無限と問題児   作:蛇龍好き

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オリジナル要素多めだから書くの大変でしたそして相変わらずの増えすぎた文字数………


凶悪な虎からジンを死守せよ!

翌日。

飛鳥・耀・ジン・黒ウサギ・十六夜・三毛猫の五人と一匹は、〝フォレス・ガロ〟のコミュニティを訪れる道中、〝六本傷〟の旗が掲げられた昨日のカフェテラスで声をかけられる。

 

「あー!昨日のお客さん!もしや今から決闘ですか!?」

 

『お、鉤尻尾のねーちゃんか!そやそや今からお嬢達の討ち入りやで!』

 

ウェイトレスの猫娘が近寄ってきて、飛鳥達に一礼する。

 

「ボスからもエールを頼まれました!ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたところです!この2105380外門の自由区画・居住区画・舞台区画の全てでアイツらやりたい放題でしたもの!二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」

 

「ええ、そのつもりよ」

 

「おお!心強いお返事だ!」

 

飛鳥が苦笑しながらも強く頷いて応えて、満面の笑みで返す猫娘。

だがしかし、急に声を潜めて、

 

「実は皆さんにお話があります。〝フォレス・ガロ〟の連中、領地の舞台区画ではなく、何者かが用意した舞台でゲームを行うらしいんですよ」

 

「何者かが?」

 

「………用意した?」

 

「舞台でゲーム?」

 

飛鳥・耀・十六夜と鸚鵡返しの如く聞き返し、黒ウサギがハッと気付く。

 

「〝フォレス・ガロ〟が別の舞台を用意できるはずがありません!やはり彼らの背後に無限王様が!?」

 

「十六夜君の予想は見事に的中したわけね」

 

「ウーちゃん、お仕置き確定」

 

「へえ?無限王が一体どんな舞台を用意したのか超気になるな」

 

「……………!」

 

〝フォレス・ガロ〟の協力者が無限王の可能性が出てきて、それぞれ驚き、呆れ、怒り、喜び、緊張する。

猫娘は無限王?と聞いたことのない………いや、どこかで聞いたことのあるような名前に小首を傾げながらも続ける。

 

「しかも!傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」

 

「あら?あの外道、一人で私達に勝てると思ってるのかしら?」

 

「それほどに強力なギフトを与えられたってこと?」

 

「そいつは面白いな。三対一で勝てる気でいるのか」

 

「これは………益々もって、用心せねばならないかもしれませんね」

 

黒ウサギの言葉に、参加者の飛鳥・耀・ジンは頷く。

無限王が協力してるのは確定でいいだろう。

何せ、昨日の段階では飛鳥達に手も足も出なかったガルドが、三対一という不利な状況でギフトゲームに望むのだから。

 

「何のゲームかは知りませんが、兎に角気を付けてくださいね!」

 

猫娘の熱烈なエールを受けて、〝ノーネーム〟一行は〝フォレス・ガロ〟を目指す。

 

「あ、皆さん!見えてきました―――へっ!?」

 

黒ウサギが思わず素っ頓狂な声を上げる。

しかしその反応をするのは無理もない。

〝フォレス・ガロ〟の本拠地の上空に浮かぶ巨大な―――()()()()を見れば。

それを見た耀・飛鳥・十六夜が口を揃えて、

 

「………黒い箱?」

 

「………黒い箱ね」

 

「………黒い箱だな」

 

「感想が簡潔過ぎませんか御三人様!?」

 

「「「だって黒い箱(でしょう・だよね・だろ)?」」」

 

「黒い箱ですけども!もっと!他に!感想が!あるでしょう!?」

 

「「「うるさい」」」

 

ピシャリと言い放つ問題児三人。

理不尽なのですよぉおおおおお!!と内心で叫びながら項垂れる黒ウサギ。

ジンはそれを隣で見て苦笑する。

ケラケラと笑う十六夜は、スッと目を細めて上空に浮かぶ巨大な黒い立方体を眺める。

 

「中身が見えないな。これじゃあどうなってるのかも分かんねえぞ」

 

「物音一つしませんね。黒ウサギのウサ耳でも分からないとなると、おそらく我々はあの中へ招かれるのでしょう」

 

