ウマ娘—Dreams continue!—   作:流星の民(恒南茜)

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というわけで、予告した通り、昼です。一旦、投稿時間再検討します。


第18R 心、繋いで

「キタちゃん、私ね…凱旋門賞への出走、決まったよ!」

トレーナー室の前で待つことしばし。

 

満面の笑みで、部屋から出てくると、私にそう伝えるダイヤちゃんの顔を見て、思わず肩の力が抜ける。

「よかったぁ…。じゃあ、これでダイヤちゃん、夢への一歩を踏み出せるんだ。」

 

「うん…。だけど、出走するだけじゃダメ。私は、勝たないと。」

拳を胸に当て、そう宣言するダイヤちゃんは、今までになく覚悟を決めているような表情をしていた。

 

「…そっか、そうだよね。それで…フランスには、いつ行くの?」

「…6月の下旬ぐらい。」

「あと3ヶ月ぐらいに…なるんだね。」

 

「…キタちゃん?」

「…ううん。何でもないよ!」

 

無理やり、元気な声を絞り出して、答えながら考える。

ダイヤちゃんと過ごせる時間も残り少ないんだと。

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———

『春の天皇賞は3200m。最長距離のレースだ。キタサン、今のお前に必要なのはスタミナの補強だな。』

 

今の私には、まだ経験したことがない距離。

だからこそ、自主トレーニングは必須。

 

いつもの河川敷を駆けながら、考えたくもなかったことに思考が走ってしまいそうになる。

——ダイヤちゃんはフランスに行ってしまう。

帰ってくるまでは、4ヶ月ほど。

 

今まで、ずっと一緒だったからこそ…その間、どうすればいいのか、わからなくなってくる。

なんて考えている時だった。

 

「キッタちゃーん!」

急に、誰かが、あたしの名前を呼んだ…というより、この声は!

 

「テイオーさん!?」

「えっへへー!ひっさしぶりー!」

「えーと…どうしてここに?」

 

「ん?ここは、ボクもよく使ってるトレーニングコースだからね〜。そういえば、最近どう?元気?」

眩しい笑顔で聞いてくるテイオーさんの質問に、声が詰まってしまう。

 

「どうしたの?キタちゃん…何かあったなら、聞くよ。」

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「…それで、私ダイヤちゃんがいなくてもやっていけるのか、不安になっちゃってて…。」

「…そっか。ねぇ、キタちゃん。」

 

少し、考えるかのような素振りを見せると、あたしの方を見据えるテイオーさん。

「キミにとって、ダイヤちゃんはどういう存在なの?」

私にとってのダイヤちゃん…。

 

「えーと、親友で…それで、ライバル…です。」

「いい?キタちゃん、ライバルっていうのはね。確かにさ、欠かせないものかもしれないよ…それでも、さ…」

 

少し、言葉を濁しながらも、テイオーさんは話し続ける。

「一人で走るのは、キタちゃんだけじゃない…ダイヤちゃんも、だよ。」

 

“ダイヤちゃんも。“

ずっと浮かんでこなかった考えだった。

 

「今まで、キミたちはずっと一緒に過ごしてきた。一緒にぶつかり合ってきた。だからさ…不安を感じるのは当然だよ。だけどさ…大丈夫。繋がりは、思い出は、それぐらいじゃ途切れたりはしない。キミは一人じゃないよ。どれだけ離れてても、繋がってるのが、ライバルってものだから。」

 

…そうだったんだ。

 

今まで、ダイヤちゃんと歩んできた日々は、共に過ごしてきた日々は長かった。

ダイヤちゃんが一人、フランスで走っている時、私も一人だ。

 

だけど、一緒に競い合ってきた日々も、過ごしてきた日々も全部、心に刻まれている。

 

どんなに距離が離れていても、心の距離は変わらない。

だから、私たちの心は、どこにいても、確かに繋がっている。

 

「…ありがとうございました、テイオーさん!私、ダイヤちゃんに会ってきます!」

 

そう思うと、なんだか無性にダイヤちゃんに会いたくなってきた。

ダイヤちゃんのいる場所は、大体見当がついている。

 

私は、テイオーさんにお礼を言って、駆け出していった。

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「大きくなったなぁ…キタちゃんも。」

 

ポツリと呟いたテイオーの声には、どこか寂しさが含まれているようでもあった。

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「…どうすれば、一人でも強くあれるか…ですか。」

「…はい。」

私は、今までずっとキタちゃんと過ごしてきた。

 

だから、だろうか。

——凱旋門賞への出走の決定。

夢への一歩を踏み出せたのは確かだ。

 

だけど、何かモヤモヤと、不安があるのも本当で…。

「…貴方は強い方、ですわ。」

「え?」

 

唐突なマックイーンさんの言葉に、思わず聞き返してしまう。

「…夢のために、一人で異国の地に赴いて、戦う。まずこの決断ができただけでも、貴方は強い方です。ですが…」

 

そこで、少し考えるような素振りを見せるマックイーンさん。

「…そうですわね。貴方が凱旋門賞を志した理由を考えてみてくださいませんか?」

 

「…私が、凱旋門賞を目指すようになったきっかけ…。」

私が凱旋門賞を目指すようになったきっかけは、確か…

 

「…もっと、広い世界を見てみたいから、です。」

「それでは、そう考えるようになったきっかけはなんですか?」

思わず、目を見開く。

 

なぜ、もっと広い世界を見たいと思ったのか?

