第一話 理想郷を求める旅は終わらない
20XX年 *月*日 某所
……あぁ、私は負けたのか。私の人生を……生きる価値を……私の全てを賭けた狂った博打はこんな所で終わってしまうのか……
「あなたの狂気にさようなら」
あと……あと少しだったのにな……
私の頭が銃弾に撃ち抜かれる。
そして、私の生きた証も功績も……魂も"無"に帰するはずだった。
そう、神の悪戯さえ、無ければ。
……まだ我々は世界を理解しては……。
新暦1096年6月6日 神聖ヴィクトリア帝國帝都 自室
この世界の私、アレクシアにかつての自分の自我が目覚めたのははたしていつだっただろうか?
確か10年くらい前だった気がする。あまり良く覚えていない。
気づいたら私の魂はよくゲームや小説にありそうな中世ヨーロッパ風の魔法と剣が主流の世界に生きる少女に転生ていたのである。
かつて、前世のローマ帝国の如き繁栄を誇ったその世界のとある大陸の大国、ヴィクトリア帝國。その帝國の第三皇女というのが今の私の立場だ。
「アレクシア様、お入りしてもよろしいでしょうか?」
私の元で働いているメイドの一人が自室のドアをノックをして入室許可を求めてくる……
「構わない。入れ」
私がそういうとメイド服を着た白髪の少女が入って来た。彼女の名はベルタ。中級貴族カイン家の次女だ。
「……失礼します。頼まれていた資料を……」
「……あぁ。あれね。届けてくれてありがとう」
「あと、第二次親衛隊拡張計画案についてなのですが、皇帝陛下が拡張を許可しました。……数を少し減らされましたが」
……やっぱりそう上手くはいかないか。まぁダメ元で頼んでるから数が減らされたくらいなら問題無いけど。
「何人減らされた?」
「親衛隊員5人の増員をアレクシア様は御要求なされましたが認められたのは3人でした」
「ま、3人増えただけ儲けものだよ。所詮私は第三皇女なんだから」
これでやっと私直轄の親衛隊も13人か。少ないように見えるかい? ところがこれでもかなり増えた方なんだよ。最初は5人だったからね。いくらスペアのスペアとはいえ扱いが些か雑な気がするが……ヴィクトリア帝國の現状を見ると妥当なのかもしれない。対外関係の悪化に国内分裂の危機、伝染病の蔓延そしてさらには経済危機。かつてこの大陸全土を手中に収めたヴィクトリア帝國の栄光は見る影も無い。そんな中で第三皇女に充てる戦力なんて制限されるのが当然だろう。
「……そう、ですか」
メイドは悔しそうな顔をしている。別に君のせいじゃないだろうに。忠誠心ってやつだろうか?……やはり、前世と変わらず私に清い心とやらは分からないな。……結局、やろうとしてることも変わらないし……ね。
「今は耐えよう。私たちに必要なのは耐えることだ。耐えて、耐えて、耐え続けたその先に……きっと私たちの目指すかつての如く栄光ある帝國があるから」
「……では、私はこれで失礼します。未来のアレクシア"皇帝陛下"に栄光を!」
彼女は去って行った。
「やれやれ……誰かに聞かれてたら極刑ものだよ」