黒ウサギがそう言った瞬間―――パァンと手を叩くような音が聞こえて視界が暗転する。

 

「「「「「………ッ!??」」」」」

 

そしてすぐに、真っ黒い世界に―――さっきの巨大な黒い立方体の中に跳ばされたのだと理解する。

床、壁、天井全てが黒で出来た場所。

それと何故か、この中は真っ暗かと思いきや、全体が黒と認識出来るほど周囲を見渡せる程明るかった。

〝ノーネーム〟一行が不思議そうに周囲を見回していると、

 

「よォ、待ってたぜ」

 

その声にハッと振り返るとそこには、獰猛な笑顔で笑うガルドがいた。

昨日の彼と何の変わりも見られないが、自信に満ちた表情に警戒を強める飛鳥達。

そんな彼女達に、ガルドは肩を竦めて話し始めた。

 

「ギフトゲームを始める前に、この舞台について説明するが。とんでもねえ、この真っ黒い箱は真っ黒いレディが姿を変えたモノなんだとよ」

 

「「へ?」」

 

「あら?それってつまり」

 

「ここって、ウーちゃんの中?」

 

「へえ?無限王の腹ん中なのか。知らぬ間に俺達は龍神様に食べられてたのか」

 

「………ウーちゃん?いや、それよりも龍神様だと!?」

 

真っ黒い少女のことをウーちゃんと言う耀に対しても驚きだが、それよりも十六夜の龍神様発言にびっくらこいた。

〝ノーネーム〟と繋がりがあることへの怒りよりも、彼女の正体が龍神ということは、有り得ないと否定した最強種―――〝純血の龍種〟であることを知り、愕然とした感情に支配されたのだ。

何が名無しだ、超絶ヤバイ存在だったんじゃねえか!とガルドが内心で叫ぶ。

彼のあの反応を見る限り、ガルドは無限王の正体を知らなかったようだ。

黒ウサギが苦笑して、ハッと思い出したようにガルドに訊く。

 

「ところで〝フォレス・ガロ〟のリーダー、ガルド=ガスパー。〝契約書類(ギアスロール)〟はどこにあるのですか?」

 

「あ?あァ、それならそこのレディが内容を確認してるぜ」

 

へ?と黒ウサギが目を丸くしてガルドが指を指す方に視線を向けると、飛鳥が〝契約書類〟を持ってそれを耀・十六夜・ジンが覗き込んでいた。

 

 

『ギフトゲーム名〝ディフェンスバトル〟

 

・プレイヤー一覧

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 

・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

 ジン=ラッセル

 

・勝利条件

ガルド=ガスパーの打倒又はホスト指定ゲームマスター【ジン=ラッセル】を三分間死守する。

 

・敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

・ホスト側・特殊ルール

プレイヤー側勝利条件《【ジン=ラッセル】を三分間死守する》が達成した場合、〝契約(ギアス)〟により、ガルド=ガスパーは()()()()

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します。

〝フォレス・ガロ〟印』

 

 

読み終わって、飛鳥・耀・ジン・黒ウサギが青ざめた。

十六夜は無言でガルドを見据える。

このギフトゲームは、ガルドが不利すぎる。

プレイヤー側はどちらか一方の条件を満たせればクリアになるのに対し。

ガルドは三分以内に決着をつけねばならないのだ。

しかも三分経過で〝契約〟による強制死亡が定められている。

よくこんな不利な条件が組み込まれたゲームを行おうなどと思ったものだ。

しかし、そんな気遣いを吹き飛ばすような言葉をガルドが言った。

 

「お前らが気にすることじゃねえよ。それにこっちは勝利報酬が真っ黒いレディ………龍神様だからな!悪いがこのゲーム、俺は負けるわけにはいかねェよ」

 

「なんですって!?」

 

「ウーちゃんが報酬?何それ、ズルい」

 

「へえ?無限王が報酬か。そりゃこんなヤバイゲーム開催する覚悟も出来るってわけか」

 

「そういうことだ。お前らは俺を倒す気持ちで挑まねェと、死ぬぜ?」

 

「「「―――っ!!?」」」

 

