ウマ娘—Dreams continue!— 作:流星の民(恒南茜)
◇ ◇ ◇
で場面変更。
◆ ◆ ◆
で視点変更になります。
また、今回閑話休題になります。
それでは、よろしくお願いします。
「…どうやって励ます…?」
「…そうだな…と言っても、アイツって何が好きなんだっけ?」
「それでしたら、私が!」
随分と暗い部屋で話す三つの影。
そんな中、一人が勢いよく立ち上がったのを、他の二人が引き止める。
「…てか、電気つけようぜ…。」
「そうですね!流石に暗すぎましたし!」
と、パチリと電気をつけるポニーテールの影ことサクラバクシンオー。
それを見て、軽く頷く残りの二つの影ことドゥラメンテと、ナカヤマフェスタ。
「…で、どうする?キタサン、最近目に見えて元気がなくなってるのが、気になってしょうがなくてな…。」
「それは同感だ。にしても、アイツが元気を出せるもの、か…。」
「思いつきませんね!」
再び部屋に大声を響かせたバクシンオーを睨みつける二人。
「…まず、議題はそこから、か。」
「そうだな。そうだ、私に良い考えがあるんだが。」
「…ふむ、聞かせてくれ、フェスタ。」
「いいぜ。まあ、一人じゃ無理だから、ドゥラメンテ、バクシン。お前らにも手伝ってもらうことにはなるが…。良いか?これはとある情報筋から仕入れた方法なんだが…」
フェスタの提案に頷く二人。
こうして、今日の会議は終了。
消灯後、暗くなった部屋で6つの瞳がギラギラと輝いていた。
◆ ◆ ◆
「…ダイヤちゃん。」
もう何度呼んだかわからないその名を口にする。
今は隣にいないその娘をどこかで追っているような…。
残るのはそんな感覚。
今日も一人で、寮に向かって帰っている時だった。
「ナカヤマ、バクシン、や…やっておしまい!」
そんな声が急に聞こえたかと思うと、覆面を装着したウマ娘たちに囲まれた…かと思うと、コンマ数秒。
あたしは、ずた袋のようなものに放り込まれていた。
「…なあ、本当にさっきの台詞、必要だったのか?」
「しょうがないだろ、情報筋がこの台詞は必要だって言ってたんだから。」
「そうですよ!とにかくバクシンです!」
…何だか、聞き覚えのある声だった気もしなくはなかったけど…今から何が起きるのか、あたしには検討もつかなかった。
◇ ◇ ◇
「…よっこいせ、と。」
ずた袋に入れられて揺られること数分。
案外、丁寧にあたしは地面に降ろされた。
急いで、袋から出ると、さっきの三人がこっちを見ていたので、睨みつけて声をあげる。
「一体、どういうことですか!?なんで…」
すると、ポニーテールの人が声を発した。
「キタサンブラックさん!私ですよ!私!」
「…おい、バクシン、覆面してるからわかんないんだろ。…脱がないとな。」
という声と共に、長髪の人が覆面を脱ぐ。
その下の顔は…
「ドゥラメンテ先輩!?」
「…ああ、ほら、お前らも脱げ。」
という、声と共に、他の二人も覆面に手をかけ、一気に脱ぎ去る。
「バクシンオー先輩に…ナカヤマ先輩!?」
「ああ。」
と、頷くナカヤマ先輩に、
「そうです!花丸を差し上げましょうっ!」
と、腰に手を当てるバクシンオー先輩。
「…一体、何で…。」
困惑のあまり、尻すぼみになる声。
私の質問に頭を掻きながら答えてくれたのは、ドゥラメンテ先輩だった。
「…いや、その…だな…。」
◇ ◇ ◇
「…私を元気付けるため…ですか?」
「…あ、ああ。」
自信なさげに答えるドゥラメンテ先輩に続き、頷くナカヤマ先輩とバクシンオー先輩。
「それでも、何でこんな方法で…?」
「それはな…キタサン、とある情報筋から…」
「うん、ナカヤマは退場な。それで、キタサン、手荒な方法になってしまったのは謝る。だけどな…キタサン、私たちのお前を励ましたい気持ちは本当なんだ。」
