ウマ娘—Dreams continue!— 作:流星の民(恒南茜)
なので、少し短いです。
と言うわけで、今回もよろしくお願いします。
第15R もう一度、憧れて
——憧れ。
きっと、今、あたしは…私は…憧れている。
目の前のターフを駆け抜ける影に。
もう一度、不死鳥の如く立ち上がった帝王の…その姿に。
何度も、強敵と対峙し、不治と言われていた病から、立ち上がってもう一度走っている名優の…その姿に。
「「…すごい。」」
ただ、その一言しか出なかった。
それほどまでに、テイオーさんの走りは力強くて。
それほどまでに、マックイーンさんの走りは優雅で。
憧れは、私の胸の中で、さらに強い輝きを——放っていた。
———————————————————————————————
———————————————
——————
———
「ん〜、凄かったなぁ…ウィンタードリームトロフィー…。」
キタサンが、余韻を噛み締めるかのように呟く。
「おい、キタサン、まだトレーニングは残ってるぞ?もう一本、走ってこい。」
「うっ…はい。」
そう返事をすると、彼女は再びトレーニングに戻っていく。
まったく、トレーニングプランを考えろと言ったのはあいつだろうに…。
「ダイヤ、お前もな。凱旋門賞、目指してるんだろ?さあ、もう一本、行ってこい!」
「うっ…わかりました。」
ついでにキタサンとお喋りをしていたダイヤもである。
年末に、ダイヤから凱旋門賞に出走したいと言われた時は大分困惑したものだが…彼女の想いは固く、俺が折れることとなった。
ドゥラメンテは復帰に向けて、キタサンも春のG1戦線に向けて調整中だ。
しかし、どうやらウィンタードリームトロフィーの観戦は、彼女たちにとっては良い刺激になったようだ。
何と言っても今年のウィンタードリームトロフィーは超接戦。
ジャパンカップでブロワイエを打ち破ったスペシャルウィークに、骨折から完全に復帰したトウカイテイオー、それに靱帯炎を克服したメジロマックイーンや皇帝ことシンボリルドルフなどなど。
トゥインクルシリーズのファンならば垂涎してしまうようなウマ娘たちがぶつかり合う姿には、俺まで思わず叫んでしまったものだ。
なんて余韻に浸っていたら、
「おーい、トレーナー、終わったぞ。さあ、次のトレーニングにしようぜ。」
とドゥラメンテが割り込んできた。
というかまあ、この状況だとサボっているのは完全に俺である。
完全に柵にもたれかかっちゃってるし。
「すまん、ドゥラメンテ。よし、そうだな…」
———————————————————————————————
「…キタちゃん?どこに向かってるの?」
トレーニングが終わった後、急に手招きと共に駆け出したキタちゃんを追いかけてしばらく。
見覚えのある階段を駆け上って、辿り着いたのはいつもの境内だった。
「どうして…ここに?」
「ふふっ、それはね…」
そう何かを隠しているのかのような、笑みを浮かべた後、キタちゃんはどこかに行ったかと思うと、何かを手に持ってすぐに戻ってきた。
「これを書くため!」
キタちゃんが私に見せてきたのは、三角に四角をくっつけたような…不思議な形をした木の板だった。
「何…?それ。」
「ダイヤちゃん知らなかったの!?えーと、これは「絵馬」って言って、ここに願い事を書いて、あそこに結ぶと、神様に願い事が届くの!」
キタちゃんが指を指した方向を見ると、確かに大勢の人が、「絵馬」を紐のようなものに結んでいた。
「キタちゃんそれ、とっても面白そう!」
「でしょでしょ?じゃ、書こっか。」
キュポっとサインペンの蓋を外して、手渡してくれるキタちゃん。
願い事…願い事…。
「キタちゃんは、何にするの?」
「んふふっ、まだ内緒。」
「えぇ〜、教えてくれても…」
キタちゃんの返答に少し膨れっ面を作りながらも、取り敢えず私も願い事を考えることにした。
———————————————————————————————
ウィンタードリームトロフィー。
あの日、ターフを駆けていたテイオーさんの姿。
あの時から、もう願い事は決まっていた。
…と言うよりも、あの姿を追いかけたかったからこそ、ここに来た。
私に、走るべき道を示してくれたその背中を。
そして、時には隣に立って、導いてくれる優しさを。
たくさんの強敵やライバルを前にしても、一切、怖気つかず、戦えるウマ娘に…
