バスに揺られ、数時間。俺達は臨海学校の為、IS学園を離れて海へと向かっていた。交友を深めるためにという理由だろうとは思うが、あまり行きたくはない。
「…………」
一番前の席で不機嫌そうに座っている俺を見ている俺の組は、今日は織斑君の機嫌悪いねーみたいな話をしている。聞こえてるぞー。
「一夏?どうして、そんなに機嫌悪いの?」
バスの隣の席に座っているシャルがそう言う……この席を勝ち取るために一悶着あったのだが、こうなった以上言うしかあるまい。
「海で、嫌な思い出が、ある。だから、あんまり……何て言うんだ、行きたいけど、行きたくないって言うか……」
楽しい思い出と、悲しい思い出。それが二つあるから気持ちの整理が出来ていない。今は、切り替えよう。
「そっか……あまり聞かない方が良いかな?」
「そうしてくれ……説明するのが難しいしな。俺も、切り替えていくから」
そうして、旅館の人達に挨拶を済ませて海へと向かうのだが……どうしようか。今回は、泳がないように上着でも持っていこうか……?
「……一夏?その、何だ。泳ぐ気があるのか?」
「……悩んだ結果、こうなった」
一応、上着を着てきてはいるが直ぐに脱げるようにしてあり、サングラスをかける俺はバカンスを楽しむ人といった印象だ。
「まあ、とりあえずこれでも飲んでくれ」
「何だ?これは?」
「俺の渾身の特製ジュース。研究していい感じのが出来たから飲んで欲しいなって」
フルーツを割合ごとに混ぜ合わせて考えたものなのだが、俺的にはもう少し甘くてもいいかもしれない。
「……このジュース、果物の良い所を引き出せて美味しいな。一つ言うとするなら、甘くしたらもっとよくなるだろうな」
「やっぱりか……スターフルーツでも入れてみるか?いや、違うのも……」
悩んでいる場合ではない。今日は臨海学校なので休息を取る為に来ているのだ。忘れよう。
「一夏ーー!!」
そう言って振り向こうとすると胸に飛び込んでくるのをうまくキャッチして肩車の姿勢に持っていく。案の定、鈴だった。
「いやー、やっぱり此処って絶景よね……」
「そうかい、それは良かった。ついでにこれでも飲むかい?」
「飲む飲む!!」
一応、たくさん持って来ておいて良かった。クーラーボックスさん、お仕事お疲れ様です。
「…………」
「一心不乱に飲んでるな……」
「はたから見ると親子だよね、それ」
そうして、次にシャルがやって来た……のは良いのだが、後ろに見慣れないミイラが居る。何だあれは?見た目的にラウラであるのは分かるのだが。
「なあ、そのミイラはどうしたんだ?大体分かるけどさ……」
「ほら、早く見せよう?」
グルグルと包帯を取ると其処には銀髪の顔があった。別に恥ずかしがらなくても良かったと思うが……
「普通に似合ってるじゃないか。恥ずかしがらなくても大丈夫だと思うぞ、ラウラ」
「そ、そうか……」
まだ恥ずかしがっているラウラを見た後、後ろに視線を送ると先生方が来るのが分かる。気にせず俺は荷物を置いて海に入った。
「……あの時よりは、冷たくは無いな」
”あの時”というのは、彼女が最後に消えていった時に消えたものを追いかけようとして海に入った事である。どれだけ恋愛に熱があったんだと今では反省物だが。
「なーに、突っ立ってんのよ。早く泳ぐわよ」
そうやって手を引っ張られて海の中に入っていった。しかし今思えば、海に入るのが怖かったのかもしれない。取り戻せない所に行って何が出来る?という本能的な勘が働いたのかもしれない。
「まあ、今は忘れよう……」
暫く、海を楽しんだ頃。次は訓練となっているので海から上がりスーツに着替えて岩礁の方へと向かった。
「いーっくんー!!」
「はいはい、何ですか束さん」
何となく察すことが出来たので対処は簡単だった。だが、その後ろの方に隠れている箒をどうしようかと考えながらだが。
「で、此処に来たって事は例のアレは出来てるんですか?」
「もちろんだよ!!天才の束さんに不可能は無いのだー!!」
俺達の話についていけていない専用機持ち。まあ、束さんが本当にしたいことは分かってるんだけど。
「束?なにをやっている?」
「ちーちゃーん!!」
あ、ヘッドロック決まったなぁ。と思いながら手を合わせて拝んでおく。
「痛い!!痛いよ!!」
そうして、お話が始まったのだが……やはり、束さんが来たのは箒に第四世代IS<
「ほい、終わり!!箒ちゃん、とりあえず動かしてみてね」
と言いながらミサイルを撃つが全て刀で切り伏せられる。流石、第四世代ISだ。そうして観察していると今度は俺の話に回って来た。
「いっくんに頼まれたものはこちらになりまーす!!」
そうしてリモコンを押したと思うと、そこに巨大なコンテナが現れる。それを開けると設計図で見たとおりのフラクシナスのパーツがあった。
「で、これを何処に着けるって言うのを聞きたいんだけど……」
「こいつは背中に付けるんですよ。束さんだったら分かるんじゃないですかね」
この主砲とビットはブースターにもなるようにしてあるので背中に着ければ巨大なロケットエンジンが付いたISになる。
「いつの間にこんなものを頼んでいたんだ?」
織斑先生がそんなことを聞いてくる。が、電話で頼んだとしか言いようがない。それだったらこいつの紹介でもしようか。
「箒を帰ってきたことだし、こいつの紹介でもしましょうかね。ラウラ?こっちに来てくれないか?」
「此処に居ればいいか?」
「じゃあ、其処を動くなよ?」
ISではなく、CRユニットを展開し
「ラウラ、動けるか?」
「……む。動けないぞ」
「これが、俺が開発した現実で魔法が使える
