無限と問題児   作:蛇龍好き

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文字数を少なく書くということが出来なくなってしまっている………


ギフトカードと腕試し

それから白夜叉が試練をクリアした耀達に〝恩恵(ギフト)〟を与えることになった。

復興の前祝いという名目で。

パンパンと柏手を打つ白夜叉。

すると十六夜・飛鳥・耀の眼前に光り輝く三枚のカードが現れた。

 

 

コバルトブルーのカード

逆廻 十六夜

ギフトネーム

正体不明(コード・アンノウン)

 

ワインレッドのカード

久遠 飛鳥

ギフトネーム

〝威光〟

 

パールエメラルドのカード

春日部 耀

ギフトネーム

生命の目録(ゲノム・ツリー)

〝ノーフォーマー〟

 

 

それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る。

黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で三人のカードを覗き込んだ。

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!?このギフトカードは顕現しているギフトを収納出来る超高価なカードですよ!耀様の〝生命の目録〟だって」

 

「ちょっと待って」

 

黒ウサギの話を遮る耀。

 

「へ?」

 

「なんで様付けされるの?」

 

「そ、それはコウメイ様の娘様でございますからね!」

 

「え、なにそれウザい。普通に接して。父さんの娘だからとかそういうのいらない」

 

「ハイ、ゴメンナサイ」

 

耀に叱られてしょんぼりする黒ウサギ。

気を取り直してTake2。

 

「このギフトカードは顕現しているギフトを収納出来る超高価なカードですよ!耀さんの〝生命の目録〟だって収納可能で、それも好きな時に顕現出来るのですよ!」

 

「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」

 

「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

 

黒ウサギに叱られながら三人はそれぞれのカードを物珍しそうに見つめる。

 

「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは〝ノーネーム〟だからの。少々味気無い絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」

 

「ふぅん………もしかして水樹って奴も収納出来るのか?」

 

何気無く水樹にカードを向ける。

すると水樹は光の粒子となってカードの中に呑み込まれた。

溢れるほどの水を生み出す樹が差し込まれ、ギフト欄の〝正体不明〟の下に〝水樹〟の名前が並んでいる。

 

「おお?これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」

 

「出せるとも。試すか?」

 

「だ、駄目です!水の無駄遣い反対!その水はコミュニティの為に使ってください!」

 

「………チッ」

 

つまらなそうに舌打ちする。

まだ安心出来ないような顔でハラハラと十六夜を監視する黒ウサギ。

その様子を高らかに笑いながら見つめる白夜叉。

 

「そのギフトカードは、正式名称を〝ラプラスの紙片〟、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった〝恩恵〟の名称。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」

 

「へえ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 

「ん?」

 

白夜叉が十六夜のギフトカードを覗き込む。

そこには確かに〝正体不明〟の文字が刻まれている。

ヤハハと笑う十六夜とは対照的に、白夜叉の表情の変化は劇的だった。

 

「………いや、そんな馬鹿な」

 

パシッと白夜叉はすぐさま顔色を変えてギフトカードを取り上げる。

 

「〝正体不明〟だと………?いいやありえん、全知である〝ラプラスの紙片〟がエラーを起こすなど」

 

「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」

 

パシッとギフトカードを白夜叉から取り上げる十六夜。

静観していた無限王は、やはりか、と呟いて、

 

「〝千里眼(ラプラス)〟でも少年のギフトを暴けなかったか。ならば私の〝全知〟のギフトでも視る事が敵わなかったのも頷ける」

 

「何?おんしでもこの童のギフトを調べられんかったのか?」

 

「うむ。だが〝全知〟ほどのギフトを無効化するとなると、余程強力なギフトか箱庭内でも閲覧規制が入る〝観測不可領域(ブラックボックス)〟で発生したギフトの何れかだな」

 

「〝観測不可領域〟だと!?」

 

驚愕の声を上げる白夜叉。

その彼女を右手で制す無限王。

 

「落ち着け白夜、あくまでも可能性の話だ。だがこれは確認しておきたいのだが少年」

 

「なんだ?」

 

「お前は星を砕く一撃を持っているか?」

 

「ちょ、無限王様!?流石にそれは十六夜さんでも」

 

