俺は……誰だっけ?
「ぁ……っ」
目を開けると暗い場所であった。其処には人が二、三人ほど居た。少しづつ記憶を辿っていくと、誘拐されたと言う事に行き着いた。
―嗚呼、終わるんだな……―
短い人生だったなと振り返り、意識を閉ざした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
気が付くとベットに寝ていた。周りを見ると、点滴や生命維持装置が見えたので病院である事が分かった。しかし……俺、縮んでないか?
「……俺、死んだはずだよな。あの時、引かれて……」
そう、買い物帰りに車に引かれた。”精霊の力”が無い今、引かれて重傷を負った俺は確かに死んだはず。
「……もしかして。<
そう、唱えると俺の小さな手に短銃が握られた。天使が使える……どういう事だ?
「<
記憶を閲覧した。俺は織斑一夏という人物に成り代わったらしい。要するに、俺……五河士道ではなくなったと言う事だ。とりあえずは何となく置かれている状況が分かったので次は情報を集めることにする。
「<
今置かれている状況を理解した。此処はIS<インフィニット・ストラトス>という簡単に言ってしまえば兵器がある世界だ。しかし、欠点として女性にしか乗れない。そして、織斑一夏の姉、織斑千冬はモンデ・グロッソという大会で勝利を収めようとしたところを俺が誘拐されたと言う事で棄権したらしい。そして、一年間ドイツで教官をするとの事だ。ページをめくり情報を集めていると足音が聞こえてきたので<
「一夏!!目が覚めたか!!」
その後はよく覚えてない。怪我はほとんど治っていたので直ぐに退院できた。情報の通り俺の姉である織斑千冬はドイツに残る為俺だけ日本に帰されることになった。そうして、家に戻った。やはり、五河家と違うので部屋や冷蔵庫をしっかりと見ておかなければならないだろう。
「ん?これって……あの時の」
織斑一夏の部屋と思われし部屋に入ると机の上に皆と撮った集合写真。もちろん、まだ姿を隠している澪も居る写真だ。そして、勿忘草のキーホルダー、俺が使っていたスマホ、万由里のイヤリング、異質な筐があった。その筐を開けると俺の前……崇宮真士が澪にプレゼントしたイチローが入っていた。
「これって、あれだよな。大事にしてたものって事だよな」
俺が机に大事にしていたものが何故か此処にあった。一応、記憶を見る為に<
「…………俺ってバカだな。忘れてたなんて」
全て思い出した。何故忘れていたのだろう……あの時に見えていたのは”そういう事”だったのだろう。それを大事に机に仕舞い。写真は写真立てに入れた。裏には俺の字で「ずっと、一緒だ」と書いておいた。多分、これが俺が俺である為の自己暗示だ。
「よしっ、第二の人生頑張りますか!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
春が来た。出会った日、別れた日、再会した日。桜を見ると俺は何時も思い出してしまい泣き出してしまう。よく、姉の千冬には体調を気にされたものだ。一応、織斑一夏に成り代わっているため織斑一夏の様に振舞っている。しかし、鈍感にも程があったので俺はそこは直そうと思う。
「まあ、慣れてるしいいか……」
よく分からないうちに俺はIS学園に入学することになった。経緯を話そう。俺は藍越を受験しようとしたところ道に迷い、よく分からない部屋に入りそこでISを触った所ISに乗れてしまったと言う事である。はっきり言って、ISよりも天使を持っているので要らないと思っている。
「織斑君、自己紹介をお願いします」
「織斑一夏です。何の因果かわかりませんがこの学園に入学しました。趣味は……料理を作ることです。特技は、何でもできることですかね……とりあえず宜しくお願いします」
副担任の山田先生の話を聞きながら周りを見る……確か、織斑一夏の幼馴染の篠ノ之箒が居るはずだ。多分、あいつだろう。そう考えながら話を聞いていると担任が入って来たのだが、担任は織斑千冬であった。まあ、ブリュンヒルデと呼ばれている姉ならありえなくもないと思っている俺が居た。
「人気だな……」
黄色い声援が掛けられながらホームルームを終えた。そうすると、声を掛けられた。
「少し、いいか」
「じゃ、屋上に行こうぜ」
ひそひそと噂が聞こえるが気にしないように廊下へ出た。
「久しぶりだな……髪型も変えてないし直ぐに分かったよ」
「むぅ……」
「ああ、剣道全国大会優勝おめでとう。すごいな箒は」
「何故知っている?」
嫌でも携帯で調べられるし、<
「剣道は今でも、やっているのか?」
「今は、やって無いな。中学の時は練習してたけど……こっちに来るから勉強三昧だったからさ」
