アルカナ~切り札の騎士~   作:西本 悠

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第四期第二十五話「静寂の始まり・前編」

アルカナ~切り札の騎士~

第四期第二十五話「静寂の始まり・前編」

 

 

 

 

「さあ、アテナちゃん。アテナちゃんにこれから見せてあげるよ。レベルがカンストしたキャラの強さをね……!」

 ゴクリ、と息を呑むアテナちゃんを見て、わたしは少しだけ安堵の息を吐く。

(うん。上手く出来てる。ここまでは想定通り、だよ~)

 レベルモンスターは、効果は強力だけどその性質上強くなるまで時間がかかる。だから、強くなるまでの序盤は魔法・罠を惜しまず使う。レベルが上がるにつれて、場持ちも良くなるからそうなってからが勝負、だね。

 わたしはセツくんの教えを思い出す。セツくんはなんでも教えてくれたわけじゃない。むしろ、セツくんが教えてくれたのは基本的なルールや効果の使い方。それと、わたしが強くなるために必要な取っ掛かりだけ。

(でも、お陰でわたしは強くなれた)

 セツくんは、不思議なヒトだった。それは、初めて会った時から、同じ。わたしは、少しの間だけ目を閉じて、セツくんと初めて会った時のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 その日は、いつものように実戦形式のデュエルの授業があった。わたしの相手は、同学年のイエロー男子。

「加藤友紀です。よろしくね~」

「俺はイエローの隼(はやぶさ)鋼太(こうた)。よろしく」

 お互いに軽く挨拶をしてから、デュエルディスクを構える。

「「デュエル!」」

 ユーキLP4000

 鋼太LP4000

「先攻は、シニョ~ルユーキなノ~ネ」

 相変わらず特徴的なクロノス先生の言葉に従って、わたしはカードをドローする。

「わたしのターン、ドロー」

 え~と……。手札に『サイレント・ソードマンLV3』がいるね。この子は攻撃力も守備力も一緒だから~……。

「わたしは『サイレント・ソードマンLV3』を守備表示で召喚するよ~」

 『サイレント・ソードマンLV3』DEF1000

 守備で出しておいた方がいいよね?

「え~と……カードを一枚伏せて、ターンエンドするよ~」

 うん。ミラーフォースも伏せたし、次のターンでレベルアップ出来るよね~。

「俺のターン、ドロー! 俺は『メカファルコン』を攻撃表示で召喚だ!」

 『メカファルコン』ATK1400

「う……」

 『サイレント・ソードマンLV3』の守備力を上回っちゃってるよ~。けど、ミラーフォースもあるし……。

「速攻魔法『サイクロン』! 伏せカードを破壊だ!」

「ええっ!?」

 ミラーフォースが破壊されちゃった!?

「へへっ、ミラーフォースだったのか。良い勘してるぜ俺! よしっ!『メカファルコン』で『サイレント・ソードマンLV3』を攻撃だ!『ソニック・ダイブ』!」

「きゃっ!」

「よし、俺はカードを二枚セットして、ターンエンドだぜ!」

「わ、わたしのターン、ドロー!」

 うぅ……折角レベルアップ出来ると思ったのに~。

「わたしはモンスターをセット。カードを一枚セット!」

 と、とりあえず壁と『炸裂装甲』を伏せて……。

「えと、ターンエンドだよ」

「俺のターン、ドロー! 俺は『強化支援メカ・ヘビーウェポン』を召喚! 攻撃表示だ!」

 『強化支援メカ・ヘビーウェポン』ATK500

「更に、手札から魔法カード『機械複製術』を発動! デッキからヘビーウェポンを二体特殊召喚するぜ!」

 『強化支援メカ・ヘビーウェポン』ATK500×2

「うわわっ!?」

 モンスターが一気にならんじゃった……。

「そしてヘビーウェポンを『メカファルコン』にユニオンだ」

 『メカファルコン』ATK1400→1900

「バトルだぜ!『メカファルコン』で守備モンスターを攻撃!『ヘビー・ソニック・ダイブ』!」

「え、えっとトラップカード『炸裂装甲』!」

「無駄無駄。ヘビーウェポンがユニオンされている機械族モンスターは、ヘビーウェポンを身代わりにして破壊を免れる!」

 『メカファルコン』ATK1900→1400

 少しだけ攻撃力は下げられたけど……伏せてたのは『華麗なる潜入工作員』で、守備力は1200……全然届かないよ~!