それこそあの日、テイオーさんに誓ったような強くてカッコイイウマ娘になりたい。
それが夢なのかは、まだピンとこないけど、これが今の私の願いだ。
改めて、願いを再認識し、私はペンのキャップを外して、絵馬に願い事を記し始めた。
———————————————————————————————
凱旋門賞のことはまず書いた。
それでも、まだ何か足りないような気がして…イマイチまだ終わり、とは言えない気分だった。
…どうしようかな。
願い事、か…。
そういえば、昔からキタちゃんとはよくここに遊びに来てた。
まぁ、当然遊び場ではないから、注意されることも少なくはなかったけれど。
あの時は、少しやんちゃだったなぁ、と思わずクスッと笑ってしまう。
今思うと、あの時の私が今の私になったのは、優雅…かはわからないけど…ああなりたいと思ったのは…
マックイーンさんの背中を見たからだ。
——憧れ。
色々と忙しくって、思い出すことが少なくなっても、まだ胸の中で輝いていたもの。
…そうだった。
マックイーンさんの優雅さも、堂々たる姿も好きだけど、一番憧れたのは、
幾度となく強敵や、最強のライバルを前にして戦い続け、不治の病からも立ち直ったその——意志の強さ。
私は、キタちゃんにとって最高のライバルに、あの二人のような関係でありたい。
だからこそ、あの強さに焦がれて…。
絵馬に書き記されたのは、二つ願いを書くのが良い事なのかはわからないけれど…それでも、とても大切な二つの願いだった。
————————————————————————————————
「「いっせ〜の〜」」
せ!と、お互いに見せ合った絵馬。
ダイヤちゃんの物には、「凱旋門賞で勝ちたい。」そして、「マックイーンさんみたいなウマ娘になりたい。」と書いてあった。
そして、私の物にははっきりと「トウカイテイオーさんのようなウマ娘になりたい。」と記してあった。
互いが互いの願い事をじっと見つめる事しばし。
「…やっぱり、キタちゃんも、か。」
ぽつりと言葉を漏らすダイヤちゃん。
そして、少し何か考えているような素振りを見せると、こちらに微笑みを向けて、
「ねぇ、キタちゃん。」
と何かを語りかけるような口調で話しかけてきた。
「ん?なに?」
「私ね、ずっと憧れてた。テイオーさんとマックイーンさんみたいな関係に…だから」
「私もだよ。だから、あの二人みたいな…最高の勝負をしよう?」
「うん、私もそう思ってたところ。だから…マックイーンさんみたいに優雅に、キタちゃんに勝つよ。」
「だったら、私もテイオーさんみたいにパワフルに勝つもん!」
「「ふふっ…あははっ…」」
こんなやりとりをするのは、随分と久しぶりな気がした。
いつかは、わからないけど…私たちは、絶対にまた戦う。
だから…ダイヤちゃんのライバルとして、相応しいウマ娘であれるように…。
あの背中にもっと近づくために…。
今年も私は…私たちは、走り続ける。
—————————————————————————————————
—————————————————
————————
————
トレーニングも残ってた仕事も完了。
さて帰るか、と伸びをして校舎を出た時だった。
ザッザッザッザッ、と誰かの足音が聞こえてきた。
方向的にはトレーニング場の方だ。
もう門限は過ぎていると言うのに…一体誰が、走っているのだろう。
到着したトレーニング場で見たのは見覚えのあるウマ娘だった。
——ドゥラメンテ。
彼女がここまで必死に走っているのを見るのは、随分と久しぶりだった。
思わず声をかけようとした時である。
グイっと、何者かに引っ張られ、俺は木陰に倒れ込み、強かに背中を打った。
明らかに人の力じゃない。
一体、誰だ?と、後ろを向くと、人差し指を口に当て、「しー」と静かにするようにサインを出してきている少女がこちらを見つめていた。
どこかで見たような顔をしているが…どこで見たんだったかな、と考えていると、クイッと着いてこいと言うように、彼女は方向を示してきた。
まぁ…事情を知っていそうではある。
取り敢えず俺は、彼女に着いていくことにした。
さて、ゴルシちゃんが他のゲームに出張すると言うことで、サイゲのゲームは全般好きなので、滅茶苦茶楽しみですね。シャドバのスキン辺りで、マックイーンが来てくれるといいな、と思う日々です。
最近、キタサトの描写が多いので、次回は視点を変えまして…
それでは、次回もよろしくお願いします。