般若†無双 ドキッ!情報戦で有利を取ろう!カヤクもあるよ   作:ハエ缶

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第十話

 

「...連合?」

「あぁ、連合。本当に反乱軍を撃退し、帝を救うことが目的だと言うのであれば、手柄云々より救出が優先されるなら連合を組むべきだ」

 

俺の言葉に対し、荀文若は信じられないようなものを見る目をして、曹孟徳は納得出来ないと言わんばかりの表情だ。

 

「それは...私達が、手柄に固執してると言いたいのかしら?」

「違うと?」

「程遠志!言葉を慎みなさい!華琳様に失礼でしょ!」

 

言えって言ったから言ったのに....2人して険悪な表情になってるのはどうしたものか、ふぅん....

 

「失礼、言葉が過ぎました。俺個人として思うことを別に帝生かす必要は無いかと、宦官らの行いによってここまで天下が荒れたと言いますが、それを自由にさせたのは帝でございます。

いくら歳若いといえども言い訳に過ぎませぬ、生まれ落ちたその日から帝になる事が決まっていたのですから、何らかの手を打つべきだったと思います」

「あんた何言ってるのかわかってるの!?」

 

荀文若がほえるかかるが無視をする。今ここではっきりさせておくべきだからだ。

 

「打つべき手が打てず、手遅れだと言うのなら滅ぼしてしまえは良い。曹孟徳、俺はあの時言った通り君の作る世界が見たい。それが早まるなら帝など見殺しにして、漢帝国を滅ぼすべきだ」

「それは、この先この世の中がどうなるか分かって言ってるのかしら?」

「治める主を失った国は、やがて新しく主を求める。よって、内乱が起きる。漢帝国で言うならば、再び群雄割拠の時代が来るだろうな」

 

荀文若が曹孟徳に対し、言葉を荒げながらも意見をしているが曹孟徳は聞く耳を持たず、面白いものを見つけたように楽しそうな顔をしている。

 

「待ってくれ、華琳!」

「北郷...?」

 

は?はぁ!?何で御使い君がここにいるんだ、結界は確かに命令してた筈だぞ。御使い君のせいで、曹孟徳が周りの話を聞く体勢になっている。やってらんないぞ...

 

「そうですよ、華琳様!帝を蔑ろにするのは、漢帝国の臣民にあるまじき行為です!他国に知られれば、今度は我々に対して連合軍が組まれてしまいます!ここは程遠志の策通り連合軍を組んで帝の救出に参りましょう!」

「桂花....」

 

あぁ....荀文若の言葉にも反応してしまった。

 

「程遠志、貴方の言いたい事は伝わったわ。今ここで漢帝国を裏切るのは簡単、でも桂花の言う通り次は私達に対して連合軍が組まれる可能性があるわ。そうなれば国力や兵力を見ても、私達が不利でしょう。

よってここは、最初の策であったこちらで連合を組むようにしましょう。連合軍は貴方が選別しなさい、勧誘は私が行うわ。反董卓連合が解散した今、各軍は自領に戻っていくでしょう、時間がないわ」

「でしたら、公孫瓚、馬超、劉備、孫策軍をお声掛けください」

 

まあ、そうなるよな。取り敢えずほしいのは速力、次に兵力。

戦うと決まったからには負けるわけにはいかない。

 

「いいでしょう。けど、雪蓮は未だ袁術軍傘下。確実に参陣するとは言えないわよ」

「結構」

 

それは予想通り。

貸し借りはもう無い為、来るかどうかは天に任せるしかない。

 

「良いわ。桂花、今名前の上がった軍に伝令を!内容は待機、話がある為戻るのをやめるよう伝えなさい。その後は再びここに戻って、程遠志と策を煮詰めなさい」

「はっ!」

 

曹孟徳と荀文若は既に退席し、この部屋には俺と御使い君だけが残った。

御使い君はと言えば、気不味そうに辺りを見回しながらも俺にチラチラと視線を向けている。こきは無視でも良いが、結界を抜けてきた事に関しては疑問が残っている。

 