ガルドの死刑宣告に、飛鳥・耀・ジンの三人は気を引き締める。

やはりガルドは謎に自信に満ち溢れている。

最大限の警戒を以て、ギフトゲームに望むことにした。

 

 

 

 

 

互いに距離を取って睨み合う飛鳥達。

飛鳥と耀は、ジンを背に守る形で臨戦態勢に入ると、

 

『―――あーあー、てすてすてす。皆さんおはこんにちばんはー、ウロボロスのウーちゃんだよー』

 

え?と間の抜けた声を漏らす飛鳥達三人。

ガルドもは?と素っ頓狂な声を漏らす。

だがそんな彼らを無視してウーちゃんが言葉を紡いだ。

 

『―――時にガルド君。ウーちゃんが君に与えた恩恵(ギフト)なんだけどね。どうやら手違いで与える恩恵を間違えてしまったらしいのだ。いやー、ウーちゃんとしたことがやらかしちゃったー、てへっ!』

 

茶目っ気たっぷりなウーちゃんの口調と声音に、その場にいた誰もがポカンと口を開けて天井を見上げる。

あれ?あの子あんなキャラだったっけ?

ガルドはハッと我に返ると、怒りで全身を震わせて叫ぶ。

 

「ちょっと待てやゴラァ!」

 

『ん?』

 

「ん?じゃねえよ!俺がアンタから貰った恩恵は疑似神格なんだろ!?それが手違いで別の恩恵ってことはまさか」

 

『ああ、その点は心配しなくてもいいよガルド君。手違いで与えてしまった恩恵の方が圧倒的に強力だからねー』

 

「あ?」

 

『君が〝インフィニティ解放〟と口にした瞬間、ギフトゲームは開始されるよー。ということで、皆さん頑張ってねー』

 

その言葉を最後に、ウーちゃんは黙り込んだ。

飛鳥達三人とガルドがインフィニティ?と首を傾げる中、黒ウサギと十六夜はインフィニティの意味を理解して全身から嫌な汗を吹き出していた。

インフィニティ―――()()

文字通りの効果を齎す恩恵だとしたら、飛鳥達に勝ち目がないのは明白だ。

ガルドの力が限り無いものになったというのならば。

そのガルドは、インフィニティとやらがどういうものなのかさっぱりだった。

だが疑似神格よりも圧倒的に強力なものということは、本来手に入る力が更に強くなったということだ。

喜ばしいことではあるが、インフィニティがどういうものなのかを知る必要がある。

よく分からねェが、取り敢えずあの龍神様が言っていた通りにしてみるか。

 

「………〝インフィニティ解放〟!」

 

ガルドがそう言うと、彼の全身を真っ黒い何かが包み込んだ。

なんだ、こいつは?

よく分からねェが、身体中に凄まじい力が漲ってきやがる。

ガルドは試しに踏み込んでみると―――()()()()()()という馬鹿馬鹿しい速度を叩き出して、耀に肉薄していた。

 

「え?」

 

「は?」

 

いきなり眼前にまで迫ってきていたガルドに目を見開く耀。

出せるはずのない速度を叩き出したガルドもギョッと目を剥く。

そのままの速度を維持したまま、拳を耀の体に叩き込む。

 

「―――――ぁ、」

 

ガルドの一撃とは思えぬ、デタラメな力で殴り飛ばされた耀は第三宇宙速度を遥かに凌駕した速度で黒い壁に叩きつけられた。

 

「………か、はっ!?」

 

強烈な一撃に、耀は意識が飛びそうになる。

しかし人間が喰らえば消し飛びそうなものをもらったというのに、彼女の五体は一切の損傷も負っていなかった。

あるのは〝死ぬほど痛い〟という感情くらいか。

………?これは、何?

 

「か、春日部さん!?」

 

地に倒れ伏す耀に駆け寄ろうとした飛鳥だが、ハッと我に返ってその場に留まる。

ここを離れたら、ジン君がやられる。

ジンが倒されれば〝ノーネーム〟の敗北が決定してしまう。

飛鳥はジンの盾になるようにガルドに立ちはだかる。

そのガルドは、デタラメな力を手に入れたことを確認して歓喜の笑みを浮かべていた。

疑似神格じゃないことに不安を感じていたが、とんでもねえ。

〝インフィニティ〟とかいう恩恵は十二分ヤバイ代物だと理解した。

後はこいつをモノに出来るか否かだ。

折角だ、すぐに終わらせる前に―――あのガキにもやり返しとくか!

