東雲色に輝いて 作:東雲姉弟スコスコ侍
あの後、薊の仕事の手伝いやらなんやらをしているとそこそこ遅い時間帯になってしまった。スマホに表示されている時計には19:27と表示されており、想定より時間がかかったことに思わず顔を顰めてしまう。
「薊、帰んぞ」
「…分かった」
靴を履き替えた薊と並んで歩く。明らかに一介の生徒会長に与える量ではない仕事をなんの文句も言わずにやる薊が見ていられず仕方なく手伝い、その関係で帰るのが遅くなるのは良くあることなので薊と並んで歩くこの道もよく見なれたものだ。
「そういや、最近はどうよ」
「特に変わったことは無い」
「…んじゃ、前と比べてどうよ」
「そうだね…少し楽しいかな」
「そっか」
珍しく微笑んだ薊を見て笑う。二人して小さく笑い、そこで会話が途切れる。俺とこいつの間にこれといった会話は起こらない。話すとしても何か問題が起こったり、少しの雑談をしたり。…そんな程度だ。別に話さなくても意図は通じる。それだけだ。
「…ここでいい。ありがとう」
「あいよ。おつかれさん」
「うん、お疲れさま」
薊の家の近くまで来たためそこで別れ俺は家の方向に向かって歩き出す。すると、唐突に俺のスマホに彰人からメッセージが来る。
「…はあ、またか」
そこに書かれていたのは父親と妹の絵名が喧嘩した旨のことが書かれていた。昔からそうだ。うちの父親と妹の相性は最悪…いや、というより完全に親父の自爆なのだが。言い方があるだろうと思いつつも言っていることは真理なのだからもう救えない。妹も妹でそれをバネにして成長…と言うだけでなく、極限まで傷ついて諦めそうになって…結局諦めきれずに永遠に絵を描き続けるタイプなのでこちらもタチが悪い。いたちごっこなのだ。傷つける父と傷つく妹。
「やれやれ、可愛い妹の為にケーキでも買って行ってやるかな~」
丁度ここにケーキがあるよ!とばかりに店内の光の自己主張の激しいケーキ屋に向かって足を向ける。ケーキ屋に入るといくつかのケーキ…母さんや親父、彰人の分も含めて購入しまた帰路に着く。
「ただいま~」
「おかえり…って、ケーキか?」
「
呆れたように肩を竦めた彰人が上にいるぞと教えてくれたので彰人や母さんたちの分を冷蔵庫に入れ、絵名用に分けて入れてもらっていたのでそれを持って上がる。絵名の部屋の前に立つと扉を軽く叩く。
「誰!?」
「…俺だよ、絵名」
「…兄さん?」
「せーかい。入ってもいいか?」
「…好きにすれば?」
今回も荒れてるなと苦笑しつつもガチャリと扉を開くと目に飛び込んでくるのはバラバラに投げ捨てられた絵の具や画材、そしてその中心で蹲るようにして涙を流す絵名。
「…今回もまた随分と…」
口から漏れた呆れの声と共にさっさと絵の具や画材を一つに纏めて部屋の片隅に置いておく。どんな風に喧嘩したのかは知らないが、恐らく今回も諦められずに描くのだろう。もう、それしか道がないのだと信じて。──そんなことは、無いんだけどなぁ。
「ほら、絵名。目を擦ると赤くなっちまうぞ」
「…うん」
昔から絵名は俺の言うことに素直だった。…と言うより、頼れる相手が少なかったのもあるだろう。母も父も仕事で忙しく、今でこそしっかりとしている彰人も幼い頃は年相応だった。昔から早熟という言葉が相応しかった俺が面倒を見ることも多く、その名残もあるのだろう。また涙を流し始めた絵名を軽く抱きして背中を軽く叩いていると泣き疲れたのか眠ってしまう絵名。こうして見ると幼く見えるなと口元が緩むのを自覚しながらベッドに絵名を寝かせる。
「ま、起きたらケーキでも食べて休んで…それから色々と悩むといいさ」
悩めよ少女よ。相談相手になってやることは出来ても、その悩みを解決してやることは出来ないんだから。
「結局、自分を救えるのは自分だけなんだから」
周りのやつはそれを手助けすることしか出来ないんだから…それがどれだけ歯がゆくとも。
東雲画人
お兄ちゃんらしいところをようやく見せたヤツ。絵名を宥めるのはコイツが適任。彰人より絵名の方が懐いている。
薄明薊
明らかにおかしい量の書類を一人で片付けてるヤベー奴。なお、画人も巻き添えを食らう模様。生徒会は画人の手伝いを除けば実質一人で回してるらしい。頭おかしい(褒め言葉)
東雲絵名
画人に対してはツンデレのツンが軽い。でもやっぱりツンデレ。彰人との仲も別に悪くない。なんなら間に画人の緩衝材があるから普通に仲良い。
東雲彰人
喧嘩後の絵名にはあまり近づきたくない。引っかかれるし怒鳴られるし。でも、画人が居ない時は躊躇なく絵名の所に行く良い奴。でもやっぱりツンデレ。