ウマ娘プリティーダービー2030 作:とあるトレーナー
選抜レース①
【選抜レース】
デビュー前のウマ娘達が学園所属のトレーナーに自身の能力をアピールする場所であり、トレーナーがウマ娘の資質を見定める場所でもある。
そんな選抜レースが開催される当日、会場に向けて移動していると――――
「どいてどいてー!」
後方から聞こえてくる声に視線を向けると一人のウマ娘が爆走していた。
「こらこら、君、ちょっと止まりなさい」
そんな爆走するウマ娘にトレーナー資格を持つ者として慌てた様子の彼女を呼び止める。
「そのバッチ、トレーナーだよね。ジェットはね、今日の選抜レースで走るのに寝坊したから急いでるの、話は後でいい?」
呼びかけに答えてそわそわしながらも一時停止する彼女――ジェットの言葉を聞いて、時計に視線を落とす。
選抜レースの場所取り準備もある為、時間に余裕を持って家を出てきた筈だが……
「って、そうじゃなくて、いくら急いでるからって走るならちゃんとウマ娘専用レーンを走りなさい。人とぶつかったら危ないだろう」
本気で走るウマ娘と人間がぶつかったら、お互いに無事では済まない。ウマ娘と人間を繋ぐトレーナーとして事故の可能性があるなら注意するべきだ。
「うぅ、ごめんなさい、トレーナー。でも、遅刻しちゃうからジェットはこれで……」
しょんぼりと耳と尻尾を下げてウマ娘専用レーンに移動するジェットは自身の腕時計に視線を落とすと再び走り出そうとする。
「ん? その時計、時間がずいぶん早くないか?」
ちらりと見えた腕時計の時間が本来の時間よりもだいぶ早い時間を示していた事に気付いて、ふと声を漏らす。
「え、そんな筈は――――」
その指摘に首を傾げ、腕時計に視線をやるジェットはガビーンとした効果音を立てながら何かを思い出した様子で弱弱しくよろめく。
「だ、大丈夫か?」
「ね、寝坊しないように時計の時間を早くしたんだった……」
よろめくジェットに声を掛けると思い出した様子で呟く。
「まあ、そうだろうな」
自分の時計とジェットの腕時計では一時間ほどの違いがあり、確かに腕時計の時間を信じるなら出走グループにもよるが遅刻する可能性はある。まあ、ジェットが事前準備を怠らない程度には真面目で同時にそれを忘れるほどおっちょこちょいなのはなんとなく理解した。
「うぅ、慌てて損したよ。どうりで他の子たちがのんびりしてるわけだ」
恥ずかしそうに頬を赤らめてはにかむジェットは少し着崩れしていた制服を正すとこちらへ向き直る。
「ジェットの名前はダブルジェット。今日の選抜レースで一番になるから応援よろしくね、トレーナー!」
「あぁ、君の走りを見させてもらうよ」
自分の資質と積み重ねてきた努力を信じている澄んだ表情を浮かべるジェットの言葉に笑いながら頷いた。
ダブルジェットの継承ウマ娘は秘密です。