虐待少女が転生するそうです   作:雪白(´・ω・`)

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最近暑くなってきましたね。
溶ける様な暑さなのにまだ梅雨が明けてないとは、、、
今年の夏も頑張りましょう!


出会いとはいつも唐突に来るものである

 涼しい風が頬を撫でる。

ひんやりとする地面は私の体温を奪っていくのだが、何処か心地よさがある。耳を澄ませてみよう。

 奥の方からポツン……ポツンと雫の垂れる音が聞こえる。幻想的な事を連想させる空間。

 もう少しこの感覚を味わっていたいと思いながらも私は重い瞼を開けた。

 

「やっと起きたか……」

 

 視線を前にやると竜が一体。

何処までも沈んでいく様なそんな黒色を持つ竜。

——————ヴェルドラが其処に居た。

 

「最近我も暇なの」

 

 目を擦りながら仕方じゃないでしょ、と視線を送る。

起きたばかりで、まだヴェルドラがぼやけて見えるのだが呆れた表情で有ることは何となくわかる。

 

「すまぬな、此処から一歩も動けぬが故フィノラとは雑談しか出来ぬのだ……」

「ううん、我はヴェルドラとのお話楽しいよ」

 

 笑顔で言うとヴェルドラもそうかそうかと上機嫌になる。

 実際、私自身ヴェルドラとの雑談は自分の知らない世界の価値観を知れて面白く思っている。でも、ここ数日の間ずっと雑談だけだと話のネタも無くなって来るばかりで、何か他の事を取り入れたい気持ちはあった。

 

 ヴェルドラと二人で何か面白いことは無いかと頭を悩ませる。

すると閃いた様子のヴェルドラが前足?なのか手なのか。ポンと叩き提案する。

 

「フィノラよ、知識とはその目で見て初めて知識と言えようぞ!」

 

 何を思いついたのだろうと期待を寄せていただけに、

ドヤ顔で此方を見るヴェルドラに今度は私が呆れた顔をした。当たり前のことを当たり前に言って何故そんなにドヤれるんだろう。

 

「待て待て、残念そうな顔をするでない」

「……つまりどういう事?」

「フィノラは我と喋ってばかりで、此処の事をよく知らぬだろう?

 ——————つまりはだな、少し見て回るのもいいのではないか?」

 

 成程、確かに私はヴェルドラのいるこの場所(洞窟の最奥)しか知らない。ヴェルドラと真逆、私のいる側には外に通ずる道が続いているのだが、実際に行ったことも行こうとしたこともないため、ヴェルドラとの雑談で得た知識しかないんだった。

 一回ぐらい、洞窟探検をするのもいいかも!

そう思うと、段々とワクワクして来た。

 

「じゃあ我は今から探検に行ってくるね!」

「余り遠くに行くのではないぞ?」

「わかってるよ、心配してくれてありがとう」

 

 笑顔で答えるとヴェルドラはそっぽを向く。

何故いつも顔が赤いのか分からないけど、風邪でも引いているのかな?

ドラゴンが風邪を引くかどうか分からないけど。

 

 ヴェルドラと危険に感じたら直ぐに戻ってくる事を約束した私は洞窟の探検を開始した。

 外へと繋がる道は薄暗く不気味さがあるのだが、その割に私の心は落ち着いている。後ろ盾にヴェルドラが居ると心強いものだ。鼻歌交じりに軽くスキップしながら足を進めていくと、小さな広場に出た。

 

「——————綺麗……」

 

 視線の先には宝石のように光る綺麗な花が花畑の様に目一杯広がっていた。先程までは薄暗かった洞窟もこの場所だけは咲き誇る花たちが己の存在を主張して居るかのように光を放っているため、此処だけ切り取られた別空間の様にさえ思えた。

 ……そう言えばヴェルドラとの雑談の時、こんな場所があるなんて言ってなかったしヴェルドラは知らないのかな? いつか、ヴェルドラにもこの素敵な場所を教えてあげたいな……

花を一凛、申し訳なく思いながら手に取る。

今は封印されていて一緒に来る事が出来ないヴェルドラへプレゼントする事にした。

 

「さ、早く帰ってヴェルドラに此処の事を話さないと!」

 

 上機嫌で来た道を戻ろうと振り返る。そこには先程と違い道を閉ざすようにして立つ美人な女性が私の事を笑顔で見ていた。その表情は決して安心感を与える物ではなく、心情を隠す為のもの。

 一目でわかる、この人は危険だ。どうする?逃げる?逃げ切れるの? 