「ああ、持ってるぜ」

 

「持ってるわけ―――って、なんですとぉ!?」

 

十六夜の即答にギョッと目を剥く黒ウサギ。

相も変わらず忙しない兎である。

やはりか、と無限王は凶悪な笑みを浮かべる。

 

「なら〝千里眼〟と私の〝全知〟のギフトが無効化されたのは〝疑似創星図(アナザー・コスモロジー)〟の持つデフォルト機能によるものだと仮定しておこう」

 

「………〝疑似創星図〟?」

 

「うむ。本来人間が手にしていること自体驚愕ものだが、それは世界そのものを武具として顕現させるもので、これを超えるギフトは存在しない。〝千里眼〟や〝全知〟のギフトは世界の一要素にすぎぬからな、故に無効化されるのだ」

 

「へえ?」

 

十六夜の瞳が怪しく光る。

世界そのものを武具として顕現、ということは世界そのものの質量を持つ無限ロリにも通用するのか?という期待を込めて笑う。

そんな彼の視線に気付いて、無限王が目を細めて笑う。

 

「なんだ少年?私に通用するのか試してみたいのか?」

 

「人の心を読むなコラ。ああ、超試したい」

 

「馬鹿かおんしら!ここで〝疑似創星図〟を使ってみろ、私のゲーム盤が消し飛ぶわ!」

 

「………チッ」

 

またお預けを食らって盛大に舌打ちする十六夜。

それから白夜叉がトドメに一言、

 

「大体おんしに〝疑似創星図〟は効かんだろに」

 

「は?」

 

「はてさてどうだったかな?そういう白夜もだろう?〝疑似創星図〟の直撃を受けてもピンピンしてたのを覚えてるぞ」

 

「はてさてどうだったかの?」

 

無限王と白夜叉がとぼけ合う。

この二人こそが最大成長龍と星霊の上位種の一角にして、〝疑似創星図〟を真っ向から受け止める怪物達だとは、十六夜達は知る由もない。

一方、飛鳥は己のギフトカードを眺めて溜め息を吐いていた。

十六夜君は人間とは思えない強力なギフトを持ち。

春日部さんは〝ノーネーム〟の前リーダーがお父様で、〝生命の目録〟という素敵なギフトを持っている。

だけど私のギフトは………〝威光〟は人心を操る魔女のようなもの。

とてもではないけれど、素敵なギフトとは思えないわ。

 

「―――どうした娘よ?お前は〝威光〟を人心を操る程度のギフトだと思っているのか?」

 

「ちょ、勝手に人の心を読まないでくださる!?ええ、そうよ!だってあの時の事を知っているなら私のギフトがそういうものだって分かるでしょう!?」

 

「それが勘違いだというのだよ久遠飛鳥。お前のギフトもまた、逆廻十六夜や春日部耀に勝らずとも劣らぬギフトなのだからな」

 

「え?」

 

無限王の言葉に驚く飛鳥。

私のギフトが、十六夜君や春日部さんに勝らずとも劣らずですって………?

それってどういう意味よ、と訊ねようとしたがそれは敵わなかった。

十六夜が提案してきた。

 

「せっかくギフトカードも貰ったことだし、あんたで()()()()()()?無限ロリ」

 

「ふむ?」

 

「あ、それ賛成。私も〝生命の目録〟について全く知らない状態でどれだけやれるか試したい。ダメかな、ウーちゃん?」

 

「………お前はどうする?」

 

「え?あ、そうね………貴女の言葉が真実なら、私のギフトも強力なのよね?」

 

「無論だ」

 

「そう。なら、私も試させてもらおうかしら」

 

「よし、承ったぞ―――と、その前に」

 

無限王は右手を前に出して、

 

「―――【創造】」

 

【創造】と言うと光り輝き、彼女の右手に何かが出現した。

そしてそれを、

 

「受け取れ娘」

 

飛鳥に向かって投げた。

 

「え?ちょ!?」

 

それを危なげにキャッチする飛鳥。

飛鳥が文句を言おうとするが、それよりも早く無限王が言った。

 

