ウマ娘—Dreams continue!—   作:流星の民(恒南茜)

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ま〜た閑話休題気味の話です。
今回、若干短いです。


第12R 憧れはもう一つ

「よう、そこのお前!ゴルシちゃん焼きそばはいかがかな?一個食ってみろよ?飛ぶぜ?」

「は?何言ってんだ、オマエ。」

薄暗い倉庫。

 

美しい白毛を靡かせた一見高貴に見えるウマ娘がガチャガチャと音をたて、何かを作っていた。

——ゴルシちゃん焼きそば。

美味な食事に溢れたトレセン学園。

 

そんな環境下で舌の肥えたウマ娘すらも唾を飲み、黙らせることができるという志向の逸品。

私は今、それを目の前にしているということなのか…。

 

それは、みて居る内にこのウマ娘ですらも例外ではなくなり、軽くニット帽を揺らし、ナカヤマフェスタはゴクリと喉を鳴らす。

 

「なあ、それ… まさか」

「ああ、もちろんよ!…しょうがねえなあ、一口だけだぞ。」

 

と言うと、白毛の少女——ゴールドシップは持っていたヘラで焼きそばを掬い上げ、呆然としているナカヤマフェスタの口に押し込んでしまった。

 

「あっつ!ひょ、ほまえまひでふはけ…」

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———

「美味かった。」

「そう…なのか。」

トレーニング終了後、トレーナー室にやってきたナカヤマ。

 

彼女から衝撃的な体験をしたと、話を切り出され、話を聞いたわけだが…

うん。わけわからん。

 

それで、彼女は何の用でここに来たのだろうか?

焼きそば食って火傷したとかだったら先に保健室に行って然るべきだろう。

 

すると、急に彼女は真面目な表情を作ると、こちらを真っ直ぐ見つめてきた。

 

「それでだな、トレーナー、私から提案があるんだ。」

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「…というわけで、今年も秋のファン大感謝祭の季節が近づいてきた。それで…まあ、うちのチームでも模擬店を出すってことなんだが…ナカヤマから提案があるらしくてな。ほい、ナカヤマ。」

「ああ。…みんな、私は…あのゴルシちゃん焼きそばを口にした。」

「ゴルシちゃん焼きそば!?」

 

その瞬間全員に電撃走る…と形容するのが正しいのだろうか。

一瞬で部屋を包む空気が変わった…気がする。

「なあ…。そのゴルシちゃん焼きそばってのはそんなにすごい物なのか?」

「ああ。あれはスピカのゴールドシップっていうウマ娘が作る焼きそばなんだが…。

ゴールドシップといえば数々のG1レースで勝利を収めてきた歴戦の戦士…いやウマ娘として有名だ。

その可憐な見た目とは裏腹にぶっ飛んだ言動と行動も…だが。

 

「あれ、めちゃくちゃ美味いくせに割と入手しづらいんだよな。レース場とか色々な所に出没して売ってるらしいけど、それを見つけるのが割と難しくてな…。去年のファン大感謝祭の時には売り切れてたし…。試食させて貰えただけでも奇跡だろ。」

と、どこか遠い目をしたドゥラメンテが教えてくれる。

 

「…な、なるほどな。」

「それでだ。きっと奴は…ゴルシは今年も焼きそばでくる。そして…私は、負けたくない。アイツとの勝負で。だから、頼む。みんなも手伝ってくれないか?」

 

「ぅぅぅ…その気持ち、わかるぜ。」

ぽんぽんとナカヤマの肩を叩くドゥラメンテ。

 

「キタちゃん…焼きそばって何だっけ?」

「ん?焼きそばなら前食べなかったっけ?お祭りで食べたあの…」

「あのパスタのこと!?あれを私たちが作るの?」

「そう…だね。パスタかどうかはわからないけど…。」

「楽しそう!やってみようよ、キタちゃん!」

「まあ、でも私も焼きそばは好きだし…」

「学級委員長たる私が完璧な焼きそばを作って差し上げましょう!どうか泥船にでも乗ったつもりで…」

何だかんだで全員乗り気のようである。

 

「ありがとうな…。みんな…。」

感極まったような瞳で仲間達を見回すナカヤマ。

…良かったな、ナカヤマ。

 

と一安心すると同時に、俺も涙が…。

まあ、流石に出なかったか。

 

「それじゃ、トレーナー、書類とかよろしくな。」

「…ああ。」

 

まあ、みんなが幸せならOKです。

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「材料集め、ヨシ!場所確保、ヨシ!さて捌いちまおうぜ!」

