アルカナ~切り札の騎士~
第四期第十六話「反魂のスピリチュア」
さだめさんに後を任せ、ルインさんに敵を前線に引きつけて貰い、私とシャルナは敵の懐、本拠地へと潜入することに成功しました。
「かなり警備が手薄になっていますね……ルインさんのお陰でしょうか?」
「さてさて……罠ってこともあるからねぃ」
潜入方法は、当初翼を使って空から……という予定だったのですが、デフォルトで真っ暗な冥界では純白の翼は目立ち過ぎるということで、それは断念しました。で、どうやって潜入したか、ですが……。
「と、ところでシャルナ、この偽装は本当に完璧なんですよね?」
「あったりまえでしょー。どこぞの傭兵が身を隠す時に常用していた由緒正しき一品よ~?」
「……ただの段ボールにしか見えないんですけど」
イメージは蛇さんらしいです。にょろにょろ。
「実際見つかってないんだから|無問題(モーマンタイ)|無問題(モーマンタイ)」
「それはそうなんですけど……」
珍しく真面目モードだと思いましたが、そうでもない気がしてきました。でも、実際潜入に成功している事実もありますし……。
「……まさかマジでイケるとは思ってなかったけど(ボソッ)」
「何か言いましたか?」
「何でもないわよん」
怪しいです。また騙されているような気がします。でも上手くいってますし……。
「む? なんだこの箱は?」
「っ!」
や、ヤバいです。遂に見つかりました。というか怪しまれました。
『ど、どうするんですか。遂に見つかっちゃいましたよ(ひそひそ)!』
『む~ん……だいじょぶじょぶ。静かに黙ってればバレないって(ひそひそ)』
「むぁっ!? こ、これは……!」
こ、今度こそバレました!? こ、こうなったら先制攻撃を……。
「これは、最近発売した新型のモニターではないか! こ、こうしてはおれん、可及的速やかにハ・デス様のところへ運ばねば……」
……へ?
「最近軍備に資金をつぎ込みすぎて買う金などないとおっしゃっていたのに……流石ハ・デス様! その様な財政から新型を購入する資金をひねり出すとは……気に恐ろしきはいんたあねっとおんらいんという奴か……私のような末端には理解できないものだが」
……えーと。
『……どこから突っ込めばいいのかわかりませんが……御同輩のようですよシャルナ』
『……いやはや、あたしが適当に選んだ段ボールだけど、妙な具合にハマったもんだねぃ。道理で誰もこんな段ボールが置いてあっても不思議に思わない筈だわね』
『……ってちょっと待ってください。やっぱりコレ、悪ふざけだったんですね!? また私を騙して!』
『ちょっ!? しーっ、しーっ!……まあまあ、上手く行ったんだから結果オーライってことで……』
『っていうかハ・デスってネットゲーマーだったんですか……あ、相変わらず精霊界は……!』
『まあハ・デスってば明らかに格下の深淵の冥王にしてやられて、一時期大分腐ってたらしいしねぃ。落ちぶれた精霊の行き着く所ってのは、どいつもおんなじようなもので……』
『落ちぶれたらネトゲ廃人って、妙にリアルな社会形成してますね精霊界!』
ああもう! 戦争中で潜入作戦中だっていうのにまったくもう!
「しかしっ、重いなこのモニター……!」
『言われてるわよアテナ。ダイエットとかした方がいいんでない?』
『なっ!? 聞き捨てなりませんシャルナ! 大体、どう考えても体格的にシャルナの方が重たいでしょうに! 生活習慣的にも、ダイエットした方がいいのはどう考えてもシャルナの方です!』
『ところがどっこい。精霊は体格も体重も一生変化なしだったり』
『くっ! これだから見せる相手もいないのに無駄にスタイルいい女は……!』
『ちょ、無駄とはなにさ~』
『言いたいことがあるならいい加減恋人の一人でも作ったらどうです!? 一体何百年一人身でいるつもりですか』
『うわっ、ちょっといい男捕まえたからって何という暴言。流石におねえさん、カチンときちゃったよ~?』
『やりますか!?』
『やらいでか!?』
「ん~? なんか何処かから声がするような……」
『…………』
『…………』
い、一時休戦です。こんなアホな言い争いでバレたら末代までの恥です。
「しかし……前線にはあのルイン様が現れたっていうのに……なんで俺は後詰で一人荷物運びなんてしてるんだろうなぁ……はぁ、俺もルイン様を見に行きたいよ……」
……それにしても、相変わらず凄い人気ですねルインさん。
「見たかったなぁ、ルイン様の戦場生ライブ」
ってまさかホントにファンクラブ的な意味で引きつけてるんですか!? 敵ながらなにやってんですか!? サイクロイドさんでもあるまいに、反乱って子供の遊びじゃないんですよ!?