胸に手をあて、真面目に宣言するドゥラメンテ先輩。
その伝わってきた真剣な思いに、少しうるっとくる。
「…ドゥラメンテ先輩…。」
「…それで、キタサン…何がしたい?」
◇ ◇ ◇
「んやぁあっとみんなあえたねぇ〜ええ〜…」
「…独特だな。」
「…だな。」
「…ですね!」
あたしの歌の後に続く三つの声。
来ていたのはカラオケ。
というかまあ…あたしが来たいって言ったからなわけだけど…。
「そ、そんなに独特ですかね…。」
「何というか演歌みたい…かな…。」
少し震えた声を発したのはドゥラメンテ先輩。
「何でだろ…お父さんの影響…ですかね?お父さん、演歌歌うのが上手くて、私もよく一緒に歌ってたので…。」
「…なるほどな。」
ドゥラメンテ先輩は少し考え込むような素振りを見せると。
「…まあ、いいや。今日はお前を励ますために来たんだもんな…。」
急にうんうんと頷き、
「キッタサン!キッタサン!」
と、急にコールを始めた。
「…えーと、ドゥラメンテ先輩?」
「ほら、お前らもやるぞ!」
声をあげるドゥラメンテ先輩に合わせて広がっていくキタサンコール。
「えっと…皆さん…?」
結局、あたしは頭を掻きながらも、その後何曲か歌うことになった。
◆ ◆ ◆
「なあ…キタサン。」
キタサンを寮に送っていく道すがら、私はポツリと声を漏らした。
「…お前に、伝えたいことがあるんだ。」
「…ドゥラメンテ先輩?」
「…ダイヤがフランスに行っちまって…寂しいのはわかる…だけど…」
元々、私がキタサンを励まそうと思ったのは、伝えたい事があったから、だった。
ここで、今それを伝えなければ。
少し、困惑しているようなキタサンに真っ直ぐ向き合い、言葉を紡ぎ出す。
「…お前には、私たちがいる。」
この一言をどうしても、キタサンに伝えたかった。
「私が、骨折した時にまた復帰できたのは…お前らがいたからだ。きっと、お前らのサポートがなかったら…応援がなかったら…」
私はどうなっていたのか…。
考えるだけで、少しゾクッとする。
「...私たちは仲間なんだ。だから、困ったり、寂しくなったりしたら…頼ってほしい。いつでも…付き合うから。」
一瞬、キタサンの瞳が揺れたのが視界に入った。
◆ ◆ ◆
「…あたし、ダイヤちゃんがフランスに行っちゃって…寂しかったんです。」
思わず漏らしてしまった本音。
ずっと寂しかった。
それでも…何だか今日は…
「…楽しかった。」
「そっか、なら良かった。」
ニカっと笑うドゥラメンテ先輩。
何だかその笑顔は眩しくて、追っていたダイヤちゃんの影とは違う何かを見た気がした。
◆ ◆ ◆
◆ ◆
◆
何だが最近、キタサンの表情が随分と明るくなった気がする。
ダイヤがフランスに言ってからというもの、随分と落ち込んでいたのに。
何か、きっかけになることでもあったのか、と考え込んでいると。
「どうした?トレーナー。」
ドゥラメンテが理由を問うてきた。
「…いや、キタサンの表情さ、最近明るくなったな、と思って。」
「そうかそうか…ふふ。」
「ドゥラメンテ?何か知ってるのか?」
「まあ…チームの力、とだけ伝えておくよ。」
「…そうか。」
…チームの力、か。
確かに、最近彼女達のコミュニケーションが増えている気がする。
彼女達自身の助け合いの尊さ、そして、チームとしての形に思わず微笑みが溢れる。
…そういえば、ドゥラメンテで思い出したことがあった。
「…次の出走レースだが…宝塚記念でいいんだよな?」
「…ああ。」
「わかった。出走登録は済ませておく。…とにかく、今は走るのみだ。」
ドゥラメンテ復帰後初のG1レース、宝塚記念が近づいていることを、五月晴れの空が示していた。
それでは、次回もよろしくお願いいたします。