ある時を境に、日本では人が徐々に交通事故、VRゲーム、過労、その他もろもろで目覚めることがなくなる出来事が多くなった。
別に死んだとかではない、また脳や身体に障害がありそうなっているのではない。十年近く眠っているのだ。
著名な医師はまるで自ら眠っているかのようだ、とコノ症状に”NARO”と名付けた
政府や医師会はこの症状の解決のカギが”患者の夢”にあると考え夢をデータ化、文章に直す機械、バクを生み出した。
いつか彼らの症状を解決し、彼らの病床をいつか必要とする誰かに渡すために
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朝起きて出勤して屍のような患者の相手にシーツやら風呂やらの世話をする。そして患者の夢のデータを提出して帰宅、その後もろもろして眠る。
それを毎日毎日毎日、、、、、、
事故で障害を負ったり病魔に侵され苦しむ小さな子供や大人、彼らのような人たちの力になりたくて看護師になったのだ。本来、自分はこのような者たちのために看護師になったのではない。
それなのに同じ症状がここ十年ぐらいで急激に増えて彼らのための隔離病棟のような物まででき、人手が足りないと私までもが配属された。
当初は奇妙な患者の夢に興味を持ったが、もう興味もない。どれも同じだ。こいつらは眠っているのではなく別世界で身の丈に合わないチカラを持ちエンジョイしているのだ、こいつらの夢曰くな。
今日も虚無な業務を終え帰路につこうとすると
「後藤さん、この後時間いいですか?」と声を掛けられる
この看護師は新人の清水さん、私と十年ほど歳が離れているからかNAROに対する認識が私とは異なる。
NARO患者の助けになりたいから看護師を志し、看護師経験がないから私が教育係を受けている。NARO患者を助けたいという思考が羨ましく感じる
「いいけど、何の用かしら?」
「あの、、とりあえず私の家にきてからにしてくれませんか?どうしても見てもらいたいことがあるんです!」
まあ、その見てもらいたいことの内容はなんとなく察せるが、、、
場所を彼女の家に移って、話を聞く。初めて彼女の家に上がったが本棚にはNARO患者への都市伝説まがいの本まででいっぱいで改めて彼女の仕事への熱意を感じる。
「これを見てください」
と、十枚ほどの紙を渡される。紙質からしてバクから印刷した患者の夢のデータだろう。まあ予想通り、NARO患者に対するなにかの話だろう
「私がNARO患者をどう思っているか雰囲気で感じ取っていたでしょ?それなのにこれを読めって、、」
「じゃあ、内容を話すので読まなくてかまいません。それで話を聞いてもらえませんか?」
彼女がそこまでするなら無下にするのはかわいそうだと思い聞くことにした。
「まずこの夢を見ている患者について、半年ほど前に搬送されたあのNARO患者です。」
「結構いるから【あの】じゃ分からないわよ」
「VRゲーム中にNAROを発症した患者ですよ」
「それも多いわよ」まあどうでもいいからと夢の内容に入るように促す。
「あ、すいません。では、彼は夢で【キャラクターの死が自分の死に直結する完全仮想空間】に約一万人のうちの一人として閉じ込められるんですよ。閉じ込められるとは、VRゴーグルを外したりゲームをやめたりできなくなる状況です。」
「結構ハードなのね」
「そうなんですよ!」と声を高くする清水に「でも、どうせその子にも特別な力があるんでしょ」と水を差す。
「それが、主人公はそのゲームの試作型をプレイしたことがあるというだけで特に何か特別な力があるわけではないんですよ!」ますます声を高くする清水に
「…情報力は十分な戦力と思うけどね」と小さくつぶやく
「そして彼は最愛の人ととあるイベントを経て、お付き合いすることになるんですよ!」
この夢を見ている奴は、なんというか、現実に戻った時にダメージが多そうだな
「しかも結婚までゲーム内でするんですよ!」
……この男……マジで無理だわ…
「聞いてて結構苦しいんだけど、そんなものを聞かせるためにわざわざ私を呼んだの?」
こういう患者の夢もよく見た。大抵相手も主人公並みに強力な力を持ったりしている
「あ、すいません。これがメインに話したかったわけではなかったんです…つい」
溜息が出た、彼女がこんなことを聞かせたかったのではないという安堵とこんなことを聞いてしまった嫌気が混じって
「私が彼の夢に注目したのはですね。彼は仲間たちを集め、とうとう自分たちを閉じ込めていた者を倒し現実世界に帰るんですよ!」
現実世界に戻る、それはNARO患者の夢では禁忌のごとく現れない事象だ。
「…本当に?」だから怪しんだ。彼女がそんなことで私に嘘をつくなどはありもしないが訝しんだ。
「じゃあ見ますか?マーカー引いてるんですぐわかりますよ」
実際目にした。彼は夢の中で悪夢を脱していた。今も病室で横たわっているであろう顔も知らない彼の姿を想像し、哀れさやら感傷が浮かぶ。
今日、彼女が自分にこのことを告げたのはきっとNARO患者も他の患者と同じ存在なんだということを気づかせようとしての行動なのだと思った。気づきを与えてくれたそんな彼女へ感謝を述べようとすると
「…清水さん、私に気づかせてくれてありが―
「これを小説として売り出したらめちゃくちゃ売れそうじゃないですか????」
彼女の話はただのビジネスだった。