ウマ娘—Dreams continue!— 作:流星の民(恒南茜)
但し、出走ウマ娘が一部入れ替わっていると言った形のため、レース結果はある程度忠実に再現したいと思っております。
皐月賞。
初めてのG1レース。
家族のみんなやトレーナーさん、チームのみんなからの応援があったから私は、今ここに立てている。
これで4戦目。
だんだんレースにも慣れてきたな、と感じてきた日々だったが、緊張感が今までの比じゃない。
それは家族のG1レースに勝って欲しいと言う悲願を叶えたいからか、それとも——私の最高のライバルと初めてぶつかり合うからか…。
…おそらく両方だろう。
でも、サトノ家のウマ娘たるもの…これぐらいのプレッシャーで、屈するわけにはいかない。
マックイーンさんの見せたあのプライドを私も…。
深く深呼吸をすると、観客のコールに応えるために、私は笑顔を向け、手を振った。
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皐月賞。
テイオーさんが一つ目の冠を掴み取ったレース。
私にとっては初めてのG1レースであり、ここであたしは走り方を大きく変えることになっている。
「逃げ」
それは決してテイオーさんの走り方とは全く違うけど…あたしのスピードとスタミナを活かすことができ、「どこまでも走っていきたい」と言う私の願いをカタチにしてくれる走り…。
前回のレースの時も、逃げに近い走り方はしたが…明確に作戦として定義したのはこれが初めてだ。
私が背負っているものの重みはきっと、私のライバル——あの人とは違う。
...だけどG1という大舞台でのあの人との戦いを…決して無駄にはしたくない。
そして——勝ちたい。
絶対に勝つ。
遠くで手を振っているあの人を真っ直ぐに見つめ、
勝負だ。
と、心の中で闘志を燃やした。
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遂に当日か…。
と、深く息を吐く。
ここまで来たら、俺にできることはもうない。
それでも、これから俺にできることは応援ぐらいしかないと言うのに…心臓の鼓動はどんどんと増していく。
それは果たして、彼女たちが勝てるか、と言う不安からか…。
…いや、違うだろう。
俺は、きっと楽しみなのだ。
キタサン、ダイヤ、ドゥラメンテ。
この三人がぶつかり合い、この大舞台で輝きを見せてくれるのが。
どんどんと高まるレースへの期待。
この感情は…トレーナーとしての感情ではなく、トゥインクルシリーズのファンとして、スタンドでウマ娘たちを応援していたあの時のものだ。
「おい、今日のレース…キタサンブラックとサトノダイヤモンドが出走するらしいぞ。」
「ああ、あの時の二人だろ。…大きくなったなあ。」
ふと、観客の会話が聞こえてきた。
俺の斜め上にいる、二人の青年のもの…だろうか。
「ドゥラメンテも強敵だが…あの二人は果たして、どこまで健闘するか、だな。」
「ああ…。俺たちにできる事は…応援ぐらいだな。ウマ娘の邪魔になることもあるが…それでも…応援、したいだろ?」
「どうした、急に。当然だろ?」
とクイッとメガネをあげる音。
この二人も相当なトゥインクルシリーズのファンなのだろう。
しかし先程から息がぴったりだ。
まるで、彼女たち二人のように。
会話に聞き耳を立てながら、レースが始まる刻を俺は…いや、観客席にいる全員が、待ち構えていた。
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4枠7番キタサンブラック。
指定されたゲートに入る。
ふと、隣を見ると、サトノクラウンさんがいた。
そういえば、今回出走するって言ってたっけな。
と、インタビュー会場にもいたことを思い出す。
ドゥラメンテさんもクラウンさんもそして、ダイヤちゃんも…。
みんな、大切な友達で…そして間違いなく、強敵だ。
でも、たとえ、そうだったとしても、私は…
私は、絶対に…
勝つ!
『さあ、ゲートが開かれました!各ウマ娘、横一列に並びます。』
今回の作戦は逃げ、ともう一度頭の中で反芻しておく。
であれば、まずは先頭へと抜け出さなければならない。
地面を強く踏み締め、最初から飛ばしていく。
横一列に並んでいたウマ娘たちも次々と居場所を決めていき、後ろに収まる。
ダイヤちゃんやドゥラメンテさんも、その中に加わったようだが私の作戦は逃げ。
絶対に間違ってはならない。
先を、走っていなければいけないのだ。
前へ、前へ、となんとか抜け出すことに成功し、一旦内側へ入っていこうとした時だった。
突然、私の、更に前方へと出てくる影。
思わず、さらにスピードを上げてしまいそうになるが、
「逃げに焦りは禁物だ。」
と、トレーナーさんの言葉を思い出し、なんとか踏みとどまる。
サイレンススズカさんや、ツインターボさんが魅せる大逃げ、彼女たち自身のそれを為せる、スピードがあってこそ成立する走り。
…私には、まだ早い。
一旦、相手の消耗を見つつ、後ろを塞ぐために、内側へと入っていく。
今、前方にいるのは一人なので、私が二番手と言ったところだろうか。
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無事、キタサンは内側に入ることができたようだ。
ダイヤ、ドゥラメンテも、後ろに収まることができたようで、全体的に安定してきている。
見ているだけではあるが…俺も、少し胸を撫で下ろす。
キタサンの前にいる娘も少しずつ消耗が見えてきている。
この調子であれば、抜いて一番手に躍り出るのも容易だろう。
しかし、後ろのウマ娘たちも少しずつ動きを見せてきている。
差し掛かった第四コーナー。
本当の勝負は…ここからだ。
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遥か前を走るキタちゃん。
私の走りは差し。
以前の、私の逃げは焦りからだった。
あの体力テストの時のような焦りは、今は——ない。
第四コーナーを抜け、最終直線。
差し切るなら、今しかない。
外に抜け出し、一気に先頭を見据え、スパートをかける。
しっかりと私の足を跳ね返してくれる地面。
遠ざかっていく景色。
もう目の前にはキタちゃんが見える。
…勝負だ、キタちゃん!
