アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第四期第十三話「輝ける鋼核VS終焉の闇」

アルカナ~切り札の騎士~

第四期第十三話「輝ける鋼核VS終焉の闇」

 

 

 

 

「……デュエルを始める前に、ユーキちゃんに話したいことがある」

「なにかな?」

「すまなかった」

 俺は、躊躇いなくユーキちゃんに頭を下げた。

「……それは、何に対しての謝罪なのかな」

「色々だ。ユーキちゃんの苦悩に気付いてやれなかったこと。俺の曖昧な態度が、ユーキちゃんを傷つけたこと。そして……俺は、ユーキちゃんの望む答えを、出してあげられそうにないこと」

「あは。わたし、振られちゃった?」

「……いや」

 自嘲気味に笑むユーキちゃんに、俺は首を振って応える。

「俺が出せない答えは、ただ一つ。ユーキちゃん一人を選ぶ、その選択」

「……どういうことかな?」

「俺は、アテナが好きだ」

 ピクリ、とユーキちゃんの片眉が上がる。

「さだめを守りたい。希冴姫と共に在りたい。ルインに寄り添いたい。そして……ユーキちゃんに癒されたい」

「……つまり、全員選びたいんだ?」

「ああ」

 俺は、恥ずかしげもなく恥さらしな言葉を口にする。

「身勝手なのは百も承知。だけど、そう決めた。俺は、みんなが好きだ」

「……それを、わたしが……アテナたちが認めなくても?」

「そのときは、俺が壊れるときだ」

 ルインとの会話で確信した。俺は、もう誰かが欠けただけで終わってしまう。ユーキちゃんも含めたみんなが、今の俺を支えてくれてる。そうでなくちゃ、斃れるしかないのだと。

「ユーキちゃん」

 だから、俺はどんなに見苦しくても、身勝手でも、情けなくても、手を伸ばそう。真剣に、心から、素直な気持ちを言葉に変えて、届けよう。

「君を愛している。戻ってきてくれ」

 その瞬間、ユーキちゃんがふらりとよろめき、一歩二歩と後ずさった。

「……わた、しは」

「きっと、これからも君を失望させるようなことがあるだろう。誰か一人を選べない俺は、君を幾度も傷つけるだろう。だけど、それでも……! いつかの未来に、君の隣に居るのは俺でありたい。だから」

 何度でも、手を伸ばす。掌から溢れてしまった大切なものを、この手に取り戻すために。

「戻ってきてくれ。ユーキちゃん」

 顔を俯けたユーキちゃんは、僅かに震えている。やがて、顔を上げたユーキちゃんは、困ったような、悲しいような、そんな表情を浮かべていた。

「……セツくんは、ずるいよ」

 ポツリ、ユーキちゃんは呟いた。

「わたしの気持ちを知っていて、そんなこと言うなんて……」

「なんでもいい。それで、君が戻ってきてくれるなら」

 長い沈黙のあと、ユーキちゃんが小さく呟いた。

「…………わかった」

「! ユーキちゃ……」

「でも!」

 駆け寄ろうとした俺を、ユーキちゃんが鋭い声で制止する。

「わたしにも、終焉を離れられない理由がある。セツくんを、こちら側へ手に入れる理由がある。それは、例えセツくんと天秤にかけても、どちらかに傾くことのない、大事な大事な、わたしの理由。だから」

 改めて、ユーキちゃんはデュエルディスクを構える。

「デュエル、しようよ。セツくんが勝てば、わたしはセツくんと一緒に行く。わたしが勝ったら……」

「俺が、そちらに行く。なるほどな。わかりやすい等価交換だ」

 俺も、応じてデュエルディスクを構える。

「ユーキちゃん……君を、この手に取り戻す!」

「セツくん……一緒に来てもらうよ」

「「デュエル!!」」

 セツLP4000

 ユーキLP4000

「先攻は譲ってもらっていいか?」

「どうぞ」

「んじゃ、遠慮なく。ドロー!」

 鋭い気配に促され、俺はデッキからカードをドローした。

「俺はモンスターを一体、守備表示でセット。カードを一枚セットしてターンエンドだ」

「……わたしのターンだね。ドロー」

 恐らく、俺に先攻を譲ったのは俺のデッキがどういうデッキなのかを確認する意味合いもあったんだろう。裏守備と一枚のリバースカード。これじゃあ、何もわからないに等しい。思惑は外せた。