ナカヤマ先輩の声が響き渡るテントの中、遂に秋のファン大感謝祭が始まろうとしていた。

 

「さて、調理は私とバクシンオー、会計はトレーナーとドゥラメンテ。売り込みはキタサンとダイヤで頼む。」

テキパキと出される指示に、一瞬目が回りそうになってしまうけど、急いではい、と返事をする。

とりあえず、売り込み用の焼きそばを受け取った時だった。

 

『パァン!パァン!』

と大きな音が響いた。

慌てて外に出てみると、花火が上がっていた。

 

「へぇ…本当のお祭りみたい!」

「だろ?何せ、『聖蹄祭』といえばトレセン学園の行事の中でも一番盛り上がるやつだからな。」

と教えてくれるドゥラメンテさん。

 

「さて、スタートだ!売るぞ、お前ら、スピカに勝つぞ!」

と声をあげるナカヤマ先輩。

私たちも、釣り銭やらを用意して準備はバッチリだ。

「行こう!ダイヤちゃん!」

「うん!キタちゃん!」

 

ダイヤちゃんと目配せをして、テントから出ようとした時だった。

「お前ら、ノルマ終わったら、自由に回ってきていいからな。」

と、ナカヤマ先輩がウィンクしてくれた。

 

「わかりました!絶対に焼きそば、完売してみせます!」

意気込みつつ、私たちは今度こそテントから出て行った。

———————————————————————————

「売れないね…ダイヤちゃん。」

と、疲れたような声をあげてキタサンが見つめていたのは、焼きそばを売るゴールドシップだった。

やはり、今年も焼きそばで来たか、と思うと同時に、ゴルシの前にできている長蛇の列を見て少しげんなりとする。

もうすぐ販売を始めてから一時間半ほど経つだろうか。

 

やはり話題性や前評判においてはゴルシが最強。

競合するキタサン達の焼きそばは一切売れていなかった。

「少し休まない?キタちゃん…。」

というダイヤの提案に頷こうとした時だった。

 

「…待って、ダイヤちゃん。あの子、迷子じゃない?」

とキタサンが何やら泣いている小さな女の子を見つけた。

「大丈夫?何か困りごと?」

 

と、子供の元にすぐに駆けつけ、問いかけるキタサン。

少し遅れて、ダイヤも追いつく。

「ぅぅぅ…ひぐっ…お母さんが…いなくなっちゃった…の…」

と嗚咽を漏らしながら、何とか言葉を発する女の子。

その時、キタサンの視界に入ったペタンと畳まれた耳。

 

どうやら彼女もウマ娘のようだ。

「そっか…。お名前って言える?」

「…ひぐっ…シ」

嗚咽に紛れて聞こえない。

 

…今は落ち着かせたほうがいいかな。

と判断したキタサン。

「よしよし、私たちが探すの手伝ってあげるよ!」

「…ほんと?」

 

上目遣い気味に潤んだ瞳を向けてくる女の子にキタサンは笑顔で返す。

「もちろんだよ!」

 

そんな彼女の笑顔に安心感を抱いたのか少し落ち着く女の子。

「大丈夫だよ〜、このお姉さん頼り甲斐がある人だから。ね?」

 

「もう、ダイヤちゃん…」

「ふふっ。ねえ、お母さんはどんな特徴があるかってわかる?」

「んーとね…お母さんもウマ娘なの。」

「そっか…えーと…。」

 

少し声を詰まらせるダイヤ。

「ごめんね、他にも特徴があるか教えてくれる?」

すかさずキタサンがフォローする。

 

「えーと、えーとね…白っぽくて長いお洋服着てたの。」

「白くて長いお洋服…?白いコートってことかな?」

 

「そうじゃない?…それにしてもキタちゃん、やっぱり手慣れてるというか…。」

「ダイヤちゃん!」

少し顔を赤くしながらも女の子の手を引くキタサン。

 

「お助け大将キタさん」…ね。流石、キタちゃん。

やっぱり私の親友、キタサンブラックはこうでなくっちゃ。

 

と、ダイヤもキタサンたちに着いていくのだった。

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「本当に、本当にありがとうございました。」

ようやく見つけた『白いコートを着た女性』。

 

何度も頭を下げる彼女に、いえいえと手を振りながら、キタサンは考える。

ああ、見つかって良かったな、と。

 

