ドットール王国との海戦はあれから1週間が経っていた。ヒュルム公国の民達はドットール王国との戦争に勝った事で狂喜乱舞していた。一方戦争で負けたドットール王国は国民から信頼を失い、国王は国を追放され、上の人間達も国民達の手によって処刑された。そして国民達の手によって新しい王政が誕生し、ヒュルム公国との戦争賠償の話し合いが行われている。戦勝国となったヒュルム公国はこれ以上ドットール王国が力を付けないように色々な取り決めをしていた。主な内容はこうだ。
○ドットール王国海軍と陸軍の監視はヒュルム公国が行うものとする。
○兵器の大量生産等をする場合は公国の許可を得なくてはならない。
○徴兵制を撤廃し、兵の数を今までの3/1に減らす事。
これらが主な内容である。ヒュルム公国はドットール王国との戦争を避けるために軍縮の取り決めをした。不平等な取り決めではあるが、この世界で戦争が起こった場合、戦勝国は敗戦国に対して不平等条約を結び付ける事が出来る。つまりこの世界では不平等条約は当たり前の様に結び付けられるのだ。前置きが長くなってしまったが、話に戻ろう。
「やっと戦いが終わったのか...。」
港には沢山のカモメが飛んでいた。海の潮風がミズーリの船体に当たっている。
「ミズーリさーん‼︎」
するとメナードがやって来た。手には何かの紙を持っている。
「どうしたんですか?メナードさん。」
「実は国の上層部がミズーリさんに対する今後の対応についての方針が決まったんです。私が持っているこの紙が上層部の方針です。」
ミズーリは黙っていた。ドットール王国との戦争は終結した。これ以上戦う必要は無いし、何よりミズーリはそろそろ元の世界に戻る方法を探したいのである。
「今から読みますね。」
メナードが言った上層部の方針は、
○ミズーリは我が公国の艦ではなく軍事支援の為の艦なので、公国海軍の戦力には入れない。
○ミズーリの自由航海を認める事とする。
つまり上層部はミズーリをこの世界の海を自由に航海出来る方針を決定したのだ。ミズーリは強引に仲間に入れられるかと不安だったが、まともな方針で安堵した。
「良かった〜。これで元の世界に戻る方法を探す事が出来るぜ。」
しかし、メナードの顔は少し悲しい表情をしていた。
「ミズーリさんと別れてしまうんですね...。」
小さな声で言っていたがミズーリは聞こえていた。
「メナードさん大丈夫です。私は暫くしたら此処を出発しますが、いつか戻って来ます。なので、それまで待っていて下さい。」
メナードの目には涙が出ていた。そして大粒の涙を地面にポタッと落として静かに泣いていた。
〜30分後〜
港にはヒュルム公国海軍の兵士全員が港に集まり、一部のヒュルム公国の国民達もミズーリの見送りに来ていた。
「もう行ってしまうのだな...。」
ルーメン司令官は涙を目に溜めていた。他の兵士達は大きな声で泣いていた。
「ミズーリーー‼︎あんたと過ごした時間は本当に楽しかったぜー‼︎」
「ミズーリと関わっていったお陰で俺は自信を持つ事が出来たんだー‼︎本当にありがとうーー‼︎」
兵士達はミズーリに感謝を述べた。ヒュルム公国の国民達もミズーリに俺をしていた。
「絶対にいつか戻って来いよーー!!!!10年でも20でも俺達はミズーリの帰りを待っているぞーー!!!!」
ミズーリはこの国に来たばかりの頃を思い出した。最初は人々に警戒されていたが、触れ合っていく事で人との友情を育む大切さを学んだのである。
「みんな、ありがとう...!!!!」
ミズーリも若干涙声になっていたが気持ちを切り替えて港を出発した。
「ありがとう‼︎ミズーリ‼︎」
兵士と国民達はミズーリが見えなくなるまで手を振っていた。
.......
〜世界首都ダイバン〜
この世界首都ダイバンとは国の首都とは違い、その名の通り「世界の首都」である。国の首都と何が違うのかと言うと、1番の違いはこの首都には国が無い。例えばロンドンはイギリスだが、ダイバンは国が無い為ドットール王国やヒュルム公国みたいな国は存在しない。何故国が存在しないのかと言うと、ある人物が「世界首都はこの世界の全ての種族の物。国の為にある首都では無い。」と言って作られた首都で、言葉の通り、何処の国にも属さない変わった首都なのである。そしてこの首都には「世界の会議場」と言う、いわば国際連合の様な機関がある。此処では毎年4回各国の代表使節が集まって議論している。今年で2回目となった世界の会議ではある議論がなされていた。ミズーリの事である。
「これより今から『世界の会議』を始める。今回の議題は突如現れた巨大船の事だ。各国の代表使節団は巨大船に関する情報をできる限り言ってもらいたい。」
ストン帝国の使節兼議長のフュンマーが話を振った。そしてある一国の代表使節団の1人が手を挙げた。ヴェント皇国の外交官のサーンである。フュンマーはサーンを指名した。
「まず皆んなに巨大船の魔写を見てもらいたい。」
魔写とは、我々の生活で言う所の写真と同じである。サーンは机の上に置かれた魔写を各国の代表使節団に見せた。
「これはドットール王国に駐在している大使がドットール王国から仕入れた魔写だ。」
魔写にはミズーリの姿がドンっと写っていた。各国の代表使節団は写真からでも分かるその大きさに圧巻されていた。
「この巨大船の名前はミズーリと言って、全長は約270mもあり、最大幅は33mあるとても大きい船だ。」
各国の代表使節団は黙って話を聞く。
「主砲もこの世界にあるどの大砲よりも遥かに大きく、威力も大きいらしい。しかも最大で30kt以上出るその機動力の高さも侮れない。」
こんな化け物にどうやって対抗すれば良いのかと各国の代表使節団は顔を青ざめさせながら聞いていた。
「そこで私が考えた案がある。それはこの世界の癌であり、最強最悪であるピリアス大帝国に対抗するために我々の陣営に引きずり込む案である。」
どうやって引きずり込むのかと、思いながら代表使節団は話しを聞いていた。
「どうやって引き込むかは、ざっくりとなるが、ミズーリには最大限の配慮をする必要がある。つまり、ミズーリとの話し合いで向こうから何か条件を出して来たら我々はその条件に譲歩するのだ。」
この案に対して賛否両論の意見が飛び交った。
「何だと⁉︎我らの様な列強国がたかが艦に譲歩するだと⁉︎そんな案は到底受け入れる事は出来ない‼︎」
「いや、最近のピリアス大帝国は少々やり過ぎだ。周辺国とのいざこざも絶えないし、いつ世界戦争になってもおかしくない。私はこの案が良いと思う。」
すると議長のフュンマーが大声で言った。
「静粛に‼︎」
代表使節団はシンっと静まった。
「今回の議題は一旦保留とし、サーンの案は我々の方で話し合い、決まったら随時連絡する事にする。これにて世界の会議を終わる。」
こうして2回目の世界の会議は終わった。ミズーリはこれから波乱に巻き込まれる事を知る由も無かった。
今回でヒュルム公国VSドットール王国は完結となります。次回からは新しい章となりますので、投稿まで待っていて下さい‼︎