次の標的を飛鳥に定めたガルドは、凶悪な笑みを浮かべて彼女を視線の先に捉えた。

 

「………っ!!」

 

飛鳥は狙いが自分と理解すると、ポケットに忍ばせていた〝無限の指輪〟を取り出して指に嵌める。

そして盾をイメージして無から生み出し、飛鳥は叫ぶ。

 

()()()()()()()()()()!」

 

大した硬さも無かった盾は、飛鳥の〝威光〟によって極大化され、第三宇宙速度で突進してきたガルドの一撃を受け止めてみせた。

 

「何!?」

 

「やった!」

 

だが、盾は役目を終えたように粉々に砕け散ってしまった。

 

「え!?」

 

「ハッ、脅かしやがって!」

 

驚く飛鳥に、ガルドが笑って鋭い爪を奔らせ、彼女の左肩を掠めた。

 

「―――痛っ!?」

 

「オラァ!もう一発食らいなァ!」

 

更に鋭い爪を奔らせようとして、

 

「こ、このッ!()()()()()()()!」

 

飛鳥は〝無限の指輪〟で風を無から生み出し、〝威光〟により極大化された風は神風となってガルドに襲いかかる。

だがその神風はガルドに直撃したものの、上体を僅かに反らさせた程度で霧散してしまった。

 

「なっ!?」

 

「なんだァ?もう終いかァ?」

 

驚愕の声を上げる飛鳥を、凶悪な笑みを浮かべたガルドが追撃する。

 

「く、ぅ………!」

 

右腕、左脚、右脇腹を鋭い爪が掠めて激痛に苦悶の声を漏らす飛鳥。

一撃で仕留めに来ずじわじわといたぶってくるガルド。

………趣味が悪いわね………けどこのままじゃいけない!

飛鳥はガルドから一旦距離を取るべく、〝無限の指輪〟で水を無から生み出すが、

 

「させるかよ!」

 

飛鳥が次の手を打つ前にガルドが右腕を伸ばす。

 

「きゃっ!?」

 

短い悲鳴を上げる飛鳥。

彼女の華奢な体をガルドが右手で鷲掴み、引き寄せた。

凶悪な笑みで飛鳥を見つめるガルド。

 

「ハハッ、捕まえたぜレディ」

 

「く、こ、この―――」

 

飛鳥が無から生み出した水で何かをしようとしたが―――ミシミシ。

 

「あ、がっ………!?」

 

「おっと、大人しくしねェと握り潰すぜ?」

 

飛鳥の体を鷲掴む手に軽く力を込めて笑うガルド。

骨が軋み、あまりの激痛に堪らず声を上げる飛鳥。

そんな彼女を見て、満足そうに笑うガルド。

昨日までは手も足も出せなかったこいつらを追い詰めている、この事実が堪らく嬉しいのだろう。

さて、こいつをどうするか。

このまま一気に握り潰して殺すか?それともゆっくり絞めて殺すか?

そんなことを考えていたガルドは、背後に気配を感じて振り向いた。

そこには、怒りの形相で睨み付けていた耀がいた。

 

「飛鳥を、離せッ!!」

 

「あァ?」

 

耀の要求を無視して、ガルドは飛鳥をゆっくり絞めて殺すことにした。

ミシミシ、ミシミシ。

 

「くぁあああああああああ―――――ッ!!?」

 

先程の比ではない痛みに絶叫する飛鳥。

 

「飛鳥ッ!?こ、このッ!!」

 

耀が飛鳥を握り潰そうとするガルドの右手を掴み、引き剥がそうとするがびくともしない。

こうしてる間にもガルドが飛鳥をゆっくりと絞めていく―――ミシミシ、メキメキ。

 

「――――――――――ッ!?!?」

 

言葉にならない絶叫を上げる飛鳥。

このままでは飛鳥が死んでしまう………!