「ハ・デス様~。お届けモノで~す」
貴方は何処の配達員ですか。一応兵士でしょう。
「む? それは……」
っ……ハ・デス!
「通路に放置されてたんで、一応お届けに。これ、ハ・デス様がご所望の最新型モニターッスよね?」
「お? おおおそれは! 財政難で手に入らんと半ば諦めていたものだが……」
「へ? ハ・デス様が注文したんじゃないんスか?」
「いや? ワシも欲しいとは思っておったが……まあよい。大義であった。下がって良いぞ」
本当は大義どころか、図らずも獅子身中の虫となってるんですけどね……。
『今よ!』
『はい!』
シャルナの合図に、私は段ボール箱(最新型モニター)から飛び出し――。
「へみゃっ!?」
べちっ!
……段ボール箱に足を取られて転びました。痛いです。
いそいそと立ち上がり、改めて宣言します。
「反乱軍総大将ハ・デス! その首貰ったぁ! です!」
「…………」
「…………」
「……あれ?」
「なんでこー、登場シーンすらカッコ良く決まらないのかしらねこの娘は……」
私に続いて段ボールから出てきたシャルナは、何故かよよよとばかりにハンカチで目元を拭っていました。
「何の話ですか? 私は転んだりしていません」
「…………」
「…………」
……なんですかその沈黙は。あたかも私が残念な娘とでも言いたげですね。
「……やや! 怪しい奴!」
「冥界の魔王ハ・デス……今日が年貢の納め時よ!」
「何事もなかったかのように猿芝居を始めないでください!」
「ぬうぅ……まさかワシの所望していた最新型モニターに扮して侵入するとは……流石は精霊界一の駄目オタニート……アテナよ」
「今はシャルナよん。って! 誰が精霊界一の駄目オタニートか!」
「いえそれ以前に私をなかったことにして話を進めないでください!」
ついでに、ハ・デスの言い方だと私が駄目オタニートみたいで嫌です。
「と、兎に角! ハ・デス! 貴方の野望はここで潰えるのです! 私とデュエルです!」
「よかろう……このワシに打ち勝つことが出来れば、我が矜持に懸けて全軍を退かせることを誓おう……」
「……あれ? 思った以上に聞き分けが……」
ま、まあいいです。全軍を退かせるというならそれに越したことはありません。私はデュエルディスクを構え、ハ・デスと相対します。
「「デュエル!!」」
アテナLP4000
ハ・デスLP4000
「ワシの先攻。ドロー!」
ハ・デスである以上、デッキは悪魔族……油断はできません。
「ワシは『クリッター』を攻撃表示で召喚。カードを一枚セットし、ターンエンド」
『クリッター』ATK1000
「初手に『クリッター』を攻撃表示……明らかに誘っているとしか思えない布陣ですね……私のターン、ドロー!」
それでも、私のデッキは攻めるデッキ。罠を恐れて立ち止まるような私じゃありません!
