アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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 デュエル回になります。徐々に原作剥離、ついでに前掲載分からも違うところがチラホラ出てきますので、前作を知っている(覚えている)方々もどうか違いを思い出してみてください。







第九話「あの声が聞きたくて 後編」

アルカナ~切り札の騎士~

第九話「あの声が聞きたくて後編」

 

 

 

 

「私のターンだ。ドロー!」

 ちっ、先攻取られた。

「手札から、『ジェネラルデーモン』の効果を発動!」

 来たな『万魔殿(パンデモニウム)―悪魔の巣窟―』のサーチモンスター!

「『万魔殿―悪魔の巣窟―』を発動だぁ!」

 フィールドが恐ろしい地獄のようなフィールドに変化した。

「ひっ!」

『うっわ趣味悪ぅ……』

 アテナとシャルナは流石に気分がすぐれない。まあ当然だな。

「行くぞ! 手札から『デーモン・ソルジャー』を攻撃表示で召喚! ターンエンドだ」

『デーモン・ソルジャー』ATK1900

「俺のターン! ドロー!」

 しかしなんで俺とデュエルする奴らは皆一ターン目からあんな高攻撃力モンスターばっかり出してきやがるのかね?

「手札から『増援』を発動! デッキから『キングス・ナイト』を手札に加える!」

「『キングス・ナイト』……ってことは」

「もう『クィーンズ・ナイト』は手札に……」

 その通り。なんかさっきからやたらとやる気満々なクィーンがスタンバってますとも!

「『クィーンズ・ナイト』を召喚! さらに『二重召喚(デュアルサモン)』を発動するぜ」

『クィーンズ・ナイト』ATK1500

 『二重召喚』は一ターンに通常召喚を二度行う召喚補助カード!

「来いっ『キングス・ナイト』! そして『ジャックス・ナイト』!」

『キングス・ナイト』ATK1600

『ジャックス・ナイト』ATK1900

「出た! セツのお得意高速展開!」

「三銃士が出そろったッス!」

 が、まだ『融合』が手札にない。

「俺はカードを一枚セットしてターンエンドだ」

 伏せたカードは『炸裂装甲(リアクティブアーマー)』。時間を稼ぐ!

「フフフ……私のターン! ドロー! 私は『ジェノサイドキングデーモン』を攻撃表示で召喚。バトルだぁ!」

『ジェノサイドキングデーモン』ATK2000

「まずい! 攻撃力が『ジャックス・ナイト』よりも上だ!」

「リバースカードオープン!『炸裂装甲(リアクティブアーマー)』!」

「フハハ! 甘いわぁ!『ジェノサイドキングデーモン』の効果発動! フフフ、コイツはダイスを振り、出た目が2か5であった場合、効果を無効にすることができる。ダイスロールだ!」

「ちょい待ち! そのダイスロールはこっちのダイスを……」

 ……あれ? イカサマを防止するためにサイコロを……ない。

「……忘れた!?」

 しまった。テンションダダ上がりだったから持ち物確認を疎かに! 不覚!

「いや、続けてくれ」

 仕方ない。イカサマを甘んじて許すしかない。

「ダイスの目は5!『炸裂装甲』の効果を無効にする!」

 今にも纏わりつこうとしていた装甲が、『ジェノサイドキングデーモン』によって掻き消された。

「行けぃ! 炸裂ゥ! 五臓六腑!」

『ぐ……あああっ!?』

 応戦したジャックも力及ばず、闇の力に呑み込まれた。

「ぐぅ!」

 ダメージは微々たるものだが、キツイもんはキツイ。

 セツLP4000→3900

「さらに『デーモン・ソルジャー』で『クィーンズ・ナイト』を攻撃だぁ!」

『きゃあああああ!?』

 っ! クィーン!

