無限と問題児   作:蛇龍好き

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今回は原作でも明かされていない自己解釈部分あり、合ってる保証はありません


生命の目録とコウメイ

彼方にある山脈から甲高い叫び声が聞こえた。

獣とも、野鳥とも思えるその叫び声に逸早く反応する耀。

 

「何、今の鳴き声。初めて聞いた」

 

「ふむ………あやつか。おんしら三人を試すには打ってつけかもしれんの」

 

そう言って白夜叉が手招きすると、巨大な獣が翼を広げて空を滑空し、風の如く現れた。

鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣を見て、耀は驚愕と歓喜の籠った声を上げた。

 

「グリフォン………嘘、本物!?」

 

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

 

白夜叉が手招きする。

グリフォンは彼女の下に降り立ち、深く頭を下げて礼を示した。

無限王がグリフォンに歩み寄ると、グリフォンがハッとして驚いたような表情で見つめ返してきて、伏せをした。

 

「………やれやれ。私に敬意を払う必要はないんだがな」

 

『そうはいきません。貴女様は我ら幻獣種の頂点におわす御一人。敬意を払わねば私は幻獣失格です』

 

「………そうか」

 

無限王は苦笑いを浮かべつつもグリフォンの毛並みを優しく撫でるように触る。

グリフォンは彼女からの寵愛の印と受け取り、大人しく撫でられた。

耀は唖然として無限王を見つめ、

 

「………無限王って幻獣の頂点の存在なの?」

 

「む?そうだが?」

 

「そ、そうなんだ」

 

耀と無限王の会話を聞いていた白夜叉が、あの娘、グリフォンの言葉が分かるのか、と感心した後ニヤリと笑い、

 

「無限龍は私と同じ最強種の一角だからの。幻獣の頂点にして系統樹が存在しない〝純血の龍種〟だ」

 

「へえ?」

 

十六夜が瞳を怪しく光らせる。

白夜叉よりも強いと言及されている無限王だが、〝純血の龍種〟とか語られては興味しかない。

 

「でも見た目は龍っぽくないよね」

 

「そうね。どちらかというと人ね」

 

「………まあ、今の私は〝箱庭の騎士〟の娘を器に箱庭に顕現してるからな。龍っぽくなかったり龍角が無いのはつまりそういうことだ」

 

「〝箱庭の騎士〟ですって!?」

 

黒ウサギが驚愕の声を上げる。

予想はしていたが、まさか本当だったとはという驚きと。

今まで隠していた器の情報をこうもあっさり話してしまう不気味さに困惑する。

だが同時にずっと謎だった、無限王がレティシア目的でコミュニティに足繁く通っていた理由が判明した。

全てはレティシアの同胞である〝箱庭の騎士(器の娘)〟の為だったのだと。

その器の娘(■■■)はというと、

 

『………無限王様?もしかして私の正体を彼らに教えるつもりじゃありませんよね………?』

 

「(はてさてどうかな?うっかり口が滑って■■■の名を言ってしまうやもしれぬ)」

 

無限王に自分の正体を隠し通してほしいようだった。

だが肝心の彼女は巫山戯た調子で返してきた。

これはいよいよ、覚悟を決めなければならないと、■■■は思った。

話が脱線したが、それから耀達はグリフォンの試練を受けることとなった。

 

 

『ギフトゲーム名〝鷲獅子の手綱〟

 

 ・プレイヤー一覧

 逆廻 十六夜

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 

 ・クリア条件

 グリフォンの背に跨がり、湖畔を舞う。

 

 ・クリア方法

 〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の何れかでグリフォンに認められる。

 

 ・敗北条件

 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 〝サウザンドアイズ〟印』

 

 

これに耀が挑み勝利した。

白夜叉が耀のギフトについて問い、耀は父親から貰った木彫りのお陰と返す。

その木彫りを受け取り、白夜叉が見つめ顔を顰めるなか、飛鳥と十六夜も覗き込み、

 

