アルカナ~切り札の騎士~
第八話「あの声が聞きたくて」
「アイテムなんぞ、使ってんじゃねええええええ!!」
「ど、どうしたんだセツ。いきなり叫んで」
「俺の渇きを、癒して見せろおおおおおおぃ!」
「め、めちゃくちゃ機嫌悪そうなんだな」
違う。違うぞ隼人くん(初登場)。むしろ俺は今、猛烈に興奮しているぅぅぅぅぅ!
「ふ、ふふふふふ……偽ラブレター事件が終わり、月一試験が終わり、次に控えたイベントは……ふふふふふ」
そう、あのお方の登場だ!
「ぶるぁぁぁぁぁぁっ!!」
興奮せずにはいられない! 何しろバルバ○ス、そしてビクトリ○ム!
「あの声が生で聴ける……? すばらしい!!」
メロン……そうだ、メロンを食べよう!
「お口にとろける~ベリーメロン♪」
『ベリーメロン♪』
よしナイスだライム。
『えへへ~』
『どーしたんじゃそんな阿呆みたいに小躍りなんぞして。ほれ、クィーンが引いとるぞ』
ぬ……。
「むう。なるほど確かに傍から見るとアホっぽい。だが、この上がりに上がったテンションは下がりようがない!」
あの声は是非とも生で聞いてみたい。あの独特の重低音は一度聴いたら癖になる。
「あ、そういや大徳寺先生が、今日はいいアナゴが入ったからそれを……」
「アナゴだとぅ!?」
「うおっ!? 本当にどうしたんだセツ。今日はとことんおかしいぞ」
おっといかん。つい反応してしまった。だってしょうがないじゃないか。あの人は緑○さんに次いで好きな声優さんなんだぜ? もう今朝からテンション上がりまくりだっての! ひゃっほう!
ピッピー、ピッピー。
そんな時、お馴染のアテナからのメールを受信。興奮冷めやらぬまま上機嫌でメールボックスを開く。
『アテナです。セツ? ごめんなさいですけど、明日香さんの所在を知りませんか? 寮内にはどこも見当たらなくて……十代さんたちと一緒なら、十代さんたちにも聞いてくださると助かります』
……来たか!
「十代! 明日香の居所を知っているか知らないかようしそうか!」
「はええ! こっちが答える前に結論だすのかよ!?」
「どうかしたの?」
「アテナ曰く明日香の行方が知れないらしいさて君たちは居場所を知っているか知らないなさあとりあえず大徳寺先生にでも聞いてみようか!」
「一息!? そしてやっぱり僕たちに意見は求めないんスね……」
「なんだか、ものすごく生き生きしてるんだなぁ……」
もう今の俺を止められる奴などいやしないぜ!
「ぃぃぃぃいやっほーーぅ!」
「……なんでこいつ、明日香が行方不明かもしれないって状況で大喜びしてんだ?」
「最っ高にハイって奴だぁぁぁ!!」
「なんか……ラリってるね」
「突き抜けちゃってるんだなぁ」
外野が何やら言ってるが気にしない! さっさと廃寮の情報提供してくれる大徳寺先生の下へレッツラゴー!
「行方不明といえば廃寮ですニャア~」
「情報サンクス! レツゴウ廃寮!」
俺はアテナに『廃寮に迷い込んだ可能性あり。見に行ってみる』とメールを返し、レッド寮を飛び出した。
「お、おいセツ、ちょっと待てよ!」
む。十代たちが大分米粒に。
『じゃから飛ばし過ぎじゃというに。そんなにテンション上げて、高血圧で死んでも知らんぞい』
『キング殿……主様はまだお若くていらっしゃいますわ』
「そうだそうだ。年寄りと一緒にすんな」
『だれがじーさんじゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!』
「自覚してなかったのかよ!? てかあからさまにネタ!」
わかる人にしかわからないが。まあネタなんて大抵そんなもんか。
そんな風に三銃士(いまだストライキ中のジャック除く)と漫才をしていると、ようやく十代たちが追い付いてきた。
「ったく。いくらなんでも急ぎ過ぎだぜ。隼人が参ってるっつの」
見れば、確かにはるか後方でぜいぜいと荒い息を吐いている隼人の姿。
「ま、待って欲しいんだなぁ~」
「隼人~頑張れー!」
「ぼ、僕も結構キツイッス……」
「よしならば俺はこの逸る気持ちと高まり過ぎたテンションをどうにかして発散するとしよう」
セツは ふしぎなおどり を おどった!