 セツLP3900→3500

「そしてこれが闇のデュエルの真の恐怖だぁ!」

 そう言ってタイタンが偽物の千年パズルを掲げる。

「消えてゆく……貴様の体が、ライフと共に徐々に消える……」

「っう、お……」

 い、インチキだってわかってても結構怖いぞこいつは。

「せ、セツ君の体が……」

「透けて……」

「セツ!!」

 アテナの悲痛な叫びが聞こえる。俺は不安そうなギャラリーに笑顔で答える。

「心配すんな! こんなもん、痛くも痒くもねえ!」

「で、でも!」

「フゥハハハッ! 見たか、こいつが闇のデュエルだ!」

「うるせえぞ似非ヤロウ」

「なんだとぅ?」

「こんなもん、俺が勝てばいいってだけの話じゃねえか。俺を怖がらせるなら、それこそ地獄の劫火でも持ってくるんだったな」

「強がっていられるのも今のうちだ! カードを一枚セットしてターンエンドだ!」

「ドロー!」

 そう、この程度で俺を怖がらせようなんざ百年早い!

「ぶっ倒す! 俺は手札から、『強欲な壺』を発動! カードを二枚ドロー! さらに『死者蘇生』を発動する! 墓地から『クィーンズ・ナイト』を蘇生!」

 『クィーンズ・ナイト』ATK1500

「ハッ! 血迷ったか! 態々攻撃力の低い『クィーンズ・ナイト』の方を召喚するとはな!」

「黙って見てろ! 俺は手札から、『融合呪印生物―光』を召喚する!」

『融合呪印生物―光』ATK1000

 フィールドに、人の手らしきものとか色々なものが混ぜ合わさったような不気味な物体が現れる。

「な、なんだあれ!?」

「『融合呪印生物―光』の効果発動! フィールド上から、『融合呪印生物―光』と融合モンスターによって決められた融合素材モンスターをリリースし、エクストラデッキからその融合モンスターを特殊召喚する!」

 さあ久しぶりにお出ましだ!

「俺のデッキ最強のモンスターを拝ませてやるぜイカサマ野郎! 来いっ『アルカナ ナイトジョーカー』!」

 三体のモンスターが光に包まれ、最強の騎士がその姿を現す。

『アルカナ ナイトジョーカー』ATK3800

「バトルフェイズ!『アルカナ ナイトジョーカー』で『ジェノサイドキングデーモン』を攻撃!『フォースブレード』!」

「甘いわぁ! リバースカードだ!『炸裂装甲』! 早々に消えるがいい!」

「甘いのはどっちだ!『アルカナ ナイトジョーカー』の効果発動!」

「何ぃ!?」

「お前のその、イカサマダイスを使わなきゃ効果が出せない似非と同じと思うなよ? 俺は手札から『次元幽閉』を墓地に送り、『炸裂装甲』の効果を無効化する!」

『喝ッ!!』

 『アルカナ ナイトジョーカー』はその体に纏わりつこうとする装甲を、一喝して掃った。そのまま『ジェノサイドキングデーモン』を真っ二つにした。

「さっきのお返しだ!」

「ぐおおおおおおおおっ!?」

 タイタンLP4000→2200

「よっしゃあ! やったぜセツ!」

 飛び上がって喜んでいる十代に笑みを向けてから、インチキデュエリストに宣言する。

「どうだ! これがトランプの騎士の力だ!」

 俺は燦然と剣を構える『アルカナ ナイトジョーカー』と共にインチキ闇のデュエリストを見据える。

「ぬうう小癪なぁ……」

「俺はターンエンドだ!」

「ドロー!」

 引いたカードを見たタイタンは不敵ににやりと笑みを浮かべた。……まさか! 俺は来て欲しくないカードを思い浮かべる。

「私は手札から『天使の施し』を発動! デッキからカードを三枚ドローし、二枚を捨てる……私は『暗黒魔族ギルファー・デーモン』二体を墓地に送る!『暗黒魔族ギルファー・デーモン』の効果発動!」

「ギルファー・デーモン!?」

「ギルファー・デーモンは墓地に送られたとき、攻撃力500ポイントダウンの装備カードとなり、フィールド上のモンスターに装備する! 私が選択するのは当然『アルカナ ナイトジョーカー』!」

