ウマ娘—Dreams continue!—   作:流星の民(恒南茜)

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今回から時々ifが入ります。
但し、出走ウマ娘が一部入れ替わっていると言った形のため、レース結果はある程度忠実に再現したいと思っております。


第8R 輝きとその影で

皐月賞。

初めてのG1レース。

家族のみんなやトレーナーさん、チームのみんなからの応援があったから私は、今ここに立てている。

 

これで4戦目。

だんだんレースにも慣れてきたな、と感じてきた日々だったが、緊張感が今までの比じゃない。

それは家族のG1レースに勝って欲しいと言う悲願を叶えたいからか、それとも——私の最高のライバルと初めてぶつかり合うからか…。

…おそらく両方だろう。

 

でも、サトノ家のウマ娘たるもの…これぐらいのプレッシャーで、屈するわけにはいかない。

マックイーンさんの見せたあのプライドを私も…。

深く深呼吸をすると、観客のコールに応えるために、私は笑顔を向け、手を振った。

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皐月賞。

テイオーさんが一つ目の冠を掴み取ったレース。

私にとっては初めてのG1レースであり、ここであたしは走り方を大きく変えることになっている。

「逃げ」

それは決してテイオーさんの走り方とは全く違うけど…あたしのスピードとスタミナを活かすことができ、「どこまでも走っていきたい」と言う私の願いをカタチにしてくれる走り…。

 

前回のレースの時も、逃げに近い走り方はしたが…明確に作戦として定義したのはこれが初めてだ。

私が背負っているものの重みはきっと、私のライバル——あの人とは違う。

...だけどG1という大舞台でのあの人との戦いを…決して無駄にはしたくない。

 

そして——勝ちたい。

 

絶対に勝つ。

 

遠くで手を振っているあの人を真っ直ぐに見つめ、

勝負だ。

と、心の中で闘志を燃やした。

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遂に当日か…。

と、深く息を吐く。

ここまで来たら、俺にできることはもうない。

それでも、これから俺にできることは応援ぐらいしかないと言うのに…心臓の鼓動はどんどんと増していく。

それは果たして、彼女たちが勝てるか、と言う不安からか…。

 

…いや、違うだろう。

俺は、きっと楽しみなのだ。

キタサン、ダイヤ、ドゥラメンテ。

この三人がぶつかり合い、この大舞台で輝きを見せてくれるのが。

どんどんと高まるレースへの期待。

この感情は…トレーナーとしての感情ではなく、トゥインクルシリーズのファンとして、スタンドでウマ娘たちを応援していたあの時のものだ。

 

「おい、今日のレース…キタサンブラックとサトノダイヤモンドが出走するらしいぞ。」

「ああ、あの時の二人だろ。…大きくなったなあ。」

ふと、観客の会話が聞こえてきた。

俺の斜め上にいる、二人の青年のもの…だろうか。

「ドゥラメンテも強敵だが…あの二人は果たして、どこまで健闘するか、だな。」

「ああ…。俺たちにできる事は…応援ぐらいだな。ウマ娘の邪魔になることもあるが…それでも…応援、したいだろ?」

「どうした、急に。当然だろ?」

とクイッとメガネをあげる音。

 

この二人も相当なトゥインクルシリーズのファンなのだろう。

 

しかし先程から息がぴったりだ。

まるで、彼女たち二人のように。

会話に聞き耳を立てながら、レースが始まる刻を俺は…いや、観客席にいる全員が、待ち構えていた。

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4枠7番キタサンブラック。

指定されたゲートに入る。

ふと、隣を見ると、サトノクラウンさんがいた。

そういえば、今回出走するって言ってたっけな。

と、インタビュー会場にもいたことを思い出す。

 

ドゥラメンテさんもクラウンさんもそして、ダイヤちゃんも…。

みんな、大切な友達で…そして間違いなく、強敵だ。

でも、たとえ、そうだったとしても、私は…

私は、絶対に…

勝つ!