『相変わらず、顔に似合わず男らしい戦術ね……』
「うるさいです。私は手札から『ヘカテリス』の効果発動。このカードを墓地に捨てて、デッキから『神の居城―ヴァルハラ』を手札に加えます」
私はいつものように、上級召喚のためのカードを手札に加えます。
「そして『神の居城―ヴァルハラ』の効果発動。私は手札から『アテナ』を特殊召喚します!」
『アテナ』ATK2600
『なーんか嫌な予感するのよね……ねえ、攻撃やめない?』
「嫌な予感に関しては私も同感ですが……かといって躊躇っていては勝てません! バトル!『アテナ』で『クリッター』を攻撃します!『ディヴァイン・クロス』!」
『あー、はいはい。しゃーないわねーっと!』
「ククク……トラップ発動『ヘイト・バスター』! 悪魔族に攻撃したモンスターを、その悪魔族ごと道連れにし、その攻撃力分のダメージを与える。我が軍勢に背いた報いを受けよ!」
『ほらやっぱりーっ!?』
「きゃああっ!?」
アテナLP4000→1400
「くっ……!」
「更に、墓地に送られた『クリッター』のモンスター効果により、ワシは『死霊操りしパペットマスター』を手札に加える」
「私はモンスターを一枚セット。ターンエンドです」
『あたた……もうアテナ~』
「ご、ごめんなさいシャルナ。てっきりミラーフォース辺りだと思ったんですけど……これなら追撃用のモンスターも出しておくべきでした」
『ってそれ、結局あたしはやられるじゃないの!』
「うっ……」
それを言われると痛いです。
「ワシのターン、ドロー! ワシは『ニュードリュア』を攻撃表示で召喚。バトル!」
『ニュードリュア』ATK1200
「私の伏せモンスターは『スケルエンジェル』! リバース効果によりカードを一枚ドローします!」
「ワシはカードを三枚セットし、ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー! 私は『ジェルエンデュオ』を攻撃表示で召喚します!」
『ジェルエンデュオ』ATK1700
「バトルします!『ジェルエンデュオ』で『ニュードリュア』を攻撃!」
「ぬぅっ! しかし『ニュードリュア』のモンスター効果発動! 戦闘によって破壊され、墓地に送られた場合、相手モンスター一体を破壊する!」
ハ・デスLP4000→3500
『ニュードリュア』の瘴気に中てられ、『ジェルエンデュオ』が力なく倒れて行きます。
「それは予想済みです。私はメインフェイズ2にヴァルハラの効果を使い、手札から『光神テテュス』を攻撃表示で召喚します! ターンエンドです!」
『光神テテュス』ATK2400
「エンドフェイズ時に、我が伏せカード『針虫の巣窟』を発動! ワシのデッキを上から五枚、墓地に送る」
「墓地肥し……!?」
確か、ハ・デスは蘇生能力に長けた悪魔……そのための布石ですか。
「ワシのターン、ドロー! ワシは永続トラップ『リミット・リバース』を発動。墓地から『クリッター』を蘇生させる」
『クリッター』ATK1000
三つ目の小悪魔が再び姿を現します。
「そして『クリッター』をリリース! 手札から『死霊操りしパペットマスター』を守備表示でアドバンス召喚! そしてライフを2000ポイント支払い、墓地から『闇の侯爵ベリアル』と『暗黒の侵略者』を特殊召喚する!」
ハ・デスLP3500→1500
『死霊操りしパペットマスター』DEF0
『闇の侯爵ベリアル』ATK2800
『暗黒の侵略者』ATK2900
「そんなっ……!?」
一瞬で最上級モンスターを二体!? 二体とも『針虫の巣窟』で墓地に送っていたんですか……。
「しかし、残念なことにこの効果により特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃することが出来ぬ。ワシは『クリッター』の効果でデッキから『グレイブ・スクワーマー』を手札に加える」