今まで、考えてみたこともなかった。

 

最初はぼんやりと浮かんできた目標だった。

だけど、ぼんやりとした目標は段々と像を帯びてきて、今は夢に…。

 

——何で、最初に浮かんできたんだろう。

「貴方の周りを見渡してみてください。必ず、そこにヒントはありますわ。」

 

周り、か。

そうだ。私の周りには、隣には、ずっとキタちゃんがいてくれた。

最初にキタちゃんが手を引いてくれたから、私は世界を見ることができた。

 

だから…だから、私は…

「キタちゃんが…ずっと手を引いてくれたから、世界を見せてくれたから。だから、私は…もっと広い世界を見てみたいと思えたんです。」

「そう…なんですの。でしたら…その夢に、ライバルの存在が大きく関わっていると言うのならば、貴方と、ライバルの繋がりは、きっと強いものであるはずですわ。だからこそ…」

 

そう、一呼吸置くと、マックイーンさんは、話を繋げる。

 

「貴方は、一人ではありません。」

 

…そういう考え方もあるんだ。

——心の繋がり。

 

私の夢は、キタちゃんがいてくれたからこそ、見つかった。

だからこそ、夢を目指している限り、例え一人になろうとも、私たちの繋がりは…

 

きっと、断たれない。

 

私は、一人で走るわけじゃない。

 

…きっと、隣には、ずっとキタちゃんがいてくれている。

 

「…ありがとうございました。マックイーンさん。トレーニングの途中に、相談に乗っていただいて。私、キタちゃんのところに行ってきます。」

 

「…そうですの。貴方の不安を取り除く一助になれていたら何よりですわ。それでは、お気をつけて。」

 

マックイーンさんに、会釈をすると、私はキタちゃんを探して駆け出した。

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「…ライバル、ですか。あの二人も、随分と成長しましたわね。」

 

ポツリと呟いたマックイーンはどこか昔を懐かしんでいるようであった。

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「ダイヤちゃん!」

 

見つかったことに喜びを抱きつつ、その名前を呼ぶと、「キタちゃん!?」と返事が返ってくる。

 

「…よかったよ。見つかって。」

見つかったことに、安堵しつつ、言葉を発しようとした時だった。

 

「…私ね。ずっと不安だった。キタちゃんが居ない環境で、走っていけるのかって。」

急にポツリとダイヤちゃんが言葉を漏らした。

 

「…それでもね。私は、わかったの。一人で走っていくわけじゃないって。だって、私が夢を見つけられたのはキタちゃんのおかげだから。だからね…私、走る。この目で、世界を見るの。キタちゃんが手を引いてくれたから。もっと広い世界を、見に行くの。」

 

…そうだったんだ。

ダイヤちゃんが夢を見つけられたのが私のおかげ、と言うのは初耳だった。

 

それに、ダイヤちゃんも不安を抱えていたと言うことも。

 

だけど、今、ダイヤちゃんが発した言葉は、決意は固くて。

 

だから、私もやっぱり強くなくちゃいけないんだって、思えて。

 

「…わかったよ。ダイヤちゃん。私たちは、きっと繋がってる。…どこに行っても。だって…」

 

「「ライバルだから!」」

 

少しの余韻を置いて、ダイヤちゃんが口を開く。

 

「ふふっ。キタちゃんも、同じこと考えてたんだ…。ねぇ、私、フランスに行っても一人で走れるって、強くあるんだって、強さをキタちゃんに見せるの…ううん。見せないといけないの…だから、春の天皇賞は、私が絶対に勝つよ。」

 

伝わったのは、ダイヤちゃんの固い意志。

 

だからこそ、決めた。私は、春の天皇賞で、絶対にダイヤちゃんに勝つ。

 

彼女の、ライバルであれるように、友達でいられるように。

 

「…そう、だよね。あたしも、ダイヤちゃんに見せるよ。ダイヤちゃんに、相応しいライバルであれるように、ずっといられるように…強さを。」

 

私も、ここで、走っていく、という覚悟を、強さを示すために。

だから…

 

「…だから、勝つのはあたし。最高の勝負をしよう?ダイヤちゃん。」

 

目の前にある、輝いた瞳を見つめてそう宣言する。

 

「…もちろんだよ!キタちゃん!」

 

交わした握手は、固く、強く。

 

交錯したのはきっと、私たちの覚悟。

 

忘れられないような一瞬が待っていることを、私は予感した。




キタサン、出ませんねぇ。
流石に確率舐めてました。
虹結晶4個くらい配布してください(懇願)
というわけで、次回天皇賞(春)です。
大分空きそうな気もしますが…次回も、よろしくお願いします。
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