてここに……」
「私もいる」
「ルインさんまで……」
「バグロスさんに連れてきてもらいました! そんなことより、時間がありません! すぐに蘇生処置をしますから、手伝ってください!」
「あ……」
「助かる……?」
「助かります! 完全に死んでしまってからじゃ、私の能力の性質上エリアルさんの蘇生は出来なかったと思いますが……まだ生きてますから、なんとか……!」
「……体の再構築は私がやる。貴女は生命力の補填を」
「はい!」
ルインさんとアテナが、今にも死にそうなエリアルの身体を治している。二人の治療術はとても凄くて、どんどんエリアルの身体が元に戻っていく。
『ふぃ~。どうにか間に合ったかよ?』
「バグロスさん!」
大きな機体を揺らして、バグロスさんがやって来た。
「ありがとうございます! バグロスさんがアテナたちを呼んできてくれなかったらどうなっていたか……」
『おうよ。なんかヤバそうだったんでな。速攻陸に戻って助っ人を連れてきた。ま、脇役なら脇役らしく、俺は俺に出来ることをやるってことよ』
「バグロスさん……」
『勝つだけじゃ、ハッピーエンドじゃねえんだぜ。嬢ちゃん。ま、おっさんのやることってのはいつでも脇役だがよ』
「ありがとう……バグロス」
エリアも、目に涙を浮かべてバグロスさんに頭を下げる。
『止してくれ。俺はただのアッシーに過ぎねえんだからよ。礼は、ルイン様たちに言ってやってくれや』
「それでも、貴方がいなければ、私は大切な妹を失っていたわ」
「そうだよ! ありがとう、バグロスさん!」
『へっ……ま、それならこれからも、姉妹仲良く、な。それでチャラにしといてやらぁ』
「もちろん! ありがとうございました。バグロスさん!」
その時、エリアルの持っていた杖についていた、あの鏡が光った。思わず身構える私たちだったけど、どうもその鏡から邪悪な感じはしない。
「……リチュアも、元々邪悪ではなかったんです」
「エリアル!?」
アテナたちの治癒が効いているのか、それほど辛そうではない。それでも、まだ下半身が完全に再生しているわけじゃないから、エリアが心配そうにエリアルを見る。
「あたしが手にしたときのリチュアは、終焉に犯されて、もう闇に染まっていたけど……リチュアの鏡は、元々は退魔の神器だったんです。でも……」
「……強い神聖は、一転するととてつもない邪悪に変わる。彼女と同じ」
ルインさんが言う彼女とは、多分さだめのこと。そうか、だから……。
「……凛さん」
「は、はい!」
「図々しいお願いですけど……あたしも力にならせてください。罪を償う時間を、得るために」
「エリアル……凛。私からもお願いするわ。この子の力は、きっと役に立つはずだから」
エリアにも、頭を下げて頼まれる。
「頭を上げてよ。そんなことしなくったって、断ったりしないってば!」
「じゃあ……」
「うん。エリアルも、これからよろしくね」
「っ……ありがとう、ございま……」
「エリアル!?」
安心したのか、エリアルはそこで気を失ってしまう。
「……大丈夫です。失った下半身の再生も、ルインさんのおかげで上手くいってますし、生命力も、徐々に回復しています」
アテナの診断に、皆で胸を撫で下ろす。
こうして、私は占いの通り、新しい力と仲間を手に入れることができたのでした。
「あ……」
思わず、といったように声を漏らしたエリアの手には、一枚のタロット。
「それは……「太陽」?」
「そう、みたいね……」
「太陽」の持つ意味は、祝福。そして私の「星」や「月」にとっても大事な意味を持つカード。
「エリアにピッタリだよ。私が……「星」が輝くには、エリアが必要。だから、これからもよろしくね」
「……ええ。そうでありたいと、願うわ」
そう言ってカードを抱きしめるエリアは、とても優しい表情をしていた。
そして。
『あ、やっば!? 燃料がもう殆ど残ってねえ! あと片道分も残ってねえぞ……』
「ええ!?」
「ちょ! なにしてんのよ!?」
『し、仕方ねえだろ。慌てていたから、燃料補給すんの忘れたんだよ!』
「そ、それじゃあ帰れないじゃないですか! 食料もないのに!」
「……最後まで締まらない」
溜息混じりのルインさんの言葉が、慌てる私たちの間に空しく響くのでした。
※結局、さっき倒した『暗黒大要塞鯱』に『サルベージ』してもらいました。
さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『リチュアの儀水鏡』
さ「全てのリチュア儀式モンスターを召喚できる儀式魔法だね。カテゴリ全体をフォローできる儀式魔法は貴重だね。おまけに、墓地にあればデッキに戻すことで墓地のリチュアの儀式モンスターを手札に戻せる効果もあるよ」
ル「儀式召喚の革命的カード。素晴らしい」
さ「『シャドウ・リチュア』の効果でデッキから手札に加えるのは簡単だし、その『シャドウ・リチュア』自体もサーチ・サルベージが簡単だからね。リチュアの強みとなってるカードの一つだよ」
ル「儀式召喚は素晴らしい。そろそろ復権するべき」
さ「……ルインのアピールが露骨過ぎパない。儀式関連だけルインのテンションがおかしくなるんだけど」
ル「もっとみんな、儀式を使おう……!」
さ「あ~……まあそういうわけなんでハンバーガーだろうがクジラだろうが構わないから、適当に儀式デッキ組んであげてね~」
はい出ました! 悠のイチオシデッキ、リチュアです! 水属性好きで儀式好きの悠にとって正にリチュアは理想の体現! 是非とも作りたい! TFでは実際に作って使ってましたがとても強いですよリチュア! 爆アドパねぇ! 当時一ターン目から相手の手札を0にして高笑いしてました。今じゃその戦犯は制限喰らいましたけど。そして最近のカードだろうが害悪カードだろうがシンクロ・エクシーズじゃなければ躊躇いなく使用する悠。瀑征竜でも水征竜でも海皇でも容赦なく使っていきますよ。S・Xが絡んでこなければ。
それにしても、アニメに於ける儀式召喚の空気っぷりが凄い。ARCVでどこぞの理事長がペンデュラム召喚には融合召喚、シンクロ召喚、エクシーズ召喚に続く第四の柱となって欲しいどうのこうのと……儀式はっ!? なんで儀式無視するのん!? 折角敵とは言えセイクリッドだのジェムナイトだのXセイバーだのとDT出身のカテゴリ使いが出てきたのに、このままじゃ間違いなくリチュア出ないよ! どういうことなのっ!?……あ、エリアが「太陽」で凛が「星」。なら、「月」が誰かは……わかりますよね?
それでは、悠でした!