例えばけものになろうとも   作:波津木 澄

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第1話 もう一人の子供

 ずっとずっと、隠れてきた。Monster(怪物)たちに見つかったら食べられるって言うのが家の教えだったから、ずっと見られないように過ごしてきた。

 けれどそれが間違いだったという事が目の前で証明された。

 なにせニンゲンが落ちてきて気絶しているところにMonster(怪物)が近づいて、そして介抱しているところを見たのだ。

 そのあとも様子を見たが、あの子が食事を得られていることは時々見かける顔からわかる。たぶん、隠れてロクに何も食えていないこっちと比べたら温かい食事なのだろう。あの子はいっつも笑っていられている。

 あの子を最初に見つけたMonster(怪物)ともずっと仲良くしているみたいで、二人で遊んでいるところを時々見かける……いや、見つけている。もうしばらくの間隠れていたが、同じニンゲンがああしてMonsterと仲良くしている以上、「もしかしたら」なんて思ってるんだ。

 だから話しかけられたらいいなと思うけれど、結局怖くて近づくことすらできていない。

 うすら寒い岩肌で目覚めて、今日もまたそうなるはずだった。

 

「―――?」

 

「っ!?」

 

 目が覚めると、目の前にあの子供の顔があった。驚きすぎて声を出すことも忘れ、ただ口を開いたり閉じたりしているだけになっていた。

 少しすると目の前の子を介抱していたMonsterも現れて、いよいよもって混乱の絶頂にいた。しかしそんなことお構いなしに目の前にいる二つの影は話をしている。

 

「ねぇChara、ひょっとしてこの子も落ちてきたニンゲンなのかな?」

 

「そうだな…見たところ私とそう変わらなさそうだ。…しかし、随分と体が細いな」

 

「ひょっとして地上であんまり物を食べられてない…とか?」

 

「………どうだろうな」

 

 どうにも本人の意思に全く関係なく話が進んでいる。しかし口を挟もうにも真剣な様子な上、このところ誰とも話していないからなんて言えばいいのかがわからない。

 しばらくの間……とはいっても2ヶ月ほどだとはおもうが、たったそれだけでも話すことをしなければニンゲンは簡単に言葉を忘れるらしい。

 いや、どうせこの()が低()なだけか。…口に出すのも嫌になるジョークだ。

 

「私はChara。こっちは――」

 

「僕はAsriel! よろしくね!」

 

「それで、君の名前は?」

 

「――………Ellie」

 

 なんとか言えた名前にMonsterの方の子供が"いい名前だね"と褒めてくれる。ニンゲンの方の子供はなんだか目が違う。

 

「Ellie、よければウチにおいでよ!」

 

「チョコレートはないけど……歓迎するよ」

 

 ………いい機会だ。これまでのように隠れるのではなく、しっかりと彼らのことを見るいい機会かもしれない。

 怖さは未だにある。だが、恐怖にうずくまるだけでは何もできやしない。

 そう思って、勇気で心を満たして歩く。………実際はそんな、大層なモノじゃないけれど。

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