「そのギフトは〝純血の龍種〟のデフォルト機能―――無から有を生み出すギフトを付与させた指輪だ。それはお前がギフトを十全に使いこなす為に必要なものだ、存分に使うといい」

 

「「「「―――………は?」」」」

 

素っ頓狂な声を漏らす飛鳥達四人。

そりゃそうだ、渡されたギフトが〝無から有を生み出す〟とか言われれば当然の反応だろう。

飛鳥は無限王から受け取った指輪を見る。

それは〝己の尾を喰らう龍〟をモチーフにした形の指輪だった。

その上に乗る宝石は、飛鳥のギフトカードと同じワインレッドの色で輝いていた。

それを見た十六夜と耀が抗議する。

 

「ちょっと待てやコラ。なんでお嬢様だけなんだよ?」

 

「激しく同意。友達を差し置いて、それも飛鳥だけギフト贈呈はずるい」

 

「そう言ってやるな少年、耀。その娘は他のギフトが無いと十全に力を発揮できぬのだ、許してやれ」

 

「え?」

 

無限王の言葉に、飛鳥は目を瞬かせる。

私のギフトは、人心を操るだけじゃなくてギフトにも作用するってことなの?

ようやく気付いたか、と無限王がニヤリと笑う。

 

「さて、いい機会だから私の本来の姿を見せてやるとしよう」

 

「「「「え?」」」」

 

「〝箱庭の貴族〟よ、我が器の娘を頼むぞ」

 

「へ?」

 

黒ウサギが首を傾げた途端―――■■■の体から真っ黒い風のようなものが吹き荒れ、彼女の体から完全に分離する。

いきなりのことで驚く■■■。

そんな彼女の側に、黒ウサギが寄り添う。

十六夜達の視線は、最初こそ■■■に向いたが、すぐに真っ黒い何か(無限王)へ向くことになる。

頭に真っ黒い立派な二本の龍角。

瞳は宇宙を彷彿させ、深淵の中には輝く星々があり。

漆黒の外套に身を包んだ、暗黒の長髪を靡かせた少女がいた。

この姿は無限王の被造物ことウーちゃん2号と大差ないが、彼女から発せられる霊格(そんざい)は、比べ物にならないものだった。

圧倒的な気配を放つ無限王に、十六夜も、飛鳥も、耀も、黒ウサギさえ息を呑む。

実は黒ウサギも無限王の本来の姿を見るのは初めての事だった。

無限王は黒とは対照的な色白い両手をグーパーさせて感触を確かめる。

 

「うむ。仔細無し」

 

「仔細無し、じゃありませんよ無限王様!?出てくるなら一言私に断ってくださいよ!吃驚(びっくり)したじゃないですか!」

 

「おっと、それはすまなんだ。以後気を付けるとするよ―――()()()

 

「「「………ラミア?」」」

 

「ちょ、無限王様!?」

 

あっさりと金髪少女の正体をバラす無限王に、口をパクパクさせながら叫ぶラミア。

十六夜達が首を傾げるなか、黒ウサギだけ時間が停止したような感覚になっていた。

 

「(………え?黒ウサギは、幻聴が聞こえたのでしょうか………?ラミア………この名前には聞き覚えしかないのですよ………ラミアは、いえ、ラミア様は………!)」

 

レティシア様が全てを犠牲にしてでも取り戻したい、かけがえの無い、何者にも代えがたい、愛する()()ではなかったか。

その彼女が、無限王様の器となって、正体を隠してレティシア様に会っていたということになる。

どうしてそんなことをしたのですか………レティシア様にバレたくなかった理由とは一体………?

詮索する黒ウサギに、無限王がスッと目を細めて言う。

 

「〝箱庭の貴族〟よ、悪いがラミアの件は後にしてくれないか?これから少年達の腕試しをするからな」

 

「え?あ、はい。その代わり、後で教えてくださいよ?」

 

「それは約束できんな。これはラミアの問題だから余計な世話は焼くなよ?」

 

「む」

 

納得いかなそうな顔をする黒ウサギ。

だが無限王の異常な威圧が反論を許さない。

この問題は彼女達のものだ、貴様如きが出ていい幕ではない!

