二度目の狂気を異世界で   作:神代リナ

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第七話中編 公務員(反乱軍)募集中

……暗殺者の少女とベルタが戦い始めてから何時間が経っただろうか? いや、何分、だろうか? ひょっと何秒かも。

 

夜の暗い道で月の明かりを反射して光り輝いている二本の短剣はとても綺麗で……このくらい道のりを照らす希望の光にも見える。

 

短剣と短剣のぶつかり合う時に鳴り響く金属音が聞こえなければ、だが。

 

彼女達の戦闘は先程からずっと一進一退の攻防を繰り広げている。

 

どちらも決め手に欠けるといった感じだ。

 

ベルタは攻撃を仕掛けてきた彼女を蹴り飛ばして距離を取ったり、隙を見てカウンターを入れているがいずれもかわされている。

 

一方、暗殺者の少女もまたベルタに対して仕掛けた攻撃は全て弾かれている。

 

……このままではジリ貧だ。いつ終わるか分からない。まさかベルタ相手にここまでやるとはね。まったくの想定外。ま、想定外なんていつものことか。……多分彼女がベルタと対等に戦えているのは魔法が使えるっていうのが大きいはず。なら、彼女の魔法をどうにか封じることが出来ればこの均衡を容易に崩せるはずなんだけど……それは出来ない。

 

……私が使える魔法の中に残念ながら相手の魔法を封じる魔法がないからだ。

 

なら、ベルタの能力を上げるバフ系統の魔法?

 

それなら使えるけどあれ魔力消費が多すぎてな……自分自身へバフかける魔法は魔力効率良いんだけど。

 

なら、私が戦うか? 確かに皇族の一員である私は剣術を習ったし、魔法もそこそこ使える。

 

正面切っての戦いなら私の方がベルタより強い。

 

それに今は始原の聖剣もあるし……ただ……私は基本的に前線に立って良い人間ではない。

 

死んだら替の効かない皇族だからだ。我々一族はこの国の文化上の理由で確かにそこらの騎士よりは強い。が、あくまで政治を担う、民を導く一族である。こう言っては悪く聞こえるが、私たちは騎士やベルタのような人間を盾にして生きていかなければならない。

 

だから自分から戦いに挑むような真似はダメだ。

 

始原の聖剣の能力解放は論外。あれなら後方からでも攻撃出来るがここら一帯が焦土になる。

 

他に何か。

 

私はベルタと彼女の戦いを眺めながら考える……そういえば暗殺者の少女、ベルタから距離を取る時ほぼ同じ場所に後方に跳躍してるな……これなら……閃いた。

 

……術式、構成完了。

 

……設置座標、設定完了。

 

「……マイン」

 

私は爆発系の魔法をなるべく小声で唱える。

 

……あと30秒後くらいには効果を発揮するだろう。

 

よしっ、ベルタが彼女の攻撃を弾いた。

 

今まで通りだ。

 

あと10秒……3……2……1。

 

暗殺者の少女の足元で小爆発が起きる。

 

防御魔法で守られていたからか彼女の身体自体には大したダメージはなかった……が、突然の爆発により隙を晒す。

 

「そこ!」

 

その隙を見逃すベルタではない。

 

「しまっ……!」

 

ベルタは彼女の持つ短剣を自身の短剣で弾き飛ばし、事実上の無力化をした上で彼女の首に向かって短剣を向ける。

 

「……私の勝ちね。あなたに勝ち目はもう無い。大人しくアレクシア様の指示に従ってもらうわ」

 

「……そう、ね。私はあなたには負けた。またカイン家にしてやられた。でも……でも、アレクシア様の首は頂く!」

 

「こいつ……!」

 

暗殺者の少女はベルタを避け、今までよりも遥かに早い速度で私に向かってくる。

 

恐らく全ての魔力を使って……全ての魔力を使ってしまえばしばらくの間は魔法が使えなくなる。捨て身の攻撃か。

 

この速さ、並大抵の騎士じゃ目で追えないほどだ。

 

しかも、いつの間にか彼女の右手にはどこかに隠していた小型のナイフが握られている……。あの速度が乗っていれば、たがが小型のナイフといえども防具も何もきてない私を殺すには十分だろう。

 

実質、回避不能の即死攻撃だ。

 

……私は始原の剣を構える。

 

強化魔法は……かけてる暇はないな。

 

あと、一歩でナイフは私の心臓に突き刺さるだろう距離まできた。

 

もし、私が普通の思いを抱く人間であればここで死んだのだろう。だが……

 

高速で突っ込んできたナイフと聖剣がぶつかり合い、甲高い金属音が鳴り響き、火花が散る。

 

「なっ……!」

 

暗殺者の少女は信じられないようなものを見たといった顔をしている。

 

「すまないね、私の夢は遥か遠くてね……こんな所で死ぬようじゃ決して叶わぬ夢なんだ」

 

そして、ナイフは儚く砕け散る。

 

「その力……あなた様ならもしかしたら……あの、方を。あぁ、すみません■■様。今回もまた……」

 

魔力を使い果たしたせいか、暗殺者の少女は気絶して倒れてしまった……。まぁいいだろう。少し、連れて行くのが面倒くさくなっただけだ。

 

「申し訳ありません、アレクシア様。あなた様のお手を煩わせてしまって」

 

「いや、構わないよ。それより早く帰ろう。私は疲れた」

 

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