「こうやって話すのは初めてかな、はじめまして天の御使い殿。俺は程遠志だ、好きに呼んでくれ」

「あ、あぁ。俺は北郷一刀、姓が北郷で名が一刀なんだ。華琳から聞いたけど、真名交換はしないんだろう?気軽に北郷とも一刀とも好きな方を呼んでくれ」

 

俺の自己紹介に対して、御使い君も自己紹介を返してくる。その中で重要だったことは、曹孟徳が俺に関しての話をしている点だろう。天幕に行った時もそうだったが、思ってた以上に2人の仲は深いらしい。

 

「よろしく頼むよ、北郷君。ところでこの部屋に入る時に、何か止められたりはしなかったのかい?」

「こちらこそ。それに関してではあるが、特に止められたりはなかったぞ。衛兵なんかも特にいなかったから....なにかあったのか?」

「いや、なかったならいいんだ」

 

俺の反応に不安感を覚えたのか、途中から不安そうな反応をしていたが不安なのは此方も同じだ。俺の命令に背くとは思えない、という事は緊急事態に見舞われたのかも知れないな。

 

「周毖」

「はっ。申し訳ございません、私が通しました。何時でも首を差し出す所存でございます」

「...ん、なら良いよ」

 

呼び掛けに応じ、姿を表す周毖。表情に翳りが見えるが、責めるつもりはない。周毖が通したという事は、何か思う事があったのだろう。

一連の流れに、驚いた表情をしていた御使い君は今では興味深そうに此方を見ているが、情報を漏らすわけないので無視。

 

「首は要らない。亜水に王方達を呼び戻すよう伝えてくれ、辛紀には俺に付くよう。双淵には再び洛陽に向かい様子を探るように伝えて、周倉には曹孟徳の警護を命令してくれ」

「かしこまりました」

 

周毖の姿が再び消えれば、御使い君が興味深そうにしたまま話しかけてくる。

 

「程遠志って軍権を持っていないのに、そんな自由にしていいのか?」

「アイツらは俺の部下であり、家族だ。それを他人にとやかく言われる筋合いは無い。家族とどう行動しようと俺の自由に決まっているだろう」

「いや、そうじゃないんだ。そういう風にしていたら、謀反を疑われても仕方ないんじゃないか?」

「....?無能の代わりに仕事して、誰が困るんだ。悪いのは無能だろう?有能な人間が、当たり前に仕事して疑われるのが仕方ないなら、その国は滅ぶだけだろう。漢帝国みたいにな」

 

ここまで言えば、返答に困ったのか困り顔をしたまま、御使い君は硬直した。周毖は何を考えて通したのだろうか、そのまま意識から御使い君を外しこの後のことに関して考える。

 

曹操軍では軍権が確かに無いが、俺の個人の軍を率いて援軍として駆け付ければ問題はない。

問題があるとすれば俺の兵がまともで無いこと。

更にそれを率いるという事は反乱を起こさないか疑いをかけられてしまうことだろう。

 

そんな事を考えていれば荀文若が戻ってきた。それに気付いたのか、御使い君はそそくさと退出していく。

それを視界に一度納めては、意図的に逸らした荀文若に対して少し意外に思い話を切り出す前に、荀文若が口を開いた。

 

「さっきアンタの部下を見たけど、今度は何を考えているの?」

「曹孟徳の作る世への過程かな」

 

俺の答えを納得出来ない表情だったが、それも束の間。

 

「そう、まあいいわ。それよりも、アンタの変化が気になるわ」

「と、いうと?」

「アンタの雰囲気に違いを感じるってことよ」

「そりゃあ、いつまでも同じだと俺を勘付かれるでしょ。諜報役として生きてる訳で、潜伏するにあたって俺が俺だと気付かれる訳にはいかないからね」

「今のアンタもそうだと?」

「俺を知るのは俺を知っている奴だけだよ」

 

ふと荀文若の方を見れば、何とも言い難い表情をしてらっしゃる。

怒りとも哀れみとも取れる、しかしその中には納得と理解も感じるような表情だった。

 

「何その顔」

「別に...何も無いわよ。もう良いから、華琳様に言われていたように策を考えるわよ」

「何も策が浮かばないからって俺に泣き付いてたくせに」

「はぁ!?男の分際でちょっと戦上手だからって、言って良いことと悪いことがあるでしょ!」

「は?」

 

こ、このネコミミ女は何を言っているんだ?変装も控えめにしているのに、気付いてないとか有り得るのか?だから兵を全滅寸前にまで追い込まれるんじゃ無いか?