——————突然の事態に頭が回らない私にその女性が透き通るような声で告げる。

 

「ちょっとだけ、眠って貰うわね」

 

 ニッコリと笑った表情(かお)のまま、女性は物凄い勢いで私の方に向かってくる。

逃げる事も避ける事も出来ない私は咄嗟に目を瞑り、両手で顔を守ろうとするのだが元々体への打撃が目的だったらしい女性の拳は綺麗に私のお腹を抉った。

 

「——————っ!?」

「ごめんなさいね」

 

耐え切れない程の衝撃が体に走る。

 痛い、痛い、痛い。

痛いよぉヴェルドラ、助けて……

 声にならない声を出しながら、遠のいていく意識の中。

私の瞼の裏には、ヴェルドラとの思い出が鮮明に映し出された。

初めて会った時の怖いヴェルドラ。ちょっとカワイイヴェルドラ。笑ったヴェルドラ。全身の力が抜け睡魔に襲われる。少し眠たいなぁ。

ひんやりとした洞窟の地面は私から熱を奪っていき思考力を鈍らせる。

 そんな中、最後に映し出されたのはヴェルドラと交わした初めての約束。

——————『危なくなったら直ぐに戻ってくるのだぞ?』

 

「ごめ……ヴェ……ラ」

 

 ヴェルドラへの謝罪を最後に私は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い暗い洞窟の奥。

其処には一体の竜がずっしりと構えている。

彼の名は暴風竜ヴェルドラ。世界に四体しか存在しない竜の一角であり、その実力は計り知れない。その証拠に彼は過去に人間の街をうっかりで滅ぼしてしまった事がある。

その所為で、今現在は封印されているのだが。

 ヴェルドラが封印されてから、もう直三百年が経とうとしていた。長い年月の中、彼はずっと自分を封印した者。勇者の事について考えていた。

 実の所、彼が勇者と対峙することになった時ヴェルドラは勇者を嘗めていた。勇者と言えど所詮は人間。自分が本気を出せば直ぐに壊せる、玩具のような存在だと思っていた。

——————が、しかしその考えは勇者と戦う中で改まっていったのだ。

 

 勇者は初め、その手に持つ剣でひたすらヴェルドラの攻撃を防いでいた。

一方的な状況で、ヴェルドラの攻撃を防ぐことしかできない勇者。対してヴェルドラは実力の半分と少しばかりしか出しておらず、誰がどう見ても勝敗が分かる戦いであった。

 当然、余りの手応え無さにヴェルドラは少し余裕を感じた。その瞬間に僅かな隙が生まれたのだ。

勇者はその隙を見過ごさず、ヴェルドラの見たこともないようなスキルを発動させた。

 

 『絶対切断』と『無限牢獄』

 

 己の体を傷つける手段はないだろうと思っていたヴェルドラに不意を突くその攻撃は充分効果を発揮した。

結果、完敗したヴェルドラは『無限牢獄』という名の封印をされてしまうのだが。彼の魔素量が多いばかりに、長い時をこの牢獄で過ごす事となったのだ。

 

「つまらぬ……」

 

 初めの数年は勇者との戦闘を。

其処から数百年は、もっとこうしていれば良かったと後悔を。その後からの年月はひたすらつまらないという感情を抱いていた。

仕方の無い事だ。

 

「何か面白い事があれば良いのだが」

 

 不意に口に出たその言葉。

其れに答えるかのように、ヴェルドラの目の前に一つの光源が現れた。

 

「何が起こっているのだ?」

 

 数百年という時間の中に突然現れる異常。

しかし、ヴェルドラ自体は封印されているため此処から動く事は出来ない。

段々輝度の増すそれに目を細めながらも視界にとらえる。

その光は何やら人間のような形をとっていき、次第に収まっていく。

光が消え、今度はしっかりと捉えると其処には一人の少女が横たわっていた。

 

「おい、そこの者」

 

 声を掛けてみるが、一向に反応が無い。

意識を失っているのだろう。少女の目が覚めるまで、ヴェルドラは待ってやることにした。

 

 長い時間が経ち、やっと体を起こす少女。しかし、目覚めたは良いものの五感が無いと慌てふためいている。ヴェルドラは仕方なくその原因を見ようと目を凝らすと、何と少女は魔素を体内に取り入れていた。

——————面白い。 

 