「よっし! 続けて二体のヘビーウェポンでも攻撃だ!」

「きゃあっ!?」

 ユーキLP4000→3500→3000

「俺はメインフェイズ2にもう一体のヘビーウェポンを『メカファルコン』にユニオン! ターンエンドだ!」

 『メカファルコン』ATK1400→1900

「うぅ~……わたしのターン、ドロー」

 あ、このカードなら……。

「わたしは魔法カード『洗脳―ブレインコントロール』を発動するよ~!」

 ユーキLP3000→2200

 このカードなら、強くなった『メカファルコン』を奪い取れるよ~!

「残念! 永続罠発動!『レアメタル化・魔法反射装甲』を『メカファルコン』に装備させて、対象を取る魔法の効果を一度だけ無効にするぜ!」

 『メカファルコン』ATK1900→2400

「そ、そんなぁ~……」

 折角ライフまで払ったのに……。攻撃力を上げただけだよ~。

「うぅ……『シャインエンジェル』を守備表示で召喚してターンエンドだよ」

 『シャインエンジェル』DEF800

「よ~し絶好調! 俺のターン、ドロー! 俺は『メカファルコン』に装備魔法『7カード』を装備するぜ!」

 『メカファルコン』ATK2400→3100

「こ、攻撃力3100~!?」

 ど、どうしよう。そんな攻撃力、わたしのデッキじゃどうしようもないよ~!

「まだまだぁ! 手札から速攻魔法『リミッター解除』発動! このターンのエンドフェイズまで、俺の機械族モンスターの攻撃力は倍になるぜ!」

「ば、倍!?」

 『メカファルコン』ATK3100→6200

 『強化支援メカ・ヘビーウェポン』ATK500→1000

「ろ、ろくせんにひゃく……」

 え、えっと……詰んだ? う、ううんまだだよ!

「行くぜ! ヘビーウェポンで『シャインエンジェル』を攻撃!」

「しゃ、『シャインエンジェル』のモンスター効果発動! デッキから攻撃力1500以下の光属性モンスターを攻撃表示で召喚するよ~! わたしは『サイレント・ソードマンLV3』を特殊召喚!」

 『サイレント・ソードマンLV3』ATK1000

「へっ! そんな雑魚モンスター、俺のファルコンの敵じゃないぜ!『メカファルコン』で攻撃だ!」

 チャンス到来、だよ~!

「手札から『オネスト』を捨てて効果発動! 攻撃モンスターの攻撃力分『サイレント・ソードマンLV3』の攻撃力をアップさせるよ!」

「な、なに~!?」

 『サイレント・ソードマンLV3』ATK1000→7200

「迎え討って!『沈黙の剣LV3』!」

「ファルコーンッ!?」

 鋼太LP4000→3000

「くっ!? だが『メカファルコン』はヘビーウェポンを身代わりに破壊を免れるぜ! そしてメインフェイズ2に最後のヘビーウェポンを『メカファルコン』にユニオン!」

 『メカファルコン』ATK6200→5700→6200

「エンドフェイズ時に『リミッター解除』の効果を受けたモンスターは破壊されるが、ヘビーウェポンを装備した『メカファルコン』はヘビーウェポンを犠牲に破壊を免れるぜ!」

 『メカファルコン』ATK6200→3100→2600

「ターンエンドだ!」

「うぅ……わたしのターン、ドロー!」

 何とか凌いだけど、虎の子の『オネスト』まで使ったのに、結局『メカファルコン』を倒すことが出来なかった……でも!