「わたしは『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を召喚。攻撃表示」

 『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』ATK1300

「む……」

 しかし、こちらもユーキちゃんの初手に首を傾げざるを得なくなった。聞いたことのないカードだ。

「攻撃力1300か……」

 攻撃力だけなら、それほど脅威は感じない。が、ただのモンスターではないだろうことは、あの『|終焉の精霊(ジ・エンド・スピリッツ)』を彷彿とさせる名前と外見で容易に想像がついた。

「バトルフェイズ。『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』で、セツくんの裏守備モンスターに攻撃。『ジ・エンド・ファング』!」

 闇の獣が切り裂いたのは、岩石の化け物。その額の紋章が輝く。

「あれは……!」

「破壊された『コアキメイル・ロック』の効果を発動する! 戦闘によって破壊され、墓地に送られた時、デッキから『コアキメイルの鋼核』を一枚選択し、手札に加える!」

 『コアキメイル・ロック』DEF1000

 これで、ユーキちゃんにもわかっただろう。俺の新しいデッキ。コアキメイルが。

「……やってくれるね~。なるほど、わたしに対してはこの上ない選択かもね」

「お褒めに預かり光栄だ」

 コアキメイルは、扱いの難しいビートダウンとしての見識が一般的だが、その実光・闇属性に対するメタ効果を持つモンスターを多く擁するテーマデッキ。その上、扱い易い専用カウンター罠まで持っているとなれば、この選択は間違っていない筈。

「以前のわたしはサイレント。つまり光属性主軸。そして今は……」

「終焉の『闇』。少なくともどちらかを使ってくるのは間違いないと思っていたよ」

 ちなみにこのデッキなら、アテナ、さだめ、ルインにも有効な、ある意味俺の秘蔵デッキだ。みんな結構光と闇に偏っているからな。

「ふふ……まさかわたし用にデッキを組んで来ているとは思わなかったよ~。光栄だね。セツくん。わたしはカードを一枚セット。ターンエンド」

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から永続魔法『コア転送ユニット』を発動する! 手札の『コアキメイルの鋼核』を墓地に送り、デッキから『コアキメイルの鋼核』を手札に加える」

「デッキ圧縮だね~」

「そして更に魔法カード『コア濃度圧縮』を発動。手札の『コアキメイルの鋼核』をオープンし、『コアキメイル・フルバリア』を捨ててカードを二枚ドロー!」

 更にデッキを掘り進める。このデッキは特性上、なるべく速攻で決めてしまいたい。

「俺は『コアキメイル・ウルナイト』を攻撃表示で召喚。効果発動! 手札の『コアキメイルの鋼核』をオープンし、デッキからレベル4以下のコアキメイル……『コアキメイル・サンドマン』を特殊召喚する」

 コアキメイルの要であるウルナイトと、トラップに対するカウンターモンスターであるサンドマン。どちらも攻撃力は1900以上!

 『コアキメイル・ウルナイト』ATK2000

 『コアキメイル・サンドマン』ATK1900

「バトル!『コアキメイル・ウルナイト』で『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を攻撃!」

「きゃ……!」

 ユーキLP4000→3300

「更に『コアキメイル・サンドマン』で……」

「戦闘で破壊された『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』の効果を発動。デッキから同名モンスターを特殊召喚できるよ~。『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を守備表示!」

 『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』DEF1000

「くっ……そう簡単にはいかないか。『コアキメイル・サンドマン』で『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を攻撃!」