「そうか……なら今日、私と一戦しようではないか」
チャイムが鳴りそうだったので急いで教室へ戻る。はっきり言って篠ノ之箒は織斑一夏に恋している。フラクシナスの好感度メーターは振り切っているのではないか?と思うほどである。それを考えながら山田先生の授業を受ける……勉強した甲斐もあってか話していること全て理解できた。
「此処までで分からない人はいますか~?」
誰も手を上げなかったので授業はそれで終わった。終わったので形態を取り出し音楽を聴く……携帯には美玖の曲全てが落とされていたので非常に良い。落ち着くのに聞けるのは安心できる。
「ちょっとよろしくて?」
「何だ?イギリス代表候補生、セシリア・オルコットさん?」
<
「何ですの?私に対してその態度は不快ですわ」
チャイムが鳴ったので彼女は自分の席に帰ったがその後の授業が問題だった。クラス代表を決めると言う話なのだが。
「織斑君を推薦しますー!」
「私はオルコットさんを!」
こんな感じで推薦をした結果。彼女に火が付いた。
「納得できませんわ!!極東の猿如きがクラス代表などと……」
「はぁ……自分で言った事もう一回言ってみろ。今の発言は国際問題になるぞ」
冷静に言う俺は姉である千冬も納得していた。その場は決闘と言う形で終わった。その日は授業を受け、箒との約束である剣道をしに道場へ向かった。一応、真那にも教えてもらっているので恐らく大会の人と互角位だろう。しかし、天使の力を持っている俺は動体視力、反射神経、速さが桁違いに違うので直ぐに決着がつくだろう。
「良いぞ、箒」
「なら、始めるぞ」
「ふぅ……
雰囲気を十香に似せると簡単に相手は怯むのでそこから素早く頭に向かって竹刀を振る。一本で俺の勝ちだ。
「やるな……私よりも強くなっていて感心したぞ」
「今は、剣道ってよりも剣術って言った方が良いか。いろんな奴をかじって戦術を増やしてるんだ」
そうして道場を後にしながら戻るが……俺は何処で寝ればいいんだ?
「ちふ……じゃなかった、織斑先生。俺は何処で寝ればいいんですか?」
「そのことだが……自宅ではなく、寮に移ることになった。だから今から、荷物を取りに行くぞ」
で、家に戻って荷物を取りに来たわけだが……必要な物をキャリーケースに入れる。それにリュックを持てば完了だ。もちろん、あれも一緒に入っている。
「相変わらず荷物が多いな。それも持っていくのか?」
「一応な。趣味だし」
姉から写真は記憶を残すのに最適だと。中学の時コツコツとバイトし、最新型のカメラを買ったのだ。学園でも色々あるだろうからこれは必要だろうと思った。
「そういえばルームメイトって誰なんだ?」
「確か……篠ノ之だったはずだ」
「なら、安心だな。じゃ、戻ろうぜ」
そうして荷物を持ち部屋に着いたのだが……
「此処が1025号だよな。とりあえずノックを……」
コンコンと扉を叩くと扉が開いた。
「どうした、一夏?そんなに荷物を持って?」
「お前のルームメイト俺らしいから。とりあえず入っていいか?」
彼女は照れながらも部屋に入れてくれた。荷物をとりあえず置き、必要な物を上げておく。そろそろ遅い時間なのでシャワーに入ることにする。
「箒はシャワー浴びたのか?」
「もう、入ってあるから問題ない。後、シャンプーやらは使っていいぞ」
「あーい。ありがとう」
俺はシャワーに入った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何となくだがあいつが良からぬものを持ってきていないか調べたくなってきたので今シャワーに入っているうちに確認することにする。調べた所、キャリーケースやリュックには入っていなかった。とりあえずは安心だ。
「まあ、あの唐変木が持っているわけないか……む?」
ふと、机に上げられていた物に目を引かれた。其処には高そうな一眼レフのカメラ、そして写真、スマホと筐だった。
「写真?一夏は映っていないではないか。後ろに何か書いてある」
―ずっと、一緒だ―
「……どういう事だ?あいつはこんな男ではなかったはずだが」
そうしてスマホに手を伸ばし、電源を付ける。
「誘宵美九?……アイドルか?」
あいつがそんな趣味を持っていないことは知っているが。ますます不思議だ。そうして筐を開けた。
「ぬいぐるみ?ボロボロだな……キーホルダーと、女物のイヤリング?あいつは何でこんなものを持っているんだ?」
ますます不思議になっていく。あいつが何を考えているのか、そういえば雰囲気も変わったと言うか言葉遣いもぎこちないと言うか。
「変わったのだろう……きっとそうだ」
そう思い、それを元に戻した。
次回、彼は選択する。