だが耀の力では出鱈目に強化されたガルドの手から救える手段がない。

何か、飛鳥を助け出す手はないか………!?

 

「邪魔だッ!!」

 

「え?きゃっ!?」

 

羽虫を払うような仕草でガルドが左腕を振るい、耀の体は呆気なく吹き飛んで壁に激突し、床に落下する。

 

「ぐ、うっ………!?」

 

床に倒れ伏す耀。

圧倒的な力の差。

為す術無しの絶望的な状況の中、耀は悔しくて悔しくて涙を流す。

泣いてる場合じゃない。

早く飛鳥を、友達を助け出さないといけないというのに。

………私はなんて弱いんだろう。

友達一人、助けられる力すらないなんて。

………だけど私は、友達を………飛鳥を失いたくない!

私はどうなってもいい!

目の前の友達を救えないなら死んだ方がマシだッ!

だから、お願い………私に貴女の力を貸してッ!!

 

 

『―――いいよ』

 

 

………え?

 

 

『―――自らを犠牲にしてまで力を得たい想い………その願い、私が叶えてあげる』

 

 

………本当に?

 

 

『―――その代わり、死ぬほど辛い思いをすることになるけど………それでも私の力を求める?』

 

 

……………うん。だから、力を貸して!

 

 

『―――ふふ、では契約成立だね。存分に私の力を使うといい』

 

 

………うん、ありがとう。使わせてもらうね―――ウーちゃん。

 

 

 

 

 

ウーちゃんとの契約成立後、耀は立ち上がった。

内心で〝インフィニティ解放〟と呟く。

すると、私の全身を真っ黒い何かが包み込んだ。

全身にウーちゃんの力を感じる。

凄まじい力が私の全身を駆け巡っているのが分かる。

これならもう、負ける気はしない。

耀はガルドを睨み付けると、踏み込み一瞬で肉薄した。

 

「何ッ!?」

 

驚くガルドを、耀は蹴り抜く。

正確には飛鳥を握り潰そうとするガルドの右手………ではなく右腕を。

 

「ギッ!?」

 

その一撃にガルドは堪らず捕らえていた飛鳥を手離してしまった。

宙に放り出された飛鳥を、耀が抱き止めて着地する。

 

「………かすか、べ………さん?」

 

「ごめん、飛鳥。もう大丈夫だよ。あとは私に任せて」

 

飛鳥に優しく語りかけながらジンの下へ歩み寄ると、

 

「ジン、飛鳥をお願い」

 

「え?は、はい」

 

「私がガルドを押さえる」

 

耀はそう言ってジン達に背を向けると、ガルドの下へ向かう。

ガルドは急激な変化を見せた耀を睨み付けて言った。

 

「テメェ、その力………龍神様のものか?」

 

「そうだよ。私は友達の―――ウーちゃんの力を貸してもらった。お前から飛鳥達を守るために」

 

「ハッ、そうかよ。だがテメェ如きに、龍神様の力を使いこなせるのかァ?」

 

「………その言葉、そっくりそのまま返すよ」

 

ガルドと耀は睨み合い、その視線の先で激しい火花を散らす。

床を踏み込み、第三宇宙速度という馬鹿げた速さを叩き出して互いを肉薄し合い、激突した。

ギフトゲームが開始されて1分も経っていない。

この戦いは、残り2分以上ガルドを耀が押さえ込めねば勝ち目はない。

何故なら、ウーちゃんから〝インフィニティ〟を与えられたガルドに対抗出来るのは、〝インフィニティ〟を借りた耀だけなのだから。

 

 

 

 

 