「効果により、デッキから『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』をリクルートするよ~」

 『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』DEF1000

「……俺はターンエンドだ。エンドフェイズ時、ウルナイトの維持コストとして手札の『神獣王バルバロス』をオープン。更にサンドマンの維持コストとして『コアキメイル・ガーディアン』をオープンする」

「ふふ、わたしのターン、ドロー! わたしは永続魔法『加速する終焉』を発動するよ~」

「加速する終焉?」

「このカードは、互いのエンドフェイズに自分の手札・ライフ・デッキ・フィールドの内、どれかを選んで終焉を加速するカード。手札なら、一枚を墓地へ。ライフなら800ポイント。デッキなら上から五枚を除外。フィールドなら一枚破壊というように。どれを選ぶかは、ターンプレイヤーの自由だよ」

「……なるほど。そんな厄介なもんは使わせたくないな。カウンター罠『鋼核の輝き』! 手札の『コアキメイルの鋼核』をオープンすることで、魔法・罠の発動と効果を無効にし、破壊する!」

「残念。わたしもカウンター罠『魔宮の賄賂』を発動するよ。『鋼核の輝き』を無効にして、セツくんはカードを一枚ドローだよ」

「くそ……」

 得意のカウンターにカウンターを返され、俺は苦虫を噛み潰したような顔になっていることだろう。

「手札から速攻魔法『終焉の魔薬』を発動。手札を一枚捨てて、相手モンスター一体の攻撃力をこのターンのエンドフェイズまで0にするよ~。私が選択するのは『コアキメイル・ウルナイト』だよ」

 『コアキメイル・ウルナイト』ATK0

「なにっ!?」

「『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を攻撃表示に変更。『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』で『コアキメイル・ウルナイト』を攻撃。『ジ・エンド・ファング』!」

「くっ……?」

 ウルナイトが破壊され、来ると思っていた衝撃がこない。

「あ、言い忘れていたけど、『終焉の魔薬』を使ったターン、セツくんは戦闘ダメージを受けないよ。良かったね?」

 クスクスと笑うユーキちゃん。

「うん。それじゃあ『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』の効果を発動するよ」

「え?」

 リクルートだけじゃなかったのか?

「『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』が相手モンスターを戦闘によって破壊した時、自分の墓地に存在する『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を一体特殊召喚できる。でも、この効果で特殊召喚された『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』はこのターン攻撃できない」

 これ以上の攻撃はない、か。とはいえ、厄介な壁モンスターだ。倒しても再び現れ、攻め込まれればその数を増やす。

「終焉は終わらない。終焉を終焉に導くことが出来る者はいないよ。わたしはカードを一枚セット。エンドフェイズに『加速する終焉』の効果でデッキからカードを五枚除外する」

 ユーキちゃんのデッキから落ちたのは『|終焉の死神(ジ・エンド・グリムリーパー)』『|終焉の精霊(ジ・エンド・スピリッツ)』『終焉の焔』『奈落の落とし穴』『キラー・トマト』の五枚。

「ふふっ『|終焉の死神(ジ・エンド・グリムリーパー)』の効果発動! このカードがデッキから直接除外された時、自分と相手の墓地に存在するカードを一枚ずつゲームから除外するよ~! わたしが選択するのは『終焉の魔薬』と『コアキメイルの鋼核』!」

「なんだと!?」

 不味い……ただそれだけが頭にある。要である鋼核が一枚除外され、残るは手札の一枚とデッキに一枚。コアキメイルにおいて、この状況はかなり厳しい。

「ターンエンドだよ。さあ、セツくん頑張って」

「くっ……俺のターン、ドロー!」

 落ち着け……ユーキちゃんのデッキは大まかに言えば多分、除外軸の闇属性。今のところは、余り攻撃力の高いモンスターはいない。とはいえ、ビートダウンで押し切れるか……?