「このスタンバイフェイズに『サイレント・ソードマンLV3』はレベルアップ! デッキから『サイレント・ソードマンLV5』を特殊召喚するよ!」

 『サイレント・ソードマンLV5』ATK2300

「そしてフィールド魔法『シャインスパーク』を発動するよ~。光属性モンスターの攻撃力を500ポイントアップ!」

 『サイレント・ソードマンLV5』ATK2300→2800

「うおっ!?」

「更に『ブレイドナイト』を召喚するよ~。手札がゼロだから、攻撃力は2000、更に500ポイントアップして2500だよ~」

 『ブレイドナイト』ATK1600→2000→2500

「反撃開始だよ~!『サイレント・ソードマンLV5』で『メカファルコン』を攻撃!『沈黙の剣LV5』!」

 これで倒せれば……。

「甘いぜ! トラップカード発動!『ゲットライド!』! 墓地から『強化支援メカ・ヘビーウェポン』を『メカファルコン』にユニオンさせるぜ!」

「えっ!?」

 『メカファルコン』ATK2600→3100

「迎撃だ!『ヘビーメタル・ソニック・ダイブ』!」

「きゃああああっ!?」

 ユーキLP2200→1900

「サイレント・ソードマンが……ターンエンド、だよ」

「俺のターン、ドロー! よし! 俺は二体目の『メカファルコン』を攻撃表示で召喚だぜ!」

 『メカファルコン』ATK1400

「これでトドメだ! 一体目の『メカファルコン』で『ブレイドナイト』に攻撃!『ヘビー・ソニック・ダイブ』!」

「きゃああああっ!?」

 ユーキLP1900→1300

「二体目の『メカファルコン』でダイレクトアタック!」

「ひゃああああっ!?」

 ユーキLP1300→0

「そこまで! シニョ~ルユーキの負けなノ~ネ」

「うぅ~……また負けちゃった」

 ガックリと肩を落としてデュエルリングを降りる。最近はいつもこうだった。

 フェイバリットカードの『サイレント・ソードマンLV5』を眺めて、少し涙目になる。わたしのお気に入りなんだけど、上手く扱えた試しがない。

「向いてないのかなぁ~……」

 中等部の頃から、勝率はあまり良いとは言えなかった。けど、高等部に上がってそれがますます顕著になってきた気がする。

「はぁ……」

 溜息を吐きつつ、机にカードを並べて考える。

「う~ん……」

「……お?」

「え?」

 わたしが『サイレント・ソードマンLV5』を手に唸っていると、後ろから興味深そうな声が聞こえてきた。

「それ、サイレント・ソードマンだよな」

「あ、うん……」

 レッドの制服を着た、親しみやすそうな顔をした男子生徒。わたしは、この人を知っていた。

「えっと……御堂くん?」

「あれ? 俺のこと知ってるの?」

「うん……入学試験、見てたから~」

 絵札の三銃士で、カッコ良くワンターンキルを決めていた御堂くんのことは、その時から知っていた。

 絵札の三銃士。わたしのサイレント・ソードマンと同じく、あのデュエルキング、武藤遊戯が使っていたモンスター。わたしがサイレント・ソードマンを全然上手く使えないのに対して、御堂くんは凄く上手に絵札の三銃士を操っていた。レッド寮所属なのが、今でも信じられない。