「複雑な模様ね。何か意味があるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

 

「………これは」

 

白夜叉だけでなく、十六夜と黒ウサギも鑑定に参加する。

 

「材質は楠の神木………?神格は残ってないようですが………この中心を目指す幾何学線………そして中心

に円状の空白………もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「生物学者ってことは、やっぱりこの図形は系統樹を表してるのか白夜叉?」

 

「おそらくの………ならこの図形はこうで………この円形が収束するのは………いや、これは………これは、凄い!!本当に凄いぞ娘!!本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ!まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは!コレは正真正銘〝生命の目録〟と称して過言ない名品だ!」

 

興奮する白夜叉。

耀は不思議そうに小首を傾げて問う。

 

「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?でも母さんの作った系統樹の図はもっと樹の形をしていたと思うけど」

 

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、即ち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは流転する世界の中心だからか、生命の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか。―――うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ!実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

 

「ダメ」

 

耀はあっさり断って木彫りを取り上げる。

白夜叉はしょんぼりした。

 

「で、これはどんな力を持ったギフトなんだ?」

 

「それは分からん。今分かっとるのは異種族と会話が出来るのと、友となった種から特有のギフトを貰えるということぐらいだ。これ以上詳しく知りたいのなら店の鑑定士に頼むしかない。それも上層に住む者でなければ鑑定は不可能だろう」

 

「え?白夜叉様でも鑑定出来ないのですか?今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」

 

黒ウサギの言葉に、白夜叉は気まずそうな顔をする。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

「なんだ?白夜叉でも鑑定は無理なのか?」

 

「不甲斐ないが、その通りだの」

 

申し訳なさそうに頭を掻く白夜叉。

十六夜は不意に無限王を見つめて一言、

 

「なら仕方ねえ。そこで暇してる―――()()()()()()()()にでも聞くか」

 

「ん?それは私のことか?」

 

「お前それ、わざとやってんだろ」

 

十六夜に指摘されて、バレたかと苦笑を零す無限王。

 

「無論、〝生命の目録(ゲノム・ツリー)〟のことなら知っている。それは私の()()が造ったギフトだからな」

 

「え?」

 

無限王の言葉に、耀がキョトンとして見つめ返した。

 

「この木彫りは私の父さんが造ったものじゃないの………?」

 

「ああ。たしかにお前の父親コウメイは偉大な男ではあるが、〝生命の目録〟を人の手で造れるものかよ。そのギフトは私の同類の―――」

 

「へ?コ、コウメイ!?」

 

無限王の話を遮るように黒ウサギが声を上げる。

無限王のドレスの裾を強い力で引っ張る耀の姿もあった。

 

「待って!父さんを知ってるの!?」

 

「無限王様!?コウメイ―――いえ、コウメイ様とはまさかあの!?」

 

「ちょっと待って!黒ウサギも父さんを知ってるの!?」

 

「フギャア!?って、なんで黒ウサギはウサ耳を引っ張られなければならないのですか!?」

 

無限王と違う耀の対応に不満を叫ぶ黒ウサギ。

哀れな兎である。

耀はキッと二人を睨み付けて、

 

「いいから二人は黙って私の質問に答えて。父さんを知ってるの?」

 

「「うむ(YES)」」

 

「父さんとはどういう関係なの?」

 

「えっとですね。コウメイ様はコミュニティの同士にしてジン坊っちゃんの前に頭首を務めていた御方でございます!」

 

黒ウサギが先に答えて耀が目を大きく見開いて驚く。

 

「え?父さんが〝ノーネーム〟の前リーダー!?」

 

「はいな」

 

黒ウサギが頷くと、飛鳥がハッと思い出したように口を挟む。

 

「………そういえばあの外道が言っていた、ジン君の前のリーダーは優秀な男、というのは春日部さんのお父様の事だったのね」

 

「え?あの外道も父さんの知り合い………?」

 