正体こそ教えても、彼女達の関係に深入りするようならば容赦はしない、と珍しくも怒りの籠った瞳を見せる。

黒ウサギは言葉に表せないような恐怖を感じた。

一方、十六夜は〝ラミア〟と聞いて自身の脳に詰まった知識から洗い出していた。

 

「(………ラミアといえば、ギリシャ神話に登場する古代リビュアの女性。主神ゼウスと通じた為に本妻のヘラによって子供を失い、その苦悩のあまり他人の子を殺す女怪と化したという蛇の下半身を持つ………?だがあいつの見た目は人間っぽいしギリシャ神話とは無関係か?)」

 

十六夜が一人考え込んでいると、無限王がそれに気付いて言う。

 

「ラミアについての考察はすんだか少年?」

 

「だから人様の思考を読むなコラ」

 

「ふふ―――さて、こちらは準備万端だが、ただの腕試しだからギフトゲーム形式にする必要もなかろう?」

 

「うん。早くやろ」

 

やる気満々の耀に苦笑を零す無限王。

 

「白夜、念のため〝箱庭の貴族〟とラミアをよろしく頼むぞ」

 

「うむ、引き受けたぞ」

 

白夜叉は頷き、黒ウサギとラミアを背に守るように立つ。

彼女に任せれば安心出来る。

まあ尤も―――無限王は()()()()()()()()()()()()()

その証拠に、無限王は身構えることなく一言、

 

「ではまずは少年―――逆廻十六夜から来い。手加減は不要だ、全力で来い」

 

「………カッ、あんたに言われなくても最初から全力でいくぜッ!」

 

十六夜の踏み込み一つで雪原の大地が爆裂する。

たった一度の踏み込みで風を追い抜き、音速を凌駕し、大気を焼き尽くすほど加速し―――第三宇宙速度を遥かに凌駕した速度を叩きだし、一瞬で無限王に肉薄する。

そのままの速度を維持して右拳を彼女の体に叩き込む。

人間が受ければ骨も残らないだろうその一撃を無限王は―――棒立ちのまま受け止めた。

 

「―――ッ!?」

 

やはり彼女には微塵も通用していない。

そればかりか、世界そのものの質量を持っていながらも、十六夜が全力で殴りかかったのにも拘わらず、彼の拳は消し飛ぶどころか傷一つついていなかった。

無限王が十六夜を傷つけないようにギフトを使ったのかもしれない。

無論、そのギフトもまた十六夜の一撃で無効化(キャンセル)されたようだが。

 

「………ハッ、しゃらくせえ!!」

 

構うものかと、十六夜は気合い一閃―――拳のラッシュを無限王に叩き込む。

凄まじいその一撃一撃は第三宇宙速度を遥かに凌駕し、大気に幾つもの波紋を生み出す。

これだけの猛攻があるにも拘わらず、周囲に全く被害が無いのは無限王が全てを受け止め吸収しているからなのだろう。

十六夜は自分の拳がまるで通用しない、圧倒的な格上の存在を前に絶望するどころかむしろ血湧き肉躍ってすらいた。

自身の限界を越えようと、全身に力を込める。

もっとだ、もっと(はや)く―――ッ!!

だがどれだけやろうとも、第四宇宙速度には遠く及ばない。

そして十六夜の拳は無限王の人差し指で受け止められて、

 

「―――終了だ。お疲れ少年」

 

「………チッ、僅かでも後退してくれることを期待したが、まるで動かねえなあんた」

 

「当たり前だ。私をぶっ飛ばせる者など、この箱庭でも両手の指で数える程しかいないからな」

 

「………ハッ、そいつはいい。異世界に喚び出された初日にそんな超大物と巡り会えてかつ挑戦出来た奇跡に感謝しねえとな!」

 

ヤハハと笑う十六夜に、やれやれと呆れたような顔で見つめる無限王。

しかし彼女は知っている。

彼が内心では悔しがっていることに。

プライドを深く傷つけられていることに。

しばらくはそっとしてあげた方がよさそうだ。

 

「では次は耀。コウメイから譲り渡された〝生命の目録〟をどれくらい使いこなせるか見せてみよ」

 

「うん」

 