『さあ、ゲートが開かれました!各ウマ娘、横一列に並びます。』

今回の作戦は逃げ、ともう一度頭の中で反芻しておく。

であれば、まずは先頭へと抜け出さなければならない。

 

地面を強く踏み締め、最初から飛ばしていく。

横一列に並んでいたウマ娘たちも次々と居場所を決めていき、後ろに収まる。

ダイヤちゃんやドゥラメンテさんも、その中に加わったようだが私の作戦は逃げ。

絶対に間違ってはならない。

先を、走っていなければいけないのだ。

 

前へ、前へ、となんとか抜け出すことに成功し、一旦内側へ入っていこうとした時だった。

突然、私の、更に前方へと出てくる影。

思わず、さらにスピードを上げてしまいそうになるが、

「逃げに焦りは禁物だ。」

と、トレーナーさんの言葉を思い出し、なんとか踏みとどまる。

 

サイレンススズカさんや、ツインターボさんが魅せる大逃げ、彼女たち自身のそれを為せる、スピードがあってこそ成立する走り。

…私には、まだ早い。

一旦、相手の消耗を見つつ、後ろを塞ぐために、内側へと入っていく。

 

今、前方にいるのは一人なので、私が二番手と言ったところだろうか。

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無事、キタサンは内側に入ることができたようだ。

ダイヤ、ドゥラメンテも、後ろに収まることができたようで、全体的に安定してきている。

見ているだけではあるが…俺も、少し胸を撫で下ろす。

 

キタサンの前にいる娘も少しずつ消耗が見えてきている。

この調子であれば、抜いて一番手に躍り出るのも容易だろう。

しかし、後ろのウマ娘たちも少しずつ動きを見せてきている。

 

差し掛かった第四コーナー。

 

本当の勝負は…ここからだ。

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遥か前を走るキタちゃん。

私の走りは差し。

以前の、私の逃げは焦りからだった。

 

あの体力テストの時のような焦りは、今は——ない。

第四コーナーを抜け、最終直線。

差し切るなら、今しかない。

 

外に抜け出し、一気に先頭を見据え、スパートをかける。

しっかりと私の足を跳ね返してくれる地面。

遠ざかっていく景色。

 

もう目の前にはキタちゃんが見える。

 

…勝負だ、キタちゃん!

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最終直線。

先頭の消耗が見えてくる。

今なら!

下がってきた先頭。

 

スパートをかけ、一気に先頭の座を奪い取る。

後ろから感じる強い気配。

見なくてもわかる。

ダイヤちゃんだ。

 

それでも…負けないッ!

絶対に…逃げ切るんだ!

もう目の前に見えてきたゴール。

 

抜け出しているのはわかっている。

それでも…横から迫ってきた影は、私を追い越して行った。

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目の前にキタちゃんが見える。

外に出てきて、進路を何度か塞がれるが、何とか、前へと抜け出す。

先頭の座を掴んだキタちゃん。

確かに、すごいスピードだ。

 

しかも、あんなに、前を走っていたのに、全く疲れを見せていない。

これが…キタちゃんの本気…。

…それでも…それでも…私は…

絶対に勝つ!

 

進路に障害物は、ない。

強く、強く、地面を踏み締め、ただ先頭だけを目指し、足を動かす。

少しずつ縮まる距離。

 

キタちゃんの後ろ姿がはっきりと見える。

さらに、さらに、前へ!