どー見ても、ISよりも使えるが俺の気持ち的に宇宙へ行けるISの方が優秀だと思う。CRユニットでも行けなくはないが安全性に問題があるのでそっちに軍配が上がる。
「へー……」
全員が説明を聞きながら頷く。一人、非常に考えているような人も居たが。
「まあ、こんな所だ。束さん、皆にもパッケージ作ってあげたらどうですか?」
「えー。めんどくさい」
「一週間、俺と一緒に居れる権利を上げましょう」
そう言うとやる気を出したのか快く受けてくれた。そうすると織斑先生から何やら非常事態だという話で旅館に戻ることになった。
「今から、1時間後。こちらの海域にアメリカとイスラエルの共同開発IS、シルバリオ・ゴスペル……通称、福音がこちらに向かっている。これを日本政府は停止させよと言う事だ。
「情報開示は監視が付くって事ですかね?」
「ああ、暫くは監視が付くと思え」
そうして、情報を見たのだが……広範囲攻撃、高機動。厄介かもしれない。
「そうか……それだったら、俺と箒が行くべきだな」
「やはり、か。今から準備に入れ!!」
準備に向かうため旅館を離れ、森へと向かう。其処には準備を終えた箒と束さんが居た。
「待ってたよ、いっくん。追加装備を付けようか」
そうしてISを展開し使い装備を付ける。ステータスに収束魔力砲と
「……じゃあ、俺は少し精神を集中させますかね」
少し離れた崖で海を眺めながら時間を潰した。時間がゆっくりと動いている気がする。かなり集中できただろう。
「さて、行くか」
「そうだな」
準備を済ませた俺と、箒。言葉は要らず。ISを展開し海域へと向かう。そうして向かっていると前方から風が吹いて来た。
「来たぞ、箒」
作戦は
「ああ」
無言で斬りにかかる。それを繰り返す。しかし、あまり手ごたえは無く逆に反撃を喰らいそうになりギリギリで避ける。
「ちっ……ん?船?」
見た所密漁船か何かだろう。戦闘をしながら逃がすことは出来ない……
「……!!箒ッ!!」
「な、何を……!?」
撃たれた。久しぶりに撃たれたな……体に穴がぽっかりだ。
「箒。後は……たの、ん……だ」
そうして意識を消した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目の前で撃たれた。私が思っていた、一夏が。最後に残した言葉を胸に一夏を抱きしめながら海域を離脱した。
「すまないっ!!……だから、目を覚ましてくれっ」
すぐさま一夏は手当てが行われた。意識不明の重体。確か、あの時は一夏が何かに気を取られて動きを見てなかったことで私に合わせることが出来なかったから身を挺して庇ったのだろう。なら、残された私が行こう。
「どこ、行くのよ。まあ、あんたの事だから大体分かってるけどね」
其処に居たのはあいつ等だった。
「皆、協力してくれ。一夏の託された言葉を実現するために」
そう言って、皆はISを展開しもう一度向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……ん……」
起きると其処は綺麗な空と水面だった。その遠くに知っている人影があった。
「よっ、俺が誰だか分かるか?」
「分かるよ、”織斑一夏”」
「だよなー。まあ、お礼を言わせてくれ。俺が気づけなかったことを気づかせてくれて」
彼は昔の自分と同じように恋愛に疎いので気持ちに気づくことが出来なかったのだ。それを気づかせてくれたと言う事と俺として生きてくれてありがとうと言う事だと思う。
「で、こんな話をするためにこっちに呼んだわけじゃないだろう?」
「そういう事。
その質問とは、何だろうか。
「お前は力を求めるか?五河士道」
「……その質問には聞き飽きたよ。力は求めるけど、必要以上に求めない。力を求めすぎて死んでいった奴をよく知ってるからな」
「やっぱりな。お前なら安心して任せられる…最後に、もう悩まなくていい。士道が士道であれるように振舞えばいい。俺はもう満足したよ」
その言葉を聞いて笑ってしまった。
「……っふ。そうか、ならそうさせてもらうよ」
そうやって降りてきた光に手を伸ばした。
「ん。これでよかったんだよな?白式?」
「うん。これで良いの。彼が彼である為に必要な事だから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……ぁ?……現実か?」
状況を知る為に本を出す。それを見るととりあえず動かないと思い医療器具を外す。
「じゃあ、行こうか……
黒い桜吹雪と共に空に舞い上がり彼女たちの方へと向かう。早くなっているのは
「……
新しくなった二本の刀を持ちながら斬りかかった。
「悪い、待たせたな」
「一夏!!」
「随分ボロボロだな……大丈夫だ。直ぐに終わらせる」
織斑一夏でなくていい。そう言われたんだ。だから、もう手加減はしない。
「1分で終わらせるッ」
刀を斬りつけた後、天使を顕現させて無理やり隙を作る。
「
海岸に向かって思いっきり押し付けた。これで、終わっただろう。
「……?髪が少し伸びたか?」
なんか、青いような。あれかな、やらかしたか?
「一夏?大丈夫か?」
「髪が変わった位か。ん、大丈夫だ」
その後は先生方に任せた。髪についてはISの影響だと言っておいた。推論だが、ISが進化したことでなった……と言う訳ではなく織斑一夏として振舞わなくてよくなったという考えから出てきた可能性があるだろう。
「まあ、いいか」
護りたいものを護る。織斑一夏が信念としていたそれを達成することが出来ている。それがこのまま続けばいいとそう、思った。
彼は、受け入れた。此処から彼の物語は動き出す。