耀は頷いて踏み込み跳ぶと、白夜叉の試練で友達になったグリフォンのギフトを早速使った。

風を纏い、覚束無い飛翔ではあるが、使っていけば何れは使いこなせるだろう。

無限王の頭上まで移動し、

 

「(力を貸して、象さん!)」

 

グリフォンのギフトから象のギフトへ変更し、大気を震わせながら自由落下して無限王の頭を踏みつける。

当然だが、象程度の質量で彼女が揺らぐわけもなかった。

例えるならそう、象が毎日踏み締めている大地そのもの。

世界そのものの質量を持つ彼女は無論、大地程度ではないが。

 

「(………凄い。これがウーちゃん―――父さんの友達!まるで歯が立たないよ)」

 

象が効かないのならば他の友達では到底無理だろう。

耀は悔しそうな顔をしたのち、ふと視界に無限王の真っ黒い立派な二本の角が映った。

そんなものを見てしまったら触りたいに決まっている。

耀は象のギフトを消して無限王の背後に降り立つと―――

 

「えい」

 

彼女の二本の龍角を根元から鷲掴み引っ張った。

 

「………………………何をしてるんだ耀?」

 

「ウーちゃんの角に触りたかったから掴んでるだけ」

 

「………………………誠に耀はコウメイの娘なのだな」

 

「………?それはどういう意味?」

 

「いや、なんでもない」

 

「………?」

 

耀は小首を傾げる。

無限王は、コウメイにもこの姿を見せたことがあったのだが、まさに耀と同じ行為に走ったことを思い出して苦笑を零す。

それから無限王の角を堪能した耀が離れると、

 

「では最後はお前だ娘―――久遠飛鳥。私が与えたギフトを使い、お前のギフトを見せてみろ」

 

「ええ。でもその前に、試していいかしら?」

 

「構わんぞ」

 

無限王が許可すると、飛鳥はありがとう、と言ったのちに右手を前に突き出し一言、

 

()()()()()!」

 

「……………………」

 

飛鳥は〝威光〟で無限王を跪かせようとしたが、微動だにしない。

やはりというか効かなかった。

そもそも、無限王には霊格の差云々関係無しにギフトが通用しないのだから、直接〝威光〟を使うなど焼け石に水でしかない。

飛鳥は悔しそうな表情を見せた後、無限王から受け取った〝無限の指輪〟を左の指にはめて問う。

 

「無限王さん、これはどうやって使えばいいのかしら?」

 

「ああ、それは単純に思い浮かべるだけでいい」

 

「思い浮かべる?」

 

「そう。例えば無から生み出される火を思い浮かべてみよ」

 

「わ、分かったわ」

 

無限王に言われて、飛鳥は左手を前に突き出して目を閉じる。

無から生み出される火をイメージして―――!

ポウッと飛鳥の左手から小さな火が生まれた。

それを見て飛鳥が興奮する。

 

「で、出来たわ!これでいいかしら!?」

 

「うむ。では次の段階へいこうか」

 

「………?次の段階?」

 

「ああ。私のギフトで火を生み出すイメージが出来たのなら、今度はお前のギフトを使ってみろ」

 

「私の?」

 

「そうだ」

 

頷く無限王に、飛鳥は言われるがままにやってみることにした。

 

「(ええと、火に命ずるのならこうよね)」

 

飛鳥は小さな火に向かって〝威光〟を使った。

 

()()()()()!」

 

そう命じた刹那―――小さな火が急激に物凄い勢いで燃え上がった。

 

「………え?」

 

「「「「「………なっ―――!?」」」」」

 

尋常ならざる光景に、愕然とする十六夜達五人。

なんだ、今のは?

小さな火が、飛鳥の命令で激しく燃え上がる。

命令しただけで小さな火があそこまで成長するものか?