ほっ……攻撃出来ないのなら、まだ良かったです。ライフもこれで並びましたし、これならまだ……。
「しかし、まだ終わらぬぞ! 手札から魔法カード『冥界流傀儡術』! 墓地の悪魔族一体を選択し、そのモンスターと合計レベルが同じになるようにフィールドからモンスターを除外し、特殊召喚する! ワシが選択するのは『エンド・オブ・アヌビス』! そのレベルは6!」
「6ってことは……」
「そう! ワシのフィールドには既に用なしの『死霊操りしパペットマスター』が存在する。ワシはパペットマスターを除外し、墓地から『エンド・オブ・アヌビス』を蘇生する!」
『エンド・オブ・アヌビス』ATK2500
「フッフッフ……『エンド・オブ・アヌビス』が存在する限り、墓地への魔法・罠・モンスター効果は無効となる」
「そんなモンスターまで!?」
くっ……まさか一ターンでここまで……! 魔王の名は伊達じゃないということですか……! ところで……。
「結局自分自身は出さないんですか?」
「ワシが出るまでもなかろう! この圧倒的な陣容! 速攻魔法を封じられ、墓地利用を封じられ、攻撃可能なのはベリアル一人……最早貴様に勝ち目はない!」
「それは、どうでしょうね……!」
「ふん。貴様の手に『オネスト』が存在することなど、見るまでもなく明らかよ! トラップ発動『マインド・クラッシュ』! 手札から『オネスト』を捨てぃ!」
「そんなっ!?」
ハ・デスの読み通り、私は手札に『オネスト』が存在しました。私の手札から『オネスト』が葬られます。
「バトル!『エンド・オブ・アヌビス』で『光神テテュス』を攻撃!」
「きゃああっ!?」
アテナLP1400→1300
「くっ……強いです!」
「当然よ。ワシは冥界の、真なる魔王ぞ!」
ライフはほぼ横並び。ですがボード・アドバンテージは完全に握られました。くっ……。
「どうやら貴様、ボード・アドバンテージを握られると弱いらしい。この状況、どう覆す? 戦女神の使い手よ。ワシはカードを一枚セットし、ターンエンドだ」
「……私のターン、ドロー!」
確かに、状況は相当にマズイです。ボード・アドバンテージは握られ、墓地からの蘇生も不可能。リクルーターによる場つなぎも出来ず、速攻魔法を封じられた以上『光神化』と『地獄の暴走召喚』のコンボも使えない……。私の得意とする戦術の殆どを封じられた形です。
「私はモンスターを一枚セット。カードを一枚セットしてターンエンドです」
今は、凌ぐしかありません!
「守りに入ったか。しかし、凌ぎ切れるか? ワシのターン、ドロー!」
フィールドには、三体の上級悪魔。凄まじい威圧感です……。
「バトル!『エンド・オブ・アヌビス』でモンスターを攻撃!」
「守備表示のモンスターは『マシュマロン』! 戦闘では破壊されません! 更に効果により、1000ポイントのダメージを受けて貰います!」
ハ・デスLP1500→500
「ぬぐっ……! 耐えるだけでなくダメージまで与えるとは……。ならばワシはモンスターをセット。ターンエンドだ」
「私のターン!」
くっ……! 状況を打開できるカードじゃありません! 早く、戦いを終わらせなきゃいけないのに……!
「……カード一枚をセットしてターンエンドです」
「その逃げ腰、何時まで持つかな? ワシのターン、ドロー! ワシはセットされた『グレイブ・スクワーマー』をリリースし、ワシ自身をアドバンス召喚!」
『冥界の魔王ハ・デス』ATK2450
「遂に出てきましたか……」
「更に、墓地に存在する三体の悪魔族モンスターを除外し、『ダークネクロフィア』を特殊召喚!」
『ダークネクロフィア』ATK2200
「更にモンスターを……!? しかも、墓地は使えない筈なのに……」
「『ダークネクロフィア』の墓地除外はコスト。よって『エンド・オブ・アヌビス』では無効化されぬわ!」
……本格的に不味くなってきました。相手フィールドには上級悪魔が五体。こちらは戦闘破壊耐性を持ったモンスターで何とか凌いでいる状況……!