耀とガルドが激しく衝突し合い、残り2分の頃。

観戦者の十六夜と、観戦兼審判者の黒ウサギは息を呑んで見守っていた。

出鱈目な力を得た二人と、出鱈目な速度で衝突し合っているというのに、周囲に何も影響を及ぼしていない不可解な空間。

ウーちゃんの中ということらしいが、彼女が周囲に影響を及ばさぬよう全て吸収しているというのか。

観戦者達とボロボロの飛鳥やそんな彼女を介抱しているジンに影響が無いのなら、耀も彼らの事は気にせず全力でガルドを止めることが出来るということだ。

十六夜は、無限王の意図を考えていた。

最初はガルド(ヤツ)だけに力を与えてお嬢様達を試すものかと思ったが、そうではなかったな。

まず、ガルド(ヤツ)を出鱈目に強くすることで、勝ち目のない状況を作った。

そんな状況の中でお嬢様達がどこまでやれるかを試し、追い詰められ絶望の淵に立たされたなら―――元々春日部に与えていた力を解放する………ってところか。

これから分かることは、無限王が俺達のコミュニティを壊滅させようとしているわけではない。

もし壊滅させる目的があるなら、ガルド(ヤツ)にだけ力を与えて蹂躙させればいいだけだしな。

ガルド(ヤツ)は、お嬢様と春日部の力を測る為の実験台。

予め春日部にも力を与えていたのがその証明になる。

このギフトゲームは最初からお嬢様と春日部を試すものであり、ガルド(ヤツ)はただ利用されただけってことか。

まあ、元々ガルド(ヤツ)ではお嬢様達の敵にすらならなかったらしいから、そんな相手を少しの間だけでも圧倒出来たんだし気分は悪くねえだろ。

そんな俺の隣で、黒ウサギが安堵の溜め息を吐いた。

 

「そ、それにしても先程はヒヤヒヤしたのですよ」

 

「あん?」

 

「飛鳥さんがあのまま殺されてしまうのではないかと………もし耀さんが飛鳥さんを助けるのが少しでも遅れていたら、黒ウサギがガルドを止めに行ってました」

 

「審判のお前がそれやったら〝ノーネーム〟側がルール違反で敗北決定なんだが?」

 

「そ、それでも!殺されそうになっている同士を見捨てることなんて、黒ウサギには出来ませんもん!」

 

「そうかい。もしそうなってたら俺がお前を止めてたかもな」

 

俺の言葉に、黒ウサギは驚愕し、そして激怒した。

 

「な!?ど、どうしてですか!?十六夜さんはあのまま飛鳥さんが殺されていても何とも思わないのですか!?」

 

「そうじゃねえよ。相手は命を賭してゲームに望んでんだ。そんなゲームに参加者じゃない俺達が手を出していいわけがない。それにこのゲームには殺害禁止とかないだろ?」

 

「そ、それは………!で、ですが」

 

「ですがも糞もあるか。私情でルールを破って同士を助けようとするお前に、公平がモットーの審判を務める資格があるのか?」

 

「―――――っ、」

 

「それに無限王が俺達を死なせるようなことはしねえよ。もしその気があるなら―――ファーストコンタクトの時点で皆殺しにされてただろうからな」

 

そうだ、あいつは俺達をいつでも殺せる………そんなヤバイヤツだ。

ファーストコンタクトの時に殺しに来なかったし、何よりも俺達に興味があるらしいからな。

早々に殺されることはないだろう。

黒ウサギもハッとして気が付き、納得したようだ。

 

「い、十六夜さんの言い分は分かりました。たしかに無限王様の性格を考えれば、殺し合わせるような真似はしません」

 

「へえ?じゃああの虎男が負ければ死ぬようにしたのにも、他に理由があるのか?」

 

「はいな。おそらく、ガルドが幼い子供の、罪無き者の命をたくさん奪ったからでしょう。無限王様はそういった者達の命を弄ぶ輩には容赦がないそうですからね」

 

「そいつはおっかいな。じゃあ何か?あの虎男は勝っても負けても死ぬってか?」

 

「お、おそらくガルドはどう足掻いても〝死〟は確定でしょう。無限王様に目を付けられた時点で詰んでいたのです」

 

「そうか。なら合掌くらいはしとくか」

 

「そ、そうでございますね」

 

俺と黒ウサギは静かに手を合わせて虎男に合掌した。

丁度残り時間1分を切ったところだった。

 

 

 

 

 

残り時間1分の頃。

気絶している飛鳥を介抱していたジンは、ガルドと激闘を繰り広げている耀を見守っていた。

まあ、僕なんかの動体視力じゃ全く見えませんけど!

耀さんに任されたことを、飛鳥さんを守らないと!