無限王はうむ、と満足げに頷いて、

 

「それがお前のギフトの力だ。我ら最強種が持つ与える側の力の恩恵―――()()()()()()()というものだ」

 

「「え!?」」

 

「何!?」

 

「「「………疑似神格の付与?」」」

 

有り得ないような表情で飛鳥を見る黒ウサギ・ラミア・白夜叉の三人。

初めて聞く単語に首を傾げる十六夜・飛鳥・耀の三人。

それについて無限王が説明する。

 

「疑似神格の付与は恩恵に使えばその恩恵を極大化させ、限定的に神格級の力を解放する事ができ、相手に使えばその相手は命を削るリスクを負う代わりに神格級の力を得るというものだな。後者の使い方はやらないことをオススメするが」

 

「「「……………」」」

 

無限王の話を聞いて、十六夜・耀・飛鳥は目を瞬かせる。

 

「………なんだよ、お嬢様のギフトもチート級だったんじゃねえか」

 

「うん。私達三人は人智を超越したギフトの持ち主ってことだね」

 

「正直実感が湧かないのだけれど………無限王さんがくれたこの指輪を使いこなせれば十六夜君と春日部さんの役に立てることが分かっただけでも自信が持てたわ」

 

一方、白夜叉はそんな三人を眺めながらニヤリと笑う。

 

「(〝疑似創星図〟を所持する小僧に、〝生命の目録〟を所持する小娘、仕舞いには〝疑似神格〟の付与が出来る小娘ときたか。こうも人間を超越したギフト保持者が一気に召喚されるとは………くく、面白いのう)」

 

黒ウサギは三人を見つめながら、ウサ耳と尻尾をパタつかせ興奮させていた。

 

「(す、凄いのです!十六夜さんも、飛鳥さんも、耀さんも!黒ウサギに彼らを召喚するギフトを与えてくださった〝主催者〟様の―――クイーン・ハロウィン様の言葉は決して眉唾物ではなかった………!)」

 

とはいえ、コミュニティ再建には過剰戦力な気がしてならないと苦笑を零す黒ウサギ。

彼らが召喚された真の理由を黒ウサギは知る由もない。

そんな様子を無限王が眺めていると―――ミシリ、と白夜の世界が悲鳴を上げ始めた。

続けて世界全体が激震する。

何事かと声を上げる十六夜達。

白夜叉はハッとして無限王を見て、

 

「私のゲーム盤が崩壊しようとしておるな………おんしが顕現してるのが原因か無限龍よ?」

 

「………そのようだな。しくじった、ここは白夜のゲーム盤の中だ。私のようなものが居続けては何れ崩壊してしまうか」

 

「「「「は?」」」」

 

「ラミアよ、私の下へ来い」

 

「………!はい、無限王様!」

 

駆け足で無限王の下へ向かうラミア。

無限王はラミアの頭を優しく撫でたあと、人型だった彼女の体は真っ黒い風のようなものへと変わり、ラミアの体の中へと収まる。

それと同時に、白夜叉のゲーム盤の崩壊が止まった。

無限王はラミアと同化を完了した事を確認するように両手をグーパーさせ、

 

「うむ。仔細無し」

 

「仔細無しなわけあるかこの大戯け者があああああッ!!!」

 

ズドグシャアアアアア!!という痛そうとかいう次元を超えた扇子の一撃を無限王の頭頂部に叩き込む白夜叉。

何故私は叩かれたのだ?と不思議そうに小首を傾げる無限王。

無限王は存在するだけでゲーム盤が崩壊する。

十六夜達四人は満場一致で、やっぱこいつの方が化け物だわ、と思うのだった。




〝無限の指輪〟
無から有を生み出すギフトと表記されているが、この有とは恩恵を指す。無からイメージした恩恵を生み出し、その恩恵に飛鳥の〝威光〟を使うことで極大化の現象が起きたというもの。
望めば武具なども生み出せるが、このギフトの使用者に適した恩恵を生み出す為、使用者の霊格が低いほど生み出される恩恵も弱くなる。

飛鳥の強化に伴い、原作の敵にもオリ主が何かするやもしれぬ


腕試しを終えてラミアの話に移るのだが、彼女はレティシア(姉上)にはまだ正体をバレるわけにはいかないことを言う。それを聞いて十六夜達が邪悪な笑みを浮かべて、正体をバラされたくなかったらメイドをしろ、と脅迫めいたことを言われ!?しかしそれこそが〝ノーネーム〟との関係を持つ為の無限王の狙いだった………

次回、問題児の吸血姫妹メイド計画
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