無限と問題児   作:蛇龍好き

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思ったより時間がかかってしまった…


問題児の吸血姫妹メイド計画

場所は戻って白夜叉の私室。

ゲーム盤の中だと白夜叉の世界と無限王の内包する世界の質量が衝突して崩壊を招いてしまうが、箱庭の中ならば無限王が顕現してても崩壊することはない。

即ち、再び無限王とラミアが分離している状態である。

暗黒の長髪、星々が輝く瞳、漆黒の外套を纏った無限王と。

黄金の長髪、宝石(ルビー)のように紅い瞳、華美なドレスを纏ったラミア。

その二人を交互に眺めて飛鳥が口を開く。

 

「………そういえば、無限王さんとラミアさんってどういう関係なのかしら?」

 

「それ気になる。よかったら教えてくれるかな、ウーちゃん?」

 

「俺も気になる。あんたみたいな強い奴が、器なんてものを必要としなきゃならない理由ってのはなんだ?」

 

「く、黒ウサギも気になります!無限王様がラミア様を助けた理由やその他諸々!」

 

「一度に質問するな。ふむ、どれから話してやるか。ラミアよ、聞かれたくない質問とかはあるか?」

 

「問題ありません。私の正体を知られてしまった以上、今更隠す必要はありませんからね。ただ―――」

 

ラミアは僅かに逡巡するが、意を決したように続けた。

 

「私の正体はまだ姉上に知られるわけにはいきません。ですので皆様には秘密にしていただけるとありがたいのですが」

 

「え?ラミア様のお姉様というのはレティシア様のことですよね?どうして彼女には秘密にしなければならないのですか?」

 

「それは………私は本来ここにいること自体がおかしいからです。封印されているはずの私が姉上の前に姿を見せる資格なんてありません」

 

「そ、そんなことは………!」

 

黒ウサギが反論しようとするが、ラミアは小首を横に振って、

 

「私は正体を隠しながら今まで姉上を傍で見守ってきました。姉上が私の為に頑張ってくれてることも、自分のせいで私を怪物にしてしまったということに罪悪感で押し潰されそうになりながらも必死に生きようとしていたことも!そんな姉上が愛おしくてズルをしてまで会いに来た私に、どうしてそんな資格があるというのですか!」

 

ズルをしてまで会いに来た私に、そんな資格はない。

私の為に頑張ってくれてる彼女に対する冒涜行為だと、ラミアは言う。

それに十六夜が口を挟む。

 

「馬鹿言え。お前の選択は間違ってる。正体を隠して己の肉親に会う方がよっぽどズルしてるじゃねえか」

 

「………え?」

 

「え?じゃねえよ。正体を隠してるってことは相手側からしちゃ赤の他人同然だろ?それってつまり―――得してるのはお前だけってことになる」

 

「………ぁ」

 

「お前は無限王がくれたチャンスを最大限に活かすべきだったんだ。お前は正体を隠さずに姉に会い、罪を許し抱きしめてやれたのなら………それだけでお前の姉は報われたかもしれないのにな」

 

「……………、」

 

十六夜の発言に思うところがあるのか、何も言い返せないラミア。

たしかに、彼の言う通りかもしれない。

あの日、無間で出逢った無限王様に与えられた自由に酔いしれて、自分の欲求を満たすことしか考えられなかったのかもしれない。

彼の言う通りに、私が姉上の罪を許し抱きしめてあげられたら………姉上の心を蝕む罪悪感から解放してあげることが出来たのかもしれないのに………!

私はどうして姉上を避けるような真似をしてしまったのだろう。

今更になって自分の選択に後悔するラミア。

両手で顔を覆い、悔恨の涙を流すほどに。

十六夜は意地悪そうにニヤリと笑い、

 

「ま、お前がそれでも秘密にして欲しいってんなら協力してやらんでもない」

 

「え?」

 

「だが、タダでとはいかねえなあ。そうだろ?お嬢様、春日部」

 

「「え?」」

 

突然話を振られてキョトンとする飛鳥と耀。

 

「え?じゃねえよ。俺達がこいつの言う通りにしなきゃいけない理由はないだろ?」

 

「そ、そうね」

 

「う、うん」

 

「そう、タダでは、な?しかしもしこいつを好きにしていいなら、協力してやってもいいだろ?」

 

「「!!」」

 

十六夜の企みに気づいて、飛鳥と耀がニコォリと邪悪な笑みを浮かべた。

さて、あの小娘をどうしてやろうかという風に。

邪悪な笑みを浮かべてラミアを見る問題児三人。

身の危険を感じたラミアは、身震いして後ずさる。

そんな彼女を庇うように無限王が十六夜達を睨み付けた。

 