「俺は『コアキメイル・デビル』を攻撃表示で召喚! コイツがいる限り、メインフェイズ中光と闇属性のモンスター効果を無効にする!」

 『コアキメイル・デビル』ATK1700

「っ……」

 ユーキちゃんが苦々しげに顔を歪める。やはり、コイツの効果は苦しいらしい。

「バトルだ!『コアキメイル・デビル』で『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』に攻撃!」

「リバースカード『次元幽閉』! その厄介なモンスターには消えて貰うよ!」

「そうはいかない!『コアキメイル・サンドマン』の効果発動! このカードをリリースすることで罠カードの発動と効果を無効にし、破壊する!」

 デビルの攻撃は止まらない。カマイタチを纏った爪が影の狼を切り裂く。

「くっ……!」

 ユーキLP3300→2900

「……俺はこれでターンエンドだ。エンドフェイズに『コアキメイル・デビル』の維持コストとして手札の『クリッター』を見せる」

「それと、『加速する終焉』の効果だよ」

「……ライフダメージを選択する」

 周囲の闇が、俺に纏わりついてくる。

「ぐぁ……!」

 セツLP4000→3200

 纏わりつく闇が、俺の身体から体力を奪っていく。

「わたしのターン、ドロー! 苦しいの? セツくん。すぐ、楽にしてあげるからね」

「っ……は、余計な心配だよ。ユーキちゃん」

 この程度の痛みで音を上げるはずもない。伊達にさだめの兄を19年もやってない。

「……そう。じゃあ、参ったって言わせてあげる。そんな、使い慣れてない急造デッキでわたしに挑んだ事を後悔することね」

「やってみろ」

「わたしは、手札から『闇の誘惑』を発動! デッキからカードを二枚ドローして、手札の闇属性モンスターを除外する! 除外するのは『ネクロフェイス』!」

 例の不気味な顔の人形が現れる。さだめとデュエルしたときも、コイツの効果には苦しめられたもんだが……。

「無駄だ!『コアキメイル・デビル』は例え除外された先で発動する効果であっても、闇属性モンスターの効果を無効にする!」

 『ネクロフェイス』の効果も、例にもれず無効化する。

 ギリッ、とユーキちゃんの口から苛立たしげな歯軋りが聞こえた。

 

 

 

「……生意気」

 

 

 

「なに?」

「生意気。生意気だよセツくんは。わたしと戦う力なんてない癖に。そんなデッキで、わたしに勝てるなんて思ってない癖に。それなのに抗う。無駄な抵抗ばっかりして、時間だけ稼いで。そんなにアテナちゃんたちが大事?」

「……大事だよ。そうじゃなきゃ、命なんて賭けるもんか。それに……」

「それに?」

「勝てないと思ってデュエルしたことなんてない。どんな相手でも、どんなデッキでも、俺は勝つための|手段(タクティクス)を探し続ける。その先にある、勝利を信じて」

「……やっぱり、生意気」

「生意気で結構。いつまでもユーキちゃん……いや、終焉の闇の思惑通りに踊らされて溜まるかよ」

 デュエルの初めから、徐々にユーキちゃんの気配が変わってきた。ユーキちゃんじゃない、もう一つの気配……これは、終焉だ。俺とユーキちゃんのデュエルに、終焉が介入してきている。デュエルの中で、ユーキちゃんが徐々にその意思に乗っ取られてきている。

「……わたしはモンスターを一体守備表示でセット。エンドフェイズに『加速する終焉』の効果でデッキからカードを五枚除外するよ」

 今回除外されたのは『|終焉の精霊(ジ・エンド・スピリッツ)』『終末の騎士』『キラー・トマト』『激流葬』『サイクロン』の五枚。

「ターンエンド」

「行くぞ、俺のターン! ドロー! 俺は『神獣王バルバロス』を攻撃表示で妥協召喚」

 『神獣王バルバロス』ATK1900

 ウルナイトが倒され、手札に温存しておく必要のなくなったバルバロスを妥協召喚する。

「バトルだ!『コアキメイル・デビル』で『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を攻撃!『コアデビル・クライ』!」

 影の狼が、悪魔の腕に貫かれて消えていく。デッキにはもう、同名モンスターはない。ならこれ以上リクルートされることはない!