「ああ、あの時か……あの時は、手札が揃い過ぎてただけだよ。完全に運だ」

 そう言って謙遜する御堂くんだけど、わたしからすれば羨ましい。

「それでも凄いよ。わたし、全然ドロー運良くないから~」

「そうなのか? え~と、加藤さん、だったか?」

「うん。加藤友紀。よろしくね~。御堂くん」

「ああ。よろしく。あ、そうだ。出来れば、名前で呼んでくれないか? 妹がいるんで、昔から名前呼びの方がされ慣れてるんだ」

「えっ? う、うん。じゃあ、え~と……セツ、くん?」

 男の子を下の名前で呼んだことなんて、数えるくらいしかなかったから、思わず疑問形になる。

「ああ、それでいい。ありがとう」

 そう言ってセツくんは笑いかけてくれる。最初にも思ったけど、凄く親しみやすい、柔らかい笑顔だった。

「あ、それじゃあセツくんも、わたしのこと名前でいいよ」

「おっけ。ふむ……友紀、いや、ユーキちゃん、だな」

「ふえっ?」

 “ちゃん”という聞き慣れない敬称に、少しだけドキッとする。一方、セツくんはその呼び名が気に入ったのか、満面の笑みだ。

「ユーキちゃん……うん。なんかしっくりくるな。これでいいか?」

「え、えっと……うん」

 今更ダメとも言えないし、わたし自身別に嫌なわけじゃなかったから、少しためらった後頷く。

「それで……どうしたの~?」

「ん? ああ、さっきデュエルしてただろ? サイレント・ソードマン使いって初めて見たし、絵札の三銃士とも無関係じゃないしで、少し気になったんだ」

 無関係じゃない、というのは、多分デュエルキング・武藤遊戯のことだと思う。ていうか、さっきのデュエル見られてたんだ……。

「あはは……負けちゃって、恥ずかしいけど~」

「まあ、誰だって負けることくらいあるし、それくらい何でもないだろ」

 セツくんは、そう言って肩をすくめた。その後でブツブツと、「ヘビーウェポンの使い回しはいいとして……なんで『メカファルコン』にあそこまで拘ってたんだアイツ……」とか呟いていた。確かに……それはちょっと気になるけど~。

「うん……でも、負けるの、いつもだから~」

 負けることもある、じゃなくて、勝てることもある、と言う方が正しい。

「いつも?」

「うん。全然勝てないんだ。高等部に来てからは、まだ一度も」

「……そうなのか?」

 セツくんは意外そうな目でわたしを見る。それがなんとなく期待を裏切った気がして申し訳なくて、わたしは目を伏せる。

「そうなの。ごめんね?」

「や、謝られてもな。う~ん……そうだ!」

 セツくんが、何かを思いついたようにパチン、と指を鳴らす。

「ユーキちゃんさえ良ければ、俺にも手伝わせてくれないか?」

「え? 手伝うって……」

「デッキ構築。カードを並べて唸ってたってことは、今丁度調整中だったんだろ?」

「あ、うん。でも……いいの?」

 恐る恐る、と言う感じで聞き返すと、セツくんは苦笑する。

「俺が言いだしたことだぞ?」

「そうじゃなくて……天音さん」

 わたしの指摘に、セツくんはうっと息をつまらせた。

 天音アテナ。わたしたちの学年なら、知らない人は殆どいないと思う有名人。まだ13歳でありながら高等部に飛び級してくる程の実力と、アイドル顔負けの容姿やスタイル。人当たりも良いから、入学してすぐにアカデミアの人気者になっちゃった凄い娘。その天音さんが、セツくんに思いっきりアプローチをかけていることも、やっぱり有名。

「アテナは……まあいいだろ。別に疚しいことするわけじゃないし」

 それはそうだと思うけど、それでもきっと天音さんは嫉妬すると思う。

「じゃあ……お願いします」

 それなのに、そう言ってセツくんの言葉に甘えたわたしも、ちょっと不思議だった。普通なら、憎からず想っている女の子にアプローチをかけられていながら他の女の子に声をかけるなんてって思うはずなのに、セツくんにはそういうことを感じさせない不思議なオーラというか、魅力があった。

「おう。任せてくれ。きっと役に立てると思うから」

 笑顔で握手を求めるセツくんの手を、わたしは取った。

 

 

 

 ――その時が、全ての始まりだった。

 

 

 

 

 




さ「な~っにっかな~な~っにっかな?」
ル「今回は、これ」
『メカファルコン』
さ「だよね、そう来ると思った!」
ル「今回のフィニッシャー」
さ「そうだけどさ! 別にメカファルコンである意味はなかったような……」
ル「作者の好み。ビジュアルが」
さ「そこまで超カッコイイイラストだったっけ? まあいいや。攻撃力は1400。一般的なリクルータークラスだね。別に強くないけど、奈落の落とし穴とかに引っかからない中ではほぼ最高攻撃力だとは思うよ」
ル「あと、一応風属性機械族通常モンスターというのはパーソナリティ」
さ「逆に言えば合わせにくいってことなんだけど。唯一性があるから強いとは限らないよね。差別化の必要はなくてもそもそも強みもないから」


 メカファルコンはかつて王室前のガーディアンと共に悠のデッキのエースだったモンスター。尚、無駄にフルネームで出てきた隼鋼太くんですが、今後の登場予定はありません。
 それでは、悠でした!
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