 普通人間は魔素を取り入れる事は無い、という事は少女は少なくとも人間でないのだ。

初めから人間の姿をした魔物が生まれるのは稀な事である。

 取り合えず、目の前の少女に解決策として魔素の循環が出来ていないことを伝えた後でそのやり方を教える。上手くできたようで大喜びする少女が瞼を開いたとき。

暖かく優しい春を感じさせる桜色の澄んだ瞳にヴェルドラは心を奪われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女と出会ってから数日のうちに色々な事があった。

少女の辛い過去も知り、その上で名を授けることにした。

名はフィノラ。少女にぴったりな名にだと思う。

——————初めの提案で出した名前は即答で断られたが。

 

 通常、名付けを行うと名付け親と与えられた者ではっきりとした主従関係を結ぶ事が殆どなのだが、ヴェルドラはフィノラに其れを求めなかった。正直な話をすると、ヴェルドラにとってフィノラは我が子の様に可愛がるくらいには大事な存在になっていた。

 仕方ない事だ、フィノラの姿がヴェルドラにとってドストライクなのである。

 背は人間でいうとまだ十歳ばかりではあるものの、肩まで伸びる桃花色の透明感のある綺麗な髪、切れ長の睫毛に暖かさを感じさせる透き通った桜色の瞳。桃色のふっくらとした艶やかな唇。

あどけなさの有る幼い表情をするフィノラを一言で表すなら初春。

フィノラが居るだけで、此の薄暗い洞窟も桜で一杯であるかのような錯覚さえ覚えた。

 

 そんな、フィノラにデレデレなヴェルドラは決して自分の心の内を悟らせないようにしていた。まだ、幼いフィノラはきっと自分の好意に気づいたら困った顔をするだろうから。

 ヴェルドラがそう決意していることも知らない目の前フィノラは雑談を何時ものようにするのだが、今日は何時もと違う事がしたいと言う提案をヴェルドラに告げる。

 ヴェルドラとフィノラは二人して、何か面白い事はないかと頭を悩ませた結果、ヴェルドラから洞窟の探検をしてみてはどうだろうかと提案が出た。

 実はヴェルドラはフィノラに雑談の中で此の洞窟の事について殆ど話しているのだが、実際目にして得られる知識があると言うものだ。

 

 絶対に危険な時は自分の元に戻ってくることを条件に送り出すヴェルドラ。

フィノラも笑って了承してくれたので安心して送り出す。

数時間後、ヴェルドラは送り出した事を後悔するのであった。

 

 

 

 

 

 

 フィノラを送り出した後、数時間してから強大な魔力をヴェルドラは感じ取った。其れはヴェルドラが仮に対峙することになったら拮抗する程の魔力。

フィノラの心配と共にヴェルドラは冷や汗を流す。決して膨大な魔力に不安を感じたからではない。

 その魔力が見知った魔力であり、其れは自分が一番苦手とする者が此の洞窟内に居ることを示しているからである。

 

『何故、此処にいるのだ!』

 

 思念伝達で見知った魔力を持った者に問いかける。

しかし、相手からの反応は帰ってこない。少しばかり苛立ちを感じつつも何度も問いかけるがやはり返事は帰ってこない。数分後、その魔力の反応は洞窟から消えた。

——————フィノラの魔力と共に。

 

「ふざけた事を!」

 

 フィノラが連れ去られた。

その事実を理解した瞬間叫び声をあげる。心の思うがままに叫び狂う。

その咆哮に所々、地形が変わる所が出始めるがそんな事は今のヴェルドラにとって些細な事に過ぎなかった。

 息が上がる程の叫び声を上げ続ける。

——————どれ程の時間が過ぎたのだろう。

フィノラが居なくなった事実を頭で理解出来る頃には、辺り一面色の無い世界が広がっていた。

嘗て、赤い煌めきを放っていた竜の瞳はもう其処には無かった。

暗い暗い洞窟の中に佇む憐れな竜が一体。

 後に出会うスライムによって再び世界に色を取り戻す事を彼はまだ知らないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フィノラ「てっきり、我は某スライムさんと出会うのかと思ってた、、、」

作者「一応、この世界にフィノラが居たら起こり得る事を書いています。
此処で美人な女性と出会う事は1話の伏線回収だったりします」

フィノラ「色々考えていたんだね! ありがと!」ニッコリ

作者(……うちの子が可愛い件について)

⬇︎ステータス
名前 フィノラ
種族 不明
性別 女性
年齢(見た目) 推定10歳程
スキル 不明
好きな食べ物 不明
苦手な食べ物 不明
好きな人 優しい人は全員好き

追記
主、胃腸炎悪化で暫くの間安静しろとの御命令が。
治り次第投稿します。
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