「………いえ、そうとは思えないわ。もし知り合いなら名前で言ってるはずだもの」

 

「あ、それもそうか」

 

「それにあの外道と春日部さんのお父様が知り合いとか嫌でしょう?」

 

「うん、超いや」

 

全く隠す素振りもなく本音を言う耀。

それに苦笑いを浮かべる飛鳥。

耀は無限王に向き直り、

 

「それで貴女は?」

 

「私か?………ふむ、そうだな。コウメイとは友達と言っておこう」

 

「友達?」

 

「うむ、友達。それもコウメイの方からな。初対面の私に、正体を知るや否やいきなり両手を掴んできて―――〝俺と友達になってください!〟て目を輝かせながら言ってきたのを覚えている。流石の私も思わず面食らったが」

 

頬を掻きながら語る無限王。

そんな彼女の両手を掴んで耀が一言、

 

「………父さんだけずるい。私とも友達になってください!」

 

「む?お前の私の評価は〝我が儘な子供〟ではなかったのか?」

 

「………う、それはまだ貴女のこと知らないから」

 

「嘘。コウメイの娘ならば喜んで友達になろう。尤も―――最初の友達はそこの娘に奪われて口惜(くや)しいがな」

 

チラッと飛鳥を見て言う無限王。

飛鳥は勝ち誇ったような顔をして、

 

「そうよ。春日部さんの最初の友達は私が貰ったわ。羨ましいでしょう?」

 

「超羨ましい。だからお前とは友達にはならん」

 

「な、なんですって!?」

 

「なんだ?その反応はもしや私と友達になりたいのか?」

 

「―――ッ!?そ、そんなわけないでしょう!?あ、貴女こそ、私と友達になりたいのではなくて?春日部さんの最初の友達よ?本当はなりたくてなりたくてしょうがないんじゃないかしら?」

 

バチバチと火花を散らしながら睨み合う無限王と飛鳥。

謎のバトルが勃発しそうななか、白夜叉がオホン!とわざとらしく咳払いをした。

 

「当事者の私を差し置いて何勝手に盛り上がっておるんじゃおんしら!特に無限龍!おんしには聞きたいことが山ほどある!後で根掘り葉掘り聞かせてもらうから覚悟しておけ!」

 

「ぬ?」

 

「そういうことなら俺からもいいか?」

 

続けて十六夜が挙手して言う。

 

「春日部の親父の話でかなり逸れちまってるが、〝生命の目録〟ってのはどんなギフトなんだ?無限ロリの同類が造ったって話だから〝純血の龍種〟なんだろうし、そいつのことも気になる」

 

「ふむ?教えてやってもいいが、〝生命の目録〟はコウメイの娘のものだからな」

 

「耀でいい」

 

「む、そうか。では耀と呼ばせてもらう。私の事も無限王とかいう堅苦しい呼び名ではなくウロボロスのウーちゃんと呼んでくれ」

 

「え!?」

 

黒ウサギがギョッとする。

そんな彼女を無視して無限王は続ける。

 

「タメ口で全然いいぞ。友達のコウメイも〝ちょっと試したいことがあるんだが付き合ってくれるかウーちゃん〟という感じにフレンドリーに接してくれるからな」

 

「わかった。これからよろしくウーちゃん」

 

握手を交わす無限王と耀。

ウーちゃんと呼んでくれて嬉しそうな笑みを浮かべる無限王。

そんな二人を羨ましそうに眺め、あんなすぐに春日部さんと距離を縮められるなんてずるいわ、と飛鳥が内心で呟く。

一方で黒ウサギは、コウメイ様まで無限王様の事をあのような呼び方で!?と驚愕し困惑していた。

 

「して耀よ。〝生命の目録〟について彼らにも話してもよいか?」

 

「ダメ。私が最初に知りたいから後で教えてウーちゃん」

 

「了解した。というわけですまないが耀の許可が取れなかったから〝生命の目録〟については今は内緒だ。教えてやれるのはこのギフトを造った同類についてだな」

 

