ウマ娘—Dreams continue!—   作:流星の民(恒南茜)

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普段に比べると、だいぶ短いですが、一旦ここで切りたかったので投稿します。
あと、原作との設定の相違点が今回から出てきますのでご注意を。


第7R 夢を重ねたいから

「キタサンブラックさん、サトノダイヤモンドさん共に、今回の皐月賞に出走される、ということで、意気込みを。」

「はい!絶対に勝ちます!」

「家族や応援してくださる皆様からの期待に応えられるように、頑張ります!」

 

『皐月賞』

「最も早いウマ娘が勝つ。」と言われているレースで、重賞の中でも、最も格式の高いG1に属している。

そして、今、この皐月賞に出走するウマ娘たちがインタビューを受けている。

 

チーム〈ベガ〉からはメイクデビュー後も二勝し、現在三連勝中の二人——キタサンとダイヤのコンビと、ドゥラメンテが、出走することとなっている。

というわけでトレーナーである俺も会場の端っこの方で見ているわけだが…。

 

「次にお二人の夢や今後の展望などについて語っていただいてもよろしいでしょうか。」

「私は、家族にとっての悲願であるG1レースでの勝利を目指しています。ですから、まずはその一歩として、今回の、この皐月賞で勝ちたいと考えています。」

「ありがとうございます。次にキタサンブラックさん、お願いします。」

「夢…ですか?えーと…。」

 

まずいな、と頭を抱える。確か…二人が入部してきた時に、夢はあるのか聞いたはずだったが、確かあの時、彼女は…

「お父さんみたいな立派な人になりたいんです!」

とか言ってたはずだ。

 

うん。どう考えても、今聞かれている夢や今後の展望とは違うわな。

見ている感じだと若干、パニックを起こしているようだ。

そのまま、変なことを言わなければ良いんだが…。

 

「…お父さんみたいな立派な人になることです!」

途端、会場内で笑い声が起きる。

…これは終わった後に少し、話をしとかないとな…。

——————————————————————————————

1日のトレーニング終了後、ミーティングも終わり、帰ろうとしていたキタサンを呼び止める。

「なあ…キタサン…。今日のインタビューの話なんだが…。」

と、話しかけた途端に、顔を赤くするキタサン。

 

「いや…ごめんな、気にしてるのはわかるんだが、どうしても話しておきたくてな…。お前、レースでの夢や目標ってあるか?」

「…レースでの夢や、目標…ですか…。…今は、まだ…ないです。」

若干声が震えているキタサン。

 

流石に聞き方が悪かったな、と反省する。

「ごめんな。別に無いのが悪いってわけじゃない…。別に、すぐに見つけろってもんじゃないし、それで、見つかるもんでもないよ。たださ、今後走っていく上で、夢や、走る目的は…必ず、お前を支えてくれる。本当にすぐ見つけろ、とは言わないよ。ただ、見つかったら…その時は、全力で応援する。お前たちの夢を叶えるのが…俺の役目だからな。」

「…わかりました。その時は…お願いします。」

と、頷くキタサン。

 

「お前もちょっとは言うようになったじゃねえか!新人!」

と背中を叩いてくるドゥラメンテ。

 

「いや、お前...最強のウマ娘になりたい…って...まあ、全力で応援するけどさ…。」

「夢は人それぞれ、だろ!ちゃんと応援してもらうからな!」

「あの二人…随分と打ち解けたよね…。サトちゃん…。」

「あはは…そうだね…。」

「夢に向かってバクシンしていきましょう!」

「おい!ちょっとは鎮まれよ!バクシン!」

 

同調するキタサトや背中を叩いてくるドゥラメンテ、意味不明なことを騒ぐバクシンとそれを止めるフェスタ。

——今日もチーム〈ベガ〉は賑やかだ。

 

俺の“夢”は…もう、歩み始めてるのかもな…と、少し口角が上がっているのを感じた。

—————————————————————————————

「ううん…夢…。」

その晩、ベッドで横になってもなかなか寝付けていなかった、キタサンがボソッと言葉を漏らした。

「キタちゃん、まだ眠れてなかったの?」

と、同室のダイヤがキタサンに聞く。

 

「…うん。今日トレーナーさんが言ってたことが頭から離れなくって…。なかなか寝付けないんだ…。」

「…そっか。キタちゃんも…か。」

「…へ?ダイヤちゃん…も?」

それまで閉じていた瞳を、大きく開くキタサン。

 

「インタビューであんなにはっきり話せてたのに…?」

暗がりでキタちゃんには見えてないだろうけど…と思いつつも、首を振るダイヤ。

「夢…ね。最近…よくわからなくなってきちゃって…。家族からはさ、G1で勝つ事を期待されてて…。確かにG1レースでは勝ちたいし、家族が喜ぶ顔は見たいよ?それでも…本当にそれが…私の夢なのか、ピンとこなくなってきちゃって…。私もキタちゃんと同じ。まだ、夢を見つけられてないのかもしれないな、って思っちゃって…。」

 

「…そう…だったんだ…。ありがとうね…ダイヤちゃん、話してくれて。」

「…ううん。むしろ聞いてもらえたことの方が嬉し…足音?キタちゃん、静かに!」

コツコツという足音が止まり、ドアが開く。

部屋の外から入ってくる光と、人影。

 

「やれやれ、まだ寝ていないポニーちゃんは…。いない…かな?」

と人影は何やら呟くと、静かにドアを閉めた。

再び遠ざかっていく足音。

 

「あはは…びっくりしたね?」

「ホント…びっくり…。」

 

と、釣られて、笑い出してしまうダイヤ。

「ねぇ、ダイヤちゃん、だったらさ、一緒に、探さない…?一直線に向かいたいって、そう思える夢を…。」

「キタちゃん…?」

暗くて互いの顔は見えないけど、でも目は合ってるんだろうな、とダイヤは感じていた。

「…それでさ…。いつか、そうやって、夢を見つけて…夢を…重ねるって...。」

「夢を…重ねる?」

 

「うん。ある曲の歌詞、それと...二人が言ってたこと、だよ。でも、意味は、人それぞれだと思うんだ。私がこの言葉に持たせた意味と、ダイヤちゃんが持たせる意味は…きっと違うと思う。きっと、この言葉を教えてくれた、テイオーさんや、マックイーンさんも、ね...。それは、ライバルとして、夢を重ねることかもしれないし、憧れに、向かうために、重ねられた夢だってきっとあるんだよ。それでね...ダイヤちゃん。私も、夢を重ねたい...。だから...一緒に、探さない?」

と、小指をダイヤの方に伸ばすキタサン。

一瞬困惑する彼女に、

「指切り…だよ。約束。一緒に、夢を探そう?」

と微笑みかける。

 

「うん、そうだね、約束…」

と、一瞬、深呼吸をした後、小指を繋ぐダイヤ。

「…一緒に夢を…。」

 

「あれ〜?声がするな。まだ起きているポニーちゃんがどこかに…?」

という声によって、言葉の最後は萎んでしまった。

ドアが開き、再び人影が部屋の中に映る。

 

だが、人影は、ベッドとベッドの間に跨る、繋がれた小指を見ると、少し、微笑んで、

「気のせい…だったかな?」

と言い残し、去っていった。

 

「約束…だよ?」

 

再び、真っ暗になった部屋の中で、発せられた言葉。

 

それに答えるように揺れる小指。

 

微かな二人の寝息と共に、夜は更けていくのだった。

 

 

 

 

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