「ほう。我が器であり永き(とき)を共に過ごしてきた友によからぬことをしようと企んでるのか?変なことをするようなら容赦はせんぞ?」

 

「「「―――ッ!!?」」」

 

無限王は殺気のみで空間に亀裂を入れる。

初めて出会った時よりも籠められた殺意は比じゃない。

息を呑む十六夜達だが、別に変なことをするつもりは毛頭ない。

なんとか堪える三人に「ほう?」と感心したように笑う無限王。

背中に流れる心地よい冷や汗を感じ取りながら十六夜は首を横に振る。

 

「………別にあんたが思うような変なことはしねえよ。ただ金髪美少女なんだし是非ともやってもらいたいことがあるだけさ」

 

「ふむ?それはなんだ?」

 

「それは―――()()()だ」

 

「「へ?」」

 

「ほう、メイドか」

 

「ああ、メイドだ」

 

変なことではなくて一安心する無限王。

しかしそんなことは黒ウサギが許さなかった。

 

「ちょ、十六夜さん!?ラミア様をメイドにしようとするとかどういう了見ですか!」

 

「そこに金髪美少女がいるから」

 

「黙らっしゃい!!」

 

スパァーン!とどこからともなく取り出したハリセンで十六夜の頭をはたく黒ウサギ。

一方で、飛鳥がラミアをまじまじと見つめて頷く。

 

「私、金髪の使用人に憧れてるのだけれど、貴女のような可愛らしい子がしてくれたらとても嬉しいわ」

 

「ウーちゃんと長い付き合いなら是非私も友達になりたい。メイドになれば私達の関係も深くなる」

 

耀も続いてラミアのメイドを希望する。

怒る黒ウサギと困ったような顔をするラミア。

白夜叉はニヤリと笑って、背に隠していたものを提示する。

 

「おおっと、こんなところにメイド服があるの。これはそこのおんしにピッタリサイズかもしれんのう?」

 

「え?」

 

「準備周到だな、この駄神」

 

「なんだ駄龍。文句でもあるのか?」

 

睨み合う両者。

同時に親指をビシッと立てて、

 

「超グッジョブ。それでこそ我が友よ」

 

「うむ」

 

「ちょ、無限王様まで!?」

 

そう、ノリノリだった。

完膚無きまでにノリノリだったのだ。

ギョッと目を剥く黒ウサギ。

苦笑いのラミア。

しかしこれだけでは終わらなかった。

 

「白夜よ」

 

「なんだ?」

 

「聞くまでもないが―――レティシアの分のメイド服も用意してあるな?」

 

「「へ!?」」

 

レティシア様(姉上)をメイドに!?と内心で叫ぶ黒ウサギとラミア。

白夜叉はフッと笑って、

 

「無論だ。おんしの分も用意してあるぞ」

 

「私の分はいらんだろう。普段はラミアの中にいるんだから」

 

「………チッ」

 

「何故に舌打ち?」

 

「気のせいだの」

 

「……………そうか」

 

私にメイド服なんて着せてどうするつもりなんだ?と小首を傾げる無限王。

前に着せ替え人形なるものになってあげたというのに。

一方、耀が不思議そうに小首を傾げて、

 

「ウーちゃん、ラミアさんのお姉さんもメイドにしていいの?」

 

「うむ」

 

「それは太っ腹なことだな」

 

「だろう?」

 

「そう。でも、ラミアさんの許可無しで勝手に決めていいのかしら?」

 

「そうだな。だがラミアは満更でもなさそうだぞ?」

 

え?とラミアに視線を向けると、

 

「あ、姉上のメイド姿………姉上と同じ立場………姉上と一緒に衣食住を共に出来る………姉上と永遠に一緒にいられる!?」

 

どうやらラミアは妄想が捗ってるらしい。

黒ウサギ達はポカーンと口を開けてラミアを見る。

まさか彼女は俗にいう姉好き(シスコン)なるものか。

そのまま百合(ガールズラブ)に発展しないことを願おう。

妄想中で思考そっちのけなラミアに、無限王は意地悪そうに笑みを浮かべて、

 

「それを実現するには、レティシアにも正体を明かさないとな?」

 

「………ッ!!?」

 

ハッと我に返るラミア。

そうだ、また同じことを繰り返しては姉上が報われない。

ラミアは覚悟を決めたような顔で無限王に言った。

 

「………分かりました。姉上が〝ノーネーム〟に帰還出来たら、姉上にも正体を明かします」

 

「そ、それってつまり………?」

 

「はい。黒ウサギさん達が姉上を取り戻した暁には、姉上共々喜んでメイドになることを約束しましょう」

 