 

「何よ!言いたい事があるんだったら言いなさいよ、ちょっとは認めてあげなくも無いかなって思ってたのに、蓋を開けたら所詮は男ね。ガッカリよ、ホントに!」

 

呆けていたら追い討ちの罵倒を受けてしまった、元々毒舌だとは聞いていたがここまで酷いか。そりゃあ御使い君も逃げるわ、文官すらも寄り付かないって話は事実だな。

 

「おい荀文若」

「何よ、声を女性のモノにしても無駄よ。話しかけないで貰えるかしら?華琳様はああ言ってらしたけど、策の内容は私一人で考えるから出て行って」

 

こいつは軍師クビになれば良いのに....

 

「おい!荀文若!」

「な、何よ早く出ていけって「俺の性別はじゃねぇ!」はぁ!?」

「確かにおちょくったし、性格もお世辞でも良いとは言えない!だが男じゃねぇ!」

 

未だ呆けている荀文若に対し、上着を肌蹴させサラシを取り払い胸部露出させる。

 

「はぁ!?あ、アンタ何脱いでるのよ!」

「作り物じゃないぞ!自前だ、何なら荀文若、お前よりある!」

「そ、そんな事は良いから!早くしまいなさい!」

 

未だ強調させた胸部に対し、荀文若が服の乱れごと直すため掴み掛かってくる。軍師如きに遅れを取るほど鈍っていない為、荀文若の手を掴み返して自分の胸部にあてがう。

 

「どうだ!本物だ、勘違いも解けただろ。謝れ!」

「わかったから!分かったから離しなさい、こんなとこ誰かに見られ「あら、楽しそうな事になってるわね。二人共」.....たら、「どうなると言うのかしら?」」

 

曹孟徳の乱入により、場の空気が冷水を掛けられたように静まった。それと同時に俺自身も冷静になり、荀文若の手を離すも今度は荀文若が俺の手を掴み、離す気配がない。

 

「おい、荀文若。解放しろ、今ならお前が色欲に煽られた所為に出来る。早く俺を解放しろ」

「ははははは離す訳無いじゃない!これも全てアンタの所為でしょ!アンタが服を脱いで、私の手を無理矢理に掴んでアンタの胸を触らせて来たんじゃない!」

「おい、変な言い掛かりはよして貰おうか。俺にそんな趣味はない、お前が無理矢理俺の服に手をかけた。そしてそのまま、あれよあれよでこの状況じゃないか」

 

良い加減に服を着たいんだ、離してくれ荀文若。荀文若もしつこいが、曹孟徳を見ればにこやかな笑顔の裏に見えているドス黒い何かも不安を煽ってくる。

更に曹孟徳の後ろに控えている、周毖のハイライトの消えた目が特に嫌な気配がある。何をどうすればあのオーラを醸し出すというんだ。

 

「あら、程遠志ったらあれよあれよでその状態だと言うのなら、次は貴女を夜伽に呼びましょうかしら?」

 

特大の油が注がれた。

その一言で荀文若が暴走し、周毖だけに飽き足らず辛紀や周倉もやってきた。唯一周倉だけは、これを好機と捉えたのか披露宴は任せろだの調子に乗った為、辛紀と周毖によって袋叩きにされていた。

荀文若の拘束が解かれたことで、サラシを巻き直して衣服の乱れを直しておく。その頃には、曹孟徳によって荀文若の暴走も収束に向かっていた。

 

「曹孟徳、その手の冗談はよしてくれ。俺の初めては、賈駆か董卓様と決めている。いくら君が相手でもそこを譲る気はない」

「程遠志様、後でお話しがあります」

 

この宣言に対し、未だハイライトが戻っていない周毖が、辛紀を伴い優しい口調で告げて来たのだが不安しかない為やめてほしいところだ。

 