「そして『神獣王バルバロス』で守備モンスターに攻撃!『トルネード・シェイパー』!」

 神獣王の槍が、終焉の場にあるモンスターを襲う。しかし。

「わたしの守備モンスターは『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』。守備力は2000。妥協召喚したバルバロスの攻撃力は1900だから破壊できないよ」

 『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』DEF2000

「ぐ……」

 セツLP3200→3100

 バルバロスの槍は、闇の結界を張ったネクロマンサーを破壊できず、その余波が俺を襲う。

「……仕方ない。俺はカードを一枚セット。エンドフェイズに維持コストとして『クリッター』をオープンし、『加速する終焉』の効果で800ダメージを受けてターンエンドだ……うぁ!」

 セツLP3100→2300

 くそ……この『加速する終焉』のダメージ……他のダメージとは質が違う。なんというか、血を抜かれているような感覚だ……。

「わたしのターン、ドロー。カードを一枚セット。エンドフェイズに『加速する終焉』の効果で800ポイントのダメージを受ける」

 ユーキLP2900→2100

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から『コア濃度圧縮』を発動! 手札の『コアキメイルの鋼核』をオープンし、『コアキメイル・ガーディアン』を墓地に送ることでデッキからカードを二枚ドロー!」

 よし、来た!

「俺は『コアキメイル・パワーハンド』を攻撃表示で召喚!」

 『コアキメイル・パワーハンド』ATK2100

 この『コアキメイル・パワーハンド』は戦闘を行う光・闇属性モンスターの効果を無効にする。デビルと共にコイツがいれば……。

「闇属性モンスターを恐れることはない! バトルだ!『コアキメイル・パワーハンド』で『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』を攻撃!『コアパワークラッシュ』!」

 パワーハンドの攻撃が死霊術師を粉砕する。よし、これで壁は消えた!

「行け!『コアキメイル・デビル』で……「リバースカードオープン」なに!?」

 ここでトラップ!? 一体何を……っ!?

 俺はそこで、終焉の闇からユーキちゃんの表情が抜けていることに気がついた。

「ユーキ、ちゃん?」

 憤怒、苛立ち、憎悪。この世の全てを呪わしげに睥睨する狂気的な無表情。

「カウンタートラップ『腐り堕ちる世界』。『終焉の(ジ・エンド)』と名の付くモンスターが戦闘によって破壊された時、ライフを2000ポイント支払うことで発動」

 ユーキLP2100→100

「フィールド上に存在する全てのカードを破壊し、相手プレイヤーに破壊した数×300ポイントのダメージを与える」

「なっ!?」

 俺のフィールドには、モンスターが三体と『コア転送ユニット』の合計四枚。ユーキちゃんのフィールドに『加速する終焉』が一枚。

「……フィールドのカードを全て破壊し、1500ポイントのダメージを受けて貰う」

 ドロドロと、世界が崩れて行く。まるで、そう。世界の終焉を見るかのような。

「ぐああっ!? ぁ……が」

 セツLP2300→800

 ヤバ……流石に、目が霞んできたな。今度は、それこそ全身が腐り落ちるような、おぞましい感覚のダメージだ。流石に、こんな痛みは初めての経験、だな……。

 それでも、膝はつかない。屈しない。

「倒れ、ないぞ……俺は、カードを一枚セット。ターン、エンド」

 当初は『コアキメイル・パワーハンド』のコストとしてオープンしようと思っていた『聖なるバリア―ミラーフォース―』をセットする。くそ……それでも、俺に出来ることは……ここまでか。

「わたしのターン、ドロー。セツくん」

「……?」

 なんだ……?

