無限と問題児   作:蛇龍好き

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原作の言葉多めに仕上がってしまった…


白夜の世界と問題児

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている〝サウザンドアイズ〟幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

白夜叉の話を投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。

 

「ところで白夜よ」

 

「何かの?」

 

「何故私はお前の隣に座らされている?普通は少年達側に座るべきだと思うのだが」

 

「おんしは私と同じで上層に住まうものだろに。黒ウサギの同士というわけでもないし、私より強いおんしが下座はおかしいからの」

 

「………ふむ。そういうことにしておいてやるか」

 

今の白夜が弱いのは〝夜叉の神格(不純物)〟が原因だろうが、と内心で呟く無限王。

私より強い、と白夜叉に評価された無限王を、瞳を輝かせて見つめてくる十六夜・飛鳥・耀の三人。

それに苦笑を零す無限王。

 

「………そういえば、その外門、って何?」

 

無限王に気を取られて忘れかけていた、初めて聞く単語について質問する耀。

それに黒ウサギが説明する。

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達がすんでいるのです。七桁と六桁を下層。五桁を中層。そして白夜叉様の住む四桁から上を上層と呼んでおります」

 

「うむ。そして私の住む四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境になるの。無限龍の住む」

 

「【遮断】」

 

「―――――ともなればっておおい!?おんし、何故私の言葉を遮るかの!?」

 

「余計な話をするなということだ。私が何桁の外門に住んでいるかなど知る必要もなかろう」

 

ふん、と鼻を鳴らす無限王に唇を尖らせて拗ねる白夜叉。

黒ウサギも無限王の正体こそ知っていたが、何桁に住んでいるのかまでは知らない為、教えてもらえずしょんぼりする。

一方、黒ウサギが描く上空から見た箱庭の図を見た耀・飛鳥・十六夜の三人は口を揃えて、

 

「………超巨大タマネギ?」

 

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

 

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

 

うん、と頷き合う。

身も蓋もない感想にガクリと肩を落とす黒ウサギ。

成る程、そういう捉え方もありだなと感心する無限王。

白夜叉は呵々と哄笑を上げて二度三度と頷いた。

 

「ふふ、上手いこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は〝世界の果て〟と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持った者達が棲んでおるぞ―――その水樹の持ち主などな」

 

白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。

 

「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」

 

「いえいえ。この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

 

「何故お前が自慢げに語る〝箱庭の貴族〟よ?」

 

無限王に指摘されて恥ずかしそうに頬を掻く黒ウサギ。

白夜叉は声を上げて驚いた。

 

「なんと!?クリアではなく直接的に倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?」

 

「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格なら一目見れば分かるはずですし」

 

「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人ではどんぐりの背比べだぞ」

 

「オマケにその少年はギフトも使わずに、しかも全力ではなく手加減をして白雪を倒すのだから全くどうして、出鱈目な人間よ」

 

「へ!?」

 

「何!?」

 

無限王の言葉に、驚愕の声を上げる黒ウサギと白夜叉。

 

「待て無限龍!それは真か!?」

 

「うむ。私がこの〝眼〟で直接見たのだから間違いない。そこの少年の身体に宿るギフトは規格外と言っても過言ではない。何せ裡に眠る力を引き出さずに()()()()()()()神格保持者に勝ったのだからな」

 

「「なっ………!?」」

 

絶句する黒ウサギと白夜叉。

身体に宿るギフトを使って倒したのではなく、その表層部分だけとか常軌を逸しているにも程がある。

 

「おい無限ロリ」

 

「無限、ロリ?それは私の事か?」

 

「ああ。なんでアンタがそんなこと分かるんだよ」

 

「私は見ただけで知りたい事を知ることが出来るからな。お前のギフトは【全知】のギフトでも分からなかったが、そのギフトを使用したかどうかは理解できる。相手を殺さぬよう手加減していたこともな」

 

「………無限王ってストーカーな上に覗き魔なんだ」

 

「あらやだ、なんて凶悪な犯罪者なのかしら」

 

十六夜と無限王の話を聞いていた耀と飛鳥が、冷ややかな眼で無限王を見る。

覗き魔とか凶悪な犯罪者とか失礼な娘達だ、と苦笑いを浮かべる無限王。

黒ウサギはハッと我に返り、無限王に質問した。

 

「蛇神様の事を〝白雪〟と仰ってましたが、無限王様はお知り合いなんですか?」

 

「ん?ああ。顔を合わせたことは無いから知り合いでもないが、白雪に神格を与えたのが白夜だという程度には知ってる」

 

「へ?」

 

「そうだの。白雪に神格を与えたのはこの私だ。もう何百年も前の話だがの」

 

呵々と豪快に笑う白夜叉。

それを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問い質す。

 

「へえ?じゃあお前はあのヘビより強いのか?」

 

「ふふん、当然だ。私は東側の〝階層支配者(フロアマスター)〟だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者(ホスト)なのだからの」

 

「「「〝最強の主催者〟?」」」

 

十六夜・飛鳥・耀の三人が一斉に瞳を輝かせた。

 

「そう………ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

「倒せば私達が最強………!」

 

剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る十六夜達三人。

白夜叉はそれに気づいたように高らかと笑い声を上げた。

 

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

 

「え?ちょ、ちょっと御三人様!?」

 

慌てる黒ウサギを右手で制す白夜叉。

 

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」

 

「ノリがいいわね。そういうの好きよ」

 

「ふふ、そうか。―――しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある」

 

「なんだ?」

 

白夜叉は〝サウザンドアイズ〟の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、

 

 

「おんしらが望むのは〝挑戦〟か―――若しくは、〝()()〟か?」

 

 

刹那、視界に爆発的な変化が起きた。

視覚は意味を無くし、様々な情景が脳裏で回転し始める。

脳裏を掠めたのは、

黄金色の穂波が揺れる草原。

白い地平線を覗く丘。

森林の湖畔。

記憶にない場所が流転を繰り返し、足元から呑み込んでいく。

投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔―――そして、()()()()()()()()()()()()()

 

「………なっ………!?」

 

余りの異常さに、十六夜達三人は同時に息を呑んだ。

遠く薄明の空にある星は、緩やかに世界を水平に廻る白い太陽のみ。

世界そのものを体現している無限王が存在するように。

星を一つ、世界を一つ創り出す事も可能だというのか。

唖然と立ち竦む十六夜達三人に、今一度、白夜叉は問いかける。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は〝白き夜の魔王〟―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への〝挑戦〟か?それとも対等な〝決闘〟か?」

 

魔王を名乗る白夜叉。

少女の笑みとは思えぬ凄味に、再度息を呑む十六夜達三人。

十六夜は背中に心地よい冷や汗を感じ取りながら、白夜叉を睨んで笑う。

 

「水平に廻る太陽と………そうか、フィンランドやノルウェーといった特定の経緯に位置する北欧諸国などで見られる、太陽が沈まない現象―――〝()()〟と。水と大地の神霊を指し示すと同時に、悪神としての側面を持つ鬼神―――〝()()〟。あの水平に廻る太陽やこの土地は、お前を表現してるってことか」

 

「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」

 

「これだけ莫大な土地が、ただのゲーム盤………!?」

 

「如何にも。して、おんしらの返答は?〝挑戦〟であるならば、手慰み程度に遊んでやる。―――だがしかし〝決闘〟を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか」

 

「……………っ」

 

飛鳥と耀、そして自信家の十六夜でさえ即答出来ずに返事を躊躇った。

これは勝ち目が無い、そしてそんな白夜叉よりも強い無限王に喧嘩を売ろうと考えていた自分達の浅はかさに肝を冷やす。

無限王はこんな白夜叉を軽くあしらう怪物なのだろうと。

暫しの静寂の後―――諦めたように笑う十六夜が、ゆっくりと挙手し、

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

 

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」

 

「ああ。これだけのゲーム盤を用意出来るんだからな。アンタには資格がある。―――いいぜ。今回は黙って()()()()()()()、魔王様」

 

苦笑と共に吐き捨てるような物言いをする十六夜。

白夜叉は『試されてやる』とは随分可愛らしい意地の張り方があったものだ、と腹を抱えて哄笑を上げた。

一頻り笑った白夜叉は笑いを噛み殺して飛鳥と耀にも問う。

 

「く、くく………して、他の童達も同じか?」

 

「………ええ。私も、試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

「ふふ、よかろう。おんしら三人を試してやろう」

 

苦虫を噛み潰したような表情で返事をする飛鳥と耀に、白夜叉は満足そうに応えた。

一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「も、もう!お互いにもう少し相手を選んでください!〝階層支配者〟に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う〝階層支配者〟なんて、冗談にしても寒すぎます!それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか!!」

 

「何?じゃあ元・魔王様ってことか?」

 

「はてさて、どうだったかな?」

 

ケラケラと悪戯っぽく笑う白夜叉。

ガクリと肩を落とす黒ウサギ・十六夜・飛鳥・耀の四人。

黒ウサギはハッと思い出したように無限王を見て言う。

 

「む、無限王様も静観してないで止めてくださいよ!」

 

「折角、やる気満々の彼らと、ようやく遊び相手を見つけて嬉しそうな白夜を、どうして私が止められるというのだ〝箱庭の貴族〟よ?」

 

「そういうと思ってましたよ!」

 

黒ウサギの読み通りです!と言うが、こんな読みが当たったところでちっとも嬉しくない。

白夜叉はニヤリと笑って、

 

「なんだ?私と遊んでくれるのかの無限龍よ?」

 

「断る。今のお前では私の相手にもならん。〝夜叉の神格(不純物)〟を返上して(取り除いて)から出直してこい」

 

「むぅ、ケチィ………」

 

無限王にきっぱり断られて唇を尖らせて拗ねる白夜叉だった。




【遮断】
あらゆるものを遮るギフト。不純物がある時の白夜叉にも通用し、聞かれたくない部分だけ遮りその内容の間を断った。


白夜叉の試練を耀が受け、見事クリアする。そんな彼女のギフト〝生命の目録〟の鑑定が始まるのだが、無限王はうっかりコウメイの名を口にしてしまい………

次回、生命の目録とコウメイ
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