新暦1096年6月16日
「アレクシア様、到着しました」
とベルタの声が聞こえたので、私は馬車から降りる……優雅に見えるように。前世は一般人だったもんでこの……なんというか貴族らしく振る舞うっていうのが難しい。
なんとか教育係の人から教えてもらったが……外からどう見えてるか心配で仕方ない。まぁよく見えてると信じていきましょうか。
「ねぇベルタ、馬車の乗り心地、どうにかならないかしら」
「そこは我慢してもらうしか……」
「やっぱそうなるか……」
馬車乗るとほんとにお尻あたりが痛くなる……前世の車が恋しい。
「にしてもやっぱり大きいね」
そう、今日私が帝都から出てきたのはパーティに参加するためである。ちなみにパーティの主催者はビクトリア帝國で最も有力な貴族であるカール卿だ。
そんな貴族が主催したパーティなので、お姉様方である第一皇女と第二皇女も参加する。
ちなみに皇子はどこに行ったんだよっていうと現皇帝と正妻の間に男子が生まれなかったためいない。まぁ正妻以外の側室との間になら男子はいるが……お姉様方は普通に上に立つ者としての才能があるし、正妻との間に出来た子なので皇位継承権が最も高い。
「招待状をお見せください」
屋敷に入る前に門の前に立っていた若い男性の人に止められる。恐らく警備の人だろう。前はこんなの無かった気がするんだけど……何かあったのかな?
とりあえず私は彼の指示に従い彼に招待状を手渡す。
「……アレクシア様にベルタ様、本物ですね。お手数掛けて申し訳ありません、アレクシア様、ベルタ様」
「それは構わないけど……何かあったの? 前までこんな手続きはなかったはずですけど」
「……この前開いたパーティで、変身魔法を使って招待された人に化て、この屋敷に侵入した暗殺者が居まして。幸い、カール様は無事でしたが……それ以来再発を防ぐため、パーティを開く時はこの特殊な魔法の仕込んである招待状を確認しています」
……なるほど。そういう訳か。
にしても、もしカールがその時死んでしまっていたら恐らくビクトリア帝国は大きな混乱に陥っていただろう。その暗殺者が最後の最後にしくじってくれて本当に良かった。
「ベルタ、どうしたの?」
ベルタが若干、険しい顔をしているので尋ねる。
「いえ、大したことでは……ただ、その変身魔法を使う暗殺者に聞き覚えがありまして。そこでちょっと気になって」
なるほど……ベルタはビクトリア帝国の諜報活動を担うカイン家出身だからその情報網に引っかかったのかもしれない。他人にほぼ完全に擬態できるほどの上級変身魔法の使い手なんてそうそういないから、もしかしたらベルタの聞いた暗殺者と今回の暗殺者は同じ可能性は高い……ただ
「まぁ、仮にベルタが聞いた人が今回の事件の暗殺者と同じかもしれないけど、どちらにしろソイツは拘束されたんだから」
「それもそうですね。時間をかけてしまい申し訳ありません」
「いや、私は構わないよ。じゃあ、行こうか」