「そんな事はどうでもいいのよ。まさか二人して遊んでいるとは思っていなかったわ、先に私の方から報告しておくけれども、やっぱり雪蓮の方はダメだったわ。その代わりに、白蓮と桃香、馬超率いる涼州軍が参加してくれたわ」

「...ほぉ、孫策ら飼猫軍は最初から期待して無かったが、涼州軍の参加は大きい。なら、作戦の第一段階は決まったな。荀文若、俺が粗方の作戦概要を説明する。それを添削して煮詰めてくれ」

「良いけれど、煮詰めている間アンタは何をするのって言う訳?」

「それは後だ。時間は限られているからな」

 

曹孟徳の報告通りなら、俺の概要を煮詰めれば上手くいく。伏龍と鳳雛を持つ劉備義勇軍もいて、王佐の才の荀文若がいるのだから。

渋々と言った感じで頷く荀文若をよそ目に、曹孟徳は続きを促す。

 

「第一段階では、公孫瓚が持つ白馬義従と涼州騎馬隊で洛陽まで駆け、包囲する。この第一段階では本軍が来るまで包囲し続ける必要がある、本軍が来るまでに包囲を抜けられようモノなら全てが無に帰るだろう。問題は反乱軍の攻撃を一手に引き受ける為、兵の損傷が激しいことだろう。それにより、出し惜しみをされた場合は一気に瓦解するだろう」

 

それ以外にも白馬義従はあくまで弓兵なのだ。近接戦に持ち込まれでもしたら、苦しいのは此方側になるだろう。

 

「そうでしょうね、確かに涼州軍の騎馬隊は速度がある。それについて行くならば白蓮の白馬隊くらいでしょうね、両方とも両軍の柱になる存在よ。出し惜しみしても仕方ないでしょうね、それに対しては?」

「ない。そこは大将たる君が考えてくれ」

 

最初納得し掛けた曹孟徳も、流石にこれには難色を示した。だがこれしかないのだからいい頑張ってもらいたい。

 

「そういう顔はしないでくれ、曹孟徳たる君にしか出来ない事だ。そして第二段回だ。これに関しては力技のみだろう。各軍本隊が到着次第一気に攻勢に転じる必要がある、この時の問題は軍が足りない事。涼州軍、公孫瓚と義勇軍、そして曹操軍。これだけでも足らないのに、曹操軍は根本的に兵が足りない」

「解決策は?」

「俺の部下に華雄軍と呂布軍、更に俺の隊を呼びに行かせた。呂布軍は動かないだろうし、華雄軍は賭けになるだろう。俺の隊はそのまま曹操軍に加え周倉が指揮を取る」

「それでも兵が足りないじゃない」

 

俺の答えに荀文若が噛み付く、だがそれは俺にとって援護射撃となった。

 

「そう。だから曹孟徳に提案だ。俺はそれに合わせて、俺の私兵を呼び寄せたい」

「それでどうなるというのかしら?」

「俺の私兵は8000だ、それも俺の隊の人員とは別でだ。それを今後も曹操軍として扱わずに、俺の私兵として扱いたい。曹操軍としては軍権を失ったのは確かだ、それでも荀文若の言ったように軍がいない。兵が足りないのだ。曹孟徳に対し牙を剥くことはないと誓おう、許可をくれ」

 

このやりとりに荀文若は絶句しているが、曹孟徳は深く考える素振りをみせていた。

 

「断れば?」

「作戦を練り直す時間が足りず、我々の動きを捕捉され洛陽が火に包まれ、同じ被害を長安も味わうだろう」

 

俺の返答で、再び馬が静まり返った。

 

その沈黙を破ったのは、曹孟徳だ。

 

「いいでしょう。そちらは好きにやりなさい、早速桂花は煮詰めて報告しなさい。こちらの作戦はこちらで行うわ、程遠志は貴女の出来る限りの準備をしなさい」

 

返事の色は良い、あとはあいつらを興奮させないように持ってくるだけ。それが一番不安なのだが、何とかする他に無いだろう。

 

一度領地に戻る為退出する途中で、周毖と出会した所為で出立が遅れたのは俺のせいでは無い....

 

 

 

 

 

 


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