アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第四期第七話「封じられたカードたち」

アルカナ~切り札の騎士~

第四期第七話「封じられたカードたち」

 

 

 

 

「「「いただきまーす!!」」」

 全員で一斉に、俺の作った料理に箸を伸ばす。

「お、こりゃ美味い」

「ホント、雑草にしか見えなかったものとは思えないわね」

 エースと一緒に採取してきた野草を使った料理は、比較的好評なようで何よりだ。

「オレも料理はするが、こんな見たこともない食材でここまでの物は作れねぇな……」

「剣士は基本、料理に糖分を使い過ぎだ。もうちょい歯とスタイルに優しく作れ」

「オレは甘い方が好きなんだよ……」

「っていうかこれホントにサバイバル料理だよね……」

 基本的には、そこらの食える野草やキノコを摘んできて煮たり焼いたりしただけだしな。

「火はルインが出してくれたし、水はエリア姉妹がいる。……後は、バグロスの身体で煮たり焼いたり……」

「バグロスさーん!?」

「へ、へへ……俺の身体が、お嬢さん方の血肉になってくれんなら、脇役冥利に尽きらぁ……」

「な、ならないよ!? 例え鉄板やお鍋扱いされていたとしても、バグロスさんの身体は血肉にはならないよ!?」

「……凛、冗談だ。気付け」

 バグロスの演技にまんまと騙されている凛に呆れ顔の剣士がツッコム。というか、あの潜水艦、ノリいいな。

「ま、こういうサバイバル料理みたいなのは、俺の専売特許だな」

 ぶっちゃけ、俺は所謂家庭料理はそれほど得意ではない。勿論、人並みに出来る自負はある。だが、どちらかというともっとお洒落なフレンチ等の高級料理を如何に美しく飾りつけるか、或いは逆に、極限状況で器具も食材も満足にない中究極に美味いサバイバル料理を作るか。

「俺の専門はそのどちらかだ」

「両極端過ぎる!」

 だから、ロクな食材がないレッド寮食堂は俺にとってそこそこいい環境だったりするんだな。

「はわっ!?」

「……なにやってるのよ貴女は」

「ご、ごめんなさいおねぇちゃんっ! あ、あたしおっちょこちょいで……」

「しょうがないわね。ほら、食べさせてあげるから口あけて」

「あ、あ~ん……」

 ……あいつは介護老人かなにかか。

「お兄ちゃん、さだめにも食べさせて! あーん」

「……こっちは食虫植物だな」

「なんで!?」

「あ、間違えた。食人植物」

「そこでなくて!」

「カニバリズム」

「それは否定できない!」

「カニ」

「それは否定する!」

 というか、カニバリズムを否定しようぜ。

 そんな会話をしつつ、全員食事を終える。

「まだちょっと足りないような……」

「我慢しろ」

 まあ、基本的に野草とか菜っ葉系ばかりだし、物足りないのもわかるんだが、な。

「王都に行けば、少しはまともな食事も出よう。なんならジャックとセツに作らせればどこぞの宮廷料理染みたものが出てくるだろうしな」

「任せておけ。そういう、日常ではまず作らないような料理こそ、俺の本領だ」

 なんせ無駄スキルだからな。

「そのためにも、さっさと王都まで行こう。これは俺の予想だが、多分俺たちの動きは読まれている、というか監視されていたりしても不思議じゃないしな。早い方がいいだろう」

