ミズーリとヒュルム公国の同盟が結ばれてから一週間が経った。ミズーリはこの1週間で港の民衆や、ヒュルム公国第三艦隊の兵士達と仲良くなっていた。
「みんなと直ぐに打ち解けるなんてな...。やっぱミズーリさんはスゴイなぁ。」
メナードは遠くからミズーリと民衆達を眺めていた。こんな何気ない平和が永遠に続けば良いと思っていた。そんな矢先、1人の兵士がメナードの元に駆け寄った。
「メナード少佐‼︎此処にいらっしゃいましたか‼︎大至急ヒュルム公国第三艦隊基地にお越し下さい‼︎ルーメン司令官がお呼びです‼︎」
「ルーメン司令官が?一体何の様で私を呼んだのだ?」
「私も分かりませんですが至急呼んでこいという命令なのでよほど重大な事でしょう。」
「分かった、直ぐに行く。」
積まれていたレンガから立ち上がりメナードは第三艦隊基地に向かった。
.............
コンコン
「ヒュルム公国第三艦隊所属メナード、入ります‼︎」
「入れ。」
司令室の扉を開けてメナードは入室した。
「ルーメン司令官。大至急来いと言う事でしたが、一体何があったのですか?」
「実はドットール王国の戦列艦隊が先程、この港に向かって侵攻して来ている情報が入って来たのだ。しかも我が艦隊の3倍の戦力でな。」
「⁉︎」
ヒュルム公国の戦列艦隊が3倍の戦力でこっちに向かって来ている事に
メナードは開いた口が塞がらなかった。
「そして上層部の方ではこれを迎え討つため、戦艦ミズーリの投入を決定した。」
「そうですか...。やはりこの戦力差だとミズーリを前線に配備しないといけないのですね...。」
メナードの屈辱的な表情を見たルーメン司令官は優しく話し掛けた。
「本当にすまない、メナード。我々だけでは上の意見を覆す事は出来ない。そして何より今、我が公国は滅亡の危機に直面している。今この場を切り抜けないと我々に明るい未来は待っていない。やらなければやられてしまうのだ。」
メナードの頭の中では分かっていてもミズーリとの会話はとても楽しく、もし戦争でミズーリが沈んでしまったらと思うと、どうしても上層部の意見を受け入れる事が出来なかった。だけどメナードはそれを何とか押し殺し、冷静さを取り戻した。
「分かりました。その話をミズーリにしてきます。」
「頼んだ。作戦説明については30分後に話すから直ぐに行ってこい。」
「分かりました。」
「それと説明する場所だが、軍港に集合だ。其処にミズーリを誘導しろ。ミズーリにも作戦説明を聞いてもらうからな。」
「はい。」
そうしてメナードは部屋を退室してミズーリの元へと走って行った。
.............
「なぁなぁ、その砲ってどのくらいスゲェんだ?」
1人の若手の兵士がミズーリの主砲に興味を示した。
「あ、それ俺も気になったわ。」
「俺も。」
(主砲か。まぁ性能くらいなら話しても良いか。)
この世界の砲の開発がどれくらい進んでいるのか分からないが、ミズーリは隠す事は無いかと考え事細かに教えた。
「俺が積んでるこの主砲は50口径40.6cmという大きさを誇っているんだ。射程は大体40kmくらいだっけか?」
兵士達は驚いた。砲の数だけ見れば圧倒的に自分達の戦列艦の方が多い。しかし、性能を聞くと正面からやり合っても主砲の長射程と威力にはどうしても勝てないと思った。第三艦隊に所属する兵士達はミズーリが味方である事に心の底から感謝した。
「おーい、ミズーリさーん‼︎」
東の道からメナードが大きな声を発しながら走って来た。
「メナード少佐だ‼︎全員敬礼‼︎」
ミズーリに集まっていた兵士達はメナードに敬礼した。
「丁度良いな、お前達にも私から重要な話しがある。」
「我々にもですか?」