 

 

 

「……良くデキマシタ」

 

 

 

 そう言って、嗤った。ニタリ、と気味の悪い笑顔を、ユーキちゃんの顔で。

「っ終焉!!」

 それが、ユーキちゃんを酷く汚されたような気がして、俺は叫んだ。

「手札から魔法カード『死者蘇生』を発動。『|終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』を特殊召喚。効果発動。一ターンに一度、墓地の闇属性モンスターを除外して、墓地の『|終焉の(ジ・エンド)』と名の付くモンスター一体を特殊召喚する。わたしは墓地の『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を除外して『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』を特殊召喚」

 『終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』DEF2000

 『終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』DEF1000

 フィールドに二体のモンスターが並ぶ。リリース要員か……!?

「その『|終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』をリリースして『|終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』を攻撃表示で召喚。『|終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』は『|終焉の(ジ・エンド)』と名の付くモンスター一体をリリースしてアドバンス召喚することができる。そしてこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、フィールドで表側表示のモンスターはその属性を『闇』としても扱う」

 『|終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』ATK2600

「レベル、7……攻撃力2600……!」

 『アテナ』と同じ能力値。だが……!

「来るなら……来い!」

 ユーキちゃんの手札はゼロ。リバースカードを破壊する手立てはない。それなら……!

 そう、思った。

 しかし。

「行く必要も、ないのよ」

 そう言って、また嗤った。ニタリ、と。

「な、に……?」

「『|終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』の効果発動。このターンバトルフェイズをスキップすることで、フィールドに表側表示で存在する闇属性モンスターの数×600ポイントのダメージを相手に与える」

「……ぁ」

 夜の王。ナイトキーパーの持つ杖に、そのエネルギーが増幅されていく。

「フィールドの闇属性モンスターは二体。よって1200ポイントのダメージを与える。『ジ・エンド・ナイト・グロウ』」

 目前に迫る“終わり”を見つめ、俺は敗北を確信し……笑う。

 ――まったく……いつも俺は、肝心なところで勝てないな……。

「終わり、だよ」

 ああ……そうみたいだな。

 もう、痛みは感じない。ただ、体の力が抜けて行く。

「俺の……負けだ」

 セツLP800→0

 だけどせめて最後まで、絶望だけは見せずにいよう。デュエルに負けても、せめて絶望にだけは負けずにいよう。

「それが……最後の意地だ」

 意識が遠のく。自分が今、何処に立っているのか、それどころか立っているのかさえもわからない。わからない。

「みん、な……」

 ――あとは、任せ、た……。

 

 

 

 

 

 ドサ。

 目の前で、セツくんが倒れた。最後に、笑顔と一滴の雫だけ、その頬に映して。

「セツ……くん」

 涙が止まらない。大好きなセツくんを、自分の手で傷つけてしまった。それが、わたしの心をどこまでも蝕む。

 悲しかった。苦しかった。死にたかった。でも……死ねない。わたしが死んだら、“この子”が一人ぼっちになってしまうから。

 最初から、わたしはわたしとしての意識が残っていた。演技をしていたわけでも、一つの嘘もついてない。でも……。

「セツくんなら……本当のこと、話せるかなぁ……」

 最初から、全部わかってやっていたこと。自分の中に終焉がいて、その所為でアテナちゃんが苦しみ、逃げてしまったこと。

「セツくん……」

 うつぶせに倒れたセツくんを、仰向けにして自分の膝に乗せる。ボロボロで、傷だらけで、それでも強さしか感じない、その寝顔。知らず、涙が零れる。

「ごめんね……ごめんね。わたし、悪い子だよね……わかってる。わかってるよ……でも、でもこの子は……“エンヴィー”は悪くないから……悪いのは、わたしだから……だからセツくん……お願い」