 各々に荷物を手に持ち、出発の準備が整ったところで……。

「お兄ちゃん待って!!」

「唐突にエクスクラメーション二連打!?」

 ちなみに、今のは悲鳴だ。立ち上がったところをさだめに襟首を掴まれたことによる。

「どういう悲鳴だよ……」

「げほっ! な、なんだどうした!?」

「あれ!! アレ見てお兄ちゃん!!」

「常に二連打するほどの何が……」

 怪訝に思いつつ、さだめが指差す方向を見る。するとそこには……。

「ま、マキュラ!?」

「マキュラ~~!!」

 さだめが異常にハイテンションだ。

「おい、何かこっちに近づいてくるぞ」

「こっちこっち~!! ちちち……!!」

「おいやめろマキュラは猫かなんかみたいな小動物じゃねえ!」

「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺…………」

「あからさまにヤバげな雰囲気醸し出してるー!?」

「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪…………」

「一体なんて発声しているのかよくわからないけどロクでもないことはわかる!」

「怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨…………」

「もうやめて!? なんかホントに怨みで呪い殺されそう!」

「……我が封、解き放たれし故……デュエル」

「さだめに任せて!! デュエル!!」

 さだめLP4000

 マキュラLP4000

「え、これデュエルする流れだった!? 今のデュエルに至る流れ、唐突じゃなかった!?」

「……こちらの、ターン。ドロー……。『処刑人―マキュラ』を召喚。ターン、エンド」

「さだめのターン、ドロー!!」

「え、あいつ思い切り禁止カード出してきたけどいいの!?」

「さだめは手札からマジックカード『強欲な壺』発動! カードを二枚ドロー! 更に『強欲な壺』!」

「は!?」

 ツッコム暇も与えないとばかりにさだめがいきなり禁断の『強欲な壺』二連打。

「更に『強欲な壺』!『天使の施し』! 三枚ドローして手札を二枚捨てる! 更にもういっちょ『天使の施し』!」

 まさかの三連続『強欲な壺』に続いて『天使の施し』連打。一切の妥協を許さない超高速ドロー。

「純粋に酷ぇ!? なんだあのデッキ!?」

 剣士たち初見の人間が揃って驚愕している。俺はもう諦めた。ありゃアイツお得意の禁止スタンダード……というか、カオスだ。

「手札から魔法カード『苦渋の選択』! デッキから『処刑人―マキュラ』『|混沌帝龍(カオスエンペラードラゴン)―終焉の使者―』『カオス・ソルジャー―開闢の使者―』『マシュマロン』『魂を削る死霊』を選択! さあ、選んでマキュラ!!」

「なんだそのラインナップ!?」

「……我、を、選択」

「やっぱり、自分を捨てさせることなんてできないよね。その気持ち、わかるよ!!」

「いや、あのラインナップなら誰でもそうするかと……」

「お前ら、一々ツッコムな。突っ込んだら負けだぞ」

 どうせ聞いちゃいないんだし。

「でもごめんねマキュラ! もっと貴女とのデュエル、楽しみたいけど……このデッキだと長くは楽しめないの!」

「……そりゃそうだろう」

 というか、何故お前はマキュラを女だと断定しているんだ。声はどう聞いても男だったんだが。

「手札から魔法カード『死者転生』! 手札のマキュラを捨てて『|混沌帝龍(カオスエンペラードラゴン)―終焉の使者―』を手札に戻す!」

 ……終わったな。

「更にマキュラが墓地に行ったことにより手札からトラップカード『第六感』! さだめは5と6を選択するよ!」

 もうやめたげてー(投げやり)。

「……ダイス、ロール」

 出た目は6。よりにもよって成功……まあ、どちらにせよ結果は変わらんのだが。さだめが一気にデッキからカードを6枚ドローする。

「墓地の『マシュマロン』と『魂を削る死霊』をゲームから除外して、さだめは『混沌帝龍(カオスエンペラードラゴン)―終焉の使者―』を特殊召喚! 手札から魔法カード『死者蘇生』発動! 墓地から『黒き森のウィッチ』を特殊召喚! そして『混沌帝龍(カオスエンペラードラゴン)―終焉の使者―』の効果発動!」

「おーい、ちゃんと荷物持ったかー? そろそろ出発するからなー?」

「ライフを1000ポイント支払って、お互いの手札とフィールド上のカード全てを墓地に送り、その数×300ポイントのダメージを与えるよ! さよならマキュラ!『セメタリー・オブ・ファイヤー』!!」