「………チッ、しょうがねえ。春日部のギフトだからな、本人が駄目って言うならそれに従うしかねえか。んで、〝生命の目録〟を造ったっていうあんたの同類は何者だ?」

 

十六夜が問うと、無限王は頷いて答えた。

 

「〝生命の目録〟を造った純血の龍種の名は〝曼荼羅(マンダラ)〟。知識量の多い少年ならば聞いたことはあるだろう?」

 

「勿論知ってるさ。〝曼荼羅〟は古代インドが起源で、サンスクリット語でマンダラを語源とする、本質のものまたは丸いを意味し、聖域、仏の悟りの境地、世界観などを仏像・シンボル・文字などを用いて視覚的・象徴的に表したものだろ?」

 

十六夜の話がさっぱりな飛鳥と耀が小首を傾げる。

無限王は苦笑を零し、頷く。

 

「ああ。そしてその〝曼荼羅〟は()()()()()()()で描かれているだろう?」

 

十六夜達はハッとする。

〝生命の目録〟もまた幾何学線が描かれていたことを思い出して。

 

「〝生命の目録〟の見方だが、中心の内側から外側に向けて幾つもの線が伸びて枝分かれしているだろう?これは異種族の交配や進化を遂げて新たな生命の系譜を刻んでいる事を示している」

 

「へえ?じゃあ逆に外側から内側に向かうと、〝混血種〟から色濃い血を持つ混じりけのない〝純血種〟へと至るってことか?」

 

「そうだ。そして中心が空白なのは………白夜ならばこれが何を意味しているのか気づいただろう?」

 

無限王が白夜叉に話を振ると、彼女は驚愕の表情で声を上げた。

 

「空白………まさか系統樹が存在しない()()()()()()()()()()である〝純血の龍種〟のギフトまでもが獲得出来るというのか!?」

 

「まさかも何もその通りだが?」

 

当然だろう?と小首を傾げる無限王。

白夜叉はプルプルと肩を震わせて、

 

「おんしら〝純血の龍種〟のギフトが使えるとなると、最強種に手が届くということになるのだぞ!?なんじゃそのチートギフトは!?人がリスクなしで使えるのか!?」

 

「はてさてそれはどうかな?これ以上の詳細を知る権利があるのは〝生命の目録〟所持者の耀だけだ。以降は黙秘権を行使するぞ」

 

「ぐぬぬぬぬ!」

 

知りたい欲半端ない白夜叉をニヤニヤと見つめる無限王。

そんな無限王のドレスの裾を強い力で耀が引っ張ってきた。

 

「………もしかして友達になったウーちゃんのギフトも使えたりする?」

 

「それについては後で教える。今の耀では私のギフトを引き出すことは出来ないとだけ言っておこう」

 

「むぅ、早く貴女のギフトも使いたい」

 

今は使えないと言われて拗ねる耀。

そんな彼女に苦笑を零す無限王。

一方、黒ウサギは耀のギフトが最強種級であることと彼女の父親がコウメイであることに興奮し。

十六夜は、春日部がギフトを使いこなせるようになったら俺並みかそれ以上の存在になるのか、と彼女の成長を密かに楽しみにし。

飛鳥は、春日部さんは本当に素敵なギフトを持っていて羨ましいわ、と羨望の眼差しを耀に向けていた。

そんな飛鳥を無限王がバレないように盗み見て、

 

「(お前のギフトも人が使うにしては十二分チートものだぞ、久遠飛鳥)」




ふと思ったこと。曼荼羅のことを白夜叉知ってたりするかな?生命の目録も名前しか知らないし曼荼羅とも面識なしみたいな書き方(白夜叉が無反応)しちゃってるけど


試練をクリアした耀達に〝恩恵〟を贈る白夜叉。ギフトカードを受け取る三人と興奮する黒ウサギ。それから三人は腕試しがしたいと無限王に頼み込み………

次回、ギフトカードと腕試し

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