 わたしと、一緒に来て。

 世界なんて、絶対滅びない。最初から、世界が終焉になんてならないんだよ……。

 流した涙が、セツくんの顔に落ちる。慌てて拭った。わたしの涙なんて、セツくんを汚すだけだから。セツくんの流した一滴の涙を、きっと汚してしまうから。

「絶対、助けるから……!」

 傷だらけのセツくんを抱えて飛ぶ。最後は、エンヴィーが暴走して加減が出来なかった。早く手当てしないと助からない。

「死なせない……わたし、死なせないよ……」

 この子にも、もう絶対殺させない。

 わたしは、胸の裡に眠る闇を押さえて、飛ぶスピードを上げた。

 

 

 

 

 

 




 セツのデッキはコアキメイル。現実だと金剛核が追加されたことで若干使いやすくなったものの、やっぱり使いにくいテーマですね。しかし、ウルナイトの効果は酷い……コアキメイルじゃなかったら即禁止になっても不思議じゃない。でも今はエクシーズの存在から容易くモンスターを増やせるこの効果は超有用。コアキメイル自体の戦力が高いのもあり、大分強化されたのではないでしょうか。以下、オリカ紹介です。

・『終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』 星3 闇属性 獣族 攻/守1300/1000
 効果
(1)このカードが戦闘によって破壊され、墓地に送られた場合、デッキから同名モンスター一体を特殊召喚することができる。
(2)このカードが戦闘によってモンスターを破壊し、墓地に送った場合、墓地に存在する『終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』一体を特殊召喚することができる。『終焉の餓狼(ジ・エンド・ウルフ)』の効果によって特殊召喚された場合、このカードは特殊召喚されたターンに攻撃することができない。

・『終焉の死神(ジ・エンド・グリムリーパー)』 星4 闇属性 アンデット族 攻/守1700/1400
 効果
(1)このカードがデッキから直接除外された場合、自分と相手の墓地に存在するカードを一枚ずつ選択し、ゲームから除外する。

・『終焉の夜王(ジ・エンド・ナイトキーパー)』 星7 闇属性 悪魔族 攻/守2600/800
 効果
 このカードは「終焉の」と名の付くモンスター一体をリリースしてアドバンス召喚することができる。
(1)このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、フィールド上の表側表示モンスターの属性は「闇」としても扱う。
(2)このカードは一ターンに一度、バトルフェイズをスキップすることで、フィールド上に存在する闇属性モンスターの数×600ポイントのダメージを相手ライフに与えることが出来る。

・『終焉の死霊術師(ジ・エンド・ネクロマンサー)』 星4 闇属性 魔法使い族 攻/守600/2000
 効果
(1)一ターンに一度、墓地の闇属性モンスター一体をゲームから除外することで、墓地の『終焉の』と名のつくモンスター一体を特殊召喚する。この効果によって特殊召喚されたモンスターは攻撃することが出来ない。

・『加速する終焉』 永続魔法
 効果
 このカードが表側表示で存在する限り、各プレイヤーは自分のエンドフェイズに次の効果から一つを選んで発動する。
(1)手札を一枚選択し、墓地に送る。
(2)800ポイントのダメージを受ける。
(3)デッキの上から五枚ゲームから除外する。
(4)自分フィールド上のカード一枚を破壊する。

・『終焉の魔薬』 速攻魔法
 効果
 このカードは自分か相手のメインフェイズにのみ発動することができる。
(1)手札を一枚捨てる。相手モンスター一体を選択し、選択したモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時までゼロにする。
このカードを発動したターン、相手が受ける戦闘ダメージはゼロになる。

・『腐り堕ちる世界』 カウンター罠
 効果
(1)自分フィールドに存在する「終焉の」モンスターが戦闘によって破壊され、墓地に送られた時に発動。ライフを2000ポイント支払い、フィールド上に存在する全てのカードを破壊してその数×300ポイントのダメージを相手に与える。

 今回はカテゴリごとオリジナルなので多いです。申し訳ない。その内オリカを纏めたページも作るつもりですが、とりあえずなにか質問があればいつでも受け付けております。
 ……アニメで赤羽零児が融合、シンクロ、エクシーズを纏めて使いましたね。…………儀式もやらんかいっっっ!!!
 それでは、悠でした!
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