馬車に戻ろうと自警団の男に背を向けたすぐ後、後ろから僅かながらに殺気のようなものを感じた。
振り返ると男は短剣を私に刺そうとしていた。
避けるのは……間に合わない。武器は手元にはない。魔法は……詠唱破棄出来る下級のなら間に合う!
「プロテクト!」
男の短剣は私の身体を突き刺さる寸前に、見えない壁に弾かれた。
危ないところだった……。
さて、これからどうしようか。
プロテクトはあと数秒程度で切れてしまう。とりあえず後ろに下がって……
「アレクシア様、魔法の行使をしたようですが……彼、のせいですか。アレクシア様、私の後ろに」
私の魔法行使を感知して馬車から出てきたベルタは、状況を理解するとすぐに私の前に立ち、自身の短剣を構える。
彼女にメイドと護身を兼ねさせておいて良かった。
「ベルタ、私も魔法で援護するわ」
「お願いします」
さて、下級防御魔法のプロテクトが解けたのでベルタと自警団(?)の戦闘が始まろうとしている。まぁ多分、ベルタは自警団(?)の男に勝つだろう。理由は単純。同じ土俵ならば明らかに練度の高いベルタの方が圧倒的に有利だからだ。自警団(?)の男は暗殺者が好んで使う短剣を持っていることとわざわざ私を殺す際に私が後ろを向くまで待っていたこと、これらから考えて彼は自警団に変装していた暗殺者でほぼ確定だろう。
彼は"皇族"である私を狙うくらいなのだからそれなりに腕に自信はあるのだろう。
しかし、ベルタは新暦106年にルーシア帝国から独立したビクトリア王国(ビクトリア帝国の前身)の時代から暗殺を生業としているカイン家の出身だ。
故に私のところに追放されたとはいえ、そこらの暗殺者より練度は遥かに高い。勝ち確ってやつだね。
「敵が仕掛けてきます……全ての攻撃を迎撃するように頑張りますが、一応、気をつけてください」
そうベルタが言った直後暗殺者は身を屈め……私に向かって急接近してくる。
そして後一歩で私の首に短剣を突き刺せるというところでベルタの短剣に迎撃される。
短剣と短剣がぶつかり、甲高い金属音が鳴り響く。
ベルタの迎撃が失敗した時用に私も一応武器を持っておこう。
さてさて、私の愛剣を呼ぶとしよう。
元の世界にいる人に言ったらきっと頭が逝っている人を見るような、哀れなものを見る視線に晒されることだろう。そりゃあそうだ。剣がワープするなんてあり得ない。
だが、この世界の聖剣、私の愛剣は聖剣なのだが、は持ち主が聖剣召喚用の詠唱を行えばどこからでも召喚できる。この世界の聖剣は確か全部神造兵器らしいのでどんな機能が付いてても不思議では無い。神様はすごい。
という訳で早速呼び出そう。
「始原の聖剣よ。悪を取り払い、光をもたらせ!」
そう詠唱すると私の手元が光り輝き、光が消えると穢れなき白銀の剣が私の右手に収まっていた。
そしてちょうど私が聖剣の召喚を終えた時、ベルタはちょうど暗殺者を無力化し終えていた。
「……アレクシア様、敵を気絶させ無力化しました」
「お疲れ様」
召喚したけど聖剣の出番は全くなかったね。まぁ出番が無い方が良いだろうけど。なんか残念。