「がっ……は……!」

 マキュラLP4000→0

 ちなみに、今の一撃に耐えてもどうせ『八汰烏』が手札に呼ばれてドローロックコンボで詰みだ。

「マキュラ!!」

 さだめは、マキュラが居た辺りに駆け寄る。

「ああっ! マキュラが消し炭に!?」

「お前がやったんだろ。それはもう情け容赦皆無の一撃で」

「敵になった好きなものほど、全力で消し去りたくなるものなんだよ……」

「その理屈で行くと、俺はユーキちゃんを跡形もなく消し飛ばさなくてはいけないんだが」

「消し飛ばせばいいんじゃない? ライバルが減って大助かり」

「ちょいとお嬢さん。正義の味方の台詞というものを、小一時間程語り合わないか?」

「さだめが正義の味方とか……笑っちゃうわぁ~」

「まったくもってその点には同意するが! 一応そういうことになってはいるんだから少しは自覚持て!」

「個人的には『わたし、皆みたいに優しくないから……』とか言いつつ容赦なく敵キャラを滅殺するダーク系ヒロインの立ち位置が妥当だと、さだめは思う」

「確かにさだめさんってそんなタイプではありますけど……それを自分から主張するのって、どうなんでしょう……」

 あのマキュラも、多分終焉の闇からの刺客かなにかだったんだろうが……まあ、相手が悪かったな。禁止デッキさだめ相手じゃ……。

「ところで、さだめってマキュラがフェイバリットだったりするの?」

「あれ? 凛に話してなかったっけ?」

 コクコクと頷く凛に、さだめはデッキからマキュラを抜き出して説明する。

「そりゃあもう! さだめにとって、魂のマイフェイバリットアイドルカードと呼んで差し支えないね!」

「お前、その重複表現は癖なのか?」

「何と言っても、この処刑人っていう言葉が素晴らしいよね! この対象を惨殺することに特化したようなフォルムといい、最高! ああ、せめて消し飛ばす前に、あの武器貰っとけばよかったなぁ……」

 俺のツッコミを黙殺したさだめが得意げに語り出す。

「そ、そうなんだ……ヘンな趣味……」

「まあ、コイツの三大フェイバリットって言えば、『処刑人―マキュラ』『万力魔神バイサー・デス』『バイサー・ショック』が三強だからな」

 ちなみに魔法・罠では『拷問車輪』『悪夢の鉄檻』『悪夢の拷問部屋』などが該当する。

「……『バイサー・ショック』は経験あるのでわかります。あんまり思い出したくないけど……」

「……あのデュエルは、さだめもあんまり思い出したくないから忘れてていいよ」

 自滅だったしな。

「……禁止カードをそうポンポン使うってのはどうなんだ」

「ああそれ? 別に良いじゃん。公式デュエルでも何でもないんだし」

 誰かがボソリと言った言葉に、さだめはこともなげにそう返す。

「大体闇のデュエルだとか、世界の命運が懸かった大事なデュエルでさ、律義に禁止制限守ったデッキ使う意味ないじゃん。さだめはモラルや体裁より、命と結果を優先するね」

 さだめは自分の持つ禁止カードを大量に投入したデッキを見る。

「この子たちも可哀そうだよね。デュエルで強いことはいいことなのに、強過ぎるからって禁止されて、以降誰にも使って貰えないんだよ? 精霊って、デュエルで使って貰うことに喜び感じるような子が多いのにさ。この子たち、特に強過ぎると言われているカオスエンペラーやら『八汰烏』やらマキュラやらは、もう禁止解除は絶望的だし」

「さだめ……」

「まあ本音は、いきなり禁止カード出てきて驚いた顔や、容赦ないゲームエンド効果使われて引きつった顔するのが見たいだけなんだけど」

「いきなりぶち壊すな」

 照れ隠しなのかどうなのか……まあ、さだめにはどうも他人が触れたがらないところにも躊躇わず踏み込むいい意味でのKY(まあ、普通にKYなところもあるんだが……)なところがあるのも事実だしな。

「……それに、こんなデッキ使ってれば嫌でも目立つし、狙われるよね」

「さだめ?」

「何でもない。行こ、お兄ちゃん」

 小さな声で、何事か呟いたさだめだが、当のさだめはさっさと準備を整えて行ってしまう。

「さだめさん……」

「アテナ? 今のさだめの言葉、聞こえていたのか?」

「……ええ、まあ。セツは、知らなくても大丈夫です。大したことない呟きでしたから」

「そうか」

 ……そういう返し、大したことあるって言っているようなもんなんだがな。相変わらず隠しごととかは苦手だな。

「……あいつなら、大丈夫だろ」

 必要以上の心配はしない。アイツが俺に聞こえないように言ったってことはそういうことだし、さだめのことは信頼している。……決して信用はしていないが。色んな意味で。

「……」

 くいくい、と袖が引かれたので振り向くと、ルインが何事か言いたげな視線を俺に向けていた。

「ん? どうしたルイン」

「……後で、話がある。王都に着いた後でいい。時間を頂戴」

「わかった。何の話かはわからないが……そこそこ深刻そうだな」

「……そう。大事な、話」

「了解だ。……部屋に行けばいいか?」

「……中庭で」

「りょーかい」

 ふぅ……どうしたもんかな。さだめもアテナも、なにか考えているみたいだし……エースも何考えてるのかわからなくなったしなー。

「ん……?」

「何か来るぜ。敵対的な反応じゃないが……一応気をつけておきな」

 バグロスの言葉通り、遠くから何かがやってくる気配がある。かなりのスピードだが……。

「あれは……『スピード・ウォリアー』か?」

 ギャギャギャギャッ! と俺たちの前で砂埃を上げつつ急停止した『スピード・ウォリアー』が、俺たち(主にエースか)の方に一礼してから話し始めた。

「唐突且つ急な推参申し訳ありません実は王都が何者か黒くて邪悪な一団によって襲われておりまして今現在は剣聖殿を始めとした大将軍様方の奮闘により何とか持ちこたえては居りますがしかし相手の数は一向に減ることがなく剣聖殿よりこちらに向かっているであろう剣士殿らへの状況説明と即刻引き返すようにとの伝言を承りまして私「貴様は言葉が早口に過ぎる! 説明になっておらんだろうが!」はっ申し訳ありません!」