「何時までもそんな守りが通用するものか! ワシは手札から『地砕き』を発動!『マシュマロン』を破壊する!」
「きゃあっ!?」
「終わりだ! ワシ自身でダイレクトアタック!」
「トラップカード発動!『和睦の使者』! このターン戦闘によるダメージはゼロになります!」
「ぬぅ……またしても耐えたか。しかし、次はない」
「くっ……」
『アテナ、アテナ』
「シャルナ……?」
『な~にを焦ってるかなこの娘は!』
「たっ!?」
呆れたような顔のシャルナに、ペシリと軽く叩かれました。
「な、何するんですか」
『何するんですかじゃないわよ。出陣前にさだめちゃんに言われたこと気にしてる? 手早く済ませてきますから~って』
「そ、それは……」
『あぁ、それだけじゃないわね。大方、セツを助けるためにこんなところでグズグズしちゃいられないってところかしらん?』
「う……」
『図星? でしょうね。あんたってばわかりやすいし』
はぁやれやれ、とシャルナが首を振ります。
『ホント、アテナってばセツが居ないとダメになっちゃったわねぇ。見ちゃいらんないわ』
「な、なんですか」
『プレイングが荒い、焦り過ぎ慌て過ぎ気圧され過ぎ。あとついでにあたしの扱いがぞんざい!』
「シャルナの扱いが悪いのはいつものことです」
『しゃらっぷ! お黙り!』
「ひぅ」
『とにかく! あんたってば強いんだから。普段通り、落ち着いて平常心で行けば勝てるのよ。あの程度の陣容、昔のアテナ……ううん。スピリチュアなら簡単に突破できた。違う?』
「それは……」
『あとはアンタ次第。手札はある。ヴァルハラはある。あと足りないのはアテナの力』
シャルナの言葉に、私は心を落ちつけてデッキに手を添えます。
『アテナ自身が言ったことでしょ? この冥界で……アンタに勝てる奴なんていないのよ』
「……はい! ドロー!」
来ました! 逆転の一手!
「ハ・デス! 終わらせます!」
「なんだと……?」
私のフィールドにはヴァルハラ一枚と伏せカード。まずは……。
「私も使わせて貰います! リバースカードオープン!『針虫の巣窟』! デッキの上から五枚、墓地に送ります!」
墓地に送られたのは『堕天使スペルビア』『The splendid VENUS』『光神機―桜火』『光神機―轟龍』『虚無の統括者』……見事に上級一色。改めて自分のデッキの滅茶苦茶さを再認識しました。でも、今は好都合です!
「私はヴァルハラの効果を使って、私自身。『反魂のスピリチュア』を特殊召喚します!」
『反魂のスピリチュア』ATK800
「こ、これは……! まさか小娘貴様……いや、貴女様は……!?」
「私自身。『反魂のスピリチュア』はその昔、強力さ故封印指定を受けました。その力……存分に思い知ってください! 効果発動!」
フィールドにて輝く翼が、闇を祓っていきます。
「第一の効果! 手札を任意の枚数捨てることにより、その枚数だけ相手フィールドの闇属性モンスターをデッキに戻します! 私の手札は二枚。よって『エンド・オブ・アヌビス』と『ダークネクロフィア』をデッキに戻します!」
「ぬぅっ!?」
破壊することが危険な『ダークネクロフィア』と、第三の効果を阻害する『エンド・オブ・アヌビス』を先に除去します。
「更に第二の効果! 第一の効果でデッキに戻した数だけ、墓地から光属性モンスターを効果を無効にして蘇生します! 私は『アテナ』と『The splendid VENUS』を蘇生します!『反魂呪魂の法、OSIRIS』!」
『アテナ』ATK2600
『The splendid VENUS』ATK2800
闇に染まりし魂を、反魂の輝きが浄化して、シャルナとヴィーナスを蘇らせます。
「まだです! 第三の効果発動! 相手の墓地に存在する闇属性モンスター一体を選択してデッキに戻し、私の墓地から光属性モンスター一体を、効果を無効にして蘇生します! 私は貴方の墓地から『レッサー・デーモン』をデッキに戻し、『光神機―轟龍』を蘇生!」
『光神機―轟龍』ATK2900
最初の『針虫の巣窟』で墓地に送られていた悪魔をデッキに戻し、その魂は光輝く機械仕掛けの龍に受け継がれます。
「な、なんという……!?」