「ほら、あなたも、お姉ちゃんたちにありがとうって言おうね。」

と、母親に言われ、「ありがとうございました」とお礼を言う女の子にも手を振りつつ、目の前の女性や女の子だけではなく、自分も安堵感が溢れてきていることを感じ、微笑むキタサン。

 

「本当に、なんとお礼を言えばいいか…キタサンブラックさん。そしてサトノダイヤモンドさん。」

「なんで、私たちの名前を!?」

と驚いたような表情を見せるキタサンを見て微笑みつつ、女性は話を続ける。

 

「私も昔はトゥインクルシリーズで走っていましたから…。お二人の活躍、いつもテレビで拝見させていただいています。この子もいつも必死に応援してて…。」

「え〜!お姉ちゃんたちがキタサンブラックさんとサトノダイヤモンドさんだったの!?かみにつけてるかざりがないから、わたし、気付かなかった!」

 

言われて、ふと気づき、髪を触るキタサン。

そういえば、夏合宿の時に、崖から落ちて、無くしちゃったんだったな、と思い出す。

「ふふ…ごめんなさい。この子、ちょっと抜けてるところがあって…。」

「…そうだったんですか!いつもありがとうございます。」

「いえいえ。むしろお礼を言うのは私の方ですよ。いつも夢を見せてくれて…それに、今日も…本当にありがとうございます。それでは、私たちはそろそろ…。」

 

と去って行く女の子と母親。

 

去り際に

「私もお姉ちゃんたちみたいになりたい!」

と母親に宣言する女の子を見て、

「ねえ、私たちも昔は、あんな感じだったのかな?」

誰かに語りかけるように呟くキタサン。

 

「うん。そうかも。でも、まだ憧れは続いてる、でしょ?」

それに答えるのはダイヤだった。

「うん!まだまだ、だもんね。ねぇ、何か私、今元気かも。」

 

満面の笑みで言うキタサンに対して、

「キタちゃんはいつもじゃない。」

とダイヤも笑みを浮かべる。

 

その時、キタサンは目の前にある焼きそばに気づいた。

途端、ツーと一筋の冷たい何かが首筋を流れて行くのを感じた。

 

「よ、よーし、焼きそばの売り込み、頑張るぞー!」

と不安を払うように声をあげる彼女を見て、

 

…やっぱり、ちょっと抜けてるよね。

と口には出さずにそっと心に言葉を仕舞い込んだダイヤもまた、大量の焼きそばを抱え込んでいるのであった。

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「まだまだあるのかよ…これ。もう入らねぇって!」

部室に響き渡るドゥラメンテの悲鳴。

打ち上げと称して行われたこの催し。

 

しかし、その実態は在庫処分と言ったところだろうか。

目の前にはまだまだパッケージに入った焼きそばがたくさん。

 

「みんな、本当にごめんな…。」

 

その時、申し訳なさそうに、ナカヤマが話し出した。

 

「私のわがままに付き合わせて…」

「いえ!そんなことないです!」

一切の躊躇いなく割り込むキタサン。

 

「私、とても楽しかったです!」

と満面の笑みを見せる。

 

それを見て、少し驚いたように、目を見開くナカヤマ。

「へへっ、まあ、私も、だな。」

と、呟くドゥラメンテ。

 

周りを見回すと、他のメンバーも微笑みかけていた。

「…みんな、優しいんだな。」

 

ボソッと口にした言葉に、それでいいんだよ、と言うかのように親指を立てるドゥラメンテ。

誰かが、拍手をし、気づくとそれが段々と広がっていた。

 

「来年だ!来年は勝とうぜ!」

 

と、ドゥラメンテか。はたまたナカヤマ本人か、それとも…

誰が発したのかわからない言葉はその場を沸かせ、段々と楽しげな雰囲気を纏ってきていた。

 

そんな様子をなぜか外で見ていた女がここに一人。

 

「…ほう。ライバル登場といったところか。面白くなって来たじゃねぇか。」

 

と、謎に腕組みをしながら微笑を浮かべる彼女に対し、突っ込む無粋な者などここにはいなかった。

 




はい。というわけで、次回はクリスマス。そして有馬記念といった流れで一年目ももうすぐ一区切りつきます。
やはり、こういうタイミングだからこそ見直さなきゃいけないな、と思ったわけです。
投稿ペースを。
というわけで、二年目以降はなるべく5日投稿を目指して、頑張っていこうと思いますので、よろしくお願い致します。

※追伸 お兄様になれなかった皆様へ※
ヒシアマゾンでした。
本当にありがとうございました。
お兄様引退します。
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