「さっきみたく無効化しちまえセツ!」

「無理です! アルカナの効果は、手札に対応するカードがないと発動できません!」

 確かに、あのモンスター効果を無効化するには手札からモンスターを捨てればいい。だが、俺の手札は一枚。無効に出来ても一枚のみ。ならここは……。

「通す!」

『ぐぅ……』

 二体の悪魔の怨霊に取り憑かれ、苦しそうに身じろぎをするアルカナ。

『アルカナ ナイトジョーカー』ATK3800→3300→2800

「そして私は『デーモンの斧』を『デーモン・ソルジャー』に装備! バトルだぁ!」

『デーモン・ソルジャー』ATK1900→2900

「やばいぜ! 『デーモン・ソルジャー』の攻撃力がアルカナを上回っちまった!」

「セツ!」

「フハハハハハッ! 潰えろ『アルカナ ナイトジョーカー』!」

 『デーモン・ソルジャー』の掲げた大斧の刃がアルカナを両断する……

「と、思うよな?」

「ぬぅ!?」

 『アルカナ ナイトジョーカー』はその斧をしっかりとその手に持った剣で受け止めていた。その背に輝く翼をはためかせて。

「なんだ……どういうことだ!?」

「教えてやるよイカサマ野郎! 俺は手札から『オネスト』を発動させた!」

 俺の最後に残った手札。さっきの『強欲な壺』で引き当てたカード!

「『オネスト』は、自分の光属性モンスターの戦闘時に手札から墓地に送って発動する! 戦闘を行う光属性モンスターの攻撃力を、ターン終了時まで相手攻撃モンスターの攻撃力分アップさせる!」

『アルカナ ナイトジョーカー』ATK2800→5700

「攻撃力……5700だとぅ!?」

「返り討ちだ!『熾天使の剣』!」

 『アルカナ ナイトジョーカー』が暗黒魔族による戒めを打ち破り、『デーモン・ソルジャー』を光り輝く剣で両断した!

「バカなぁぁぁぁぁっ!?」

 タイタンLP2200→0

 

 

 

「セツ!」

「すっげーデュエルだったぜ!」

 やーやーどーもどーも。

「あ、危なかったぁ……」

「せ、セツ?」

「いや、最後にあいつが引いたカードが『堕落(フォーリン・ダウン)』だったら負けてた。しかも自分のアルカナに殺された」

「まあいいじゃねーか! 勝ったんだから!」

「そうだ、明日香は!?」

 人質にされていた明日香を見れば、ただ気絶しているだけのようで一安心。

「くぅ……まさかこの私が敗れるとは……」

 原作通りならデュエルに決着がつく前にこいつは逃げ出して、闇の力に呑まれるはずだった。俺はそれを知っていたから、インチキのカラクリを明かす前にこいつを負かした。これでこいつが闇に落ちることはないはずだ。

 原作通りには進まなくなるが、だからって見殺しにするわけにもいかない。

原作を知っているアドバンテージ?……そんなもんいらないさ。そんなのなくたってハッピーエンドを迎えて見せる。俺がいることで変わる未来も、みんなハッピーエンドに。それが、原作に思い切り介入しちまった俺の義務なんだ。きっと。

『主様? どうかなさいました?』

「……いや、なんでもないよ。ありがとな、クィーン」

『? いえ……』

 不思議そうな顔で首をかしげるクィーンを横目に、俺は改めて決意を固めるのだった。

 

 

 

「う……ん。ここ、は?」

「お、起きたか明日香!」

「十代……それに御堂君?」

「よう、起きたか偏屈お嬢」

 無事に廃寮を脱出し、女子寮へとアテナと明日香を送り届けるその道中。それまで眠っていた明日香が目を覚ました。ちなみに明日香は、十代が背負っている。

「私は……」

「心配すんな。全部が全部、万事解決だ。闇のデュエリスト語って荒稼ぎしてたアホはとっ捕まえたし、みんな無事だ。……どっかの考えなしのイノシシお嬢以外はな」

「……」

「ったく。ほれ」

「え?」

闇夜の中でも、暗い表情をしているのが理解できたので、ポケットにしまってあった吹雪さんの写真と『エトワール・サイバー』のカードを手渡してやる。

「それくらいしかなかったけどな」

「あなたたち……これだけのために……」

「その『だけ』のために一人で突っ込んで行ったイノシシはどこの誰だよ」

「それは……だって、私は身内の問題で……」

「同じことだろ」

「え?」

「お前は大切な身内のために勇気を出した。俺たちは大切な友達のために勇気を出した。そこに、違いなんてねえよ」

「……」

 固まってしまった。

「もしあの時、お前が本当に一人で、兄貴と一緒の行方不明にでもなってみろ。みんなで心配して探し回るぞ。アテナとか……ジュンコやももえあたりは落ち込むだろうな。もしかしたら泣いちまうかもしれねえ」