これが、かつて生と死の境界を侵したとされ、禁忌……封印指定をされた私の力。闇を光に変え、戦場を光に包むこの力は、闇と光の闘争のバランスを崩すとされ、使用制限を出された力です。
「……効果は無効になっているため、シャルナの効果は発動しません。ですが」
フィールドを見る。先ほどとは真逆。最上級天使に支配された私のフィールドに対し、ハ・デスの持つ闇は押し潰されそうです。
「……バトルです。まずは『The splendid VENUS』で『闇の侯爵ベリアル』を攻撃です!」
「くっ……迎え討てぃ!」
攻撃力は互角。『The splendid VENUS』の効果は無効になっているので、相討ちになるのみ。
「更に『光神機―轟龍』で『暗黒の侵略者』に攻撃!」
「ぬおおっ!」
攻撃力はやはり互角。相討ち。ですが……。
『あたしとアンタじゃ、格が違うみたいねん』
「ぐっ……!」
「行きます! シャルナで『冥界の魔王ハ・デス』に攻撃!『ディヴァイン・クロス』!」
『ぜえええいりゃあっ!』
「ぐおおおおおっ!?」
ハ・デスLP500→350
「……終わりです。『反魂のスピリチュア』で、プレイヤーにダイレクトアタック!『トライデント・サンシャイン』!」
ソリッドビジョンの私が、その手に持った三又の槍をハ・デスに投げつけました。
「ぐあああああああああっ!?」
ハ・デスLP350→0
「では、これで軍を退いていただけますね?」
「……うむ。ワシに二言はない」
「それにしても、嫌に素直ですね。もう少し何かあるかと思いましたが……」
「どこぞの雑魚に敗れるなら兎も角、かの有名な戦女神両名に敗れるなら本望というものよ。何より、死んだと聞かされていたスピリチュア様が存命であったとは……」
「……私はアテナです。今は精霊ではなく、ただの人間ですよ」
「そうですか……」
「というか、何で敬語なんですか? 私、別にハ・デスよりも偉い精霊だった訳じゃないですよ?」
「いやいや! まさかこのワシが、スピリチュア様を呼び捨てになど出来る筈もあるまい。そう、我が女神たるスピリチュア様を!」
「……はい?」
何だか雲行きが怪しくなってきました。
「かつてスピリチュア様が死んだと聞かされた時には、どれほど嘆き苦しんだことか! あまりのショックについ不覚を取り、深淵の冥王ごときにやられ、ネットゲームにハマりこむ程で……」
「あらん。あたしとおんなじような理由だったの? 益々御同輩みたいね」
「見てくださいこの会員証!」
「ええと……『スピリチュアファンクラブ会員No.666』……ってファンクラブ!?」
「ちなみに、あたしも持ってるよ。っていうか会長」
「シャルナ!?」
「ワシの会員番号……三桁台というのは非常に珍しいものでして……」
「いえ、どっちかと言うとその不吉な数字に目が行きますが……そもそもシャルナはシングルナンバーですし」
ってそういうことじゃあありません!
「ってあぁ!!」
「シャルナ?」
突然顔色を変えてハ・デスに詰め寄るシャルナに、何があったのかと驚きます。
「あんた! 今思い出したけど、会員No.666って、まさか“ハデハデッス”じゃないの!?」
「……は?」
「む? 如何にもワシのハンドルネームはハデハデッスじゃが……」
「くぅ~やっぱり! イベントがある度にいっつもあたしのほんの少し上の順位につけてくるにっくきハデハデッス! まさかアンタだったとは……」
「しゃ、シャルナ?」
「だがしかし! 今この時をもってあたしの敗北の記憶は塗り替えられた! そう、勝利によって!」
勝ったの私ですし、そもそもデュエルの勝利とネトゲの勝利は全くの別物ですし。
「あっはっはー! あ~スッキリした! これで今日から心安らかに……あらん?」
と、その時シャルナの前に『女帝』を示すタロットが……え?
「なるほど……おねーさんの宿命の相手、乗り越えるべき壁。それはアンタだったのね……ハデハデッス!」
「え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
こ、これでいいんですか? 宿命って、こんなに軽いもんでしたっけ? そもそもデュエル関係ないですし、壁って……えぇ~?