「は~りゃほ~れうまうっ!」
セツは こんらん している!
まわりが しろいめで こちらをみている! なかまにしますか?
「イエーッス!」
「こっちからノーだよ!」
しょうはにげだした! しかしまわりこまれてしまった!
「知らないのかい? 大魔王からは逃げられない!」
「セツ君大魔王だったんすか!?」
だめだ! しょうぶのさいちゅうに あいてにせなかはみせられない!
「ポケ○ンだった!?」
しょうは がくぜんとしためで こちらをみている! とどめをさしますか?
「ためらいもなくイエス!」
「ためらってよ! いやそれ以前にためらわずにノーだよ!」
「ノーと言えない日本人!」
「うわああああああああっ!?」
「ふう……落ち着いた」
「僕は余計に疲れたよ!」
結論。翔のからかいやすさは神。
「日に日にセツ君がおかしくなってる気がするんだなぁ」
実は俺もそう思う。
「とにかく、休憩終わり! さっさと行こうぜ」
「行くも何も、それだろ? 廃寮って」
十代が指差す先。そこには確かに古びた洋館……といった風情の建物があった。
「ここに明日香さんが……ごくっ!」
「な、なんか……すっごく雰囲気があるんだなぁ~」
翔と隼人はすっかりビビっている。対して十代は瞳を輝かせ、めちゃくちゃ面白そう! とでも言いたげな顔をしていた。実に好対照。俺? 当然、今もテンションはマックス!
「セツ~!」
「ぬ?」
遠くから俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。よく聞く声だから忘れるはずもない。アテナだ。
「アテナ……どうしてお前まで」
「は、廃寮で行方不明者が続出しているって噂は、はぁっ、女子寮でもよく聞く話で……はふ、私心配で……」
息を切らせて、それでも心配そうにこちらを見上げるアテナ。
「けど、明日香もここに来たかも知れないからな。友人としては、放ってはおけない」
実際にはかも、ではなく確実にここにきているわけだが。そして俺がここに来た理由の九割九分は明日香より若○目当てだというのも伏せておく。……沈黙は金、多弁は身を滅ぼす。
「とにかく入ってみようぜ! なんか探険みたいでわくわくしてくるぜ!」
「んだな。ほれ、アテナ。お前も来るんだろ?」
「て、手を繋いでてもいいですか?」
う……チェリーボーイには多少難易度が高いが……まあ巻き込んだっぽい形だし、妹と手を繋ぐのと同じようなもんだ。
「わかったよ。ほれ」
左手を差しだす。一応念のため、利き手の方は開けておく。
「あ、ありがとうございます」
『……不純異性交遊』
「……クィーンよ。そのネタはそろそろ飽きてきたんだが」
『ね、ネタなどではありません!』
仕方ない。
「ほれ、クィーン」
『あ、主様? なんでしょうこの手は……』
「お前も掴まれ。実際触れやしないだろうが、ちょっとした気休めだ」
『な、何を……わたくしが、こわがっているとでも?』
「ん~そうじゃなくて、アテナだけ手ぇ握ってんのが不満なら掴まれってこった」
『な……』
クィーンは顔を真っ赤にして口をパクパクとあけたりしめたり忙しい。ちらちらとこちらの手を見て自分の手を出したり引っ込めたり。
「だー! もうまだるっこしい! ほら!」
『ひあっ!?』
ひんやりとしたクィーンの手を掴む。……おや?
「なんか、掴めちまったんだが」
『な、な、な』
クィーンは驚きのあまり固まっている。
『いえ、固まっているのはそれが理由ではないかと……』
「おお、僕らのジャックが帰ってきた!」
帰ーって来たぞ! 帰ーって来たぞ!(某三代目巨大宇宙人のテーマ)
これで俺の心の平穏が保たれる!