それを聞いてぱあっと黒ウサギの表情が明るくなる。

メイド化はアレだが、レティシアの奪還が出来ればラミアが〝ノーネーム〟に来てくれる。

レティシアは帰還出来るだけでなく、ずっと取り戻したかった妹と、ラミアとも再会を果たせる。

彼女にとってこれ程嬉しい展開はないはずだ。

無限王が思い出したように言う。

 

「何を期待してるのか知らんが、私とラミアが〝ノーネーム〟に入るわけではないぞ?我々は既に入ってるコミュニティがあるのでな」

 

「え?」

 

「そうですね。あ、でも私の愛娘も連れ出して構いませんよね?」

 

「「「愛娘!?」」」

 

「構わないぞ。むしろ『お母様と離れ離れになるのは嫌です!私もご一緒させてほしいのだわ!』と言って付いてくるのは見え見えだろう?」

 

「それもそうですね」

 

ラミアの娘は人類を目の敵にしているが、母親が一緒ならそんな障害は関係無いと付いてくるに決まっている。

そんな自分の娘を思い浮かべて苦笑いを浮かべるラミア。

一方、ラミアを愕然とした表情で見つめる飛鳥達が、

 

「………ラミアさん、お子さんがいたのね」

 

「とてもそうには見えなかった」

 

「若作りしてましたからね」

 

「人妻か。流石に手を出すわけにはいかないな」

 

「あら、手を出そうとしていたの?私に手を出したらどこぞの神王様のように人妻好きのレッテルが貼られましてよ?」

 

「どこぞの神王様の仲間入り?………ハッ、そいつは面白そうだが遠慮しとくよ」

 

皮肉に笑うラミアと遠慮する十六夜。

十六夜はチラッと無限王を見る。

彼女の眼が訴えてきている。

ラミアに手を出せば、分かってるな?という恐ろしい意思が。

もしそんなことをすれば、ラミアの最強保護者様(無限王)を敵に回すことになる

勝ち目のない戦いに挑むほど十六夜は馬鹿ではない。

肩を竦ませる十六夜。

一方、黒ウサギがさっき無限王の言った言葉について質問する。

 

「条件を満たしても無限王様達は黒ウサギのコミュニティには所属してくれないのですか?」

 

「ああ。そもそも所属したところで戦力にはなれんぞ?」

 

「へ?」

 

「まあ、少年達の恩恵(ギフト)は逸材だし腐らせるわけにもいかぬからな。面倒は見てやる」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ」

 

頷く無限王。

喜ぶ黒ウサギ。

 

「そこの少年、逆廻十六夜は兎も角、久遠飛鳥と春日部耀。お前達は現状だとかなり厳しいな、強力な恩恵を手にしていても使いこなせねば意味はない」

 

「そ、そうね」

 

「ウーちゃんとの腕試しでよく理解してる」

 

「うむ。自信過剰でなく謙虚でよし。自分の力に溺れていてはただ死に急ぐだけだからな」

 

無限王の言葉に返す言葉もなく、悔しそうな表情を見せる飛鳥と耀。

無限王はそんな彼女達に歩み寄り、頭を撫でてやる。

 

「使いこなせれば強力な恩恵なのは間違いない。私がみっちり修行してやるから心しておけ」

 

「わ、分かったわ」

 

「お、お手柔らかに」

 

〝みっちり〟という言葉に恐怖する飛鳥と耀。

ただでさえヤバイ存在の彼女の〝みっちり〟とか嫌な予感しかない。

十六夜はヤハハと笑ったあと、スッと目を細めて無限王に言った。

 

「俺もその〝みっちり〟修行に参加してもいいよな?」

 

「む?お前は元々規格外な存在だからな。〝みっちり〟修行ではなく―――遊んでくれ、だろ?」

 

「………!!ヤハハ、それだ。いいよな?」

 

「無論だ。私もお前の〝疑似創星図(アナザー・コスモロジー)〟に興味あるしな。いいだろう」

 

十六夜の要求を呑む無限王。

彼の所持する〝疑似創星図〟に興味があるのは本当だ。

それを知らなければ、彼を強くすることも出来ないだろうから。

その後は黒ウサギ達と別れて、ラミアの中に戻った無限王は白夜叉の下へ残った。




次回の会話をちょい見せ

「………おんしが〝ウロボロス〟に所属しているのは、〝ノーネーム〟の『敵』を演じる為だろう?」

「おんしが何をしようと、何を成そうとも〝善〟にも〝悪〟にも成れんぞ。おんしを見つけ、育てた私には分かる」

「偉大なる我らの原初の星(マザー)よ。何もない、何ものでもない〝無(ワタシ)〟を〝無限(わたし)〟に導いたのは他の誰でもない、貴女ではなかったか」

「………おんしが再びこの箱庭を滅ぼそうとするならば〝封印〟ではなく―――私がこの手で〝無に還そう(殺してやろう)〟」

次回、原初の星と〝無〟すめの対話
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