「なんのことやらわからぬが……いや、今はそんなことよりも!」
困惑の表情で固まっていた(私もですが)ハ・デスが何やら慌てて立ち上がり、いっそデュエルの前より気力に満ちた目を輝かせました。
「苦節ウン十年……長きに渡る雌伏の時でありました。こうしてはおれん! 一刻も早くこの情報をネットに流し、スピリチュア様の復活祭の計画をせねば……シャルナよ! ヴァンダルギオンへの伝言は任せる! 今回はワシの負けじゃとな!」
「あいあ~い」
「ちょ、ちょっと待ってください! 復活祭ってそんな……」
慌てて抗議しようとしましたが、ハ・デスは鈍重そうな見た目に反し、凄いスピードで奥へと引っ込んで行ってしまいました。
「え、え~っと……」
「ま、何にせよ反乱はこれで終わり。とっとと戻って報告して、希冴姫ちゃんを蘇らせましょ~やね」
「え、いやあの……こんなあっさりした終わりでいいんですか?」
「こじれるより良いでしょ~よ。ま、あのレッド寮じゃないけどアテナの信者ってのはどこにでもいるみたいねん」
「……ルインさんのファンクラブといい私のファンクラブといい土下座評論家といい……精霊界はどうしてこう……」
私は呆れ果ててもう何も言えませんでした。まあ兎に角、これで反乱は終わったらしいのでヴァンダルギオンさんに報告してしまうとしましょう。
「はぁ……なんかドッと疲れました……」
シリアスになりきれない自分のキャラ特性が、改めて憎く思った私でした。というか、もうどうにでもなればいいんですよ。こんな世界。
ちなみに。後日行われたネトゲのイベントに於ける総合貢献度で、シャルナは案の定ハデハデッス(ハ・デス)に敗北したそうです。
「なんでよ~~~!!」
……当たり前です。
さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『冥界流傀儡術』
さ「ま、簡単に言えばフィールドのモンスターと墓地の悪魔族を交換する効果だね。蘇生する悪魔族のレベルにあわせる必要があるから、基本的にはディスアドバンテージが大きいんだけど、今回みたいに効果を使い終わって攻撃力も低いモンスターを能動的に逃がしつつ蘇生出来るから、どんなカードも使いようだね」
ル「……大丈夫?」
さ「さだめは平気。前回は休んじゃったけど、こんなところで凹んでられないからね」
遂に解禁されましたアテナの精霊時代のカード。反魂のスピリチュア。ご覧のとおり、闇属性に対する絶対的な能力を誇ります。以下、詳しい効果。
・『反魂のスピリチュア』 星7 光属性 天使族 攻/守800/2600
効果
『反魂のスピリチュア』の(1)(2)の効果は、それぞれ一ターンに一度ずつ発動することが出来る。このカードの効果は、このカードが光属性でない場合、無効化される。
(1)手札を任意の枚数捨てる。その枚数だけ、相手フィールド上に表側表示で存在する闇属性モンスターを選択し、デッキに戻す。その後、デッキに戻した闇属性モンスターの数だけ自分の墓地から光属性モンスターを選択し、効果を無効にして特殊召喚する。
(2)相手の墓地に存在する闇属性モンスター一体を選択し、デッキに戻す。その後自分の墓地から光属性モンスター一体を選択し、効果を無効にして特殊召喚する。
(3)このカードは闇属性モンスターとの戦闘、及び効果によっては破壊されない。
(4)このカードと闇属性モンスターとの戦闘によって発生する自分へのダメージはゼロになる。
というわけで、完全に闇属性メタ効果です。ただし、DNA移植手術で闇属性にした場合効果が無効になるので、闇属性相手でなければ基本的に紙になります。どうしても使いたければ、移植手術で闇にしてからこのカードに幻惑の巻物を使って光属性に戻せばいいですが、流石にディスアドが大きく、安定性も低いですね。その代わり、闇属性相手にはほぼ無敵。闇属性相手に『アテナ』と組み合わせて使えば、場合によっては相手のフィールドと墓地を荒らしまわった挙句大量のバーンダメージとこちら側には最上級天使が勢ぞろい……というようなエンドを迎えることになります。蘇生出来るのは天使族ではなく光属性なので、天使族に拘らず、光属性デッキのサイドデッキ辺りに用意しておけば、相手が闇属性だと判明した次のマッチで蹂躙できるでしょう。レベルは高くても攻撃力が低いので、出す方法には困りませんしね。
……あ、シャルナはタロット獲得おめでとうございます。考えうる限り最低の経緯でしたが。さだめが超シリアスやってる裏でアテナは超ギャグやってました。そんなところまで真逆にならんでも……。
それでは、悠でした!