 顔を上げるなり猛烈な速度(上記の内容を話すのに秒とかかっていない)で話し始めた『スピード・ウォリアー』を慌ててエースが押し留める。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 息も吐かずに一気に喋り倒そうとしたためか、『スピード・ウォリアー』は息が上がってしまっている。……こういう効果だからか?

「要約すると、王都が襲われて危険だから来るのはやめて引き返せ、と」

「セツ……今の聞き取れたんですか?」

「まあ、大体な。その黒くて邪悪な集団ってのは、やっぱり『終焉の精霊』なのか?」

「はっ! 恐らくそうであろうというのが剣聖殿たちの判断であります!」

「よし。ネイキッドたちの提案は却下だ。むしろ速攻で王都に向かうぞ」

「は……?」

 怪訝そうな顔をする『スピード・ウォリアー』だが、俺たちは全員で頷いて足を速める。

「お、お待ちください!」

「おい二輪、バイクモードだ。剣士、先行ってネイキッドたちを助けてやれ」

「オレが?」

「お前なら、王都に精霊が居て、即戦力になりやすい。俺が行ってもいいが、エースも一緒に乗らなきゃいけないし、希冴姫が欠けてる。お前の方が適任だ」

「そうだな。わかった。任せろ」

「い、いえだからその……」

 まだなにか言おうとしている『スピード・ウォリアー』を黙殺して、バイクロイドに剣士が跨る。

「オレは運転できねえからな」

「おう! 王都まで速達してやらぁ! しっかり掴まっとけよ!」

 急加速したバイクロイドが剣士を乗せて王都へと急行する。はた目から見れば剣士が運転しているようにしか見えないが、実際はオートパイロットみたいなもんだ。……AIには酷く不安が残るが。

「俺たちは急いで王都に向かうぞ!」

「はい!」

「み、皆さん!!」

 慌てたような『スピード・ウォリアー』に、仕方なく振り向いて教えてやる。

「ここで引き返すと、暖かい食事と風呂に入れないんだ」

「お腹空いているから、手早く済ませちゃおう!」

「……私はそろそろベッドで眠りたい」

「『終焉の精霊』相手なら、私の力が有効に使える筈ですから」

 アテナ以外の理由は実に私利私欲でしかなかったが、どちらにせよ助けに行く意志が変わらないことを『スピード・ウォリアー』に告げる。

「こっちとしちゃ、恩がある上拠点を潰されるのは結構困るんでな。色んな意味で、ここで救援に行かない選択肢は無いんだよ。諦めろ」

「……助かります」

「よし。そうと決まれば改めて出発だ。先に向かった剣士だけで終わっていれば何よりだが……万が一のために、グズグズするなよ!」

「おー!」

「はい!」

「任せて」

「剣士さん……!」

 全員の士気は高いまま、俺たちは王都への進軍を再開したのだった。

 

 

 

 

 




さ「な~っにっかな~ってまだるっこしいコレ!」
『処刑人-マキュラ』
ル「!?」
さ「マキュラはどこから墓地に行っても効果を使えるカードで墓地に行ったターン手札から罠を発動することができる蝶・優・秀! なカードだよ! どんな罠でも即時発動出来るし同じ禁止カードの現世と冥界の逆転辺りを絡めて先行ワンターンキルが横行した所為で禁止カードになっちゃったけどつまりそれはマキュラの強さを公式が認めたということにほかならなくてだからこそさだめはこのカードを魂のマイフェイバリットアイドルカードとして常に手元に置いてあるんだけどやっぱりデュエルでも使いたいから禁止デッキを作ってちょくちょく活用させてもらってるんだけどやっぱり公式戦で使えないのは痛いよねでもノーリミットデュエルのお陰でマキュラを始めとしたさだめの愛する禁止カードたちにも漸く日の目を見ることが出来たのはすごく嬉しいしつまるところどういうことかというとさだめはこれからもマキュラのカードを全力で使い続ける所存でありますよ!」
ル「え……あ、え?(困惑)」
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