『いえ、どうもストライキとか関係なく私に平穏はないことがわかりましたので。ならば主様に平穏を与えた方が……』
どこか遠い目をしたジャックが乾いた笑みを浮かべながらそんなことを言う。……なんか、悟っちまったのか。ジャック……。
『ともかく、主様がクィーンに触れられる理由についてはまた後でお話しします。そちらのお嬢さんも大分不満そうですし……』
む、確かにずっと放っておいたらアテナがムスッとしてしまっている。
『それに、他の方々はもうとっくに先に進んでしまったようですし……』
「何ィ! しまった、出遅れた! 行くぞアテナ、クィーン!」
「え!? きゃあ!」
『ぁ、ぁぅぁぅぁ……』
『ほ、ほらクィーン、しゃんと立って、走ってください!』
『ウブじゃの~。手を握られただけでオーバーヒートしとったんじゃ、この上更に進んでいけば憤死するのが目に見えるわい』
俺の手を握ったまま、ジャックに運搬されているクィーン。……正直物凄く走りにくいが、半ば意識がない状態でもしっかり俺の手を握って離さないので仕方ない。
とっても不格好な形でしか動けないのでなかなか先へ進めない。ていうか、もしかしてもう明日香と別れちゃったりしてない?
「あっ、来た。おーいセツ君、アテナちゃーん!」
「翔さん! 明日香さんは?」
「それが……」
やはりもう会って別れた後だったらしい。まあここは原作通りだから仕方ない。
「なんか、明日香の兄さんも行方不明になったらしいぜ」
「それで、行方不明者が続出しているって噂のこの寮を調べに来たってところか」
原作通りの流れだ。
「なあ、それならオレたちで明日香のお兄さんの手掛かりを探さないか?」
「ええ!? これ以上奥に行くんスか!?」
「そ、それはちょっと、なんだなぁ」
「大丈夫だって! セツはどうだ?」
「行く。行くとも。むしろ行かせろ」
ここで帰ったらあの声が聞けないじゃないか! そんなの死んでもごめんだ!
「セツが行くなら……私もがんばります!」
健気や……。
流石に自分より年下の女の子が行くと言っているのに男の自分たちが行かないとは言えなかったらしく、翔と隼人も着いてくることに決めたようだ。
五人でぞろぞろと寮内を練り歩く。途中で闇のゲームに関する資料を見つけたりもしたが、とりあえずそこは省略する。
「おいこれ!」
そう叫んだ十代が懐中電灯で照らした先には、原作通り吹雪さんの写真が。……10JOINを天上院と読むのには無理があると思う人挙手。
キャーーーーーー……。
「なんだ!?」
「明日香さんの声です!」
「行くぞ!」
とりあえずその写真は回収して悲鳴の聞こえた方向へ向かう。
「これは……」
そこに落ちていたのは『エトワール・サイバー』のカード。間違いなく明日香のカードだ。
「そ、そんな。まさか明日香さん……」
「いや、決めつけるな。見ろ、ここに何かを引きずった跡がある」
ガイシャは……まだ生きているッ!
「行こうぜ!」
「う、うん!」
「お、おう!」
ッ! マズイ! 先を越されるわけにはいかん!
「必殺Bダッシュ!」
「ふえっ? きゃあ!」
半ばアテナ(と、未だオーバーヒート中のクィーン)を引きずるようにして俺は走った。
十代たちが立ち止まる。その先には気絶している明日香と、仮面をつけた大男。
「お前! 明日香に何をした!」
「私はタイタン。闇のデュエリストだ……」
お、おおおおおおおおおおおおお!! キタ! 若○キタ!
「そこの娘には、貴様らをおびき寄せる餌になってもらった」
っと、興奮してる場合じゃないな。流石に。
「お前……何が目的だ!」
「私の目的は、貴様らを闇に葬ることだぁ!」
そういってわかも……じゃないタイタンが指差してきたのは十代と……俺。
「それだけのために明日香を……こうなったらオレが……」
「いや、待て十代」
飛び出して行こうとした十代を止める。
「なんで止めるんだ!」
「ここは、俺が行く」
「セツ!?」
「明日香を……俺の友人を傷つけた罪は重い(訳:若○とやるのは俺だ)」
「ふん。後悔するなよ……」
「「デュエル!!」」
これが、俺の行動によって原作から剥離していく発端となるのだった。
こんなアホな内容且つ理由ですが、ホントにこれがきっかけだったんですよねぇ……(遠い目)。
それでは、悠でした!