「そうだ。そしてミズーリさん、貴方もこの重要な話しを聞いてもらいたい。」
「俺にも関わっているのですか?」
「はい。お前達も良く聞け、実は先程ルーメン司令官からドットール王国の戦列艦隊が我が公国のこの軍港に侵攻して来ていると言う情報を聞いた。しかも、我が艦隊の3倍以上の差でな。」
その言葉を聞いた兵士達は青ざめた。当然の反応かと、メナードは部下達の顔を真顔で見ていた。
「これより30分後に作戦説明を行うのでお前達は早急に準備し、第三艦隊基地に来い。そしてミズーリさん。貴方は此処から東の軍港に行って下さい。そうすれば我が第三艦隊の基地が見えると思います。」
「俺も作戦説明を聞かないといけないのですか。」
「すいません、話が速くて助かります。」
ミズーリはエンジンを入れ、東の軍港に向かって行った。
「やっぱスゲェなミズーリ。あんな大きな船体にも関わらず、高速で動けるなんて。」
ミズーリの速さに兵士達は目を丸くしながらじっと見ていた。
「おい、お前達も速く集合だ。」
「「了解‼︎」」
第三艦隊基地に兵士達は急ぎ足で向かうのであった。
〜30分後〜
兵士達は全員第三艦隊基地に集合していた。
「皆、良く来てくれた。」
其処に現れたのはルーメン司令官だった。彼は右手に持っている指し棒を使って説明を始めた。
「メナード少佐から聞いていると思うが先程ドットール王国の第一、第二の連合艦隊で我が公国に侵攻して来ているという情報が入ってきた。奴らは我ら第三艦隊の20隻に対し、向こうは60隻の大艦隊で来ている。残っている我ら公国海軍の艦隊はこの第三艦隊だけだ。」
実はヒュルム王国海軍の艦隊は第一艦隊から第五艦隊まで存在していたが、ドットール王国の連合艦隊にことごとく壊滅させられていた。残ったのはこのルーメン司令官が率いるヒュルム公国海軍第三艦隊だけだった。ちなみに何故第三艦隊だけが残っていたのかと言うと、公国の上層部が予備役艦隊として残していた為、ドットール王国とは戦っていなかったのである。
「そろそろ本題に入ろう。恐らく奴らは我ら第三艦隊を撃滅して上陸作戦を仕掛けて来ると思われる。其処でミズーリ、お前の出番だ。」
「陽動作戦の為に囮になれと言うんですね?分かりました。その任務引き受けましょう。」
ミズーリはルーメン司令の言いたい事を察した。沢山の戦争を経験してきたミズーリは自然と勘が鋭いのだ。
「話しが早くて助かる。」
そう言うとルーメン司令官はメナードの顔をチラッと見た。メナードの顔は至って真面目だった。
「そしてミズーリがドットール王国の連合艦隊を引きつけ、我ら第三艦隊がこれを包囲し撃滅するのだ。」
「司令官1つ質問宜しいでしょうか?」
ミズーリはルーメン司令官に質問した。
「何だ?」
「私は敵の連合艦隊を引きつける囮ですが、砲撃もして良いのですよね?」
「あぁ。寧ろそっちの方が有難い。兵士の負担も減るからな。他に質問のある者はいるか?」
特に手を挙げる者は居なかった。ルーメン司令官は暫く黙って口を開いた。
「この戦いはもしかしたら多数の損害が出るかもしれないが、それでも諸君らにはこの公国の為に命を懸けて戦って欲しい。私から言う事は何もない。各員、健闘を祈る‼︎」
兵士達はルーメン司令官に敬礼し、
「「我が公国の未来の為に‼︎」」
と言い、すぐさま出港の準備を整え始めた。
「ミズーリ、頼んだぞ!」
ルーメン司令官はミズーリに期待していた。この艦が公国の希望だと。
「分かりました。」
ミズーリはエンジンを始動し、ヒュルム王国海軍第三艦隊と共に出港した。
こうして、歴史上最大の海戦。ミラール沖大海戦が始まろうとしていた。
戦闘シーン頑張って書きます‼︎