あ、いや、僕がやられたら〝ノーネーム〟の敗北になっちゃうから庇ったりしたら飛鳥さんに怒られるかな………。

でも、飛鳥さんは命懸けで僕を守ってくれた人だ。

これ以上、飛鳥さんに負担はかけられない。

自分の身は自分で守りつつ、飛鳥さんを守らなければ!

そんな僕に、気を失っていた飛鳥さんが目を開けた。

 

「………ジン君?」

 

「あ、飛鳥さん!?よ、よかった!」

 

「………あれ?いつの間にか気絶してたのね、私」

 

「あ、あれだけ血を流してましたからね………無理もありません」

 

そう、飛鳥さんの出血は酷いものだった。

出血だけじゃない、おそらく身体中の骨にもヒビが入っているかもしれない。

あれ以上絞められていたら………と思うとゾッとした。

重症だったはずの飛鳥さんは、今は完全に回復していた。

あれは一体何だったのだろう?

突然、飛鳥さんの全身を真っ黒い何かが包み込んで、暫くしたらそれは消えて―――飛鳥さんの怪我が完治していた。

無限王様の仕業なのだろうか?

聞くに、ここは無限王様の中だと。

ならばこの舞台は、参加者と主催者がギフトゲーム中は死なないように、死にかけた者は治癒されるような能力が備わっているというのか?

飛鳥さんは、完治している自分の状態に驚いて勢いよく立ち上がった。

 

「え!?何で!?あの外道にやられて身体中が痛かったはずなのに!?」

 

「ぼ、僕にも分かりません。ですがおそらく無限王様の仕業だと思います。何せこの舞台は、無限王様の中ですから」

 

「あら、それっていいのかしら?無限王さんは参加者を治癒する行為などして」

 

「そ、それも僕には分かりません。ですがおそらく、ガルドも死にかけたら治癒されるかもしれませんね………無限王様はどちらか一方を贔屓するようなことはしませんし」

 

「そうね。春日部さんがあの外道と渡り合えてるのを見ればそのことが分かるわね」

 

最初は蹂躙されかけたのだけれど、と飛鳥さんが皮肉を言う。

そんな彼女に、僕は苦笑する。

丁度残り30秒を切ったところだった。

 

 

 

 

 

残り時間30秒の頃。

上空を駆る黒い流星が二つ、激しい衝突を繰り返していた。

耀とガルドだ。

互いにウーちゃんの〝インフィニティ〟により、出鱈目な力を手にし、幾千幾万もの攻防を繰り広げていた。

互いに第三宇宙速度という馬鹿げた速さでぶつかり合っていたが、いよいよ残り時間が30秒を切ってガルドに焦りが生まれる。

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!このままじゃ俺はジンの野郎をぶちのめして勝利するなんざ出来ねェぞ!?

龍神様は簡単には勝てないようにあのガキにも同じものを与えてやがった………!

しかもあのガキ!どういうわけか今の俺と互角に渡り合えてやがる!

 

残り時間20秒。

 

どうするどうするどうするどうするどうする!?

時間は俺を待ってやくれねェ!

無理矢理にでもこのガキを振りきらねェと勝機はねェ………!

こんなところで、俺は死にたくねェんだよ!

 

残り時間10秒。

 

クソクソクソクソクソッ!

死にたくねェ死にたくねェ死にたくねェ死にたくねェ死にたくねェッ!!

俺は………ッ!

俺の野望を………ッ!!

諦められるかぁあああああッ!!!

 

残り時間5秒。

 

ガルドの絶対に負けられない執念が、耀よりも速く動く力を引き出した。

 

「しまっ………!?」

 

耀が必死に追いかけるが、ガルドに追い付けない。

勝った、とガルドは笑みを浮かべて標的(ジン)に突貫するが、

 

「な、にィッ!?」

 

残り時間4秒。

 

ジンを守るように連なる無数の壁。

飛鳥が〝無限の指輪〟から土を無から生み出し、それを〝威光〟で極大化させて強硬な壁を造っていた。

数にして10枚。

ガルドは第三宇宙速度を遥かに凌駕した速さを維持したまま、壁に突っ込む。

 