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最終直線。
先頭の消耗が見えてくる。
今なら!
下がってきた先頭。
スパートをかけ、一気に先頭の座を奪い取る。
後ろから感じる強い気配。
見なくてもわかる。
ダイヤちゃんだ。
それでも…負けないッ!
絶対に…逃げ切るんだ!
もう目の前に見えてきたゴール。
抜け出しているのはわかっている。
それでも…横から迫ってきた影は、私を追い越して行った。
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目の前にキタちゃんが見える。
外に出てきて、進路を何度か塞がれるが、何とか、前へと抜け出す。
先頭の座を掴んだキタちゃん。
確かに、すごいスピードだ。
しかも、あんなに、前を走っていたのに、全く疲れを見せていない。
これが…キタちゃんの本気…。
…それでも…それでも…私は…
絶対に勝つ!
進路に障害物は、ない。
強く、強く、地面を踏み締め、ただ先頭だけを目指し、足を動かす。
少しずつ縮まる距離。
キタちゃんの後ろ姿がはっきりと見える。
さらに、さらに、前へ!
そして…
——並んだ。
隣を走るキタちゃん。
頬を流れていく一滴の汗まで、はっきり見える。
それでも、並ぶだけじゃ…だめだ。
もっと前に進まなきゃ。
少しずつ離れていく距離。
後ろへと下がっていくキタちゃん。
抜け出したと、はっきり分かった。
ゴールは完全に目の前。
それでも——勝利の女神が誰に微笑むかは最後まで誰にもわからなかった。
勝負において、勝ちを確信していい瞬間なんか、なかったんだ。
私の、更に外から一つの影が飛び出し、抜いていく。
まだ影は目の前に、手が届くほど近くに、あるというのに…
もうゴールは限りなく近かった。
抜けない。
と、脳が一瞬で判断を下す。
『ドゥラメンテ、ゴールイン!これほどまでに強いのか!』
実況が叫び、勝者の名前がレース場中に響き渡った。
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「はぁはぁ…。」
3の横に描かれた自分の番号を見ながら、肩で息をするキタサン。
あと一歩だったけど、その一歩は途方もないぐらい長くて…。
ダイヤちゃんにもドゥラメンテさんにも結局負けちゃった…。
と、もう一度深く息を吸う。
それでも、不思議なことに湧いてきた感情は悔しさだけではなかった。
「ダイヤちゃん…今日は、ありがとう。」
目の前で呼吸を整えていたダイヤに話しかけるキタサン。
「…キタちゃん?」
と不思議そうな顔をするダイヤ。
「…今日のレース、ダイヤちゃんと全力で戦えて、とっても楽しかった!」
それを聞いた途端、頬が緩んだかと思うと、笑い出すダイヤ。
「あはは…それでこそ、いつものキタちゃんだよ。うん!私も楽しかった。」
「ダイヤちゃん、次は負けないからね!」
「うん!キタちゃん、私も…次は…一着を取る!キタちゃんにも勝つからね!」
「その意気だ。」
と、急に二人の肩に手が乗る。
ビクッとする二人。
「「ドゥラメンテさん!?」」
「二人とも、いい走りだったぜ。正直、かなり危なかったしな。でも、これからも鍛錬を積んで、次もアタシが勝つ!」
それを聞いて、真っ直ぐにドゥラメンテを見据えるキタサン。
「私もです!今回は負けちゃったけど…トレーニングを積んで、ダイヤちゃんにもドゥラメンテさんにも勝って、次は私が一着を取ります!」
途端、笑い出すドゥラメンテ。
「…そうか!だったら、私たちはライバルだ!ダイヤもキタサンも次のレースを楽しみにしてるぜ!」
そう言って、彼女はトレーナーの元へと戻っていく。
「ライバル出現だね、キタちゃん?」
「うん!でも…私は勝つ!次は私が一着を取るよ。」
中山の澄んだ青空に彼女たちの声が吸い込まれていった。
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「ふぅ…」
と、ウイニングライブを見ながら、息を吐く。
今回は、三人分の話を聞いて、準備を手伝って…とやっていたから、入り口付近での立ち見に放ってしまったが、彼女たちの見事な走りを見る事ができて、俺の心は満ち足りていた。
やっぱりトゥインクルシリーズは最高だ。
と、頷く。
その時だった。
「次は…絶対に勝つ。」
と、誰かが、ボソッと呟いたのが聞こえてきた。
思わず、そちらを見る。
入り口付近でライブを見ている黒髪のウマ娘。
一見普通の光景ではあったが…彼女の頬には一粒の涙が流れていた。
確か、彼女も今日走っていた…サトノクラウンと言ったか。
勝者の裏には当然、敗者がいる。
それが、絶対のルールで、曲がることはない。
だというのに、なぜか俺は彼女の横顔から目が離せなかった。
「絶対に勝つ。」
と、彼女の漏らした声が聞こえてきたから…だろうか。
将来、彼女は、強敵になると…うまく説明はできないが、なんだかそんな予感がした。
折れない心は、必ず何かを成し遂げる。
そう昔から、決まっているのだから。
次回は箸休めも兼ねて、夏合宿となります。
何ならその次も、3.5周年を迎えたサイゲの某作品とのクロスオーバーにしちゃえ!
と、考えていたのですが…流石に、それは無しで行きます。
それでは、次回もよろしくお願いします。
ストーリー展開について
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早い
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遅い
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これぐらいで良い