転生モブ隊士な姉と救いたい双子な姉弟の格闘   作:香月陽子

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拾われた日

目の前の老人は赤子を二人、抱いていた。

 

頭が混乱して何がなんだか分からない。

この人は誰?ここは何処?なぜ、弟達を抱いている?

 

 

「まぁ、落ちついけい。」

 

 

揺ったりとした声が耳に響く。そうだ、確か、鬼に襲われて....

 

 

「覚えておるかの?お主、名は?」

 

「あ...は、はい。れんか...蓮華です。」

声に反応するように答える。

 

「そうか....。この子らは?」

抱いていた赤子をずいっと前に出す。

 

「えっと、金色の目をした子が、弟の雷樹って言って、もう一人の寝ている子が、妹の愛花です。双子です。」

 

ハキハキと二人について答える事ができた。

 

 

「雷樹と愛花と蓮華だな。なぜにここの山にいた?」

 

ここの山、と言うことはあまり移動していないのだろう。老人は雷樹と愛花を布の上に置く。

 

「え、えっと、人浚いに終われて逃げてたら、山に入って、あの鬼に襲われて....」

しどろもどろになりながら答える。そして鬼に襲われたときを思いだしていしまい、手が震える。ただただ、怖かった。食われるんじゃないかと。二人を守れないんじゃないかと。

 

「わかった。大丈夫だ。もう、鬼はいない。」

手を握られる。暖かい手だった。その答えを聞いて安堵する。もう、大丈夫だ。

 

気が緩んだのか、今まで気付かなかった痛みが広がる。

「づぅっ!?」

 

「むっ!しっかり休めっ!」

握っていた手を放し、私の身体を支えると布団に寝かせる。その布団はふかふかしていて暖かかった。

 

頭を撫でられる。ごつごつしているが、優しかった。

 

「んん......」

まぶたが落ちていく。眠くて眠くて仕方がない。まだ、聞きたいことがあるはずなのに。この人の名前を聞いてないのに。声を出す力もなく、辺りが真っ暗になった。

 

************

 

 

「すぅ.....、すぅ.....、」

 

呼吸の音が聞こえる。頭を撫でられたような気がした。

 

 

暗い視界の中で蓮華はこれまでの事を思い出していた。

 

 

 

 

 

蓮華はいわゆる前世というものがあった。人が聞けば「何をバカな事を」と言うかもしれない。けれど蓮華にとってはどちらもどちらなのだ。名前は覚えておらず、ところどころおぼろげだが大事な記憶だ。

 

大切にされ、愛され、便利な機械があり、すぐに回りに助けを求められる世界だ。

 

そんな世界で生きていた記憶をもって産まれてきたせいか、甘かった。だからすぐに絶望した。

 

毎日生きるのにも精一杯で、食事を手にするのも大変だった。

 

 

 

そんな中双子を見つけた。何度も見て見ぬふりをしようとしたが、甘い性格でやはり見捨てられなかった。

 

何度も捨てようとするも、そのたびに二人が手を伸ばす。「行かないで」と言うように。

 

その日からはじめての連続だった。前世でも、今世でも子供がいたことはない。疲れるが、それでも、二人の笑顔を見るたびに頑張って良かったと思えた。

 

 

ふんわりといい匂いがする。食欲をそそるいい匂いだ。

 

 

「起きたかの?」

 

うっすらと目を開けると、優しげな笑顔をするあの老人がいた。その笑顔を見る安堵し、無性に泣きたくなった。

 

「よく頑張ったの。飯は食えるか?今日はゆっくり休みんさい。」

 

そう言うと私の頭を撫でた。頭を撫でられ、ただただ泣くことしかできなかった。

 

「ううぅうぅぅ....っ!!」

 

 

泣く私に文句も言わず、ただただ優しく抱き締めた。

 

この日の事を私は忘れることはないだろう。

 

老人の名は、山本 蔵斎(そうさい)というらしい。

 

 

 

 

 

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