残り時間3秒。

 

飛鳥が造り出した強硬な10枚の壁は、それでもガルドの強固な意思を止めること敵わず、全て粉砕されてしまった。

 

残り時間2秒。

 

飛鳥は自分の体を盾にしてジンを守る。

ガルドは彼女ごと背後にいるジンを貫こうとした。

ジンは、飛鳥の背中に抱き着き、揃って前に倒れ込む。

 

「きゃっ!?」

 

ガルドの鋭い爪は、ジンの服を掠める。

僅かに彼の体に当たらなかった。

どうやら体に当てなければガルドの勝ちにはならないようだ。

 

残り時間1秒。

 

ジン達のすぐ後ろに着地したガルドは、最後の悪足掻きでジンの背に向けて鋭い爪を振り下ろそうとするが、眼前に現れた耀の蹴りが軌道を逸らし空を切る。

そして耀の追撃の拳が、ガルドの鳩尾に突き刺さり後方に吹き飛ばされた。

 

残り時間0秒。

けたたましいブザー音のようなものがウーちゃんの中に響き渡る。

ギフトゲーム終了の合図だろう。

黒ウサギが勝利宣言をする。

 

『勝者、〝ノーネーム〟!!』

 

勝利を掴み取った耀、飛鳥、ジンは喜びを分かち合う。

そんな様子を、壁に凭れ掛かって眺めていたガルドは、己の敗北を知る。

 

………あァ、俺は………負けたのか………。

だが、俺は不思議な気分だ………負けたのに、俺は今、満たされている。

………そうか、これが………ズルをしないで正々堂々、闘った証なのか。

……………ッ、俺は、なんてことしちまってたんだ………ッ。

 

不意に甦る、過去の過ちの数々。

 

そうだ、俺は………あんな醜いやり方をしていたんだな………ッ。

………あァ、成る程な………あの龍神様は、俺にこの事を気付かせる為に、この舞台と力をくれたのかァ………

 

『―――ふふ、ようやく理解したようだね』

 

………ッ!?

 

『どうだった?私の用意した舞台(ゲーム)は?楽しかった?』

 

……………そうだなァ、このゲームは………楽しかったぜ。

 

『それはよかった。さて、君はもう眠る時間だよ』

 

……………そう、か………俺は、死ぬんだったな。

 

『うん。君は何人もの無辜の命を感情一つで奪ってしまった大罪人。彼らの〝これから〟を奪った大悪党。だから私はお前を絶対に許しはしない』

 

……………ッ、

 

『―――だけど、そうだね。約束通り、君は私の計画に協力してくれた者。餞別をくれてあげる』

 

………これから死ぬ俺にかァ?

 

『ふふ。だけどこれは大親友の白夜ちゃんすら知らない極秘だよ?まあそれは私の―――本当の正体なんだけどね』

 

……………は?

 

『あー、やっぱり君、私が龍神様だと思ってるでしょ?答えはNOだよ』

 

……………じゃあ、あんたは何者なんだ?

 

『ふふ、心して聞くといいガルド君!私の正体は〝■■■〟。君に与えた〝インフィニティ〟は〝■■を■■する能力〟だよー。分かったかな?』

 

………!?そうかッ!それが俺があんたから―――〝■■■〟様から与えられてた力の正体だったのか………ッ!

 

『様呼ばわりは擽ったいからやめてよ。まあ、そういうことだから―――おやすみ、いいゆめを』

 

………あァ、おやすみ―――

 

それを最期に、ガルド=ガスパーは眠るように息を引き取り絶命した。

今頃彼は、いい〝ゆめ〟を見ていることだろう。

その〝ゆめ〟から覚めることは永遠にないが。

ウーちゃん改め〝■■■〟は楽しそうに笑い、そして呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふふ、次は君の番だよ。私を失望させないでね―――()()()()()()()()君♪』




なんかガルドがメインみたいになったけど、まあいいか

オリ主のキャラが崩壊?いいえ、あれが彼女の素です

オリ主は相変わらず正体隠すのが好きらしい

〝■■■〟
〝■■を■■する能力〟
十六夜の本当の姓を知っている………?
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