 アテナは優しい女の子だ。そんなこともあるだろう。

「いいか、俺たちはもう仲間で、友達。なんかあったら頼れ。十代たちは喜んで協力するだろうし、俺も、愚痴くらいは聞いてやる。意地っ張りはもう卒業するんだな」

「……」

「あと……そうだな」

 俺は言うべきかどうか迷ったが、考えた末に口を開いた。

「あんたの兄貴は帰ってくるよ。きっと、近いうちに」

「えっ……」

「だから、うん。……もう無茶すんな」

 結局、言いたかったのはそれだけだ。相変わらず俺は無駄に口数が多くて困る。もっと端的に、スパッと言えないもんかね?

「御堂君……」

「あーあとそれだ。仲間なんだから、他人行儀な呼び方してくれるな。セツでいい」

 つか、俺だけ名字呼びとか、めちゃくちゃさびしいんだからな!

「そうね。そうするわ。改めてよろしく、セツ」

 安心したように、十代の背中で寝息を立て始める明日香を見ながら、俺は自分の言ったことを思い出していた。

「大切な身内、か……」

 ずっと、考えないようにしていた。それは俺の弱さで、もしかしたら仕方のないことなのかも知れない。誰かに聞けば、無理もないと言ってくれることかもしれない。しかし、こうして大切な兄のために危険を顧みず旧校舎に侵入した明日香を見て、嫌が応にもそれを意識せずにはいられない。

「セツ?」

「なんでもない。気にすんな」

 アテナを見る。俺に好意を持ち、出会い頭に告白までしてくれた少女。惹かれている俺が居る。常識的に考えて、告白を受け入れない理由なんてない。保留だって、もういい加減無理があるだろう。だって、俺はアテナに惹かれてる。女子と付き合ったことのない童貞野郎に、これだけ慕われて、好きになるな、なんて方が無理だ。

「だけど……」

 アテナから目を逸らす。しかし、俺が本当に目を逸らしたい、目を背けてはいけない俺の、特別な事情。それが、今回の明日香の件で俺の中で浮き彫りになった。

「お前は今、何処にいる? お前は、俺を探しているのか?」

 それとも、もうこの世界に……。

「だとしたら……」

 探さなきゃいけない。最悪の事態(・・・・・)になってからじゃ遅いのだから。

 

 

 

 

 アテナたちを送り届け、レッド寮に戻った俺は、一人ベッドの上で天井を見上げ、懺悔する。そう、それは間違いなく懺悔だった。

「この世界に来て、喜んじまった俺が居る。逃げたかったのか? でも逃げちゃいけなかったはずだ。俺のために。何よりアイツのために」

 目を逸らしちゃいけなかったのに。この世界に来て、可愛い女の子に告白されて、浮かれていた。

「馬鹿だな。俺は。少し考えれば分かることだろう」

 アイツが、俺が傍にいなくなったアイツが、どんな行動に出るかなんて。

「そろそろ、馬鹿やってられる時間もお仕舞いか」

 起き上がり、外に出て海を眺める。そして、呟く。

「俺は、ここだ。ここにいる。だから……だから、早まるなよ……運命(さだめ)

 たった一人の、妹の名前を。

 

 

 

 

 

 




 こんにちは。
 さて、そろそろ第一期の山場を迎えようとしています。ラストの展開は、以前掲載していたものから大幅に変えました。前のだとここでは明日香のフラグっぽいものが立つだけでシリアスっぽくはなってなかったんですけどね。まあ以前の読者の皆様からすれば、ようやくその名前が出てきたか、というところでしょうが、あの子です。では皆様、次回は心の準備をした上でご鑑賞ください。
 それでは、悠でした!
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