そして…

——並んだ。

 

隣を走るキタちゃん。

頬を流れていく一滴の汗まで、はっきり見える。

それでも、並ぶだけじゃ…だめだ。

もっと前に進まなきゃ。

 

少しずつ離れていく距離。

後ろへと下がっていくキタちゃん。

抜け出したと、はっきり分かった。

ゴールは完全に目の前。

 

それでも——勝利の女神が誰に微笑むかは最後まで誰にもわからなかった。

勝負において、勝ちを確信していい瞬間なんか、なかったんだ。

 

私の、更に外から一つの影が飛び出し、抜いていく。

まだ影は目の前に、手が届くほど近くに、あるというのに…

もうゴールは限りなく近かった。

 

抜けない。

 

と、脳が一瞬で判断を下す。

 

『ドゥラメンテ、ゴールイン!これほどまでに強いのか!』

 

実況が叫び、勝者の名前がレース場中に響き渡った。

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「はぁはぁ…。」

3の横に描かれた自分の番号を見ながら、肩で息をするキタサン。

 

あと一歩だったけど、その一歩は途方もないぐらい長くて…。

ダイヤちゃんにもドゥラメンテさんにも結局負けちゃった…。

と、もう一度深く息を吸う。

 

それでも、不思議なことに湧いてきた感情は悔しさだけではなかった。

「ダイヤちゃん…今日は、ありがとう。」

目の前で呼吸を整えていたダイヤに話しかけるキタサン。

「…キタちゃん?」

と不思議そうな顔をするダイヤ。

 

「…今日のレース、ダイヤちゃんと全力で戦えて、とっても楽しかった!」

それを聞いた途端、頬が緩んだかと思うと、笑い出すダイヤ。

 

「あはは…それでこそ、いつものキタちゃんだよ。うん!私も楽しかった。」

「ダイヤちゃん、次は負けないからね!」

「うん!キタちゃん、私も…次は…一着を取る!キタちゃんにも勝つからね!」

 

「その意気だ。」

と、急に二人の肩に手が乗る。

ビクッとする二人。

 

「「ドゥラメンテさん!?」」

「二人とも、いい走りだったぜ。正直、かなり危なかったしな。でも、これからも鍛錬を積んで、次もアタシが勝つ!」

それを聞いて、真っ直ぐにドゥラメンテを見据えるキタサン。

 

「私もです!今回は負けちゃったけど…トレーニングを積んで、ダイヤちゃんにもドゥラメンテさんにも勝って、次は私が一着を取ります!」

 

途端、笑い出すドゥラメンテ。

「…そうか!だったら、私たちはライバルだ!ダイヤもキタサンも次のレースを楽しみにしてるぜ!」

そう言って、彼女はトレーナーの元へと戻っていく。

 

「ライバル出現だね、キタちゃん?」

「うん!でも…私は勝つ!次は私が一着を取るよ。」

 

中山の澄んだ青空に彼女たちの声が吸い込まれていった。

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「ふぅ…」

と、ウイニングライブを見ながら、息を吐く。

今回は、三人分の話を聞いて、準備を手伝って…とやっていたから、入り口付近での立ち見に放ってしまったが、彼女たちの見事な走りを見る事ができて、俺の心は満ち足りていた。

やっぱりトゥインクルシリーズは最高だ。

と、頷く。

 

その時だった。

「次は…絶対に勝つ。」

と、誰かが、ボソッと呟いたのが聞こえてきた。

 

思わず、そちらを見る。

入り口付近でライブを見ている黒髪のウマ娘。

一見普通の光景ではあったが…彼女の頬には一粒の涙が流れていた。

確か、彼女も今日走っていた…サトノクラウンと言ったか。

 

勝者の裏には当然、敗者がいる。

それが、絶対のルールで、曲がることはない。

だというのに、なぜか俺は彼女の横顔から目が離せなかった。

 

「絶対に勝つ。」

 

と、彼女の漏らした声が聞こえてきたから…だろうか。

 

将来、彼女は、強敵になると…うまく説明はできないが、なんだかそんな予感がした。

 

 

折れない心は、必ず何かを成し遂げる。

 

 

そう昔から、決まっているのだから。




次回は箸休めも兼ねて、夏合宿となります。
何ならその次も、3.5周年を迎えたサイゲの某作品とのクロスオーバーにしちゃえ!
と、考えていたのですが…流石に、それは無しで行きます。
それでは、次回もよろしくお願いします。

ストーリー展開について

  • 早い
  • 遅い
  • これぐらいで良い
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